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退職者は対象?処遇改善加算が支払われるかを支給別に解説
退職者には処遇改善加算が支払われているか気になる方もいるでしょう。結論から述べると、支給されるタイミングによって付与されるかは変わります。
「退職者には支払われない」と言われた際の対処法も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
退職者には処遇改善加算が支払われる?支給別に解説
処遇改善加算を受け取るに際し、「退職者も対象なのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、処遇改善加算の支給条件について解説いたします。ぜひ参考にしてください。
毎月支給されている場合
処遇改善加算が毎月支給されている場合、最終在籍日によって処遇改善加算の対象が決まります。例えば、3月末まで働いていた場合を考えてみましょう。給与日に合わせた支払いサイクルは次の通りです。
- 末日締め翌月払いの場合
- 3月末に退職・4月の給与に処遇改善加算が含まれる
- 15日締めの25日払いだった場合
- 3月16日から末日までの勤務分の処遇改善加算は4月25日に支払われる
末日まで在籍していれば、どのような給与サイクルでも処遇改善加算を受け取ることが可能です。
一時金やボーナスで支給されている場合
処遇改善加算を一時金やボーナスで支給している施設の場合、支給確定日まで在籍していたかどうかで決まります。事業所には介護職員処遇改善計画書があり、「〇月〇日までに在籍している者に支給する」との規定があります。4月まで勤務している方が対象であれば、4月末まで勤務を続ける必要があります。
退職者は、処遇改善一時金の支給確定日を把握しておくことが重要です。
処遇改善加算を支払われないと言われた際の対処法
退職を伝えた際に事業所から「処遇改善加算を支払うのは難しい」と言われたらどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、3つの対処法を紹介します。具体的には以下のとおりです。
- 介護職員処遇改善計画書を公開してもらう
- 労働基準監督署に相談する
- 弁護士に相談する
複数の対処法を知っておくことで、問題が起きてもスムーズに対応できます。
介護職員処遇改善計画書を公開してもらう
介護職員処遇改善計画書は、処遇改善加算を算定する際に必要な書類です。加算額や算定要件を明確にする目的で作られているため、職員も処遇改善計画書を確認できます。
上長に情報を公開してもらい、処遇改善加算がルール通りに支払われているかをチェックする必要があります。
気になる点があれば質問や確認をしましょう。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は管轄内の企業が労働に関する法令を守り、運営されているかを監督する機関です。処遇改善加算はすべての介護職員に支払う義務があるため、介護職員処遇改善計画書のルールに沿った退職であれば支給されます。
退職日に問題がないのにもかかわらず、支払いを拒否されたら労働基準監督署に相談するのがおすすめです。
給与明細など証拠があると、労働基準監督署もスムーズに調査できます。
弁護士に相談する
法的な観点からアドバイスを得るために、弁護士に相談するのも1つの手段です。労働や法律の専門家に相談することで解決する場合もあります。近年ではインターネットで相談に乗るサービスも増えているため、高額な弁護士相談料を支払う必要がありません。
法令に関する専門性の高い助言を受けたい方にはおすすめです。
処遇改善加算に関するよくある問題
処遇改善加算のトラブルは、退職時以外でも起こり得ます。具体的には以下のとおりです。
- 未払いになっている
- 他の職員と金額に差がある
それぞれ解説します。
未払いになっている
処遇改善加算に関するトラブルで多いのは未払いの問題です。処遇改善金の支給方法は事業所で決められるため実態がわかりません。
「管理者にピンハネされているのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。処遇改善加算の金額に不安を感じたら就業規則を確認しましょう。
労働基準法89条では、賃金の決定事項を記載しなくてはいけないと義務付けられています。
第89条
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項を記載する
e-GOV法令検索|厚生労働省
未払いになっている場合は就業規則を確認し、処遇改善加算の支給方法を確認する必要があります。
他の職員と金額に差がある
処遇改善加算の割り振りは施設に任されているため、勤続年数や保有資格によって支給額は変動します。そのため、残念ながら他の職員と差が生まれることも少なくありません。
職員同士で給与の話をした際、周りの人と金額に差を感じることもあるでしょう。「これだけしか支払われないの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
処遇改善加算のトラブルに対する対処法
処遇改善加算のトラブルに対する対処法は以下のとおりです。
- 事業所が加算を取得しているか確認する
- 自分が対象者なのか知る
- 配分ルールを確認する
処遇改善加算が未払いになっているか気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
事業所が加算を取得しているか確認する
事業所が処遇改善加算を取得していない場合、手当は支給されません。事業所の支給状態を確認する方法は以下の通りです。
- 就業規則を確認する
- 直接聞く
就業規則には、処遇改善加算の金額を記載する必要があります。そのため、万が一支給額に不満を感じた場合、就業規則を確認することが1つの手段です。
隠したい事実がなければ、上長に直接聞けば正直に説明してくれるでしょう。
自分が対象者なのか知る
直接介護をしていない職員は処遇改善手当の対象外なので、管理者や生活相談員、ケアマネジャーなどは受け取れません。また、事業所の形態も支給対象に影響します。厚生労働省が定めている、支給対象外の事業所は以下の通りです。
- 訪問看護
- 防訪問リハビリテーション
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 居宅療養管理指導
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
介護予防に関するサービスを提供している場合は支給対象外です。
処遇改善加算を受け取れる対象の職員や事業所かどうかを確認しておきましょう。
配分ルールを確認する
2024年に処遇改善加算は変更され、処遇改善加算の配分ルールが見直されました。
「経験・技能のある介護職員」は月額8万円、または役職者を除く全産業平均水準(年収440万円)を設定すること
「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」より処遇改善額を高く設定すること
「その他の職種」は「その他の介護職員」の処遇改善額の2分の1を上回ってはならない
「経験・技能のある介護職員」とは、勤続10年以上の介護福祉士が基本ですが、判断は事業所に委ねられています。そのため、処遇改善手当は、雇用形態や取得している資格によって配分される金額が変わります。
よくある質問
退職者に関する処遇改善加算の質問は以下のとおりです。
- 退職予定者に処遇改善加算を支払わないのは違法?
- 処遇改善加算がもらえなくなる可能性は?
- 処遇改善加算がピンハネされることはある?
それぞれ解説します。
退職予定者に処遇改善加算を支払わないのは違法?
処遇改善加算は、すべての介護職員に支払うことを義務付けています。そのため、退職予定者に処遇改善加算を支払わないのは原則違法です。
退職時期と事業所の支払いルールが異ならない限り、処遇改善加算は受け取れます。
処遇改善加算がもらえなくなる可能性は?
処遇改善手当は今後もらえなくなる可能性があります。処遇改善加算の財源は100%公費でしたが、2022年10月からは介護保険の財源からも賄われるようになりました。
介護保険財政がひっ迫したり利用者負担額が増加したりすると、廃止や制度変更も考えられます。
介護業界の動向をチェックしておく必要があります。
処遇改善加算がピンハネされることはある?
処遇改善手当は、すべての介護職員に支払わなくてはいけないため、ピンハネされることは基本的にないでしょう。しかし、処遇改善加算の仕組みを理解している介護職は多くありません。2018年、鳥取県の有料老人ホームで、従業員約20人分の処遇改善手当が未払いだった事例があります。
制度面の改良が行われており処遇改善手当の未払いの事態は減っていますが、ピンハネされる可能性は0ではないのが現実です。
退職者でも処遇改善加算を支払われるかは退職日が影響する
処遇改善手当が支払われるタイミングは施設側に委ねられています。ボーナスや一時金で受け取る場合には、退職後に支給されるケースもあるので支払いサイクルは確認しておきましょう。
万が一「退職予定者には手当を支払えない」と言われた際の相談先も考えておくことをおすすめします。
まずは事業者側に介護職員処遇改善計画書を公開してもらい、ルール通りに手当を支払っているか確認します。上長から公開を拒否されたら、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。