パートも対象!処遇改善手当でいくら貰えるのか解説
介護の現場で勤務されているなら、「処遇改善手当」という制度があるということはご存じの方も多いでしょう。
しかし、その対象者について、また金額はいくらなのかという詳細については意外に周知されていません。
介護職は正社員からパート職員まで雇用形態が広いですが、一番給与が低いパートの方の手当はいくらなのでしょうか?
処遇改善手当とは?
介護職の手当制度として、「処遇改善加算」と「特定処遇改善加算」の二つがあります
この制度によってもらえる手当を「処遇改善手当」と言います。この二つの違いや制度の詳しい内容を解説していきましょう。
介護職の処遇を改善するための手当
「処遇改善手当」とは、介護職の処遇を改善するために導入された制度です。
この手当は、処遇改善加算を介護サービス利用料に上乗せし、そこで得られた利益が介護職員に還元するという形で支給されます。
この制度の背景にあるのは、介護職の給与額が他の業種に比べて低いという介護業界全体の課題です。業務量に対しての給与額の低さに不満を感じる介護職員も多く、介護職員の離職率が高いことが社会問題となっており、少子高齢化社会化が進む日本において、介護職員の人材確保は非常に重要です。
処遇改善手当を導入することで、介護職の給与面の処遇を改善し、人材不足問題解消に繋げようと多くの事業所で導入されているのです。
パート職員も対象
処遇改善手当の対象者は、直接介護に携わる職員とされているので、雇用形態は関係なく支給されます。
そのため、介護に携わる業務するパート職員は対象者です。正社員だけが支給される手当ではありませんので、パート職員も受け取る権利があります。
一方で、厚生労働省が定める対象者は「介護従事者として勤務する者」とされており、他の職種のみに従事している者は対象外です。例えば、介護事業所に勤務する栄養士や理学療法士が対象外です。
また、直接介護に携わらない管理者やケアマネージャーも対象外です。しかし、介護現場では兼務している場合が多く、管理職が直接介護ケアするというように介護に携わる業務を兼任している場合は処遇改善手当の支給対象になります。
自治体への実績報告が必須
処遇改善加算を取得している事業所は、各自治体への実績報告書の提出が義務付けられています。そのため、職員に還元したという実績を必ず、報告しなければなりません。
万が一、処遇改善加算の取得によって得たお金を職員へ支給せずに、他の目的で使用すると違反となってしまいます。その場合、事業所は介護報酬の返還や一部効力の停止などの行政処分を受けることになります。
他の目的で支給金を使用することを防止するためにも、実績報告が必要です。
報告義務を怠った場合も、処分を受けることになるため、期間内の提出が求められます。提出期間や方法などは各自治体のホームページや窓口で確認しておきましょう!
処遇改善手当の金額
処遇改善加算は設定された要件によって、加算率が5つの区分に分けられています。
加算1から加算5まであり、それぞれで職員1人あたりの月額支給額が異なります。職員1人あたり下記の相当の金額が受け取れるとあります。
- 加算1:月額37,000円
- 加算2:月額27,000円
- 加算3:月額15,000円
- 加算4:月額13,500円
- 加算5:月額12,000円
ただし、支給金額や方法は事業所に一任されているため、加算率ごとの支給額がそのまま反映されるわけではありません。
加算1から5までどのように区分されるかというと、キャリアパス要件や職場環境などの要件によって申請できる区分が変わります。
キャリアパス要件も3つに区分され、
- 賃金体系の整備
- 研修の実施または機会の設置
- 昇級の仕組みの設置
などが必要となります。
賃金改善以外にも職場環境の改善に関する取り組みも要件に含まれているため、処遇改善加算を取得することで介護職の待遇が大幅に改善されることが期待できます。
処遇改善手当の支給方法
各事業所に支給形式も委ねられているため、事業所によってどのような方法で支給されるかは異なります。
こちらのケースが考えられます。
- 毎月の給与にプラスして支給されるケース
- 賞与や一時金として支給されるケース
一番多いパターンとしては、「定期昇給を実施」が7割以上を占めているようです。
処遇改善を実施する本来の目的としては、賃金水準の引き上げです。現状としては、「給与表を改定して賃金水準を引き上げた」事業所は、約1割となっています。
事業所によって、支給方法が異なるため、全ての介護職が同じ金額で支給されているとは限りません。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf
特定処遇改善加算との違い
介護職に関する手当は、処遇改善手当の他に「特定処遇改善加算」が導入されています。その違いは、手当の対象者です。
- 処遇改善手当:全ての介護職員が支給対象者
- 特定処遇改善加算:勤続年数10年以上の介護福祉士が支給対象者
対象者に対して、月額平均8万円相当の処遇改善が実施される制度です。
分配ルールとしては、まず全ての介護職員を3つの区分に分けます。
- 経験・技能のある介護職員
- その他の介護職員
- その他の職員
に区分し、平均賃上げ額は「経験・技能のある介護職員」が一番高くなるように設置しなければなりません。この「経験・技能のある介護職員」が、基本的には勤続年数10年以上の介護福祉士となります。
ただし、配分に関する詳細は事業所に委ねられているので、経験・技能のある介護職員を区分する方法は事業所内で自由に設置できます。
特定処遇改善加算を導入すると、長年介護現場で勤務する職員には、処遇改善手当に加えて手当が支給されることになります。
パート職員の手当はいくらなのか
処遇改善手当はパート職員も対象者であるとご紹介しました。
では、実際パート職員はいくら支給されるのか、具体的な数字をもとに見てみましょう。
支給額は定められていない
実は、処遇改善手当の支給額の規定はありません。
事業所における手当の分配ルールを決定は、行政ではなく、その事業者に託されているからです。介護事業所によって支給額がことなるのは、このためです。
事業者の裁量により、正社員やパート職員という雇用形態によって、または勤続年数によって支給額に差をつけている場合も!
パート職員の平均給与額は1年間で5,750円増となっている
支給額は事業所によって異なりますが、全体で見ると、処遇改善手当により介護パート職員の平均給与額が増加しています。
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、
- 介護職員(時給・非常勤)の平均給与額は1年間で5,750円増!
- 同条件の平均基本給額は20円増!
つまり、処遇改善手当によりパート職員の給与面での処遇が改善されているという結果になります。同時に、基本給だけでは介護職員の処遇を改善されることは、厳しいということが分かります。
同じ介護パート職員でも、届出を出している事業所で勤務している場合とそうでない場合は、確実に給与面での処遇に差が出ていることは明らかです。
ほとんどの事業所で手当支給されるが、内6.5%は届出をしていない
パート職員の処遇が改善される処遇改善手当ですが、全介護事業所で支給されているわけではありません。
上記の厚生労働省の調査結果の中の「介護職員処遇改善加算の取得状況について」によると、
- 届出を出している事業所:93.5%
- 届出を出していない事業所:6.5%
処遇改善手当は、ほとんどの事業所で支給され、給与面での処遇が改善されています。
2022年2月からの賃上げ政策でさらに処遇改善が実現
処遇改善加算に加えて、2022年2月から岸田内閣の賃上げ政策が実施されています。
こちらでは、賃上げ政策の概要や対象となる事業所、職種についてご紹介します。
画像引用:岸田政権の動きを追う
月額9,000円の賃上げが実現
今回の賃上げ政策により、職員1人あたり月額9,000円の手当が支給されることになりました。
介護・福祉職の処遇改善が目的とされており、令和4年2月から既に開始されています。
令和4年2月から9月の間は、国費による交付が行われ、10月以降は報酬改定により同様の措置で継続予定です。
対象となる職員は、雇用形態問わず、パートやアルバイト職員も該当します。
ただし、全ての職員が月額9,000円アップするというわけではありません。
分配範囲や方法は、事業所に一任されているため、事業所によって金額が異なります。ですが、「交付金の2/3以上を賃金のベースアップ等に充てること」が要件として定められているので、確実に給与アップに繋がる制度となっています。
処遇改善加算を取得している事業所が対象
交付金の要件として、加算1から加算3のいずれかを取得していることが定められています。
処遇改善加算の支給金額プラス、今回の賃上げが実施されるため、これまでの手当に加えてさらに収入アップが実現します。
現在、ほとんどの事業所が加算の取得を行なっているため、多くの介護職が賃上げの対象となるでしょう。
処遇改善加算や今回の政策は、介護・福祉職の人手不足問題を解消すべく創設されています。
賃上げによって、処遇・待遇改善を試み、離職防止や定着率アップを目指しています!
対象外の職種も受給できる可能性がある
交付金の対象となる職種は、介護や福祉に関わる職種になります。
具体的な対象者こちらです。
- 直接介護ケアする介護職
- 保育士
- 幼稚園教諭
- コロナ医療などを担う医療機関の看護職員
ただし、事業所の判断によって対象外の職種も交付金を受給できる可能性があります。
なぜかというと事業所の判断で、対象外の職員への支給も認められているからです。
対象外の職員に対しても分配することは可能ですが、支給する職員を増やすからといって交付金の金額が増えるわけではありません。
介護・福祉サービスの種類や対象となる職員数に応じて、交付金の金額が決定されます。
よって、支給する職員の範囲を広げることも可能ですが、その分、本来の対象者である職員の支給額は減ってしまうことになります。
介護パート職員が処遇改善手当を受けるために必要なこと
処遇改善手当の届出していない事業所が6.5%存在することをご紹介しました。
日本の全ての介護職員が手当を支給されているわけではありません。
ここからは、パート職員が処遇改善手当を受けるために必要なことをお伝えします。
職場の就業規則を確認する
職場の就業規則に処遇改善手当についての記載があるか確認しましょう。
処遇改善手当を取得している事業所の場合、基本給や賞与とは別に手当を支給していることが分かるように、就業規則に記載。
就業規則は、本来は自由に閲覧できるものであるため、職員1人ひとりに配布していたり、確認しやすい場所に掲示されているはずです。
意外と隅々まで確認したことがないという方も多いでしょう。これを機に、処遇改善に関する内容も確認してみてください。
毎月の給与明細を確認する
処遇改善手当の金額を簡単に確認できる方法は、毎月の給与明細になります。
処遇改善加算の取得を行なっている事業所であれば、基本給や手当の他に、「処遇改善加算」という項目が給与明細に記載されているはずです。
基本給や各種手当に処遇改善手当を含んではいけないことになっています。
万が一、支給対象であるにもかかわらず、支給されていない場合は、不正請求に該当します。
毎月チェックする習慣がないという方も、給与明細で処遇改善手当の項目を確認してみましょう!
管理者・事業者に尋ねてみる
処遇改善加算は、職員への周知が必須となっています。
そのため、管理者や事業者に処遇改善加算について尋ねてみることも大切です。
事業者側は、周知する義務がありますので、対象者や支給額など気になる点を尋ねてみましょう!
扶養内勤務の場合は確認が必要
処遇改善加算は、雇用形態問わずパートやアルバイト職員も対象となります。
扶養範囲内で勤務する職員も対象となりますが、扶養内勤務の場合、処遇改善手当により扶養の枠を超えてしまう可能性があります。そのため、扶養内勤務の場合は職場への確認が必要です。
事業者は、扶養内勤務の職員が処遇改善手当により扶養の枠を超えてしまわないように、勤務時間を調整しなければなりません。
扶養を超えてしまうと、税金の支払いが必要になる可能性があるので、該当する職員は事業者へ確認しておく必要があります。
処遇改善加算を受けている事業所に転職するのも有り
自身が処遇改善手当を支給されていない事業所に所属している場合、処遇改善加算を受けている事業所への転職という方法もおすすめ!
全介護事業所のうち、6.5%は未だ届出をしておらず、自身が勤務する事業所が該当する場合もあります。厚生労働省の調査による「加算の取得をしない理由」として、算定要件を達成できない割合が25.4%となっており、 算定要件が満たされるまでに、時間が掛かってしまう可能性も考えられます。
処遇改善手当は、全介護職員の処遇が改善されるために導入された制度です。同じ介護職でも、事業所によって手当を受けられるケースとそうでないケースが生じています。
また、事業所によって、手当を支給する職員の範囲や支給額のルールは異なりますので、条件の合う職場へ転職することで収入アップが実現します。処遇改善加算を取得している事業所は、特定処遇改善加算や賃上げ政策による交付金も受給している可能性も高いと考えられます。
算定要件を満たしている、処遇改善手当が支給されている事業所への転職は、当然の権利であると言えます。
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処遇改善加算でパート職員の年収が5,750円アップ!
人材確保のために設けられた「処遇改善手当」。正社員だけでなく、パートも手当の支給対象になることが分かりました。実際に介護職員(時給・非常勤)の平均給与額を見ると、1年間で5,750円増という報告がされています。
介護職とは体力的にも精神的にもかなり大変なお仕事ですので、処遇改善手当が全ての職員に支給されるのは当然です。
正社員やパート問わず介護の現場で勤務されている方は、この制度について今一度確認をしてみてください。