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看護師として起業する方法10選!開業の流れや方法、支援を解説
看護師の働き方として、病院やクリニック、施設などの医療機関や学校、企業などでお勤めされている人が多いでしょう。
実は看護師として起業や独立するという方法もあります。看護師の資格を持ち、さらに専門知識や業務経験がある人は、それらを活かした起業のアイデアをすでに考えてらっしゃる方もいるかもしれません。
看護師が起業する手段はたくさん種類があり、人気のある訪問看護ステーションの施設の開設など看護師や保健師でなければできないものもあります。
資格にこだわらず、経験や知識を活かして、コミュニティカフェや美容サロンの経営、ツアーナースや応援ナース、在宅で働ける医療Webライターなどで活躍されている方もいて、選択肢はたくさんあります。
起業するメリットやデメリット、事業ごとの特徴や必要な開業準備まで分かりやすく解説しています。看護師・准看護師で起業したいと思っている方はぜひ参考にしてください。
看護師として施設を立ち上げて起業する方法5選
訪問看護ステーションやデイサービス、グループホームなどでお勤めされた経験があれば、「いつかは自分で経営したい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。高齢化に伴い、在宅医療や介護施設の需要は高まっています。
まずは、施設を立ち上げて多くの利用者にサービスを提供したいという方に、看護師として開業できる施設をご紹介します。
施設や事業所の立ち上げには、経営の知識やノウハウ、資金や物件の契約、人材の確保などやるべきことがたくさんがありますが、多くの利用者のお役に立つことができるためやりがいを感じやすいでしょう。
働いたことがある施設なら、今までの経験を活かしてより自分の理想のサービスを提供しやすくなります。
訪問看護ステーションの開設
看護師の起業と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、「訪問看護ステーションの設立」ではないでしょうか。
自宅へ訪問するというサービス形態から利用者の意思を尊重しやすい環境にあり、また長期間に渡って関わることが多いでしょう。そのため、利用者に寄り添った看護を提供したいという方はやりがいを感じやすい仕事と言えます。
他の訪問看護ステーションと差別化をはかり利用者を獲得するには、独自の強みを活かしたサービスを提供できると良いでしょう。精神看護や小児看護など一部の看護領域に特化、認定看護師の在籍、24時間体制など、特色を活かしたサービスを提供している訪問看護ステーションもあります。
今までの自身の経験などを活かし、どんな特色のサービスを提供したいか描いて方針を決めると良いでしょう。訪問看護ステーションで働いている方は、疾患や治療、ケア方法など様々な事例を経験しておくと、実務はもちろん事業を決める上で役立ちます。
また開業にあたり、法人設立、事務所の設置、看護職員2.5人以上といった基準を満たす必要があることも覚えておいてください。
ディサービスの立ち上げ
介護を必要とする利用者に対し、できるだけ自立した生活を行えるように、生活の支援や機能訓練を行います。
主に食事介助や排泄・入浴介助、服薬介助やレクリエーションなど日常生活の支援を行い、利用者一人一人ができることを見極めて訓練や補助を行います。
利用者ができるようになることが増えることや、できるだけ長く心身の機能を維持することで、日々の生活を過ごしやすくなるでしょう。利用者やご家族から直接感謝の言葉をいただけることが多い業種です。
食堂、トイレ、お風呂、機能訓練室などを行うために、基準に沿った広さを確保できる施設が必要となります。また、利用者の定員により、管理者、看護職員、介護職員、生活相談員などの各スタッフの必要人数が定められています。
国の基準に加えて、自治体でのサービス基準が定められていることもあります。
グループホームやサ高住の経営
施設を開業するのであれば、看護師としての特色を出せる施設が良いでしょう。デイサービス以外にも、グループホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。
グループホームは、「認知症対応共同生活介護」と呼ばれ、認知症の方のケアつきの住宅です。少人数のグループで共同生活を送る入居者に対して、入浴や排泄などの介護や、食事や洗濯などの家事など日常生活のサポートを行います。医療連携体制加算を算定する場合は看護師の配置が必要です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者が自立した生活をできるようにサポートする施設のことです。介護度の低い自分の身の回りのことは自分でできる方が入居し、一般の住宅と変わらないような自由度の高い生活を送ることができます。
グループホームやサ高住の人員基準は、それぞれの施設ごとに異なりますが、医療職や介護職のスタッフが必要です。
必ずしも看護師でなければいけないわけですが、たとえば看護師が生活相談を担当する、看護師が常駐しているなどの特色を出すことができ、サービス品質の向上や入居率の向上につながるでしょう。
助産院の開設
看護師免許以外に助産師免許や経験を持つ方は、助産院を開設することもできます。助産院の開設には、助産師として5年以上かつ200件以上の分娩件数の経験が必要です。
妊娠や出産は人生で何度も経験できない貴重な機会で、母子ともに初めてのことだらけです。生命の誕生の瞬間に立ち会うことは、他の仕事とは異なる魅力ややりがい、責任があるでしょう。
特に近年は、出産に当たって、家族に立ち会って欲しい、入院中に好きな物を食べる、音楽をかけるなどのバースプラン(出産計画)を立てたいという妊婦もいらっしゃるでしょう。院内の雰囲気づくりや、呼吸法や出産の姿勢など、コンセプトや需要に合わせて自身でデザインできます。
そのため、病院勤めの助産師をしているときよりも、より妊婦の希望に沿ったサービスを提供できる可能性があります。
分娩を取り扱う場合は正常分娩のみで、嘱託医師を確保する必要があります。分娩を扱わず、母乳のケアや親子教室、育児の相談などを専門に行う助産院もあります。
居宅介護支援事業所の開設
ケアマネージャー(介護支援専門員)の資格があれば居宅介護支援事業所の開設も可能です。
居宅介護支援事業所では、介護保険法にもとづき、要介護の認定を受けた方に対して、ケアプランの作成や介護相談、介護保険に関する申請の代行を行っており、利用者に応じてケアマネージャーの人数が決められています。
訪問看護の利用者のなかには、介護保険を使っている方もいます。そのため、訪問看護ステーションと居宅介護支援事業を併設して、連携をとっている事業もあるようです。
ケアマネージャーと訪問看護師、2つの経験があれば、どのようなサービスが利用できるかよく分かり、調整役として不可欠な存在になるでしょう。
看護師資格を使って個人で独立する方法3選
施設を経営する以外にも看護師の資格を使って個人で独立する方法もあります。人の採用や、事務所の準備などをせずに始められるものもあるため、施設を立ち上げる方法に比べ、小規模で始めることもできます。
場所や時間にとらわれずに働きたい方、いきなり大きなリスクは取れないという方にも向いているでしょう。
フリーランス看護師(健診スタッフやツアーナース)
医療機関や企業に所属せず、個人事業主として活躍する看護師もいます。
業務内容は様々で、旅行やツアー中の健康管理、学校や企業の定期検診などの応援などがあります。保健師の資格や実務経験がある場合は、保健所から受注して新生児の訪問などを行う方もいらっしゃるようです。
比較的、時間や場所を選んで働きやすい仕事が多いです。仕事を受けるためには、応援ナースのサイトに登録しておくと良いでしょう。
毎回初めての場所に出向くこともあり、いろんな人に出会い新しい経験を積むこともあります。そのため、初対面のスタッフに質問し連携しながら、その施設や委託元のやり方に適応して仕事ができる方は向いていると言えるでしょう。
ツアーナースの仕事は、課外活動や旅行が多い季節と少ない季節があるため不定期であることが多いです。一緒にツアーに参加して、参加者との思い出ができるなど貴重な経験もあるでしょう。
派遣先にもよりますが、一度の勤務で看護師は自分しかいないということも少なくありません。初めて会った方の急変に対して、自身でアセスメントや処置を行う必要があり、十分な知識や経験が必要です。
コンサルタント・コミュニティカフェ
看護の現場で培ってきた傾聴力やコミュニケーション力を活かして、健康や介護、子育て、心のケアについての相談など、対話を通して問題解決を行うカウンセラーやコンサルタントになるというのはいかがでしょうか。
気軽に相談でき、同じ悩みを持つ人や同じ状態の方が集まる形式であれば参加者同士で交流できるといったメリットがあります。
オンラインで行うこともあれば、カフェやレンタルスペースなどに出向いて行う場合、自身でコミュニティカフェを開業する方法もあります。ターゲット層によって相談しやすい時間帯というものは異なりますが、比較的自分で場所や時間を選んで働きやすいと言えます。
今までの自身の経験がたくさんあれば、その体験を通して相談に乗れることも増えます。例えば、「子育て」を相談内容に掲げる場合は、自分自身が子育てをした経験や小児科や保育園の勤務経験が活きるでしょう。
さまざまな領域や職場で経験を積んできた方なら、看護師を対象にしてキャリア相談や就職支援をするという方法もあります。すでに起業に成功した経験があれば、起業や独立のコンサルティングもできるでしょう。
利用者が増えれば、一対一の対面形式だけでなく、イベントや講演会などでより多くの方の役に立つことができるでしょう。ネットを活用して、相談されやすい内容や役立つノウハウをコンテンツとして提供することもできます。
ただし、看護師の資格だけでどんな相談でも受けられるわけではありません。
健康診断の結果をもとに、生活習慣病の予防を目的として行う特定保健指導は、保健師の資格が必要です。人材紹介業を行う場合は職業紹介責任者の資格や、派遣会社の設立には派遣元責任者の資格など他の要件が必要となります。
相談を受ける内容を決める際は、法律上どの仕事として位置付けられるのか、必要な条件を確認しましょう。
医療分野のWebライター
自宅など働く場所を選ばずに仕事したいと考える方なら、Webライターもおすすめです。
一人で取り組むことができ、クラウドソーシングなど業務が受注できるようなサイトに登録して始めるのが一般的でしょう。これまでの知識を活かした看護や医療、保健、福祉などの分野はもちろん、情報収集が得意であれば幅広いジャンルでライター業を行うことも可能です。
ネット上にアップされると多数の方が閲覧し、文字を通して問題解決を行うため、臨床現場などでの対面での看護とは違った魅力があります。
書くことが得意な方やコツコツと仕事をするのが好きな方は向いているでしょう。全く経験がなければ、ブログを書いてみるところから始めてもいいかもしれません。
読者が何を知りたいのか、リサーチ力や情報を正確に理解して整理する能力などが必要になります。インタビューを行って記事を作成する仕事であれば、培ってきたコミュニケーション力が活きるでしょう。
書く分野にもよりますが、薬機法や景品表示法、広告規制などを学ぶ必要があります。
看護系以外の起業や独立するアイディア3選
看護や医療の以外の業界でも、今までの知識や経験を活かして起業するなら選択肢はさらに広がります。患者に寄り沿った看護をしてきた方なら、エステサロンやフィットネスジムでも顧客へのヒアリング力が活きるでしょう。
サービス内容はもちろん、ターゲット層や開業場所、規模や店舗の名前や料金形態も自分で決めることができます。看護の分野ではないけれど、得意なことやチャレンジしてみたいことがある方に向いています。
美容サロンの開業
看護師の起業の方法として人気があるのがエステサロンの開業で、美容に限らずリラックスやリフレッシュなどサービスの目的も様々です。
美容サロンでは、肌トラブルや体型、ムダ毛などあらゆる悩みを施術によって解決していきます。自分自身も美意識が高い方や、人を美しくすることに喜びを感じる方が向いているでしょう。
アロマセラピーを提供するサロンであれば、協会や連盟の認定資格を取得すると、一定の知識やスキルのある証明になるため、集客しやすくなるでしょう。メディカルアロマセラピストになってより専門性を発揮する道もあります。
施術内容を決める際や機器を導入する際は、医行為にあたらないかなど関連する法律を確認する必要があります。
また、新しい施術は話題性も高く顧客から注目を得やすくなる一方で、長年行われてきた施術と異なり、効果や健康被害について未知な部分もあります。話題のハイフは医行為にあたり、2024年現在、看護師は医師の監視下でのみ施術が行えるようです。
ただし、のちのち法律が規制される可能性もあるため、導入する施術を選びは慎重に行う必要があります。
フィットネスジムの開業
フィットネスジムを開業するのであれば、運動だけでなく健康管理を合わせた指導ができるでしょう。
生活習慣病や認知症などの疾患予防や、高齢者の身体の機能維持・フットケアをメインとしたジムなど、看護師としての知識や経験を活かしたコンセプトにすると差別化がはかりやすいかもしれません。栄養士や理学療法などの医療職を採用してより、専門的な指導をするという方法もあります。
一方で、トレーニングのメニューを組む、指導を行うには、トレーナーやインストラクターとしての知識や経験が必要です。
看護師とは別にジムに勤めて経験や実績を積むと良いでしょう。トレーナーを採用する、プログラムを外注するという方法もあります。
物件やトレーニングマシーンなどの設備といった初期費用が必要です。
顧客の獲得が必要な点は美容サロンなどと変わりませんが、ジムは月額会員制が一般的であるため、単発で使用するサービスを提供するよりも安定した売上を立てやすくなります。
オンラインショップの開設
健康グッズや運動用品、化粧品などを取り扱うオンラインショップを開設するという方法もあります。
運動や栄養など健康に関連した知識が豊富であれば、高品質な商品を探す上で役に立つかもしれません。「こんな商品があれば良いのに」と自身が感じたことやお客様の声をきっかけに自社製品を開発するケースもあります。
看護師として日々患者に向き合い丁寧なケアを行ってきた方なら、発送時の梱包や、お礼のメッセージなどきめ細やかな対応も得意でしょう。
注文後すぐに発送を行うためには、商品をあらかじめ準備する場所や資金が必要です。健康食品や衛生材料は、賞味期限や使用期限があるため、何を取り扱うかの選定が大切です。
小さく始めるなら、ショップを立ち上げる前に、SNSを利用して案件を受けてアンバサダーとして商品を紹介するという方法もあります。どうやったら物が買いたくなるのか、マーケティングのコツを掴むのにも良いでしょう。
起業するメリットやデメリット
看護師として起業する方法をいくつか挙げたところで、ぜひやってみたいという方もいれば、どんなリスクがあるのか、失敗しないか不安という方もいらっしゃるでしょう。ここでは、起業する際のメリットとデメリットについて紹介します。
メリット
起業するメリットはたくさんあります。第一にあげられるのは、自分でビジョンやサービスを決めて、やりたいことを実現できることではないでしょうか。今までの経験で解決したいと思った社会課題や、取り組みたいサービスがあっても勤め先では施設の方針や役割によってできないこともあるでしょう。
どこの地域で開業するか、どんな人にどんなサービスを提供するか、もちろん需要があるか調べる必要はありますが、自分で決めることができます。
経営者として、何事も自分で決断して責任を取る必要がありますが、自ら勉強して情報を取れる人、状況を把握できる人、営業や事務仕事、お金のことなど初めてのことにも臆せず取り組める活動的な人は向いているでしょう。
自分一人で働くか、誰かと一緒に立ち上げるのか、人を採用するのかも考えます。採用したいような優秀な人材が来るとは限りませんが、経営者として自ら人事を行い、人を育成する環境を作ることもできます。
また、「ぜひ働きたい」と思えるような魅力的な職場にするように取りむこともできます。
自社の企業理念に合うスタッフとともに働くことができると事業が安定し、より加速しやすくなります。
スタッフだけでなく、利用者や家族はもちろん、医療機関や介護施設などと良好な人間関係を築く必要がありますが、人とのつながりや交流は自分自身にとってもかけがえのない財産になるでしょう。
また、事業の内容によって、働く場所や時間帯も自分で選びます。
立ち上げ時は忙しいことが多いでしょう。しかし、事業の安定とともに、理想の場所や時間など働き方を選べるような業種もあります。事業の規模に合わせて、売上があがれば自分の収入を上げることもできます。
デメリット
メリットだけをみて、安易に始めるのはよくありません。デメリットもきちんと知った上でできる対策などもしながら、行動に移していくのが良いでしょう。
まず、事業を始めるには設備や人材などそれぞれに必要なものがあり、規模が大きくなればなるほど、必要な資金も増え経済的なリスクも大きくなります。
利用者や顧客を獲得が必須となるサービスがほとんどで、営業力が必要になります。人材の確保や法律や税金への理解、各種手続きも行っていきます。
事業をうまくいかせるためには、経営の知識を身につけなければなりません。身につけてきた知識とは異なり、今までの常識が通用しないということも多いかもしれません。
起業支援やコンサルティングを行う会社もあるため、お金を払ってアドバイスを受けることも検討すると良いでしょう。
個人事業主の場合は、施設を立ち上げるほどの資金は必要なくとも、固定給ではありません。自分にできる仕事が定期的にあるかは分からず、自分で仕事を取る必要があります。
税金や事業に関する知識だけでなく、看護や医療についても病院のような研修会はありません。個人の場合は自分で外部の研修を受けるなど自己研鑽し、法人の場合は自分以外のスタッフも研修を受けられるように働きかける必要があります。
看護師として起業する種類は?
看護師に限らず、起業する場合は「個人事業主」か「法人設立」のどちらかに該当します。
個人事業主も法人もそれぞれにメリットやデメリットがあります。自身の事業内容や規模に応じて、より適する方を選びましょう。
ここではそれぞれの特徴や違いについてご紹介します。
個人事業主として起業
法人を持たずに、個人で事業を行う場合は個人事業主になります。会社や団体などの組織に雇用されて働いていないため、「フリーランス」と呼ばれることもあります。
事業内容にもよりますが、初期費用をかけずほぼ無料で仕事を始めることもできます。
個人事業主になるためには、所管の税務署に開業届の提出が必要で、事業開始後1か月以内の提出が推奨されています。また、継続した事業の運営を行う必要があり、単発で仕事をした場合は個人事業主には該当しません。
個人の実力で仕事を増やせば収入も増やしやすくなるでしょう。法人よりも金銭的なリスクを抑えて小さく始めることもできます。
事業が小さいうちは、個人事業主の方が法人を設立するよりも節税でき、後から法人化するという方法もあります。
法人を設立する
会社を設立することで「開業看護師」と呼ばれることもあります。登記などが必要になり、10種類程度書類の提出も必要になるなど手続きもややこしくなるため、税理士など専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
もともと、訪問看護ステーションのように法人でないと開業できない場合もあります。
また、個人事業主で始めた場合も、一般的に、課税所得が800万円を超えると、個人で所得税を納めるより法人税として納税した方が、税率負担が小さくなるため、節税のためにも法人化するのが良いと言われています。
法人化して事業が大きくなると、それだけ売上も拡大するでしょう。ただし、事業で得た利益は法人の資産となり、自分自身は役員報酬という形で受け取ることになります。
また、法人化する際に、他社から出資を受けると経営方針を自分で自由に決めることができなくなります。法人化すると、個人の持ち物ではなくなるということを念頭においておきましょう。
開業までにやること
起業を目指す方に向けて、開業までに必要な準備を流れに沿って解説します。詳細は立ち上げる事業によって異なりますが、ここではどの事業でもある程度共通して必要な内容をご紹介します。
開業するには、やるべきことが多いので、「施設や物件」「手続き」「資金」などカテゴリーに分けて整理しながら進めると良いでしょう。
情報収集
どの仕事で起業するとしても情報収集から始めましょう。どんな人に対して、どのような社会課題に対して、どんなことで貢献したいのか考えて、起業の方法を調べます。
経営者向けの本や雑誌などのメディアなどはもちろん、起業支援のセミナーや勉強会、イベントに参加することをおすすめします。専門家や第一線で活躍する経営者からリアルな声を聞くことは非常に参考になり、可能であれば考えている事業についてアドバイスを受けられると良いでしょう。
開業にあたり、必要な資格や経験はあるか、届出や人材、設備は何か、どれくらいの資金が必要かなどを確認して現実的かを検討しましょう。
どこの地域で需要が高そうか、集客ができて売上が立ちそうかなども重要なポイントです。同じ地域に似たようなサービスが乱立していないか競合となる会社がないか調査をしておきましょう。
実際に独立している人から話を聞くとリアルな情報が聞けるかもしれません。
規模が大きなビジネスをする場合は、専門家に相談するのも良いでしょう。
ビジネスプランを決める
情報収集を終えて事業について描けたら、企業理念や概要、具体的なビシネスプランを決めます。なぜ、この事業を取り組みたいと考えているのか理由を明確にして言語化すると良いでしょう。
ターゲット層を決めて、提供するサービスや料金を設定します。サービス内容は、自身やスタッフの専門とする分野の経験などから独自性を見出して差別化をはかりましょう。
また、サービスを提供する利用者や顧客をどのようにして獲得するかの戦略も必要です。
施設の規模や、人員の計画を決め、必要な経費や売上の予測を立てて、事業計画書を作成します。
資金調達
必要となる資金を作る必要があります。
一般的に、訪問看護ステーションの立ち上げには500万円〜1,000万円、デイサービスの開業に必要な資金は1,500万円程度と言われています。
美容サロンなら、自宅で開業する場合は30万円〜、賃貸物件を契約する場合は300〜600万円程度かかると言われており、規模やサービスの内容によっても異なります。また開業する地域によっても変わってくるでしょう。
必ずしも経営がうまくいくとは限りません。軌道にのるには時間がかかるものです。
売上が全く上がらない場合でも、業種によっては設備費や人件費、税金が毎月かかるため、年間で計画を立て余裕を持った資金準備を行いましょう。
その他、採用費や研修など育成にかかる費用など不定期で必要なものもあります。施設や設備も数年〜数十年で、改修や入れ替えも必要となるでしょう。自己資金とは別に融資を受けた場合は返済の計画を立てます。
人材の確保
必要な人員を揃えることはどの業態でも欠かせないことです。
特に、訪問看護ステーションやデイサービスなど人員の基準を満たす必要がある場合は、人員が不足すると業務を開始できなくなります。スタッフが足りない場合は、人材紹介会社に求人を出すこともあるでしょう。
例えば、デイサービスでは法律上、管理者と看護職員が兼任できるといった決まりもありますが、その場合、スタッフ一人当たりの負担が増えてしまうことも考えなければなりません。
また、立ち上げた初日にサービスを提供するわけではないため、計画的に行う必要があります。
人材を採用する際は、保有の免許や経験、看護技術など能力だけでなく、就労や学習の意欲が高いかも重要です。企業理念とも照らし合わせて、利用者や家族はもちろん、スタッフや周りの人に与えたいという気持ちがある人が良いでしょう。
新人であれば養成する必要があり研修の計画も不可欠で、全員が同じ品質のサービスを提供できるようなマニュアルや資料も必要です。
経営層に入ってもらうのか、正社員としてフルタイムで採用するのか、契約社員として短時間だけ働いてもらうのか検討します。
開業手続き
事業内容によって法人設立が必要な場合は、その手続きが必要になります。訪問看護ステーションの運営会社を例に考えると、合同会社、NPO法人、医療法人、一般社団法人などがありますが、株式会社の形式をとる事業者が多いようです。
法人を設立した後、訪問看護ステーションやデイサービスを行う場合は、都道府県知事か市長に事業所として指定を受ける必要があります。施設や人員の基準などを満たしたら、申請書類を揃えて指定申請を行います。
法人化し施設の立ち上げをするには、かなり手続きが多くなります。行政書士や税理士に相談すると、よりスムーズに進められて安心でしょう。
個人事業主の場合は、税務署に開業届の提出を行います。
事業内容によっては、事前の申請や追加の届出が必要になることもあります。
開業準備
訪問看護ステーションやデイサービスは、施設基準を満たした事業所が必要です。
どの土地で開設するかは非常に重要で、どの範囲の方にサービスを利用していただくか考えて送迎車などの準備もします。地域密着型のサービスの場合は、市町村の境がどこになるかを確認しておきましょう。
居抜きと呼ばれる、過去に同じ業態を行っていた物件を内装ごと引き継ぐことができれば、コストを抑えられるでしょう。
訪問看護ステーションであれば、事務所にはパソコンや事務机、椅子、コピー機や電話、電子カルテや請求のソフト、ロッカーなどが必要です。合わせて、看護業務で使用するバイタルサインの測定セット、ディスポ物品や衛生材料などを用意します。
デイサービスやグループホームなど利用者が過ごす施設の場合は、さらに必要な物品が増え、専門の卸売業者などを介して納品します。
看護師が起業する上での注意点やポイント
起業に必要な準備を理解したところで、具体的な行動を起こす前に注意点やポイントを抑えておきましょう。
知識がないまま、たくさんのことを両立させながら進めるのは困難です。あらかじめ注意点を知っておくことで、リスクを減らし事業がより成功しやすくなるでしょう。
スモールスタートがリスクを減らす
起業する際、事業が安定するか分からないうちから、大規模に取り組むとリスクもそれだけ大きくなります。
広い物件を用意したり、広くサービスを提供しようとしたりすると、それだけ資金も必要になり、多くの人も巻き込みます。小規模からスタートして、実績を積み少しずつ拡大するなどステップを踏むのが良いでしょう。
たとえば、美容サロンならレンタルサロンや出張サロンを選ぶことや、フィットネスジムであればオンラインで行うことで、物件を持たずに始めることもできます。
ただし、利用者が増加しサービスを拡大するときに、コンセプトの変更や施設の増設が必要になることも多いでしょう。将来的に事業を大きくする予定であれば、立ち上げ時から先を見据えて計画しておく必要があります。
保険や税金について理解を深める
サービス利用者や家族に対して、ケガを負わせてしまったり、物を壊してしまったりすると、賠償責任を負うことになります。
もちろんこのようなことが起きないような運営を心掛けるのが大前提ですが、現場では予期せぬ事後が起きることもあります。事業の継続や、従業員が安心して働くためにも、万が一に備えて、賠償責任保険への加入が必要です。
賠償責任保険は、個人事業主向けのものや法人向けのものがあります。訪問看護財団が提供する保険や、介護サービス事業者賠償責任保険などがあり、事業の特色に合わせて加入すると良いでしょう。
また、事業を立ち上げると、法人税などの税金を納める必要があります。社会福祉法人の場合は、優遇措置が受けられるものもあり、法人や事業の種類によっても異なります。
個人事業主でも自分で健康保険に加入し、確定申告を行い納税する必要があります。法律にのっとって事業を運営するには税金の知識も欠かせません。
支援を受けて起業資金を調達する方法
事業の規模によっては、自己資金だけで立ち上げるのが難しいものもあるでしょう。融資を受けるには、より自身の事業やサービス内容に合うものを選ぶことが大切です。起業の際に受けられる融資や補助金の例は以下の通りです。
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融金庫は財務省所管の会社で、中小企業向けに新事業や事業再生、強化の支援などを行っています。
新しく立ち上げた企業に対しては、新事業育成資金、女性、若者/シニア起業家支援資金、再挑戦支援資金などの制度があるため、より自身の条件や事業に合うものを選びましょう。使い道や返済期間、担保の有無などによって適用される利率が異なります。
新規開業資金は、事業を新たに始めるときや、事業開始をして7年以内を対象とした制度です。融資限度額は7,200万円でうち4,800万円が運用資金で、期間は設備資金20年以内、運転資金は10年以内に返済が必要です。
女性、若者/シニア起業家支関連資金は、新規開業資金と同様の条件に加え、女性や35歳未満もしくは55歳未満の方が対象となります。融資限度額や返済期間については新規開業資金と同様ですが、通常の新規開業資金よりも有利な特別利率が適用されます。
一度廃業歴があり、創業にチャレンジする方には再挑戦支援資金があります。
厚生労働省の助成金制度
厚生労働省でも、いくつか助成金制度があります。
人材確保支援助成金は、人材の確保や従業員の職場定着を目的として、労働環境の向上をはかる事業主に対して、助成する制度です。中小企業団体助成コースや、人事評価改善等助成コースなどがあり、事業に合うものがあれば受給できる可能性があります。
参考:厚生労働省ホームページ「人材確保等支援助成金のご案内」
提供するサービスの質を向上させ、より安全に業務を行うことや、離職を防ぎ従業員に長く活躍してもらうためには、スキルアップのための研修や職業訓練が欠かせません。
人材開発支援助成金(旧「キャリア形成促進助成金」)は、雇用する従業員に対して職業訓練などを実施した場合に、訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金を事業者に対して支援する制度です。
また事業を立ち上げる前に、一度退職や転職をして別の職場で経験を積みたいという方は、退職していた期間や雇用期間などの条件を見たす場合、失業手当や再就職手当もあります。
クラウドファンディング
あなたが取り組む事業において、「使いたい」「応援したい」と思えるような、事業の目的や魅力的なサービス、社会的な意義が必要です。
また、支援者に対して事業立ち上げの進捗の報告や返礼品を準備することもあります。
事業を開始する前から、クラウドファンディングのページに掲載し、支援者をはじめとしたいろんな方が目にするため、結果として広告としての役割を果たすこともあるでしょう。看護や医療に限らず様々な業界の方に興味を持ってもらいやすくなります。
支援金が目標金額に達した場合のみ受け取ることができるといった制度や手数料が発生するため、クラウドファンディングのガイドラインをよく理解しましょう。
まとめ
看護師として起業する方法はいくつかあり、実際に起業する人も増えています。
看護師のなかでもさらに専門的な知識や経験がある方は、より独自性を活かした事業を展開しやすくなるでしょう。目の前の患者とコミュニケーションを取りニーズを理解した経験は、社会においてもどのようなことが求められているか理解する上で役立つと思われます。
まだ経験が足りないと思ったら転職してキャリアを積み、段階を踏むのも一つです。キャリア形成と起業準備を両立させて進めるのは大変ですが、副業で小さく始めるのも良いでしょう。
また、事業は計画的に行う必要があります。社会のニーズが変化することや法律が改訂されることもあるため、先を見据えて事業を展開すると良いでしょう。
事業は立ち上げて終わりではなく、あくまでスタートです。継続していくには、必要性の高い仕事を行うだけではなく、ときには不要な仕事をなくす決断も必要です。
今回ご紹介した看護師として起業するアイディアにあった内容以外にも、活躍されている方はたくさんいます。今後、起業したいという方は、既存の事業や型にとらわれることなく、ご自身の描いた将来に向けて、理念や事業を考えてみてください。
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