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【2024年最新】介護職員の処遇改善手当はなくなる?加算制度のおさらい
令和6年(2024年)は介護保険の報酬が改定される年なので、処遇改善加算の行方が気になる方もいるでしょう。
結論から述べると、処遇改善手当はなくならずに今後も継続されていきます。しかし今年は、制度の変更や要件の見直しなどがあり重要な年となりました。
今後、処遇改善手当がどうなっていくか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
令和6(2024)年度報酬改定により処遇改善加算はなくなる?
介護報酬の改定により、処遇改善加算はなくなるのでしょうか。ここでは最新の情報に基づいて紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
処遇改善加算はなくならず1本化される予定
2023年11月に行われた社会保障審議会・介護給付費分科会によれば、処遇改善加算が廃止されることはないと発表されました。ただし、制度の1本化が検討されているようです。令和5年の処遇改善加算の取得状況は、処遇改善加算が93.8%、介護職員等特定処遇改善加算が77.0%でした。
【令和5年の処遇改善加算の取得状況】
処遇改善加算:93.8%
介護職員等特定処遇改善加算:77.0%
介護職員等ベースアップ等支援加算:92.1%
多くの事業所で加算が取得されている一方、事務作業や制度の複雑さ、給与の公平性を考慮するのが難しいため、加算申請をしない事業所も存在しています。
処遇改善加算を広く活用するために、制度を1本化してシンプルにする方向性が検討されています。
職場環境要件を見直す予定
介護業界は深刻な人手不足が続いており、厚生労働省によれば2025年までには介護人材が32万人不足すると発表されています。職員の満足度、指導、育成を強化するため、加算要件の1つである職場環境要件の項目を増やす方向性で意見が一致しています。厚生労働省が提案している対応案は以下の通りです。
- 年次有給休暇取得促進の具体的な取組み
- 介護福祉士ファーストステップ研修の実施
- ユニットリーダー研修の導入
今後は、職場環境の整備状況の確認要件が追加される予定です。また、経営の協働化や生産性向上への取り組みも評価される見込みです。
処遇改善加算のおさらい
処遇改善加算の内容は、介護報酬改定により変化していくでしょう。そのため、処遇改善加算の全体像を掴んでおくと、要件が変更されても理解が早まります。
そこで、ここでは処遇改善加算の概要や詳細について紹介します。
処遇改善加算とは
処遇改善加算は、介護職員の賃金や労働環境の改善を目的として始まった制度です。賃金バランスの改善や研修制度の整備、労働環境の改善などに取り組むことで、事業者が加算を受けられる仕組みです。介護職員の待遇向上を図ることで、介護サービスの質の向上にも影響することを目指しています。
多くの事業所で加算を取得しており、介護職員の給与アップにつながっています。
処遇改善加算の要件
処遇改善加算には取得要件があり、具体的には以下のとおりです。
- キャリアパス要件
- 職場環境等要件
それぞれ解説します。
キャリアパス要件
キャリアパス要件は、特定の資格を取得する職員がいたり、キャリアアップにつながる研修を実施したりすると得られる加算制度です。加算に必要な条件は大きく分けて3つあります。
- 職務や役職の内容に合った賃金体系の整備
- 資格や経験に応じた昇給制度を設定
- 資格習得の支援やスキルアップ研修の実施
資格取得による昇給や資格支援をしている事業所に加算を増やす仕組みです。
職員が長期的にモチベーションを持って働ける職場作りが必要です。
職場環境等要件
職員の増員やマネジメント強化、キャリアアップの支援、体調管理などのいくつかの項目があり、1つ以上の取り組みを実施している必要があります。事業所は定期的に研修を実施したり、面談を設定したりして、職員のスキル向上やモチベーションを管理します。
処遇改善金加算の区分
処遇改善加算は3つの加算率に区分されています。各区分の配分や介護職員1人あたりの支給額を紹介します。
処遇改善加算(Ⅰ)
処遇改善加算(Ⅰ)を得るには、キャリアアップ要件の1.2.3を満たし、職場環境等要件も満たす必要があります。金額は介護職員1人あたり月額37,000円相当です。
処遇改善加算(Ⅱ)
処遇改善加算(Ⅱ)を得るには、キャリアパス要件1.2を満たしたうえで、職場環境等要件を満たす必要があります。金額は介護職員1人あたり、月額27,000円相当です。
処遇改善加算(Ⅲ)
処遇改善加算(Ⅲ)はキャリアパス要件1.2を満たし、職場環境等要件を満たす必要があります。金額は月額15,000円相当です。
処遇改善加算(Ⅳ)処遇改善加算(Ⅴ)は廃止済み
処遇改善加算(Ⅳ)と処遇改善加算(Ⅴ)は、2018年の経過期間を設けて2022年3月に廃止されています。処遇改善加算を取得している事業所のうち、66.2%が「I」で13.2%が「II」を算定しています。一方「III」は9.4%で、「IV」と「V」は0.8%ずつにとどまっていました。
【処遇改善加算を算定可能な事業所】
処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ):13.2%
処遇改善加算(Ⅲ):9.4%
処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ):0.8%
近年新設された処遇改善加算
処遇改善加算は近年新設されました。ここでは新しい処遇改善加算を紹介します。
介護職員等特定改善加算
介護職員等特定改善加算は、技能・経験を有する介護職員の処遇改善を目的にした制度で、2019年10月から新たに運用が開始されました。所得要件は以下の通りです。
- 処遇改善加算の(Ⅰ)から(Ⅲ)のいずれかを取得していること
- 処遇改善加算の職場環境等要件の中で、「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」の各区分について、1つ以上の取り組みを行っていること
介護職員等特定改善加算では、勤続年数10年以上の介護福祉士に対し、月額平均8万円相当の処遇改善が目指されています。これは既存の処遇改善加算に上乗せされ、介護報酬が加算されます。
介護職員等ベースアップ加算
介護職員等ベースアップ加算は、2022年10月の介護報酬改定によって設立された制度です。これは、コロナによる経済的な打撃を立て直すために導入された施策で、介護職員1人あたりの収入を基本的に月額約9,000円引き上げることを目的としています。
介護職員処遇改善加算および介護職員等特定処遇改善加算と併せて、現在も実施されています。
介護処遇改善加算に関するよくある質問
介護処遇改善加算に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 処遇改善金はパートでも受け取れるの?
- 処遇改善金がもらえない理由は?
- 処遇改善金は廃止される予定は?
それぞれ解説します。
介護処遇改善金はパートでも受け取れるの?
処遇改善金は、雇用形態や資格の有無に関係なく受け取ることができます。したがって、パート・アルバイトや派遣社員も支給の対象です。
処遇改善金がもらえない理由は?
事業所が処遇改善加算を受け取っていない場合、処遇改善金は支給されません。厚生労働省によると、処遇改善加算を取得している事業所は9割を超えています。
処遇改善金は廃止される予定は?
処遇改善金が廃止される予定は今のところありませんが、将来的にはわかりません。導入当時は介護現場の人材不足により、ユニットや事業所を閉鎖する施設が続出していました。そのため、処遇改善加算は、人材不足解消の施策として期限付きで始まった制度です。
介護職の人材不足が解消されたと政府が判断すれば、処遇改善金の制度を終了する可能性があります。また、処遇改善金の財源は、介護保険制度から賄われている状況です。
介護保険財政がひっ迫している状況や利用者負担額の増加などを踏まえると、介護職の給与が一定の水準に達したと判断されれば、廃止や制度変更も考えられるでしょう。
処遇改善金はなくならないが、どうなるかはわからない
処遇改善金は介護職の給与アップに大きな影響を及ぼしています。令和6年(2024年)の介護報酬改定では、処遇改善加算がなくなることはありませんでした。しかし、今後はどうなるのかはわかりません。
介護保険の財政が厳しくなると、今後の計画次第で廃止される可能性があります。介護報酬が見直される3年に1度は、情報をキャッチアップしておきましょう。