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【表でわかりやすく解説】スピーチロックが介護に与える影響とその対策
コミュニケーションは介護において重要な要素ですが、スピーチロックをしてしまうことに悩んでいる方もいるでしょう。
利用者さんに与える悪影響やその対策を知ることで介護中の悩みが軽減されることでしょう。
新人を指導する立場の方にとっても、後輩職員の教育に役立つ内容が含まれているため、ぜひ最後まで読んでみてください。
【表あり】現場でよく起こるスピーチロックの言い換え
介護現場でしばしば見られる命令口調の言葉、いわゆる「スピーチロック」について、その言い換え例を一覧表としてまとめてみました。
仕事が忙しいと、ついこのような口調になってしまうことがありますが、そんな時は以下の例を参考にしてみてください。
スピーチロック | 言い換え例 |
ちょっと待っててください! |
今は~しているので、あと〇分待ってもらえませんか? |
座ってください! |
立っていると危険なので、座っていただけますか? |
動かないでください! |
一緒に行くので、あと〇分待ってもらえますか? |
早くして! |
ゆっくりでいいですよ |
これらの表現を参考に、より柔らかいコミュニケーションを心掛けてみてください。
【基礎知識】スピーチロックとは
ここではスピーチロックについて以下の内容を紹介します。
- スピーチロックとは
- 3つのロックに気をつける
スピーチロックとは何か、そのほかに気をつけることをもう一度考えていきましょう。
スピーチロックとは
介護職員が無意識に使用してしまうことがあり、以下にその具体例を挙げます。
- 「動いちゃダメ!」
- 「座ってて!」
- 「ちょっと待ってて!」
これらの表現は、悪気なく使用されているものかもしれませんが、実は相手の行動を制御するスピーチロックとなってしまう可能性があるのです。
介護現場でのコミュニケーションにおいては、このような表現を避けることが重要となります。
3つのロックに気をつける
介護においては、3つのロックに注意する必要があります。
それぞれのロックとは以下の通りです。
- スピーチロック:言葉によって行動を抑制すること
- フィジカルロック:身体的に拘束して行動を抑制すること
- ドラッグロック:薬を投与して行動を抑制すること
フィジカルロック
やむを得ない理由がない限り、ベッドに四方から柵を設置したり、手袋を装着させるなどの行為はフィジカルロックに該当します。
ドラッグロック
具体的な例としては、睡眠薬の使用が挙げられます。一部の利用者は夜間に眠れなかったり、徘徊行動を示したりすることがあり、これらの行動を抑制するために睡眠薬や安定剤を導入することがあります。しかし、投与量が過剰になると、それはドラッグロックとなる可能性があります。
スピーチロックで起こる利用者さんへの3つの悪影響
スピーチロックで起こる利用者さんの悪影響は以下のとおりです。
- 認知機能の低下
- 意欲の低下
- 信頼関係の悪化
ここでは利用者さんに与える悪影響を3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
認知症の進行
スピーチロックが継続的に行われると、これは特に認知症のある利用者にとって、認知機能の低下を引き起こす可能性があります。認知症の方々は具体的な指示を忘れてしまうことがよくありますが、一方で怒られたり叱られた記憶は継続して残ります。
これらネガティブな感情は、認知症の進行に大きな影響を与えるとされています。その結果として、利用者の徘徊頻度が増加したり、夜間せん妄が発生したりといった症状の悪化が起こる可能性が高まります。
認知症の進行を防ぎ、利用者の生活品質を維持するためにも、スピーチロックに対する注意が必要となります。
意欲の低下
スピーチロックは、利用者に「これを言ったら怒られる」や「どうせ言っても無駄」という感情を抱かせ、自主性が奪われ、意欲の低下を引き起こす可能性があります。
これにより、利用者はレクリエーションやイベントへの参加を止めてしまうかもしれません。これは生活の刺激を失い、他の利用者との交流の機会も減少するという意味です。
更には、歩行可能な筋力を持つ利用者であっても、スピーチロックを受けることで歩行する意欲が低下し、その結果筋力が衰えてしまう可能性もあります。
スピーチロックは長期的な視点でみると、利用者の日常生活動作(ADL)の低下につながるという危険性を孕んでいます。
信頼関係の悪化
介護の現場では、利用者の身体に触れる機会が頻繁にあります。
そのため、信頼関係の構築が大切となります。しかし、スピーチロックを用いてしまうと、その信頼関係の形成が難しくなります。場合によっては、利用者が介護職員に対して不信感を抱くこともあります。
信頼関係が損なわれた結果、利用者は介護職員からの介助を拒否し、適切なケアが行えなくなる可能性があります。
スピーチロックの対策3選
スピーチロックの対策は以下の3つです。
- 言葉を言い換える
- 研修やセミナーでスピーチロックの危険性を理解する
- スピーチロックをしちたらすぐに指摘を受けて自覚する
スピーチロックをしないためにも、確認しておきましょう。
言葉を言い換える
スピーチロックを防ぐためには、言葉の言い換えが必要となります。特に、前置きの言葉に注意を払うと良いでしょう。
例えば、業務が忙しく、歩行が不安定な利用者が一人で立ち上がろうとしている場合、つい「立たないでください」と言ってしまいがちです。しかし、そのような状況でも焦らず、「どうしたのですか?」と問いかけるだけでも印象は大きく変わります。
急な状況で即座に言葉を発する必要があるときでも、前置きの言葉を意識して追加すると、スピーチロックを避けることが可能となります。
研修やセミナーを受けてスピーチロックの危険性を理解する
介護の現場では、利用者の主体性や自主性を尊重することが重要です。そのためには、介護の権利擁護を深く理解することが必要となります。これにより、スピーチロックに対する意識が薄れることでしょう。
権利擁護を学ぶ機会として、以下のような方法があります:
- 研修を受ける
- セミナーに参加する
- 専門の著書を読む
これらの機会を通じて、権利擁護が守られていない現場での失敗談や、それが裁判に発展した事例を学ぶことができます。
知識は、スピーチロックの危険性を具体的にイメージする助けとなり、自然と注意深さを持つ意識を育てるでしょう。
スピーチロックをしていたらすぐに指摘を受けて自覚する
スピーチロックを避けるための一つの方法は、利用者を抑制するような言葉遣いをしてしまった場合に、他者からの指摘を受け入れ、自己認識を高めることです。
スピーチロックは、自分では気づきにくい行動であるため、重要となります。そのため、職場全体で協力し、スピーチロックのような発言があった場合は互いに指摘し合う文化を作り上げることが求められます。
ただし、指摘する際は責めるのではなく、相手が気づくきっかけを提供するような形で伝えるのが効果的です。
スピーチロックが与える悪影響を理解して日常から気をつけよう!
スピーチロックは、自覚せずに使ってしまうことがしばしばあります。
特に業務が忙しいときには、利用者の声に耳を傾けることが後回しになってしまいがちです。しかしながら、ちょっとした工夫でスピーチロックを避けることは可能です。
利用者が満足できる生活を提供するためにも、今回紹介した対策を参考に、自分の言葉遣いに気を付けてみてください。