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【食事介助と看護の基本ガイド】効果的なケアのためのヒント!
高齢者の介助を行う際に最も注意を払わなくてはいけないのが、「食事介助」です。正しい食事介助の方法を知らずにいると、利用者さんの命に関わる事態に発展してしまいます。
食事介助の基本にもとづいて介助をすることで、利用者さんも楽しんで食事ができるので「これから食事介助に関わる」「食事介助の基本を知りたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
食事介助の前に取り組む準備
食事介助をはじめる前には以下の準備が必要です。
- 排泄を済ませる
- 食事を摂る場所を整える
- 姿勢が正しいか確認する
それぞれ具体的に解説します。
排泄を済ませる
高齢者は食事中に尿意や便意を感じると食事に集中できなくなるので、食事前にトイレを済ませましょう。
高齢者はトイレに時間がかかるため、食事中にトイレに行くことで集中力がなくなってしまい、食事摂取量が減ってしまいます。
高齢者に食事を楽しんでもらうためにも、食事前にトイレ誘導をして排泄を済ませておきましょう。
食事を摂る場所を整える
食事介助をする際はやむ終えない事情がない限り、寝る場所と食べる場所を分けるようにしましょう。
長く座ることができる高齢者は、椅子に座ってもらい食堂などで食事をしてもらうのが好ましいです。ベッドから離れて食事をすることは衛生的にもいいですし、「食事の時間」と認識も生まれて生活リズムが整います。
食事を楽しんでもらうためにも、なるべく座って食べてもらうようにしましょう。
姿勢が正しいか確認する
食事前は、姿勢を確認しましょう。姿勢を無視した状態で食事をはじめてしまうと、むせ込みや窒息の原因になるからです。また気持ちよく食事を取れません。
高齢者が食事をする際の理想の姿勢は以下のとおりです。
- 椅子の高さは踵がしっかりついて安定している状態
- テーブルの高さは、肘が楽に置ける高さ
ベッド上で食事を摂る際は、ベッドの高さに気をつける必要があります。ベッドの傾きを30度くらいに保つと、誤嚥しづらい状態で食事が可能です。
食事介助をする際は高齢者の姿勢に気を配りましょう。
食事介助をはじめてからのポイント
食事介助をはじめてからのポイントは以下のとおりです。
- 献立の説明や食形態を確認する
- エプロンをつけて声かけをする
- ゆっくりと食事介助を始める
食事をはじめてから気をつける点がいくつかあるので、食事介助の際は意識してみてください。
献立の説明や食形態を確認する
食事介助をはじめる前に献立を説明しましょう。
高齢者の好みや苦手な食べ物などを聞き、コミュニケーションを取るようにしてください。また高齢者に食事を提供する前に必ず食形態を確認しておきましょう。
食形態とは、高齢者の飲み込む力によって食事を刻んだりミキサーにかけたりして食べやすくした状態のことを指します。高齢者一人ひとり飲み込む力が異なるため、さまざまな食形態で食事が提供されます。人によってはとろみをつけることもあるでしょう。
食形態を間違えて食事を出してしまうとむせ込みや窒息といった事故につながるので、高齢者に提供するときは「食札」と呼ばれる食形態を記載した名札を必ず確認してください。
エプロンをつけて声かけをする
献立の説明や食形態を確認したら、食事介助をはじめる前にエプロンをつけたり手指を消毒したりします。
食事の準備をはじめることで、「これから食事をする」との認識が生まれます。そして「これから食事をはじめますね」や「どれが好みですか?」など常に声かけをするように意識してください。
食事を楽しんでもらうためにも声かけは忘れないようにしましょう!
食事介助が必要な高齢者は食事以外のことに気を取られてしまうケースがあるので、意識を確認するために声かけは重要です。
ゆっくりと食事介助を始める
食事介助の際は、いきなり食事を口に含ませるのではなく、まずは水分を補給してもらいましょう。
はじめは汁物から勧めていくのもおすすめです!
口の中に水分が含まれると食べ物が滑らかに進んでいくので、むせ込みや誤嚥を防げるからです。そして声かけをしながらゆっくりと食事介助を行いましょう。
食事介助中に注意すること
食事介助中に気をつけることを5つ紹介します。
- 利用者のペースに合わせる
- できるだけ自身で食事をしてもらう
- 麻痺がある場合は、健側の口角から行う
- 食事摂取量を確認する
- 食後のケアを忘れない
食事介助を安全に行うためにも、参考にしてみてください。
利用者のペースに合わせる
食事介助は高齢者のペースに合わせてください。
一口ずつ飲み込みを確認しながら食事介助を行いましょう!
飲み込みを確認する際は「ごくん」と喉元が上に上がり元に戻るのを観察するとわかりやすいです。そして食事介助をする際は、利用者の目線と同じ高さで介助をするようにしてください。
立ったまま食事介助をすると、食べ物を口に運ぶときに顎が上がることで気道が狭くなり誤嚥の原因につながるからです。利用者の横か下の位置から食事介助をすると、誤嚥を避けやすくなります。
高齢者の食事のペースを観察し、同じ食事が続かないように声かけをしながら楽しい雰囲気をつくるようにしましょう。
できるだけ自身で食事をしてもらう
高齢者の残存能力を活用するためにも、食事はなるべく自身で摂取してもらうよう心がけてください。
残存能力とは、障害を抱えた方が残った機能を発揮する力のことです。食べる動作であればスプーンを持つ力や、口に食べ物を運ぶ力です。介護者ができる限り見守りながら、自力で摂取できるよう促してみてください。
手の麻痺によって一般的なスプーンを使えない場合は、柄の部分が曲がったスプーンや手にひっかけて使えるスプーンといった介護用食器を活用してみるのがおすすめです。
麻痺がある場合は、健側の口角から行う
身体に麻痺のある方の介助は、健側から行います。
健側とは、麻痺側ではない身体のことです。右に麻痺がある方は、左側が健側となります。
右麻痺の方に食事介助をする際は健側の左側に座り、口角の下か横に食事を入れることでスムーズに食事介助が行えるでしょう。また健側から食事介助を行うと、食事が口の中に残っているかの確認ができます。
麻痺があると口の感覚が鈍くなり食事が残ってしまうので、介助者が適切に確認するためにも健側からの食事介助が必要です。
食事摂取量を確認する
高齢者の食事介助をする際は、食事摂取量を確認しましょう。
食事が主食や副食のみに偏っていたり、極端に少なかったりすると低栄養のリスクにつながるからです。また水分摂取量も確認しておかないと、脱水を起こす原因になります。
食事や水分のバランスを確認しながら、適切な量の食事介助を心がけてみてください。
食後のケアを忘れない
食後の口腔ケアを忘れないようにしましょう。
歯磨きやうがいをして口の中を清潔にします。義歯を装着している方は、洗浄してください。
口の中に食べ物の残りが残っていると、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まるので食後の丁寧な口腔ケアは忘れてはいけません。また消化に悪影響を起こさないように、食後30分は座った姿勢で身体を休めてもらうのが理想的です。
座った状態が難しい場合は、ベッドの頭部側を30度くらい上げて休んでもらいましょう。
利用者さんが気持ちよく食事ができるように取り組みましょう!
食事は栄養摂取の役割もありますが、生活の楽しみの一つでもあります。
食事介助の基本は、高齢者が食事を気持ちよく行うために大切な技術です。今回紹介した方法を抑えて高齢者が食事を楽しんでいるか確認しながら、食事介助を行なってみてください。