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【話す・聞く・食べるのプロ】言語聴覚士の役割とは?仕事内容を解説!
高齢化社会により医療や福祉職の重要性が高まっていますが、言語聴覚士もそのなかのひとつです。しかし言語聴覚士は、1996年に登場した比較的新しい国家資格とのこともあり、どのような仕事なのか詳しく知っている方は少ないでしょう。
言語聴覚士がどのような方を対象にリハビリをしているのか、どこで働けるかなどが具体的にわかります。「言語聴覚士の仕事が気になる」「言語聴覚士になりたい」と考えている方は、ぜひ確認してみてください。
言語聴覚士とは|言語機能に関わる機能回復を目指す
言語聴覚士の役割や資格の取り方・年収などを紹介します。言語聴覚士を目指している方や言語聴覚士の専門職としての役割を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
言語聴覚士の役割
言語聴覚士は事故や病気・ケガによって言語機能が低下している患者さんの評価やリハビリを実施します。言語聴覚士が行うリハビリの対象者は、小児から高齢者までが対象です。
たとえば脳卒中によって発話が難しくなった方に対して話し方の訓練を実施したり、言語機能の発達に遅れのある子どもの評価やジェスチャーの訓練をしたりします。そしてリハビリによる効果を確認し今後も継続的に続けていくか、または変更するかを他職種や患者さんと考えていきます。
言語聴覚士は生きていくうえで大切な機能を維持・回復する手助けを担っているのです。
言語聴覚士の資格の取り方
言語聴覚士は法律に定められた教育課程を経て国家試験に合格すると、資格を手にできます。
通学期間は以下のとおりです。
- 大学:4年
- 短大:3年
- 言語聴覚士の養成校:3年
試験は毎年3月に実施されており、令和4年に行われた試験では合格率は75%でした。
言語聴覚士の国家試験は比較的受かりやすいと考えられます。
言語聴覚士・理学療法士・作業療法士の違い
言語聴覚士や理学療法士・作業療法士は、リハビリを通して患者さんをサポートするという面では同じです。異なるのは「支援する対象者」です。
- 言語聴覚士:話す・食べる・聞くに関する言語機能を維持・回復したい人を支援
- 理学療法士:歩く・立つ・座るなど身体機能に関する機能を維持・回復したい人を支援
- 作業療法士:着替えや家事などの生活をする上で必要な動作を維持・回復したい人を支援
認知症や精神疾患のある方の心理面も支援
それぞれの専門職が、チームとなり一人の患者さんの機能回復をサポートしていきます。
言語聴覚士の年収
『令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金』によると、
国税庁の『民間給与実態統計調査』のデータによると、給与所得者の1人当たりの平均給与は 443万円と言われているので、同じくらいか少し低いです。
ただ医療・福祉業界は年功序列で給与が上がるので、長く働いたりその間に管理職になったりすることで収入を上げられます。
言語聴覚士の3つの仕事内容
言語聴覚士の仕事内容は大きく分けて3つあります。
- 言語障がいへの支援
- 聴覚障がいへの支援
- 嚥下障がいへの支援
言語聴覚士の仕事内容を理解する際の参考にしてください。
「言語障がい」への支援
言語聴覚士は言語障がいの方に対して支援をします。
言語障がいとは、何らかの病気やケガによって発音や発声が困難になり、コミニュケーションに不自由さを感じている状態を指します。
対象者
脳の一部を損傷してしまったことによる失語症の患者さんや、脳神経の異常による発達障がいの方などです。
具体的な支援
ドリルや日記を活用して文章を書く練習をしたり呼吸法の指導を実施したりします。
家族や周りの人に言語障がいの方との関わり方を伝えるのも重要な仕事です。ゆっくり会話をしたりジェスチャーを取り入れたりすることの理解を促していきます。
「聴覚障がい」への支援
聴覚障がいは耳の器官に何らかの異常をきたし、相手の声や周りの音などが聞き取りにくかったり聞こえなかったりすることです。
具体的な症状
突発的・または慢性的な難聴や耳鳴りなどの症状です。先天的な場合もありますが、後天的な症状にリハビリをするケースもあります。
聴覚は日常生活を送るなかでも大きな役割を持つので、聴覚リハビリを実施する際は医師と連携し明確な検査をしたうえで患者さんの要望をもとに方針を決めていきましょう。
リハビリの方法
人口内耳や補聴器を装着してコミュニケーションの訓練を実施します。補聴器の種類もいくつかあり、患者さんの症状や状態によって選ぶ必要があります。
「嚥下障がい」への支援
嚥下とは飲み込みの動作のことで、嚥下障がいは食べ物や飲み物を上手に飲み込めない症状を指します。
原因
咽頭がんや食道がんなどによる器質的な場合と、脳卒中やパーキンソン病によって飲み込み動作の神経に問題を抱えている機能的な問題が考えられます。またうつ病や心疾患により、嚥下機能の低下が起こることもあります。
リハビリ
患者さんの状態を確認し訓練に移るのが一般的です。たとえば唾液を30秒間の間に何回飲み込めるか、水を飲み込んだ際のむせ込みや呼吸の状態などを観察します。
患者さんの症状を評価したうえで、口腔ケアや嚥下体操と呼ばれる口や舌の筋力トレーニングを実施します。
言語聴覚士が活躍する3つの場所
言語聴覚士が活躍できる場所は大きく分けて3つあります。
- 介護施設
- 病院
- 教育機関
携わりたい患者さんによっては勤務先が限定されているので、働きたい職場がある方はぜひ確認してください。
介護施設
言語聴覚士は介護施設で働くことが可能です。
たとえば特別養護老人ホームでは口腔体操やカラオケを行い、嚥下機能の改善を促します。レクリエーションや季節を感じられるイベントを実施し、認知症や失語症の方の生活の質を上げる取り組みも行います。
介護老人保健施設も勤務先のひとつです!
介護老人保健施設は基本的に在宅復帰を支援するため、食事や入浴などの一般的な介護サービスとリハビリを提供しています。
言語聴覚士は、認知症の方にいくつかの質問をして認知機能の確認や、脳卒中などの病気による失語症の方の言語機能の回復を測ります。
言語機能や認知機能の維持・回復に携われるのが介護老人保健施設の特徴です。
病院
病院の勤務は、急性期病棟や回復期病棟のリハビリテーション科に配属されるのが一般的です。
急性期病棟
脳卒中や骨折など数日から1か月の短期間で必要なリハビリを実施します。手術後の寝たきり防止や後遺症を軽減させるための支援が行われます。
発症直後の患者さんに対しての症状の評価や説明・リハビリなどが主な仕事です。患者さんの機能評価や、退院後のケアなど業務範囲が幅広いです。
回復期病棟
急性期病棟でリハビリ後、1か月〜2か月間退院のリハビリを実施します。自宅復帰を見込んだリハビリ計画を立てて、医師や看護師と連携しながら取り組んでいきます。
教育機関
教育機関では特別支援学校のような小児を対象にした場所での活躍が期待できます。たとえば自閉症や多動性障がいによる言葉の遅れ、難聴や吃音による聴覚障がいの子どもに対しての評価やリハビリを行います。
就職先の割合としては低いですが、子どもの支援に関わりたい方は検討してみてください。
生きる喜びにつながる支援をするのが言語聴覚士の重要役割
言語聴覚士は、食べたり話したりする動作の維持や改善につながるリハビリを実施します。食事や会話は、生きるうえで大きな楽しみのひとつです!
言語聴覚士の仕事は、患者さんの身体の動作を改善するだけでなく、生活の質を上げる役割もある社会的意義の高い仕事です。