認知症ケア専門士の受験資格や合格基準は？試験概要やおすすめの勉強法も紹介

「認知症ケア専門士を目指したいけれど、そもそも自分が受験できるのか不安…」そんな気持ちを抱えている方は少なくありません。

資格の勉強を始めても、途中で「受験資格がなかった」と気づいたら時間も労力も無駄になってしまいますよね。

本記事では、認知症ケア専門士試験を受けるために必要な条件や実務経験の基準をわかりやすく解説します。

また試験の流れや注意点も紹介するので、自分が受験できるかどうかを確かめつつ、資格取得に向けた第一歩を踏み出してください。

認知症ケア専門士とは？資格の概要や役割

認知症ケア専門士は、認知症ケアに関する専門的な知識と技術、倫理観を備えた人材を認定する民間資格です。

本資格は一般社団法人日本認知症ケア学会が認定する資格制度で、2005年に認定制度が始まりました。

認知症ケア専門士の目的は、認知症の方やその家族に対して、根拠に基づいた対応ができるケアを現場で提供することです。

医療・介護現場において、認知症の方の症状特性や進行度に応じた対応を理解し、チーム全体でケアの質を向上させる能力を養います。

資格保有者には、本人の尊厳を守りつつ、その人らしい生活を支援する役割が期待されています。

内閣府の推計によると、令和４年（2022年）時点で65 歳以上の高齢者のうち、認知症高齢者は約 443.2万人、軽度認知障害（MCI）を含めると 約1,000万人超 にのぼります。

【認知症高齢者の将来推計（認知症のみの場合）】

年度	認知症高齢者（65歳以上）
令和4年（2022年）	443.2万人
令和7年（2025年）	471.6万人
令和12年（2030年）	523.1万人
令和22年（2040年）	584.2万人

今後、日本社会では、介護施設だけでなく医療機関や地域包括ケアの場など、多様な現場で認知症の方との接点が増えることが予想されます。

そのため、認知症への理解が深く、倫理的かつ実践的に適切な対応ができる人材が一層求められています。

認知症ケア専門士は、このような人材を育て・認定する制度として、日本社会で重要な役割を担っているのです。

認知症ケア専門士の受験資格とは？応募条件をわかり易く解説

ここでは、認知症ケア専門士の受験資格やよくある誤解について詳しく紹介します。

認知症ケア専門士の受験資格を得られる勤務年数や勤務先などを解説します。

受験を検討するうえでのよくある認識の違いも紹介しているので、自身が受験できるかどうかも明確になるでしょう。

合格へより一歩近づくためにも、受験を検討している方は確認してみてください。

受験資格の詳細条件

認知症ケア専門士の受験資格の詳細条件は以下のとおりです。

【認知症ケア専門士の受験資格の詳細条件】

資格名	認知症ケア専門士
受験資格	認知症ケアに関する施設、、団体、機関などで2015年4月1日～2025年3月31日の間に3年以上の認知症ケアの実務経験を有する者
詳細条件	・ 勤務先は認知症専門施設でなくてもよく、職種や仕事内容は問わない ・介護関連の資格をもっていなくても受験できる ・介護資格をもっている人は、実務経験証明書の提出が必須 ・ボランティアや実習は実務経験として認められない ・再受験時は過去の合格分野（5年間有効）を確認し、不合格だった分野のみ受験すればよい

認知症ケア専門士の受験資格を得られる勤務先は認知症専門施設でなくてもよく、職種や仕事内容も問いません。

受験対象となる勤務先は以下で説明しています。

上記の勤務先で10年間の間に3年以上、認知症ケアに携わることで認知症ケア専門士の受験資格を得られます。

勤務形態は常勤・非常勤問われませんが、ボランティアや実習は実務経験に含まれないので注意しましょう。

受験資格に関するよくある誤解

認知症ケア専門士について調べていると、「資格がないと受けられない」という情報が見つかることがあります。

本資格は仕事で認知症ケアに携わっていれば誰でも受験可能なので、無資格でも取得できます。

また「働きながらでも受験できるの？」と気になっている方もいるでしょう。

一次試験は受験対策講座も用意されており、Webで受講できるので、働きながらや子育てをしながらでも学習しやすい環境となっています。

認知症ケア専門士の受験資格を満たした人が挑む試験概要

認知症ケア専門士になるためには、まず受験資格を満たし、一次試験と二次試験に合格する必要があります。

ここでは、認知症ケア専門士と上級認知症ケア専門士の試験について詳しく解説します。

認知症ケア専門士の試験概要

認知症ケア専門士の受験資格や試験内容などは以下のとおりです。

項目	一次試験	二次試験
受験資格	認知症ケアに関連する施設、団体，機関において10年間の間に3年以上認知症ケアの経験がある者	・一次試験合格者 ・過去の認知症ケア専門士認定試験の第一次試験の合格者（各受験分野が合格有効期限内であること）
試験内容	1. 認知症ケアの基礎 2. 認知症ケアの実際 Ⅰ：総論3. 認知症ケアの実際 Ⅱ：各論4. 認知症ケアにおける社会資源	認知症ケアの事例（3題）に対する論述
受験料	3,000円×受験分野数（4分野で1万2,000円）	8,000円
出題数・形式	・WEB試験 ・各分野50問4分野で合計200問 （五肢択一）	論述試験3題
合格基準	各分野70％以上の正答率がある4分野すべてで合格が必要	論述評価で以下5つの要件を満たした者 1.適切なアセスメントの視点を有している者 2.認知症を理解している者 3.適切な介護計画を立てられる者 4.制度および社会資源を理解している者 5.認知症の人の倫理的課題を理解している者
合格率	45.7％（2024年）	発表なし

認知症ケア専門士の受験には実務経験が必須です。

具体的には2025年度試験の場合、2015年4月1日から2025年3月31日の期間で3年以上の実務経験を証明する必要があります。

実務経験に該当する施設や団体などは、介護施設や医療機関、地域包括支援センターなどと幅広く認められています。

第一次試験はWEB形式で実施されるので、受験しやすいのも魅力の1つです。

認知症ケア専門士の二次試験は論述で、一次試験に合格することで受験対象となります。

上級認知症ケア専門士の試験概要

上級認知症ケア専門士の受験資格や試験内容は以下で詳しく説明しています。

【上級認知症ケア専門士】

受験資格	1.認知症ケア専門士として3年以上の経験があること 2.2020年4月1日～2025年3月31日の間に30単位以上を取得していること（資格更新の有無は不問） 3.認知症ケア上級専門士研修会を修了していること 4.次のいずれかを満たすこと ・学術集会や地域部会研修会等での発表 ・事例報告（筆頭者） ・査読付き機関誌等での論文 ・事例発表（筆頭者） ※発表や報告は2020年4月1日以降、かつ専門士資格取得後〜申請期限までの者に限る。
出題範囲	・認知症ケアにおける倫理 ・認知症ケアのためのケアマネジメント ・介護関係者のためのチームアプローチ（認知症ケア上級専門士テキスト（全3巻）に沿った内容）
受験料	1万円
出題数・形式	50問（五肢択一）

上級認知症ケア専門士は、認知症ケアチームのリーダーとして、教育や指導を担うことが期待されている資格です。

そのため受験を受けるには、認知症ケア専門士としての実務経験が3年以上必要です。

出題範囲は認知症ケアの倫理やマネジメント方法など、認知症ケア専門士より専門的な内容となります。

認知症ケア専門士の合格率や難易度

認知症ケア専門士の合格率は以下のとおりです。

開催年	受験者	合格者	合格率
第16回試験 （2020年）	2,550人	1,442人	56.5％
第17回試験 （2021年）	3,063人	1,645人	53.7％
第18回試験 （2022年）	3,666人	1,998人	54.5％
第19回試験 （2023年）	2,799人	1,440人	51.4％
第20回試験 （2024年）	2,585人	1,182人	45.7％

2020〜2024年の合格率を見てみると50％前後となっているため、学習計画を立てて学んでいく必要のある試験といえます。

公式テキストや対策講座を活用して、着実に学習していくのがおすすめです。

認知症ケア専門士を取得するまでの6ステップ

認知症ケア専門士を取得するまでの流れは以下の6つです。

• 受験の手引を購入する
• 受験申請をする
• 第一次試験を受ける（WEB試験）
• 第二次試験を受ける（論述試験）
• 倫理研修の動画を視聴する
• 登録申請をする

認知症ケア専門士試験を受けるには、まず受験の手引（1,000円）を購入し必要書類を準備します。

申請は簡易書留で郵送し、実務経験証明書が必須ですが、再受験者は条件により免除可能です。

第一次試験は例年7月にWEB形式で実施されます。

合格者は11〜12月に行われる第二次試験（論述試験）に進みます。

合格後は認知症の倫理に関する研修動画を視聴するのが必須です。

そして登録申請料として1万5,000円を納め資格を取得します。

資格は5年間有効で、更新には認定する他団体の講座へ参加し、30単位以上を取る必要があります。

2025年度認知症ケア専門士認定試験の日程

2025年度認知症ケア専門士の第一次試験は、2025年7月13日（日）9:30～15:15にすでに実施されました。

現在は二次試験の申し込み期間中（2025年8月25〜9月25日）ですが、一次試験は年1回のみの実施となるため、2025年度には新規受験ができません。

次回の試験は2026年度となるので受験を検討している方は、今から準備を始めることで、十分な学習時間を確保できます。

実務経験の要件を満たしているか確認し、必要に応じて認知症ケアの実務を積む期間に活用しましょう。

一方で上級認知症ケア専門士の試験は、2025年12月7日に実施される予定です。

認知症ケア専門士として3年以上の実績がある方は、上級資格への挑戦を検討できます。

公式テキストや最新の出題傾向を確認しながら、計画的な学習スケジュールを立てるのがおすすめです。

認知症ケア専門士を取得する4つのメリット

認知症ケア専門士の資格取得には以下のメリットがあります。

• 資格手当が付与される可能性もある
• 施設によっては無料で受講できる
• 職員の指導や教育に役立てられる
• 今後の日本社会において貴重人材になれる

認知症ケア専門士の資格を取得することは、キャリアアップや専門性向上の面でさまざまなメリットがあります。

1.資格手当が付与される可能性もある

認知症ケア専門士の資格を取得すると、職場によっては資格手当が支給されます。

手当額は施設により異なりますが、月額5,000〜1万円程度が一般的です。

資格手当が付くと知れば、試験勉強のモチベーションにつながる方もいるでしょう。

ただし認知症ケア専門士を資格手当の対象にしているかは、施設により異なるので注意が必要です。

2.施設によっては無料で受講できる

職員のスキルアップを支援する施設では、認知症ケア専門士の受験料や研修費用を負担してくれる場合があります。

また、試験対策講座への参加を勤務扱いとして認める施設もあり、学習環境の面でもサポートを受けられます。

このような支援制度がある施設では、職員が資格取得に挑戦しやすくなるでしょう。

チーム全体の専門性向上により、施設全体のケアの質が高まる効果も期待できます。

所属施設の教育支援制度を活用することで、経済的負担を軽減しながら資格取得を目指せます。

3.職員の指導や教育に役立てられる

認知症ケア専門士の資格取得により得た知識は、後輩職員の指導や教育に直接活用できます。

介護施設には未経験・無資格で入社する方も多く、認知症に対する理解が浅いことも少なくありません。

認知症ケア専門士を取得していれば、体系的に学んだ認知症ケアの理論と実践方法を、後輩や新人職員に伝えられるようになります。

職員全体の知識が増え、チーム全体のケアの質も向上させられます。

そのため職員研修や、チーム内での勉強会の講師として活躍する機会も増えるでしょう。

教育的立場に立つことで自身の知識も深まり、介護職としての成長にもつながります。

4.今後の日本社会において貴重人材になれる

現代社会において、認知症ケア専門士は貴重な人材です。

厚生労働省の推計によると、2025年には認知症の方が471.6万人に達すると予測されています。

2040年には584.2万人まで上昇し、認知症ケアの需要はますます高まっていきます。

資格手当が付与される職場はまだ少ないものの、今後は認知症に関する知識や技術がある方に対して待遇が優遇される可能性もあるでしょう。

また就職や転職の際にも、認知症ケアの専門性をアピールすることが可能です。

とくに認知症対応型共同生活介護（グループホーム）や認知症専門棟をもつ施設では、専門資格があると就職や転職が有利に働きます。

将来的なキャリアの選択肢を広げる意味でも、認知症ケア専門士の資格取得は価値があります。

認知症ケア専門士を取得しても「意味ない」と言われる理由

認知症ケア専門士はニーズの高い資格ですが、「取得しても意味がない」と言われることもあります。

その理由は以下のとおりです。

• 認知度が低い
• 職場によっては資格手当が支給されない
• 国家資格ではない
• 5年ごとの更新に費用と時間がかかる

認知症ケア専門士は2005年に資格制度が開始された比較的新しい資格です。

医療・介護業界以外では価値が理解されず、転職時にも適切に評価されないケースがあります。

また、認知症ケア専門士は民間資格で法的配置基準がないため、多くの職場で資格手当が支給されないか、支給されても少額にとどまります。

国家資格の介護福祉士などと比べ待遇面で差があり、取得する経済的メリットが少ないのです。

国家資格ではないことによる社会的地位の差も、「認知症ケア専門士を取得する意味はない」と言われる要因です。

認知症ケアには業務独占や名称独占がなく、認知症ケア専門士がなくても介護職や相談援助の仕事はできます。

また5年ごとの更新負担があるのも必要性を感じにくい理由です。

研修受講や単位取得に1万円の費用がかかり、多忙な職員にとって継続的な時間と費用の負担がストレスになりやすいでしょう。

認知症ケア専門士を一発で合格するための勉強法

認知症ケア専門士に一発合格するための方法は以下のとおりです。

• 公式のテキストを活用する
• 対策講座を受ける
• 過去問題や予想問題を解く

認知症ケア専門士の試験に合格するためには、効率的な学習方法と適切な教材選びが欠かせません。

確実に合格するためにもぜひ参考にしてみてください。

公式のテキストを活用する

認知症ケア専門士に一発合格するなら、日本認知症ケア学会が発行する公式テキストの活用が必須です。

公式テキストは試験の出題範囲を網羅しており、4分野それぞれに対応した内容となっています。

第一試験は以下のテキストの内容に沿って試験問題が出題されます。

テキストは毎年改訂され、最新の認知症ケアの動向や制度改正が反映されています。

古いテキストでは対応できない問題も出題されるため、受験年度に対応した最新版を使用しましょう。

対策講座を受ける

日本認知症ケア学会や関連団体が実施する対策講座への参加は、合格への近道です。

講座では、出題傾向の分析や頻出ポイントの解説が受けられます。

独学では理解しにくい内容も、講師の説明で明確になり、効率的に学習を進められます。

対策講座には問題演習もあるので、今まで学んできた知識が定着しているかの確認も可能です。

またオンライン講座も充実しており、仕事をしながらでも受講しやすい環境が整っています。

受講費用は1万5,000円かかりますが、一発合格による時間と労力の節約を考えれば、投資する価値は十分にあります。

過去問題や予想問題を解く

過去問題集や予想問題集での演習は、合格に直結する学習方法です。

実際の試験形式に慣れることで、本番での時間配分や解答のコツがつかめます。

市販の問題集では、要点整理と問題演習が効率的にできる「この1冊でらくらく合格認知症ケア専門士」が人気です。

ただし市販の問題集を使用する場合でも、間違えた問題は必ず解説を読み、公式テキストで内容を確認することで知識が定着します。

認知症ケア専門士に合格した人の体験談

認知症ケア専門士に合格した人の体験談を紹介します。

費用がかかりますが、受験勉強の効率化を図るうえでは、公式の受験対策講座は、非常に有益だと思います。

引用：Yahoo!知恵袋

認知症ケア専門士二次試験合格！

二次は論述問題でした。

普段自分の考えを文章にする機会がなくかなり戸惑う。

第三者にも分かりやすく自分の考えを書く、話す。

当たり前のようでいて難しい。

鍛えていかないと。

とにかく合格できて良かった。

ここまで長かったー💦

引用：X

1次は私の場合

1 何も考えずテキスト読む（覚えようともしない）

2 過去問解く

3 間違えた問題をテキストで調べる

4 2と3を繰り返し頭に叩き込む

ひたすら2と3を繰り返した。

次はどう対策すればいいかわからず途方に暮れる。

とりあえず事例集を読む。

引用：X

対策講座の参加と過去問の活用が、認知症ケア専門士に合格するうえでは重要です。

論述問題は戸惑う方も多いようですが、他者にわかりやすく話す練習や早めに準備をすることで対応できるでしょう。

よくある質問

認知症ケア専門士に関するよくある質問は以下のとおりです。

• 認知症ケア専門士を取得していると働ける事業所はどこですか？
• 認知症ケア専門士を取得する際の注意点はありますか？

認知症ケア専門士を取得していると働ける事業所はどこですか？

認知症ケア専門士の資格は、さまざまな事業所で活かせます。

とくに需要が高いのは、認知症対応型共同生活介護（グループホーム）や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの介護施設です。

これらの施設では、認知症の方が多く入所・利用しているため、専門知識をもつ職員が求められています。

また訪問介護事業所やデイサービスでも、認知症の方への対応力向上のため、有資格者を歓迎する傾向が高めです。

医療機関なら認知症疾患医療センターや精神科病院、一般病院の認知症ケア病棟などで活躍できます。

地域包括支援センターでは、認知症の相談支援業務において専門性を発揮できるでしょう。

認知症ケア専門士を取得する際の注意点はありますか？

認知症ケア専門士を受験するには、受験資格となる実務経験の証明が必要です。

そのため、勤務先から実務経験証明書を発行してもらわなくてはいけません。

退職した職場での経験も含まれる場合は、早めに連絡し書類を準備しましょう。

また試験は年1回のみの実施となるため、不合格の場合は翌年まで待つ必要もあります。

計画的な学習スケジュールを立て、確実に合格を目指すことが大切です。

まとめ：認知症ケア専門士は認知症の方とその家族の生活を支える専門資格

認知症ケア専門士は高齢化が進む日本社会において、ますます需要が高まる専門資格です。

民間資格ですが体系的な知識の習得により、認知症の方への質の高いケアを提供できるようになります。

資格取得には実務経験と試験合格が必要ですが、職場での評価向上やキャリアアップにつながる可能性があります。

自身のキャリアプランと照らし合わせながら、資格取得への挑戦を前向きに検討してみてください。