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移乗介助とは?基本的な定義から正しい方法まで徹底解説
移乗介助をするうえで「正しいやり方はどうすればいいの?」「怪我をしない方法が知りたい」と悩まれている介護職は多いでしょう。
介護現場では日常的にする移乗介助ですが、正確な方法を理解せずにすると、利用者の転倒や怪我につながる可能性があります。
また、介助者が腰痛や膝痛になる原因になるので、移乗介助のコツを抑えておくことは大切です。
また注意すべきポイントや要介助者別の対応方法まで解説します。
最後まで読めば、安全で適切な移乗介助の方法を習得でき、利用者と介助者にとって安心・安全な介護を実践できるはずです。
移乗介助とは?移乗介助と移動介助の違いも解説
移乗介助とは、要介助者をある場所から別の場所へ乗り移らせる介護技術です。
ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座など、日常生活のあらゆる場面で必要となる基本的な介助方法です。
介助レベルは一部介助から全介助までさまざまで、介護職は高齢者の自立と安全を最優先に考えて実施します。
一方、移動介助は「場所を移動する」動作をサポートすることです。
移乗介助が「乗り移る」動作の支援であるのに対し、移動介助は車椅子を押して廊下を移動したり、歩行器を使った散歩をサポートしたりする介助方法です。
両者は似ているようで異なる介護技術であり、それぞれの意味と役割を正しく理解することが、質の高い介護サービスの提供につながります。
なぜ移乗介助が重要なのか?
移乗介助は転倒防止と利用者の安心、介助者の腰痛予防をするうえで重要です。
ベッドから車椅子、車椅子からトイレなどへ移る際、下肢筋力が低下している高齢者は身体のバランスを崩して転倒する可能性があります。
その結果、怪我や骨折をし、場合によっては寝たきりになるケースも少なくありません。
しかし高齢者の姿勢をサポートしながら移乗介助することで、転倒事故を防げます。
また、安全で丁寧な移乗介助は利用者に安心感を与え、自立への意欲を高めます。
声かけをしながらゆっくり介助することで、利用者は焦らず残存能力を活かしながら動けます。
さらに介護職員の腰痛を予防する観点でも移乗介助は重要です。
日本介護福祉士会によると、介護職員の57.5〜78.9%の方が腰痛を経験していると発表しています。
介護業務のなかでもとくに身体的負担が大きいのが移乗介助で、利用者の体重を支える際に、腰の筋肉や椎間板に負荷がかかります。
しかし正しい移乗介助を身につければ、介助者の健康を守り、安定した介護サービスの提供が可能です。
このように移乗介助は、介護現場での事故予防や自立支援に直結する動作なので重要です。
移乗介助を安全におこなうための基本ポイント
移乗介助をスムーズにするために心がけることは以下のとおりです。
- 声かけで安心感と協力を引き出す
- 周囲環境を整えて事故を防ぐ
- 身体に負担のない動きで介助をする
準備を怠ると、要介助者の不安や介助者の身体的負担が増大し、スムーズに移乗できない場合があります。
安全で効率的な移乗介助を実現するためにも、適切な事前準備をしましょう。
声かけで安心感と協力を引き出す
移乗介助では、動作を始める前の声かけが安全性を向上させます。
なぜなら、声かけによって要介助者は次の動作を予測でき、緊張や不安が軽減されるからです。
移乗前には「これから車椅子に移りますね」「右手でベッド柵をもってください」といった具体的な声かけをしましょう。
そうすることで要介助者の心理的準備ができ、身体がリラックスし、動作時に協力を得やすくなります。
声かけは移乗介助の第一歩として必ず実施すべき基本動作です。
周囲環境を整えて事故を防ぐ
ベッドから転倒や車椅子からの転落のリスクを下げるため、移乗介助の前には必ず周囲の環境整備をする必要があります。
具体的には、以下の点に配慮します。
【移乗時におすすめの環境整備】
- 床に落ちている物を片付ける
- 車椅子とベッドの距離を20〜30度に調整する
- 車椅子のブレーキがかかっているか確認する
- フットレストが上がっているかチェックする
- 滑りやすい床材には滑り止めマットを敷く
移乗場所との距離感や車椅子の確認はとくに重要です。
ベッドと車椅子の距離や、車椅子のブレーキやフットレストの状態は必ず確認しましょう。
このような環境整備により、介助者と要介助者の両方が安心して移乗動作ができます。
身体に負担のない動きで介助をする
移乗介助では、人間の自然な動きに沿った介助方法を実践することで、介助者と要介助者の身体的負担を少なくできます。
無理な姿勢での介助は、介助者の腰痛や筋肉痛の原因となり、要介助者にも不快感を与えます。
そのため例えば、立ち上がりの際には要介助者に協力を得つつ前傾姿勢を促し、重心移動を利用して移乗するのがおすすめです。
身体の自然な動きに沿った介助をすることで、介助者と要介助者の両方にとって負担の少ない、持続的な介助ができます。
ボディメカニクスを活用した移乗介助の8原則
手や足、腰など身体の部位に対して力学を応用し、動作時の負担を少なくします。
介護分野でもボディメカニクスが活用されており、これを実践することで身体に負担のない介助をすることが可能です。
ここでは、ボディメカニクスを使用する際の8つのポイントを紹介するので、参考にしてみてください。
1.両足を広げて安定姿勢を取る
移乗介助の基本姿勢では両足を肩幅程度に開きます。
こうすることで支持基底面が広がり、身体のバランスが保ちやすくなるのです。
要介助者を支える際には、足を閉じるのではなく開いて身体を安定させましょう。
両足を開いた姿勢は、移乗介助の安全性を確保するための基本の動きです。
2.重心を低くし支えを強くする
腰を落としたり膝を曲げたりして重心を低く保つことで、移乗介助時の安定性が保てます。
なぜなら身体の重心が低いほど、姿勢のバランスを崩しにくくなり、力を効率的に伝えられるからです。
移乗介助をする際には腰を落として、相撲の四股を踏むような姿勢になることで、安定した移乗介助ができます。
この姿勢により、介助者は少ない力で安全に要介助者を支えられます。
3.利用者に近づく
要介助者と介助者の距離が物理的に近いほど必要な力を最小限に抑えられるので、移乗介助をする際には、重心を近づけることが大切です。
移乗介助で要介助者を抱える際には、できるだけ身体を密着させるのがおすすめです。
その結果、介助者の腕や腰への負担が軽減され、安定した姿勢で移乗できます。
また、介助者が近い距離にいることで、要介助者に心理的な安心も与えられます。
そのようなことから、要介助者と介助者が重心を近づけることは大切なのです。
4.大きな筋肉を意識して使う
移乗介助では、腕や手の小さな筋肉ではなく、太ももや背中の大きな筋肉を活用します。
なぜなら大きな筋肉には持久力があり、疲労しにくい特性があるからです。
腕の力だけで身体をもち上げようとすると、手や腰を痛める原因につながります。
しかし、脚の屈伸運動を利用して太ももの筋肉を使うことで、怪我がしにくくなり疲労を最小限に抑えられます。
一部の筋肉の負担を避け、複数の筋群をバランスよく活用するのがボディメカニクスのポイントです。
5.水平移動を基本にする
移乗介助では、もち上げる動作は最小限にし、水平方向への移動を心がけます。
垂直方向の動きは重力に逆らうため、大きな力が必要ですが、水平移動させることで重力の影響を受けにくくなるのです。
そのため例えば、ベッドから車椅子へ移乗する際には、膝の屈伸を利用してスライドさせるように移動させます。
そうすることで、介助者の腰への負担が大幅に軽減される介助を実現できます。
6.身体をねじらずまっすぐ動く
移乗介助中は、身体をひねる動作は避け、足の向きを変えて対応します。
身体をひねった状態で力を入れると、不安定な姿勢になり腰に負担がかかります。
そのため移乗介助時には、足の位置を移動先に向け、身体をひねらず膝の屈伸で重心移動させるのが重要です。
身体をひねらない動作により、腰痛のリスクを避け、利用者への負担も少ない安全な介助ができます。
7.接地面積を小さくして効率化する
身体とベッドの接地面積が小さいと、摩擦抵抗が減るので、移乗前の移動が楽になります。
身体とベッドの接地面積が大きいと摩擦がかかり、要介助者を動かす際には多くの力が必要です。
しかし、要介助者の膝を立てて腕を胸の前に置いてもらうことで、接地面積が小さくなるので、身体を動かしやすくなります。
身体が大きい方や体重が重い人で身体を折り曲げるのが難しい場合は、スライディングシートを使用するのもよいでしょう。
移乗介助の負担を減らすためには、要介助者の身体とベッドの接地面積を小さくすることが重要です。
8.テコの原理を活かす
移乗介助で身体を動かす際には、テコの原理を使用することで、力が増幅し小さな力で起き上がらせられます。
ベッドから起き上がらせる場合に、テコの原理を活用する際のポイントは以下のとおりです。
【ボディメカニクスを活用したテコの原理のポイント】
※ベッドから起き上がらせる場合
- 支点→要介助者の腰
- 力点→介助者が要介助者を抱える場所(首元や肩、膝裏)
- 作用点→要介助者の足
要介助者の腰を支点にして回転させるように上半身を起こすと、スムーズに起こすことが可能です。
介助者の身体的負担を最小限にも抑えられるのでおすすめです。
【状態別】移乗介助の具体的方法
ここでは、以下2つの観点から具体的な介助方法を解説します。
- 利用者の状況
- 移乗場面
移乗介助は要介助者の状態や場面によって適切な方法が異なります。
画一的な方法では安全性が確保できないばかりか、要介助者に不快感を与える可能性もあるので、よく確認しておきましょう。
利用者の状態に応じた方法
利用者の状況では以下の状態が考えられます。
- 寝たきり(全介助)
- 片麻痺がある場合(一部介助)
- 体格が大きい・体重が重い
寝たきり(全介助)
寝たきりだと要介助者自身では立位保持や座位保持が難しく、自力での移動が困難です。
そのため例えば、ベッドからの起き上がらせから、車椅子までの移乗すべてをサポートするのが一般的です。
意識レベルが低下している方や、重度の身体障害がある場合、リフトやスライディングボードなどの福祉用具を活用することもあります。
さらに身体が大きいと、2人以上での介助も検討します。
また寝たきりの要介助者への移乗介助は、関節拘縮や褥瘡(床ずれ)予防への配慮も必須です。
長期臥床していると、筋力低下や関節可動域の制限が生じやすいため、移乗時には身体各部を十分に支えながら動作を進めます。
そして車椅子には、枕やクッションなどを用意し、褥瘡を防ぎます。
寝たきりの方への移乗介助では、医療的な観点も含めた総合的なアプローチが求められるのです。
片麻痺がある場合(一部介助)
片麻痺で一部介助が必要な要介助者には、残存能力を活かした移乗介助をします。
ポイントは健側(麻痺のない側)の機能を最大限に活かし、自立を促しながら移乗をすることです。
例えば立ち上がりは自力でできるものの、バランス保持が困難な方には、腰部を軽く支えながら方向転換を補助します。
また、ベッド↔︎車椅子へ移乗する際には、片方の手で車椅子のアームレストやベッド柵をもってもらうこともあります。
片麻痺の方への移乗介助では、残存機能を活かしつつ、麻痺側の保護にも配慮する技術が必要です。
体格が大きい・体重が重い場合
体重が重い要介助者への移乗介助では、福祉用具の活用と複数人での対応がおすすめです。
介助者一人では身体的な負担が過大となり、腰痛や事故のリスクが高まります。
体重80kg以上の方を介護する場合、電動リフトやスライディングボードの使用が必要です。
さらに場合によっては、2〜3人で役割分担しながら介助することで、無理をせずにすみます。
移乗の場面ごとの手順
移乗介助をする場面はおもに以下の5通りが予想されます。
- ベッドから車椅子
- 車椅子からベッド
- 車椅子から自動車
- 自動車から車椅子
- 床からの起き上がり
ベッドから車椅子
ベッドから車椅子への移乗は頻度の高い移乗介助です。
具体的な手順は以下のとおりです。
【ベッドから車椅子へ移乗する際の手順】
- ベッドの高さを車椅子の座面と同じ高さに調整する
- 車椅子をベッドに対して20〜30度の角度で配置する
- ブレーキをかけてフットレストを上げる
- 要介助者を起こし臀部を少し前にずらす
- 要介助者の車椅子側のつま先を車椅子に向ける
- 要介助者の両手を介助者の背中にまわし上半身を抱え込む
- 要介助者の臀部がベッドから浮いたら、介助者は腰を後ろに下げ、身体を前に引きずり出すようにもち上げる
- 要介助者の臀部や太ももの後ろが車椅子に軽く触れるような位置まで回転したら静かに腰を落としてもらう
利用者の身体をスムーズにもち上げるよう、移乗前にベッドから少し浅く座ってもらうのがポイントです。
このような準備により、安全で効率的な移乗が実現できます。
車椅子からベッド
車椅子からベッドへ移乗する際の手順は以下のとおりです。
【車椅子からベッドへ移乗する際の手順】
- 車椅子をベッドに近づけ、移動範囲を減らす
- フットレストを外しアームサポートを上げる
- 車椅子にブレーキがかかっているかどうか確かめる
- 要介助者の足が地面についているかを確認する
- 要介助者と身体を密着させて両肩甲骨を支え、前傾姿勢を促して浅座りにする
- 重心の高さを要介助者に合わせて腰を低くする
- ベッド側の肩甲骨と反対側の骨盤をしっかり支え、密着する
- 前方に誘導することで臀部を浮かせる
- 介助者は臀部の高さを変えず、要介助者と一緒に回転する
- 密着した状態でゆっくりベッドに座ってもらう
要介助者は支持基底面を広くして重心を低くするのがポイントです。
車椅子から自動車
デイサービスやショートステイに勤務すると、送迎車の乗降介助をする場合があります。
ここでは、車椅子から自動車へ移乗する方法を紹介します。
【車椅子から自動車への移乗介助】
- 車椅子を自動車の扉の近くに止める
- ブレーキをかけてフットレストを上げるか外す
- 要介助者に車の肘掛けと座席に手をかけてもらう
- 腰を上げて身体をまわし座席に座ってもらう
- 膝の裏に手を入れて、もう片方の手で足首を支えて足を車内に入れる
要介助者を車内に入れる際には、足がぶつからないよう配慮しましょう。
自動車から車椅子
自動車から車椅子に移乗する際は以下のような流れです。
【自動車から車椅子への移乗介助】
- 車椅子を自動車の横につける
- 要介助者の膝の裏に手を入れて片方ずつ足を車外に出す
- 要介助者には肩に手をまわてもらい、介助者は身体を密着させて支える
- 身体を引き寄せるようにして立ち上げる
- 要介助者の身体をまわして車椅子にゆっくりと座らせる
ポイントは要介助者の腰の後ろに手をまわして両指を組むことです。
狭い車内でも身体を密着させられ、安定した介助ができます。
また車内の空間は限られているので、腕の力のみで介助しがちですが、腰痛の原因となるので、重心を低くして脚の筋力を活用しましょう。
床からの起き上がり
ベッドでの臥床が困難な場合、床↔︎車椅子などに移乗することがありますが、ここでは床から起き上がらせる方法を紹介します。
【床から起き上がらせる移乗介助の手順】
- 声かけをする
- 両手を床についてもらい、身体をひねって向きを変える
- 要介助者を四つん這いにし、片膝ずつ前に出してもらう
- 介助者は後ろに倒れないよう支持しながら膝を立ててもらう
- 片手ずつ手を膝に乗せてもらう
- 膝をゆっくり伸ばして上半身を起こす
要介助者が床から立ち上がる際、介助者は後ろから支えますが、一緒に転倒しないよう足を大きく開き重心を安定させます。
移乗介助をする際の5つの注意点
移乗介助をする際に注意すべき点を5つ紹介します。
- 利用者の体調・表情を確認する
- 車椅子のブレーキ・フットレストを確認する
- ボディメカニクスを守り腰痛を予防する
- 移乗後は座位や姿勢を確認する
- 異変があれば中止し医療・家族へ共有する
安全な移乗介助を実現するには、技術だけでなく、細やかな観察と確認が欠かせません。
見落としがちな注意点を押さえることで、事故やトラブルを未然に防げます。
1.利用者の体調・表情を確認する
体調不良の状態で移乗をすると、めまいや血圧変動により転倒リスクを高めるため、介助前に必ず体調を確認しましょう。
例えば顔色や表情を観察し、「気分はいかがですか」「めまいはありませんか」と声をかけ、必要に応じてバイタルサインを測定します。
利用者に体調不良がみられる場合には、2人介助にしたり福祉用具を使用したりして身体的な負担を減らします。
場合によっては寝かした状態を維持することも必要です。
体調確認をすることで、その日の状態に応じた適切な介助方法を選択できるのです。
2.車椅子のブレーキ・フットレストを確認する
ブレーキやフットレストの調子が悪いと、移乗中に車椅子が動いて転倒する危険があるので移乗前に必ず確認する必要があります。
具体的には以下の点をチェックしましょう。
【移乗する際に車椅子を確認するポイント】
- 両側のブレーキがしっかりかかっているか
- フットレストが上がっているか
- アームレストが固定されているか
ブレーキがかかっていない状態で移乗しようとすると、要介助者の臀部付近が車椅子にあたる度に車椅子が後退してしまいます。
その結果、移乗に失敗する可能性が上がるので、とくにブレーキの確認は怠ってはいけません。
3.ボディメカニクスを守り腰痛を予防する
ボディメカニクスを実践することで、介助者の健康を守りながら要介助者へ質の高い介助を提供できます。
不適切な姿勢で介助を続けて腰痛やヘルニアになると、介護職を継続するのが困難です。
そのため、腰を曲げずに膝を使う、身体をひねらずに足の向きを変えるなどボディメカニクスの基本原則を常に意識する必要があります。
ボディメカニクスを実践することで、怪我をするリスクが減り、安全に介護職を続けられます。
4.移乗後は座位や姿勢を必ず確認する
移乗後は褥瘡と転倒を予防するため、浅座りになっていないかの確認が大切です。
浅座りの状態では、仙骨部への圧力が集中し、褥瘡の発生リスクを高めます。
また車椅子からずり落ちる原因にもつながるので、車椅子への移乗後は臀部の位置を確認しましょう。
臀部が椅子や車椅子の座面の奥まで入っているか、背中が背もたれに密着しているかをチェックし、必要に応じて座り直しを支援します。
要介助者が長時間でも快適に過ごせるよう、適切な座位姿勢の確認は必須です。
5.異変があれば中止し医療・家族へ共有する
介助の質を改善するためにも、移乗後も体調に異変がないかを確認することが必要です。
移乗中に生じた不快感や痛みを早期に発見し、問題があればすぐに対応します。
「痛いところはありませんか」「気分が悪くなっていませんか」と声をかけ、表情や姿勢の変化も観察してみてください。
「〇〇の部分が痛い」のような意見がある場合は、医療職と相談し、移乗方法を変更する場合もあります。
また移乗直後に立ちくらみ吐き気などを起こしてしまう方もいるので、体調確認は必ずしましょう。
移乗介助をする際におすすめの福祉用具
移乗介助をする際におすすめの福祉用具は以下のとおりです。
- スライディングボード
- スライディングシート
- 介助ベルト
- 移乗リフト
適切な福祉用具を活用することで、介助者の負担を大幅に軽減しながら、利用者にとってもより安全で快適な移乗が実現できます。
スライディングボード
スライディングボードは、座位での移乗時に臀部を滑らせて移動できる板状の用具です。
ベッドと車椅子の間が橋渡しになるように使用するので、要介助者を抱える必要がありません。
体重を支えながら横方向の移動で移乗ができ、体格が大きい方や体重が重い人の介助もスムーズにできます。
本体価格はサイズにより値段が変わりますが、2〜3万円です。
スライディングシート
スライディングシートは滑りやすい素材でできた薄いシート状の用具で、利用者の下に敷いて使用します。
摩擦抵抗を最小限に抑えることで、ベッド上でのポジション変更や車椅子への移乗を楽におこなえます。
全身に筋力低下がある筋疾患の方や、身体が大きくて寝たきりの人のケアで活用するのがおすすめです。
価格は3,000円程度で購入できるので、コストパフォーマンスに優れた選択肢といえるでしょう。
介助ベルト
介助ベルトは要介助者の腰部に装着するベルトで、取っ手がついており立ち上がりや移乗時に介助者が安定して支えられる道具です。
このベルトがあれば、移乗時に要介助者のズボンをもってしまうような危険な介助をせずにすみます。
また移乗時の支持点を確保し、介助者の姿勢を改善することで腰痛予防に効果があります。
価格は5,000〜9,000円程度と手頃で、介護施設でも導入しやすい福祉用具です。
移乗リフト
移乗リフトは、電動または手動で要介助者を吊り上げて移動させる機器です。
自力での移動が困難な人を電動でもち上げ、立ち上がりやベッドから車椅子への移乗をサポートします。
そのため適用対象者は、立位保持が困難または不可能な方や体重が重く介助者への負担が大きい方、拘縮がある人向けです。
移乗リフトは、要介護2以上の方であれば介護保険でレンタル可能です。
値段は30〜60万円と価格は高めですが、介護保険を利用すれば1〜3割の自己負担となるので、月々約1万円で利用できます。
ただし住宅を改修して取り付けなくてはいけない場合は、レンタルの対象外となるため注意しましょう。
家族介護で移乗介助をおこなう時の工夫
家庭での移乗介助は施設と異なる環境的制約があり、介護する家族にとって大きな負担となりがちです。
とくに協力者がいなく1人で介助する場合は、介助者の怪我や要介助者の転倒事故につながるので、安全性と継続性を重視した工夫が必要です。
例えば要介助者の体調のよい時間帯を意識して、残存機能を活用した移乗をするのはよいでしょう。
また親戚や近隣との連携体制を整備することで、無理のない範囲での介助が実現できます。介護保険制度を活用すれば、月額数百円から介護用品をレンタルすることも可能です。
スライディングボードや介助ベルト、ポータブルトイレなど複数の用具を組み合わせて介助すれば身体的負担は減ります。
理学療法士や作業療法士、ケアマネジャーとの連携により、最適な移乗方法と必要な用具の提案も受けられます。
地域包括支援センターの介護技術講習会や、福祉用具専門員による自宅での用具選定サービスの活用がおすすめです。
専門職との継続的な連携により、適切な知識と技術を習得でき、安心して長期間の介護を続けられます。
よくある質問
移乗介助に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 移乗介助に適した服装や靴はありますか?
- 歩行介助との違いはポイントは何ですか?
- 初心者でも失敗しないコツはありますか?
移乗介助に適した服装や靴はありますか?
移乗介助に適した服装選びは、安全に介助するためにも大切です。
動きにくい服装ではとっさの動作に対応できず、事故につながる可能性があります。
そのため動きやすいポロシャツやジャージ、チノ素材のパンツ、滑りにくいスニーカーや運動靴がおすすめです。
歩行介助との違いは何ですか?
歩行介助を支援する際の具体的な方法は以下のとおりです。
【歩行介助のポイント】
- 声かけをする
- 介助者は手のひらで要介助者の肘を支える
- 要介助者の歩幅に合わせて移動する
介助者は「〇〇さん△△をしに××へ行きましょうね」と目的地を要介助者に伝え、ゆっくりと進んでいきます。
要介助者の肘を支える際には、手を支えるだけで腕を引っ張ろうとするのは避けましょう。
初心者でも失敗しないコツはありますか?
初心者でも移乗介助を失敗しないためには準備が大切です。
まずは声かけをして、要介助者に移乗介助をすることを伝え、不安を取り除きます。
また、車椅子のフットレストやブレーキの確認を怠ると事故につながるので、 まずは現場を整えてから動きましょう。
介助前にボディメカニクスの動きを確認しておくのがおすすめです。
足幅を広げて重心移動する感覚を、要介助者を抱える前に意識するだけでも怪我をしにくくなります。
「家族を介助するけど、介護経験がない」という方は、介助前の基本を抑えておくことが大切です。
まとめ:移乗介助とは要介助者の生活を支える介護技術
移乗介助は、要介助者の日常生活を支える基本的な介護技術であり、正しい知識と技術の習得が不可欠です。
とくにボディメカニクスの理解と実践は、介助者の腰痛予防と要介助者の安全確保の両立に欠かせない要素です。
また、要介助者の状態や場面に応じた適切な介助方法を選択することで、質の高い介護サービスの提供ができます。
利用者の尊厳と残存能力を守るためにも、その人にとって最適な移乗技術や福祉用具を選びましょう。
本記事で紹介した知識とスキルを活用し、安全で快適な移乗介助を実現してみてください。
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