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訪問介護を開業する手順は?資金調達や獲得できる助成金も紹介!
「訪問介護事業を開業したいけれど、何から始めればいいのかわからない」と悩みを抱えていませんか?
高齢化社会が進み、訪問介護のニーズは高まっていますが、準備不足のまま開業すると、資金繰りや利用者獲得に苦戦してしまいます。
実際、東京商工会リサーチによると訪問介護事業所の倒産件数は2年連続で毎年更新されているのが現状です。
この記事を読むことで、訪問介護事業を開業する際に感じる不安や問題が解消され、自信をもって第一歩を踏み出せるでしょう。
訪問介護とは?基礎知識を解説
訪問介護とは何か、どのようなサービスを提供できるのかを解説します。
訪問介護の開業を検討する際の基本的な知識を抑えておきましょう。
訪問介護とは?提供できるサービス
訪問介護は、利用者の自宅で介護サービスを提供する事業です。
身体介護や生活援助を通じて、高齢者や障がい者の日常生活をサポートします。
具体的には以下のようなサービスが提供できます。
【訪問介護で提供できるサービス】
サービス名 | サービス内容 |
---|---|
介護を提供する前の「サービス準備・記録」行為 | ・バイタルチェック ・換気や整理整頓などの環境整備 ・サービス提供後の記録 |
身体介護 | ・入浴介助(清拭・整容) ・食事介助 ・排せつ介助 ・外出介助(病院↔︎自宅) ・服薬介助・確認 ・自立支援を目的とした見守り援助 |
生活支援 | ・掃除・ゴミ出し ・洗濯 ・布団干し・ベッドメイキング ・衣類の整理・被服の補修 ・食事の準備・調理・後片付け ・買い物 ・住民票の受け取り ・薬の受け取り |
利用者が住み慣れた自宅でも安心して生活を続けられるよう支援します。
ただし家族のための家事や来客対応、ペットの世話など日常生活の範囲を超えるサービスは提供できません。
訪問介護は1人で開業できない
訪問介護事業所の開業には、複数の職員が必ず必要です。
なぜなら介護保険制度の指定基準により、管理者やサービス提供責任者、訪問介護員という3つの職種の配置が義務付けられているからです。
管理者は常勤専従1名、サービス提供責任者は利用者40名につき1名以上の配置が義務付けられています。
また訪問介護員は、初任者研修以上を取得した方である必要があります。
具体的な配置基準は以下のとおりです。
【訪問介護の配置基準】
職種 | 配置基準 | 資格要件 |
---|---|---|
サービス提供責任者 | 利用者40人ごとに常勤1人以上(40人を超えるごとに1人追加) | ・介護福祉士 ・実務者研修修了者 ・旧介護職員基礎研修修了者 ・旧ホームヘルパー1級課程修了者 など |
管理者 | 常勤専従で管理業務に従事する者を1人配置(兼務可。ただし管理上支障がない場合のみ) | 特になし |
訪問介護員 | 常勤換算で2.5人以上 | ・介護福祉士 ・実務者研修修了者 ・介護職員初任者研修修了者 ・生活援助従事者研修修了者 など |
したがって、訪問介護は1人で事業を開始することはできません。
自宅で開業できるかは自治体による
自宅での開業については事務所要件を満たせば可能ですが、要件は自治体により異なります。
事業所と自宅を別々にすることが義務付けられていることもあれば、事業所の入り口に鍵を設置しなくてはいけない都道府県もあります。
仮に自宅と事業所を一緒にする場合、事業所へ来訪する利用者や家族のプライバシーが保たれた導線を確保しなくてはいけません。
つまり事務所用に独立した区画を用意しなくてはいけないので、多くの方が法人を設立後、賃貸物件を借りています。
訪問介護を開業するには?設立から事業開始までの流れ
訪問介護事業所を開業するためには、複数の段階を経て準備を進める必要があります。
具体的には以下の流れで進めていきます。
- 法人を設立する
- 設備基準を満たす
- 必要な人員を確保する
法人設立から指定申請まで、各ステップで必要な手続きや要件を説明します。
1.法人を設立する
訪問介護事業所は個人事業主として設立できないので法人格が必要です。
法人格のおもな選択肢は以下のとおりです。
- 株式会社
- 合同会社
- NPO法人
- 一般社団法人
それぞれの特徴を理解し、事業計画に最適な法人形態を選びましょう。
1.株式会社
株式会社は最も一般的な法人形態です。
設立手続きが比較的簡単で、社会的信用度も高いというメリットがあります。
設立直後や事業拡大をする際に資金調達を検討している場合、株式会社の形態であると国や銀行から融資が受けやすいでしょう。
訪問介護を株式会社で始めるのは、事業の成長性を考えると適切な選択肢といえます。
2.合同会社
合同会社は、株式会社と比べて設立費用が安く、運営の自由度が高い法人形態です。
設立費用は約10万円程度で済み、決算公告の義務もありません。
小規模での事業開始を考えている場合や、コストを抑えたい方には適しています。
ただし認知度は低いため、社会的信用度に関しては株式会社よりも低めです。
3.NPO法人
NPO法人は営利を目的としない法人形態です。
社会貢献性が高く、税制上の優遇措置を受けられる可能性があります。
地域の福祉向上を目的とする場合や、公的な助成金を活用したい方にはおすすめです。
しかし設立までに3〜4か月程度の時間がかかるため、開業時期に合わせた計画が必要です。
4.一般社団法人
一般社団法人は営利・非営利を問わず設立できる法人形態です。
設立費用は約11万円程度で、比較的簡単に設立することが可能です。
また一般社団法人は、2人以上の行員で設立可能なため、複数の関係者が協力して事業を運営したい場合に適しています。
ただし税制上の優遇措置は限定的なので、事業の性質に応じて選択を検討する必要があります。
設備基準を満たす
訪問介護事業所の開設には、厚生労働省が定める設備基準を満たす必要があります。
ここでは、以下の内容を紹介します。
- 事務所
- 相談室
- 必要備品
各設備の詳細な要件を確認し、確実に準備を進めましょう。
事務所
事務所は、訪問介護事業所を運営するうえで中心となる場所です。
利用者との面談や職員の打ち合わせ、書類管理などをするため、適切な広さと設備が必要です。
常勤の人数分(3人)の机と椅子、そのほかの備品が入る広さで物件を検討しましょう。
事務所と相談室はパーテーションで区切ることも認められるので、ワンルームマンションでも事業は始められます。
事務所は訪問介護事業において利用者との面談や書類管理などをするため、安心して利用できるような、清潔で明るい物件がおすすめです。
相談室
相談室は利用者や家族との面談をする部屋です。プライバシーを保護し、落ち着いて相談できる環境を整える必要があります。
例えばパーテーションで区切られた空間や、独立した個室を設けることで、相談者が安心して話せる環境を作れます。
相談内容によっては長時間の面談になることもあるため、椅子やテーブルも必要です。
必要備品
訪問介護サービスの事業申請をする際には必要備品がそろっていないといけません。その際、絶対に必要となる備品は以下のとおりです。
【訪問介護を始める際に絶対に必要な備品】
- 電話
- FAX
- ネット回線
- 事務机・椅子
- パソコン
- 鍵付き書庫
- アルコール消毒
- ハンドソープ
- ペーパータオル
これらの備品は情報漏洩の防止や感染予防など、安全なサービス提供のために欠かせない物です。
必要な人員を確保する
訪問介護事業所の運営には、以下の資格をもった専門スタッフの配置が義務付けられています。
- サービス提供管理者
- 管理者
- 訪問介護員(初任者研修修了者)
各職種の役割と必要な資格を理解し、計画的に人員を確保しましょう。
サービス提供管理者
サービス提供責任者は訪問介護事業所の中核的な役割を担う職種です。
利用者のアセスメントから訪問介護計画の作成、サービス提供の調整まで幅広い業務を担当します。
例えば利用者の状態変化に応じた支援内容の見直しや、ヘルパーへの技術指導などをします。
この職種には、介護福祉士や実務者研修修了者などの資格が必要です。
またサービス提供責任者は、利用者40名につき1名以上の配置が義務付けられています。
管理者
管理者は事業所全体の運営を統括する職種です。
職員の管理や利用者との契約、行政との連絡調整など、事業所の責任者として多岐にわたる業務を担います。
具体的には月次の売上管理やスタッフのシフト調整、利用者からの苦情対応などです。
管理者には特別な資格は必要ありませんが、介護事業に関する知識と経験が求められます。
訪問介護員(初任者研修修了者)
訪問介護員は実際に利用者宅を訪問してサービスを提供する介護職です。
身体介護や生活援助を通じて、利用者の日常生活を支援します。
例えば、入浴介助・食事介助などの身体介護から、掃除などの生活支援サービスを提供します。
訪問介護員には、介護職員初任者研修以上の資格が必要です。
定員は常勤換算で2.5名以上の配置が義務付けられているので、事業開始時はサービス提供責任者や管理者が兼任することもあります。
指定申請をする
訪問介護事業所として介護保険サービスを提供するためには、都道府県知事から指定を受ける必要があります。
指定申請の具体的な流れは以下のとおりです。
- 新規指定前研修の申し込み
- 新規指定前研修を受ける
- 必要書類の準備
申請から指定までは数か月かかるため、余裕をもったスケジュールで進めることが大切です。
新規指定前研修の申し込み
新規指定前研修は、訪問介護事業所の開設予定者が必ず受講しなければいけない研修です。介護保険制度の仕組みや運営基準、請求方法などの基本的な知識を学びます。
管理者やサービス提供責任者が参加し、事業運営に必要な知識を習得することが可能です。
研修の申し込みは、各都道府県の担当部署で受け付けていますが、定員に限りがあるため早めの申し込みが必要です。
東京都の場合、研修4か月前の末日までに申し込まなくてはいけません。
新規指定前研修を受ける
新規指定前研修は講義形式で進められ、介護保険制度の理解から運営方法まで幅広い内容を学ぶことが可能です。
例えば、利用者との契約方法やサービス提供記録の作成、介護報酬の請求手続きなどについて詳しく説明されています。
受講時期は事業を始める希望月の3か月前が基本なので、4月に指定を受けたい方は1月中旬に受講しましょう。
研修修了後には修了証が交付されます。
必要書類の準備
指定申請には多数の書類を準備する必要があり、具体的には以下のとおりです。
【指定申請書類を提出するために必要な書類】
必要書類 | 備考 |
---|---|
指定居宅サービス事業者指定(許可)申請書 | – |
訪問介護事業者の指定にかかる記載事項 | – |
従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表 | – |
サービス提供責任者の経歴書 | – |
平面図 | 事務所内の書庫や机等、備品の配置も記載すること |
事務所の写真 | 事務所の鍵付き書庫、手洗い場にアルコール消毒・ペーパータオルを置いた状態の写真 |
運営規定 | ー |
利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要 | ー |
損害賠償責任保険証の写し(損害賠償責任保険申込書及び領収書でも可) | 必須ではないが加入が望ましい |
法第70条第2項各号(又は法第115条の2第2項各号。)に該当しないことを誓約する書面 | ー |
陸運等許可書の写し、運賃表、車検証の写し、青ナンバー車の写真 | 通院等乗降介助をする場合のみ |
介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 | ー |
介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(訪問介護) | ー |
業務管理体制に係る届出書 | 法人が初めて介護保険事業所を設立する場合のみ |
介護サービス情報公表制度に係る基本情報報告様式 | ー |
社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票 | ー |
老人居宅生活支援事業開始届 | ー |
法人や人員、設備に関する書類など、各分野にわたって詳細な資料を作成します。
書類の不備があると申請が受理されないため、チェックリストを活用して漏れのないよう準備することが重要です。
なお、必要書類は指定を受ける予定月の2か月前までを目途に受付窓口に提出します。
訪問介護の開業に必要な費用
訪問介護事業所の開業には、さまざまな費用が発生します。
初期費用だけでなく運転資金も含めた総額を把握し、資金調達の計画を立てることが成功への第一歩です。
費用の内訳を詳しく理解し、無理のない開業計画を策定しましょう。
開業前の初期費用
開業前にかかる初期費用は以下のとおりです。
- 法人設立費
- 物件費用
- 備品購入費
法人設立費
法人設立費は選択する法人形態によって異なります。
株式会社の場合、定款認証手数料や登録免許税、司法書士報酬などで約25万円程度かかります。
合同会社なら約10万円、NPO法人なら約5万円程度で設立できます。
【法人設立費の目安】
法人形態 | 設立費用の目安 | 内訳 |
---|---|---|
株式会社 | 約25万円 | ・登録免許税15万円 ・定款認証手数料 ・謄本代5万円前後 ・印紙代(電子定款の場合は不要) |
合同会社 | 約10万円 | ・登録免許税6万円 ・定款印紙代(電子定款の場合は不要) |
NPO法人 | 約5万円 | ・登録免許税は0円 ・定款認証手数料約5万円 ・収入印紙代2,000円 ・登記簿謄本代など。(専門家依頼は別途報酬が必要) |
一般社団法人 | 約10万円 | ・登録免許税6万円 ・定款認証手数5万2,000円 ・謄本代など |
合同会社や一般社団法人は、定款認証手数料や登録免許税が株式会社より低額です。
NPO法人は法定費用が非常に安価ですが、設立までに最低10人の社員が必要など、要件や審査が厳しく手続きに時間がかかります。
法人形態を選択する際には、設立後の運営コストや社会的信用度も考慮することが重要です。
物件費用
事務所として使用する物件の取得には、まとまった費用が必要です。
賃貸物件の場合、敷金や礼金、仲介手数料などで月額賃料の4〜7倍程度の費用がかかります。
【月額賃料が10万円の場合の初期費用例】
項目 | 金額 |
---|---|
敷金(2か月分) | 20万円 |
礼金(1か月分) | 10万円 |
仲介手数料 | 11万円(消費税込) |
前家賃 | 10万円 |
保険料 | 1万5,000円 |
保証会社料 | 8万円 |
合計 | 約60万5,000円 |
月額賃料10万円の物件なら、60〜100万円程度の初期費用が必要です。
また内装工事や設備工事が必要な場合、追加で50〜100万円程度かかることもあります。
備品購入費
訪問介護サービスを提供するために必要な備品の購入費用も、開業前に準備する必要があります。
必ず必要になるのは以下の物品です。
【必ず必要になる備品】
- 電話
- FAX
- ネット回線
- 事務机・椅子
- パソコン
- 鍵付き書庫
- アルコール消毒
- ハンドソープ
- ペーパータオル
事務机や椅子、パソコンなどは業務に支障をきたさなければ中古でも問題ありません。
品質を重視しつつも、コストを抑えた購入計画を立てることが大切です。
開業後の運転資金
開業後の運転資金は、事業を継続するために必要な支出です。
具体的な費用は以下のとおりです。
- 人件費
- 家賃
- そのほかの経費
人件費
人件費は運転資金のなかでも最も大きな割合を占める費用で、管理者やサービス提供責任者、訪問介護員の給与や社会保険料が含まれます。
令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要によると、訪問介護の人件費比率は72.2%と報告されています。開業後の資金で多くの割合を占めるのが人件費となるでしょう。
厚生労働省の調査によると、訪問介護入浴や通所介護でも人件費の割合は7割程度となっています。
そのため、事業計画を策定する際にはこの数字を標準と捉えておく必要があります。
家賃
事務所の家賃は毎月確実に発生する固定費です。
立地や広さによって金額は異なりますが、月額5〜15万円程度が一般的です。
近くに駅や大型商業施設などあり、利便性のよい地域で事務所を借りると、家賃はさらに上がる可能性があります。
家賃は売上に関係なく発生するため、事業規模に見合った物件を選択することが経営の安定につながります。
そのほかの経費
そのほかの経費には以下が含まれます。
【訪問介護を運営するうえでかかる経費】
- 水道光熱費
- 通信費
- 保険料
- 消耗品費
- 交通費
これらの費用は少額ですが、積み重なると大きな負担となります。
そのため諸経費も事業計画に組み込み、適切な資金管理をすることが重要です。
訪問介護の開業資金を調達できる助成金
訪問介護の開業資金を調達できる助成金は以下のとおりです。
- 新規開業・スタートアップ支援資金
- ソーシャルビジネス支援基金
- 介護福祉機器等助成
- IT導入補助金
- 特定求職者雇用開発助成金
- 起業支援金制度
訪問介護事業所の開業には、多額の資金が必要ですが、さまざまな助成金制度を活用することで資金調達の負担を軽減できます。
新規開業・スタートアップ支援資金
新規開業・スタートアップ支援資金は、日本政策金融公庫が提供する創業者向けの融資制度です。
具体的な融資内容は以下のとおりです。
【新規開業・スタートアップ支援資金の融資内容】
項目 | 内容 |
---|---|
融資限度額 | 最大7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(据置5年以内)運転資金:10年以内(据置5年以内) |
利率 | 基準利率(女性・若者・シニア・再チャレンジなど条件次第で特別利率) |
審査期間 | 2週間〜1か月 |
保証人・担保 | 応相談。場合により無担保・無保証人利用も可能 |
設備資金や運転資金など最大7,200万円までの融資を受けられます。
無担保・無保証人で利用可能なので、これから事業に挑戦したい方にはおすすめの制度です。
新規開業・スタートアップ支援資金の申し込みには、事業計画書の提出と面談が必要なので、審査に2週間〜1か月程度かかります。
ソーシャルビジネス支援基金(日本政策金融公庫)
ソーシャルビジネス支援基金は、日本政策金融金庫が実施している公的金融支援策です。
具体的な融資内容は以下のとおりです。
【ソーシャルビジネス支援基金の融資内容】
項目 | 内容 |
---|---|
融資限度額 | 最大7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(据置5年以内)運転資金:10年以内(据置5年以内) |
利率 | 年2.06%~2.55%(基準利率。条件により優遇あり) |
審査期間 | 約3週間程度 |
保証人・担保 | 「NPO法人の特例」等、条件により不要になる場合もある |
NPO法人や保育・介護サービスなどの社会課題の解決を目的としている事業者は、優遇措置を受けながら利用できます。
そのため、地域の介護サービス向上を目的とした事業計画であれば、優遇金利での融資が期待できます。
ソーシャルビジネス支援基金は、設備資金や運転資金など最大7,200万円までの融資を受けられる制度です。
補助金や助成金ではなく融資のため、具体的な事業計画や返済計画などの審査が必要です。
介護福祉機器等助成
介護福祉機器等助成は、独立行政法人福祉医療機構が提供する助成制度です。
具体的な内容は以下のとおりです。
【介護福祉機器等助成の融資内容】
項目 | 内容 |
---|---|
融資限度額 | 一般設備導入:上限150万円(助成の場合) ※福祉医療機構等の特別融資の場合は事業規模や機器内容によって上限1,500万円~7,200万円程度もあり |
返済期間 | 5〜20年(用途や融資規模により変動、据置期間あり) ※助成の場合は返済不要 |
利率 | 年1.4~1.9%(2025年度・固定金利が主)物価高対応や優遇措置時は無利子や引下げ利率も |
審査期間 | 約3週間〜2か月程度(都道府県や制度ごとに差・一次審査、面接等あり) |
保証人・担保 | 原則不要(特別優遇融資・無担保枠利用時)通常は必要となる場合も(融資規模など条件次第) |
介護サービスの質向上につながる機器や、設備の導入に対して助成金が支給されます。
訪問介護事業所で使用する移動用リフトや車いす、シャワーキャリーなどは助成の対象です。
支給額は合計額(税込)の1/2(上限300万円)が支給されます。
100万円の介護機器を購入した場合、50万円程度の助成を受けられるということです。
介護福祉機器等助成の申請には、機器の説明を記載した資料や導入後の効果を解説した書類を提出する必要があります。
IT導入補助金
IT導入補助金は、業務効率化や生産性向上を目的としたITツールを導入することで支給される補助金です。
IT導入補助金の具体的な内容は以下のとおりです。
【IT導入補助金の内容】
項目 | 内容 |
---|---|
融資限度額 | 最大450万円 |
補助率 | 通常枠:1/2以内小規模事業者・最低賃金近傍事業者等は2/3以内一部類型で3/4~4/5まで |
返済期間 | 返済不要(助成金・補助金のため) |
審査期間 | 2週間~1か月程度 |
保証人・担保 | 不要(補助金方式のため担保・保証人は不要) |
補助上限額は最大450万円で通常の補助率は1/2、小規模事業者の場合は2/3です。
訪問介護事業所でも介護記録システムや、見守り機器を導入すればIT導入補助金を活用できます。
例えば200万円の介護記録システムを導入した場合、100万円は補助してもらえる可能性があります。
対象となるITツールは、IT導入補助金事務局に登録された機器に限られるので、申請前に確認しておきましょう。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者や障がい者などの就職困難者を雇用する事業主に支給される助成金です。
特定求職者雇用開発助成金の内容は以下で詳しく説明しています。
【特定求職者雇用開発助成金の支給金額】
対象 | フルタイム(1人あたり) | 短時間労働者(1人あたり) | 助成対象期間 |
---|---|---|---|
高年齢者・母子家庭など | 60万円 | 40万円 | 1年 |
身体・知的障がい者 | 120万円 | 80万円 | 2年 |
重度障がい者 | 240万円 | 160万円 | 3年 |
就職困難者に該当する人材を、ハローワークや指定の人材紹介会社から雇用し、雇用保険に加入させることがおもな要件です。
訪問介護事業所でも、対象となる求職者を雇用することで助成金を受けられます。
母子家庭の母親や60歳以上の高齢者を正社員に雇用すると、年間60万円の助成を受けられます。
助成額は雇用する対象者や企業規模によって異なりますが、1人当たり年間60〜120万円程度が支給されるようです。
起業支援金制度
起業支援金制度は、地域課題の解決を目的とした起業に対する支援制度で、具体的な内容は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
補助上限額 | 200万円 |
補助率 | 1/2 |
対象経費 | 起業時に必要な人件費・備品・設備・広告・賃借料 |
対象地域 | 原則:地方圏/条件不利地域中心(埼玉県都市部などは対象外が多い) |
公募時期 | 地域・年度ごと。2025年度は一部地域で終了・再開の予定もある |
返済義務 | 不要(助成金のため) |
起業に必要な経費の1/2(最大200万円)が補助され、対象費用は起業時の人件費や設備費、賃借料などです。
企業支援金制度は、都心以外で起業する方を支援するのが目的なので、地方で訪問介護事業を始める方は活用しやすいでしょう。
申請時には事業計画書や経費の見積もりなどが必要です。
訪問介護の事業運営でよくある失敗
訪問介護の事業運営でよくある失敗は以下のとおりです。
- 人手不足
- 利用者不足
- 運転資金の不足
訪問介護の運営にはさまざまな課題がありますが、ここでは対策も紹介するので、安定した事業を運営するためにも、確認してみてください。
人手不足
人手不足は訪問介護事業所が直面する深刻な問題の1つです。
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、人手不足だと感じている訪問事業所は令和5年の時点で59.7%となっています。
それに比べて施設は34.7%なので、とくに訪問介護員の人材確保が困難な状況です。
人手不足が続くと、担当している利用者のサービス提供が困難になる場合があります。
そのため事業者は、働きやすい環境づくりや適切な給与設定、研修制度の充実などを通じてスタッフの定着率向上を図る必要があります。
利用者不足
利用者が集まらないことは、事業の存続に直接影響する深刻な問題です。
2025年に実施された東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業所の倒産件数は45件でした。
倒産理由の多くが、介護報酬の切り下げや利用者の減少などによる売上不振です。
地域に既存の事業所が多数あり、新規参入した事業所の認知度が低い場合、利用者の獲得は困難です。
そのため、地域のケアマネジャーとの連携強化やサービスの質向上、積極的な営業活動などを通じて利用者の獲得を図る必要があります。
運転資金の不足
介護事業は十分な運転資金がないと事業を継続できません。
なぜなら事業所の売上は、サービス提供月から2か月後に振り込まれるからです。
介護報酬の審査や支払い業務を請け負っているのは、市町村から委託を受けた国民健康保険団体連合会(国保連)です。
事業者は、サービス実施月の翌月10日までに国保連に介護報酬を請求すると、翌々月(25日頃) に支払いを受けます。
そのため十分な運転資金を用意していないと、毎月必ず支払う人件費や家賃などを払えなくなってしまいます。
運転資金がショートしないためにも、3〜6か月間分の資金は用意しておきましょう。
それに加えて詳細な会計管理や金融機関との良好な関係構築などをし、安定した資金管理をしておく必要があります。
よくある質問
訪問介護の開業に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 訪問介護を開業すると年収はどのくらい?
- 訪問介護の運営は儲かる?
- 訪問介護を開業した場合、どこで営業する?
訪問介護を開業すると年収はどのくらい?
令和6年に実施された「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、訪問介護事業所に勤めるサービス提供責任者の給料は36万7,190円となっています。
年収にすると約440万円ですが、訪問介護事業所の開業者の年収は、事業規模や経営状況により大きく異なります。
開業初期は利用者の確保が困難で、年収200万円以下になることも珍しくありません。
利用者数が増加し、事業が軌道に乗れば年収600〜800万円までに昇ることもあるでしょう。
そのため、明確な年収は開業してみないとわからないのが現実です。
訪問介護の運営は儲かる?
適切に運営をすれば、訪問介護事業は安定した収益を確保できます。
なぜなら介護報酬は公定価格で安定しており、需要も高齢化に伴い増加傾向にあるからです。
厚生労働省の「令和5年介護事業経営実態調査結果の概要」によると、令和4年の訪問介護事業所の収益率は7.8%となっています。
日本政策金融公庫がおこなった「訪問・通所介護事業者の経営実態」では、訪問介護事業所の売上高で最も多いのが200〜400万円なので、月15〜30万円程度の利益を見込めます。
【訪問介護の収益率と利益額】
- 令和4年の訪問介護事業所の収益率:7.8%
- 訪問介護の一般的な売上:200〜400万円
→利益額:月15〜30万円程度
ITを活用した効率的なサービス体制や、人件費を適切に管理することで、さらに安定した収益を確保することが可能です。
訪問介護を開業した場合、どこで営業する?
訪問介護事業所の営業先は、おもに地域のケアマネジャーと利用者・家族です。
ケアマネジャーは利用者にサービス事業所を紹介する役割を担っているため、良好な関係を築くことが利用者獲得の鍵となります。
居宅介護支援事業所を定期的に訪問し、事業所の特徴やサービス内容を説明することで、紹介を受けやすくなるでしょう。
また地域の高齢者やその家族に対して、パンフレットの配布やセミナーの開催などの直接的な営業活動も効果的です。
まとめ: 事前準備や必要な資金を把握して訪問介護の開業を成功させよう
訪問介護事業所の開業は、適切な準備と計画があれば成功できる事業です。
法人設立から指定申請まで、各段階で必要な手続きを確実に進めることが大切です。
開業には数百万円の初期費用と運転資金が必要ですが、各種助成金制度を活用することで、資金調達の負担を軽減できます。
また人手不足や利用者確保といった運営上の課題も、事前に対策を講じることで乗り越えることが可能です。
今後は高齢化社会が進んでいくので、訪問介護サービスの需要は増加が見込まれます。
事前準備と適切な資金計画を立てれば、地域に貢献する訪問介護事業所を開業できるはずです。
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