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介護現場におけるヒヤリハット報告書の書き方とは?具体的な記入例やポイントも解説
介護現場のヒヤリハット報告書の正しい書き方に悩んでいる方も多いでしょう。
適切な報告書の書き方がわからないと、重要な情報が抜け落ちたり、報告の目的が果たせていなかったりするケースが少なくありません。
このような状況が続くと、重大な事故につながる恐れや、施設の安全管理体制に疑問が投げかけられる可能性があります。
最後まで読めば、ヒヤリハット報告書の作成に悩むことなく、事故防止につながる質の高い報告ができるようになるので、ぜひ読み進めてみてください。
介護現場におけるヒヤリハットとは?基本知識や重要性
ここでは、介護現場におけるヒヤリハットの基本知識や重要性を紹介します。
読むことで、ヒヤリハットを提出する意味や根拠がわかります。
ヒヤリハットとは介護事故につながる一歩手前のこと
ヒヤリハットとは、「ヒヤリ」や「ハッ」とする重大な事故につながる可能性がある出来事のことです。
建設業界や製造業、運送業など、大きな事故が生命を脅かす危険につながる業界では、危険な事故につながる場面に出くわしたらヒヤリハットに該当します。
介護現場では以下のような状況に遭遇した場合、ヒヤリハット報告書を作成します。
【介護現場におけるヒヤリハットの例】
- ベッドから立ち上がろうとしてふらついたが、介護士がすぐに支えて転倒を回避した。
- 刻み食を用意すべき利用者に普通食を提供しそうになったが、配膳前に気づいて差し替えた。
- 誤った薬を渡そうとしたが、ダブルチェックで間違いに気づいた。
- 浴室で滑りかけたが、滑り止めマットが効いて転倒を防げた。
重大な事故が起きる一歩手前で職員が気づいたり防いだりした場合は、ヒヤリハットの対象です。ヒヤリハット報告書を提出し、この防止策を検討します。
ハインリッヒの法則から見るヒヤリハットの重要性
ヒヤリハットは、ハインリッヒの法則に基づいて考えられています。
ハインリッヒの法則とは、重大な事故の1件は29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットで起きているという法則のことです。
重大事故は突然起きるのではなく、小さなミスや見逃しが積み重なった結果で発生します。
そのため、ヒヤリハットや軽微な事故の段階で対応・改善を行えば、重大事故を未然に防げるのです。
介護事故は最悪の場合、死亡事故に発展し、事業所や介護職が訴えられる場合もあります。
しかしヒヤリハットが多いほど介護事故を未然に防げる可能性が上がるので、介護業界ではヒヤリハットが重要視されています。
ヒヤリハットが起きる原因
ヒヤリハットが起きる原因は以下のとおりです。
- 利用者側の原因
- 介助者側の原因
- 設備や作業環境の問題
大きく分けて上記3つの原因にしぼられます。
利用者側の原因
ヒヤリハットは、利用者の身体的・認知的な変化によって起こることがあります。
なぜなら、高齢者の行動は予測しづらく、介助者が注意していても完全に防ぐのは困難だからです。
例えば、認知症による見当識障害があると、急な立ち上がりや食事ではない物を口にしてしまうことがあります。
そのような事態が起こると、転倒や誤飲などのリスクを高めます。
利用者側が原因になり得るヒヤリハットを減らすには、高齢者を日々観察して小さな変化を見逃さない姿勢が必要です。
介助者側の原因
介助者の判断ミスや確認不足などのヒューマンエラーも、ヒヤリハットの一因です。
とくに忙しさから声かけを省略したり、マニュアル通りの対応ができなかったりすることで事故のリスクが高まります。
例えば急ぐあまり、移乗介助の際に利用者の準備が整っていないまま介助すると、転倒や怪我につながるでしょう。
正確な手順と冷静な対応を意識することが、介助者によるヒヤリハットを減らせます。
設備や作業環境の問題
物理的な環境もヒヤリハットになる重要な原因です。
廊下に物が置かれていたり手すりの一部が破損していたりすると、利用者も介助者も危険にさらされます。
また常夜灯や部屋の照明が切れていると、利用者が夜中につまずく原因にもなります。
事故を未然に防ぐためにも環境整備を整えて、安全な状態を常に保ちましょう。
ヒヤリハットを書く目的
事故を防ぐこと以外にもヒヤリハットを書く目的はあります。
具体的には以下のとおりです。
- 重大な事故を防ぐため
- 情報共有をするため
- 介護サービスの質を高めるため
- 自身や事業所を守るため
サービスの質を上げるだけでなく、自身の権利を守るためにもヒヤリハットは役に立ちます。
重大な事故を防ぐため
ヒヤリハットの記録は、重大事故の発生を未然に防ぐために行います。
些細な出来事も振り返ることで、同様の状況を再発させないための対策が見えてきます。
現場全体で共有することで、職員一人ひとりの安全意識も高まります。
「大きな事故が起きる前に気づけた」と言えるように、ヒヤリハットの記録を活用することが大切です。
情報共有をするため
ヒヤリハット報告書があることで、他職種や家族と情報共有ができます。
介護現場では、医師や看護師、理学療法士などさまざまな職種とかかわります。
また、ヒヤリハットや事故が発生した場合には、家族にも報告するので情報をまとめた書類が必要です。
その際にどのような流れで発生したのか、どのような対策をしたのかの情報があることで、各職種で適切な対策ができます。
家族にもわかりやすく説明できるので、問題がなぜ起きたのか理解してもらいやすくなります。
ヒヤリハット報告書は、介護にかかわる方々と情報をスムーズに共有するための大切なツールです。
【体験談】
事故対策委員会に所属していたときは、ヒヤリハット報告書をもとに会議を進めていました。
どの利用者にどのくらいのヒヤリハットの数が出ているかをチェックすることで、具体的な再発防止策が立てられます。
そうすることで、重大な事故を防げることがあったので、ヒヤリハット報告書は重要だと感じました。
介護サービスの質を高めるため
ヒヤリハットを共有することは、ケアの質を高める観点から考えても大切です。
事故原因の分析と再発防止策を話し合うことで、同じ問題を再度起こす可能性を低くできます。
例えば、ヒヤリハット報告書から1つの事例を取り上げて、グループワークをしたり議論をしたりするのが効果的です。
働いている間でも注意する部分が明確になり、重大な事故に発展する前に問題を抑止できます。
また、職員のケアを見直すきっかけにもなるので、常態化された問題や形骸化されたルールを定期的に修正することが可能です。
ヒヤリハットを有効的に活用して、介護サービスの質を高めていきましょう。
自身や事業所を守るため
ヒヤリハット報告書に発生までの状況や原因分析、再発防止策などが明確に記載されていることで、職員や事業所は守られます。
なぜなら、ヒヤリハット報告書は万が一介護事故が発生した際に、事業所が適切な対応をしたかを証明するための書類だからです。
そのため、ヒヤリハット報告書の内容が曖昧だったり疎かだったりすると、行政から何らかの罰則を受ける可能性があります。
最悪の場合、裁判に発展して職員が訴えられてしまうケースもあるので、自身や事業所を守るためにもヒヤリハットは明確に記載しなくてはいけません。
【体験談】
記録は万が一事故が発生した際に大切な証拠になるため、自分自身を守るためにもしっかり書くように先輩職員からは言われていました。
ヒヤリハットも同じく、適切なケアをしていたかを証明する書類になるので、何か気になることがあればすぐに提出してほしいと言われていました。
介護現場におけるヒヤリハットの書き方
介護現場におけるヒヤリハットの書き方を紹介します。
具体的には以下のとおりです。
- 5W1Hを意識して書く
- 客観的事実に基づいて書く
- 専門用語を避けてわかりやすい表現で記載する
- 原因分析と再発防止策を書く
とくに文章の書き方に迷ってしまう方は、5W1Hを意識することを心がけると、わかりやすい文章が簡単に書けるのでおすすめです。
5W1Hを意識して書く
5W1Hを意識することで、ヒヤリハット報告書は完成度が高まります。
5W1Hとは、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、誰に対して(Whom)、何を(What)、どのように(How)のことで、これらを文章に反映させます。
例えば以下のように記載することが可能です。
【5W1Hを意識した文章】
例文)
「4月10日午前9時30分、2階食堂で、介護スタッフAが利用者Bさんの食事介助中、スプーンを取り落としそうになった」
いつ(When) | 4月10日午前9時30分 |
どこで(Where) | 2階食堂で |
誰が(Who) | 介護スタッフAが |
誰に対して(Whom) | 利用者Bさんの |
何を(What) | 食事介助中 |
どのように(How) | スプーンを取り落としそうになった |
5W1Hを意識することで状況を詳細に書けるので、正確な情報が伝わり、効果的な対策の立案につながります。
客観的事実に基づいて書く
ヒヤリハット報告書は客観的事実に基づいて記載することが必要です。
主観で記載してしまうと事実が伝わりにくくなってしまい、正確な対策につながりません。
「利用者さんがふらついていた」ではなく「利用者さんが廊下を歩行中、右側に少し傾き、手すりに手を伸ばした」など、見たまま・起きたままを具体的に記録します。
自分の憶測や感情を含めず、解釈や判断は避け、観察した事実だけを書くことで、正確に情報共有できます。
こうした客観的記録が適切な対策立案の基礎となるのです。
専門用語を避けてわかりやすい表現で記載する
ヒヤリハット報告書はわかりやすい表現で記載することが大切です。
医療・介護の専門用語は、同じ施設内でも職種によって解釈が異なります。
またヒヤリハット報告書は家族が読む場合もあり、専門用語ばかりだと理解してもらえない可能性があります。
ヒヤリハットを書く際には、「ADL低下による転倒リスク」ではなく、「日常の生活動作が低下し、転びやすい状態」というように、誰が読んでも理解できる言葉を選びましょう。
平易な言葉で具体的に表現することで、全スタッフが同じ理解を持ち、情報共有の質が向上します。
わかりやすい表現が安全な介護環境づくりの第一歩です。
原因分析と再発防止策を書く
ヒヤリハット報告書には、原因分析と再発防止策を記載することが不可欠です。
なぜなら、原因と再発防止策を考えることで、大きな事故を未然に防げるからです。
原因分析には「床が濡れていた」「照明が暗かった」などの環境要因や、「歩行器の高さ調整が不適切だった」などの使用機器の問題も記載します。
そして再発防止策として「廊下の照明を明るくする」「定期的に床の乾燥状態を確認する」など、具体的で実行可能な防止策を提案します。
こうした分析と対策の記録が、施設全体の安全向上につながるのです。
【例文あり】介護施設でよく起こるヒヤリハットの事例と書き方
ここでは、介護施設でよく起こるヒヤリハットの事例と書き方を紹介します。
現場のフォーマットとは異なる可能性がありますが、どのように書くかイメージが湧くので、ぜひ参考にしてみてください。
転倒・転落に関するヒヤリハットの事例と書き方
転倒・転落に関するヒヤリハットの事例と書き方は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:佐藤明子 |
発生日時 | 2025年4月8日 14:30頃 |
発生場所 | 2階居室301号室 |
ヒヤリハットした場面 | 利用者C様がベッドから車椅子に移乗しようとした際、介助者の手を振り払い自力で立ち上がろうとして、バランスを崩して転倒しそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 床が多少濡れていた 設備機器の問題: なし 作業方法の問題: 一人での介助だった あなた自身の問題: 利用者の行動を予測できていなかった |
原因 | ・利用者の自立心が強く、自分でできると思い込んでいた ・移乗の際の声かけが不十分だった |
再発防止策 | ・配薬前に必ず薬袋の氏名と利用者の顔を照合する ・配薬時は他の業務と並行せず集中して行う・複数のスタッフによるダブルチェック体制を導入する ・薬袋の表記を大きくし、色分けするなど視認性を高める |
服薬関連のヒヤリハットの事例と書き方
服薬関連のヒヤリハットは以下で詳しく説明しています。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:田中健太 |
発生日時 | 2025年4月9日 8:15頃 |
発生場所 | 食堂 |
ヒヤリハットした場面 | 朝食後の配薬時、利用者D様に別の利用者E様の薬を渡しそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 食堂が混雑していた設備機器の問題: なし 作業方法の問題: 薬の仕分け方法が不十分 あなた自身の問題: 確認が不十分だった |
原因 | ・配薬トレイの中で利用者名の似ている薬袋が隣接していた ・朝の忙しい時間帯で注意力が散漫になっていた ・薬袋の氏名確認を目視のみで行った |
再発防止策 | ・配薬前に必ず薬袋の氏名と利用者の顔を照合する ・配薬時は他の業務と並行せず集中して行う ・複数のスタッフによるダブルチェック体制を導入する ・薬袋の表記を大きくし、色分けするなど視認性を高める |
食事介助時のヒヤリハットの事例と書き方
食事介助時のヒヤリハットの事例と書き方を紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:鈴木花子 |
発生日時 | 2025年4月7日 12:20頃 |
発生場所 | 2階食堂 |
ヒヤリハットした場面 | 嚥下機能が低下している利用者F様が、急いで食事を摂ろうとして大きな食塊を一度に口に入れ、むせ込みそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 食堂が賑やかで利用者が焦った様子だった 設備機器の問題: なし 作業方法の問題: 介助ペースが利用者の嚥下ペースに合っていなかった あなた自身の問題: 一瞬目を離した隙に利用者が自分で食べ始めた |
原因 | ・食事形態(刻み食)が利用者の現在の嚥下機能に合っていなかった ・利用者が「早く食べないと」という焦りを感じていた ・食事介助の途中で他の利用者への対応があり、注意が散漫になった |
再発防止策 | ・利用者の嚥下機能を再評価し、より適切な食事形態(ミキサー食等)に変更する ・食事介助は1対1で集中して行い、途中で中断しない ・「ゆっくり食べましょう」と声かけを増やし、利用者のペースに合わせる ・ 嚥下状態に合わせた一口量を守り、次の一口は嚥下を確認してから提供する |
入浴時のヒヤリハットの事例と書き方
入浴時のヒヤリハットの事例と書き方は以下で詳しく説明しています。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:山田太郎 |
発生日時 | 2025年4月6日 15:40頃 |
発生場所 | 1階浴室 |
ヒヤリハットした場面 | 入浴後、利用者G様が浴室から脱衣所に移動する際、床の濡れた部分で滑り、転倒しそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 床が濡れて滑りやすかった 設備機器の問題: 浴室と脱衣所の境界に滑り止めマットが不足していた 作業方法の問題: 移動介助が1人で行われていた あなた自身の問題: 床の状態を事前に確認していなかった |
原因 | ・前の利用者の入浴後、床の水分を十分に拭き取れていなかった ・滑り止めマットの設置位置が適切でなかった ・利用者の歩行状態に対して介助者が1人だった |
再発防止策 | ・入浴ごとに床を乾燥させる時間を確保し、水分を完全に拭き取る ・浴室と脱衣所の境界に大きめの滑り止めマットを追加設置する ・歩行不安定な利用者の入浴介助は必ず2人体制で行う ・入浴介助チェックリストに「床の乾燥確認」の項目を追加する |
排せつ介助時のヒヤリハットの事例と書き方
排せつ介助は、転倒リスクや設備状況に気をつける必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:中村洋子 |
発生日時 | 2025年4月6日 9:40頃 |
発生場所 | 2階トイレ個室 |
ヒヤリハットした場面 | 利用者I様のトイレ介助中、便座からの立ち上がり時に、声かけをする前に利用者が自力で立とうとして、バランスを崩して転倒しそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: トイレ内が狭く介助スペースが限られていた 設備機器の問題: 手すりの位置が利用者の身長に合っていなかった 作業方法の問題: 立ち上がり前の声かけが不十分だった あなた自身の問題: 利用者の行動予測ができていなかった |
原因 | ・利用者の自立心が強く、介助を待たずに立ち上がろうとした ・介助者の立ち位置が利用者を支えるのに適切でなかった ・排泄後の手順について利用者への説明が不足していた ・利用者の下肢筋力低下を十分に考慮していなかった |
再発防止策 | ・トイレ介助時は「次に立ち上がります」など一つ一つ動作前に声かけを徹底する ・介助者の立ち位置を利用者の正面または斜め前に変更し、いつでも支えられる体勢をとる ・トイレ内の手すりの位置や高さを利用者に合わせて調整する ・下肢筋力低下のある利用者のトイレ介助は必要に応じて2人体制で行う |
着脱介助時のヒヤリハットの事例と書き方
着脱介助時のヒヤリハットの事例や書き方は以下で詳しく説明しています。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:高橋理恵 |
発生日時 | 2025年4月6日 7:30頃 |
発生場所 | 3階居室302号室 |
ヒヤリハットした場面 | 右片麻痺のある利用者J様の着替え介助時、上着を脱がせる際に健側から脱がせようとして、利用者がバランスを崩し、ベッドから転落しそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 居室が狭く動きづらかった 設備機器の問題: なし 作業方法の問題: 片麻痺の方の着脱介助の手順が適切でなかった あなた自身の問題: 朝の忙しい時間帯で焦っていた |
原因 | ・利用者の自立心が強く、介助を待たずに立ち上がろうとした ・介助者の立ち位置が利用者を支えるのに適切でなかった ・排泄後の手順について利用者への説明が不足していた ・利用者の下肢筋力低下を十分に考慮していなかった |
再発防止策 | ・トイレ介助時は「次に立ち上がります」など一つ一つ動作前に声かけを徹底する ・介助者の立ち位置を利用者の正面または斜め前に変更し、いつでも支えられる体勢をとる ・トイレ内の手すりの位置や高さを利用者に合わせて調整する ・下肢筋力低下のある利用者のトイレ介助は必要に応じて2人体制で行う |
移乗・移動時のヒヤリハットの事例と書き方
移乗・移動時のヒヤリハットの事例と書き方は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:伊藤誠 |
発生日時 | 2025年4月5日 10:10頃 |
発生場所 | 3階リハビリ室 |
ヒヤリハットした場面 | リハビリ終了後、利用者H様を車椅子からソファへ移乗介助する際、スライディングボードの設置が不十分で、利用者が滑り落ちそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: リハビリ室が混雑していた 設備機器の問題: スライディングボードの固定が不十分だった 作業方法の問題: 利用者の体重に対して介助者の体勢が適切でなかった あなた自身の問題: 移乗前の準備と声かけが不足していた |
原因 | ・利用者の体重が介助者の予想より重く、移乗時のバランスが崩れた ・スライディングボードの設置角度が適切でなかった ・一人で介助を行おうとした ・リハビリ後で利用者の疲労があった |
再発防止策 | ・体重のある利用者の移乗は必ず2人以上で行う ・スライディングボードの使用方法を再確認し、設置方法を統一する ・移乗前に利用者の状態(疲労度など)を確認し、必要に応じて休憩をとる ・介助者の移乗技術向上のための研修を定期的に実施する |
コミュニケーション時のヒヤリハットの事例と書き方
コミュニケーションに関するヒヤリハットの事例と書き方は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
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報告者 | 介護職:中村和子 |
発生日時 | 2025年4月10日 9:45頃 |
発生場所 | 1階デイルーム |
ヒヤリハットした場面 | 聴覚障害のある利用者I様に薬の変更について口頭のみで説明し、理解されていないまま服薬させそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: デイルームが混雑していた 設備機器の問題: コミュニケーションボードが手元になかった 作業方法の問題: 口頭のみでの説明だった あなた自身の問題: 利用者の障害特性に配慮した伝達方法を選択できていなかった |
原因 | ・聴覚障害のある利用者に適したコミュニケーション手段を使用しなかった ・忙しい時間帯で十分な説明時間を確保できなかった ・利用者が理解したかどうかの確認が不十分だった |
再発防止策 | ・聴覚障害のある利用者には必ず筆談ボードや絵カードを使用する ・重要な説明は静かな環境で十分な時間をかけて行う ・利用者が理解したことを確認するため、内容を復唱してもらうなどの工夫をする ・全職員が使えるよう各フロアにコミュニケーションツールを常備する |
感染対策に関するヒヤリハットの事例と書き方
感染対策に関するヒヤリハットも、高齢者の免疫力低下を考慮すると注意すべき事例です。
具体的な例文は以下で詳しく説明しています。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:小林健太 |
発生日時 | 2025年4月10日 11:25頃 |
発生場所 | 2階浴室前脱衣所 |
ヒヤリハットした場面 | インフルエンザ疑いのある利用者J様のケア後、手袋を交換せずに別の利用者のケアに移ろうとした |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 脱衣所が混雑していた 設備機器の問題: 手袋の在庫が手の届く場所になかった 作業方法の問題: 標準予防策の手順が遵守されていなかった あなた自身の問題: 感染対策への意識が一時的に低下していた |
原因 | ・入浴介助の時間帯で忙しく、手袋交換の必要性を一時的に忘れていた ・感染症対策マニュアルの内容が十分に身についていなかった ・脱衣所の手袋配置が使いにくい位置にあった |
再発防止策 | ・利用者対応の合間には必ず手袋交換と手指消毒を行う習慣をつける ・脱衣所内に手袋と手指消毒剤を複数箇所に設置する ・感染対策マニュアルの定期的な勉強会を実施し、理解度をチェックする ・感染リスクのある利用者のケア前後にはチェックリストで確認作業を行う |
認知症ケアに関するヒヤリハットの事例と書き方
介護現場では、認知症の利用者とかかわる機会が多いので、ヒヤリハットの事例と書き方を知っておくことは重要です。
項目 | 内容 |
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報告者 | 介護職:高橋美咲 |
発生日時 | 2025年4月10日 16:30頃 |
発生場所 | 施設正面玄関付近 |
ヒヤリハットした場面 | 帰宅願望の強い認知症利用者K様が無断で施設の玄関から外に出ようとし、交通量の多い道路へ向かいそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 玄関の施錠確認が不十分だった 設備機器の問題: センサーの電池切れで警報が鳴らなかった 作業方法の問題: 夕方の帰宅願望が強まる時間帯の見守りが不足していた あなた自身の問題: 利用者の帰宅願望のサインを見逃していた |
原因 | ・夕方の時間帯に見守りが手薄になっていた ・玄関のセンサーの点検不足で作動していなかった ・利用者の帰宅願望への対応方法が職員間で共有されていなかった |
再発防止策 | ・帰宅願望が強まる夕方の時間帯(15:00~17:00)は職員の配置を増やす ・センサー類の定期点検を毎日実施し、チェックシートに記録する ・認知症の方の心理的ニーズを理解するための研修を実施する ・帰宅願望が出た際の対応手順をマニュアル化し、全職員で共有する |
レクリエーション時のヒヤリハットの事例と書き方
レクリエーション時のヒヤリハットの事例と書き方は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
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報告者 | 介護職:岡田幸子 |
発生日時 | 2025年4月10日 14:30頃 |
発生場所 | 1階フロア |
ヒヤリハットした場面 | 風船バレーのレクリエーション中、複数の利用者が同時に風船に手を伸ばし、車椅子同士がぶつかりそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: レクリエーションスペースが狭かった 設備機器の問題: 車椅子のブレーキがかかっていなかった 作業方法の問題: 参加者の配置に配慮が足りなかった あなた自身の問題: 参加者の動きを予測できていなかった |
原因 | ・車椅子使用者と歩行可能な利用者が混在して参加していた ・レクリエーション前のルール説明と安全指導が不十分だった ・参加者間の距離が近すぎた ・職員の配置と役割分担が明確でなかった |
再発防止策 | ・レクリエーション前に参加者の身体状況に応じた適切な配置計画を立てる ・車椅子使用者は活動中もブレーキをかけ、安全確保を徹底する ・活動前に全参加者に分かりやすいルール説明と安全上の注意点を伝える ・職員の役割分担を明確にし、見守り担当と進行担当を分ける |
屋外活動のヒヤリハットの事例と書き方
屋外活動のヒヤリハットは以下で詳しく説明しています。
項目 | 内容 |
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報告者 | 介護職:木村賢太 |
発生日時 | 2025年4月15日 14:20頃 |
発生場所 | 施設裏庭の散歩コース |
ヒヤリハットした場面 | 屋外散歩レクリエーション中、利用者K様が急に立ち止まって座り込もうとし、そのまま転倒しそうになった。顔色が悪く、熱中症の初期症状が疑われた |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 気温が予想より高く、日陰が少なかった 設備機器の問題: 屋外に休憩用のベンチが不足していた 作業方法の問題: 参加者の体調変化の確認が不十分だった あなた自身の問題: 熱中症リスクの評価が不足していた |
原因 | ・車椅子使用者と歩行可能な利用者が混在して参加していた ・レクリエーション前のルール説明と安全指導が不十分だった ・参加者間の距離が近すぎた ・職員の配置と役割分担が明確でなかった |
再発防止策 | ・レクリエーション前に参加者の身体状況に応じた適切な配置計画を立てる ・車椅子使用者は活動中もブレーキをかけ、安全確保を徹底する ・活動前に全参加者に分かりやすいルール説明と安全上の注意点を伝える ・職員の役割分担を明確にし、見守り担当と進行担当を分ける |
送迎時のヒヤリハットの事例と書き方
送迎時のヒヤリハットは、交通事故のリスクに加え、乗降時の転倒や体調変化など複合的なリスクを含むので注意しましょう。
項目 | 内容 |
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報告者 | 介護職:渡辺隆 |
発生日時 | 2025年4月13日 8:30頃 |
発生場所 | 利用者L様宅前の送迎車乗降場所 |
ヒヤリハットした場面 | 雨天時の送迎で、利用者L様が滑りやすくなった踏み台を使って送迎車に乗る際にバランスを崩し、転倒しそうになった |
どのような問題があった? | ・作業環境の問題: 雨で地面と踏み台が濡れていた ・設備機器の問題: 踏み台の滑り止めが十分でなかった ・作業方法の問題: 雨天時の乗降介助方法が適切でなかった ・あなた自身の問題: 雨天時の特別な注意点を意識していなかった |
原因 | ・雨で地面と踏み台が滑りやすくなっていた ・片手で傘を持ちながらの介助で十分な支えができていなかった ・雨天時の乗降介助の手順が明確になっていなかった |
再発防止策 | ・雨天時用の滑り止め付き踏み台を導入し、通常の踏み台と使い分ける ・雨天時は必ず2人体制で乗降介助を行い、1人は傘を持ち、もう1人は両手で介助する ・雨天時の送迎手順をマニュアル化し、定期的に確認研修を行う ・送迎前に天候を確認し、雨天時は余裕をもった時間設定に変更する |
記録・申し送りに関するヒヤリハットの事例と書き方
記録や申し送りが原因でヒヤリハットにつながるケースもあります。
具体的な例文や書き方は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:木村真理 |
発生日時 | 2025年4月13日 7:10頃 |
発生場所 | 介護ステーション |
ヒヤリハットした場面 | 利用者M様の食事形態が変更されたにもかかわらず、申し送りノートに記載されておらず、変更前の食事形態で提供しそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 申し送り時間が短かった 設備機器の問題: 申し送りシステムが複数あり統一されていなかった 作業方法の問題: 重要情報の伝達方法が明確でなかった あなた自身の問題: 食事提供前の確認が不十分だった |
原因 | ・夜勤から日勤への申し送り時間が不足していた ・食事形態の変更が申し送りノートではなく個別記録にのみ記載されていた ・変更情報の重要性を示す視覚的な印がなかった ・食事提供前のダブルチェック体制が機能していなかった |
再発防止策 | ・重要情報(食事、服薬、医療処置など)は専用の申し送りボードに色分けして表示する ・申し送り時間を5分延長し、重要事項の確認時間を確保する ・食事提供前に必ず栄養士と介護職で食事形態をダブルチェックする ・電子記録システムを導入し、情報の一元管理を図る |
身体拘束・虐待防止に関するヒヤリハットの事例と書き方
身体拘束・虐待防止に関するヒヤリハットは、利用者の人権に直接関わる重要な問題です。
職員側は常に気をつける必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
報告者 | 介護職:吉田直樹 |
発生日時 | 2025年4月15日 20:15頃 |
発生場所 | 3階居室302号室 |
ヒヤリハットした場面 | 転倒リスクの高い利用者N様が夜間にトイレへ行こうとするのを防ぐため、ベッド柵で四方を囲もうとしたところ、他職員に注意を受けた |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 夜間の見守り職員が少なかった 設備機器の問題: センサーマットの不調があった 作業方法の問題: 身体拘束に関する判断基準が不明確だった あなた自身の問題: 業務効率を優先して身体拘束につながる対応を選択しそうになった |
原因 | ・夜勤帯の人員不足から頻回な見守りが困難だった・身体拘束に該当する行為の理解が不十分だった・ 緊急やむを得ない場合の判断基準と手続きが明確でなかった・ 代替手段(低床ベッドなど)の検討が不足していた |
再発防止策 | ・身体拘束廃止に関する研修を全職員対象に実施する ・転倒リスクの高い利用者には低床ベッドや畳スペースの活用を検討する ・センサー機器の定期点検と予備機の常備を徹底する ・夜間帯の見守り体制を強化し、巡回頻度を増やす ・身体拘束を検討する場合の多職種カンファレンス開催を必須とする |
福祉用具使用時のヒヤリハットの事例と書き方
車椅子や杖など、福祉用具の整備不足や選定ミスによってもヒヤリハットは起こります。
項目 | 内容 |
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報告者 | 介護職:斎藤雄二 |
発生日時 | 2025年4月15日 13:25頃 |
発生場所 | 2階廊下 |
ヒヤリハットした場面 | 利用者O様の車椅子移動中にフットレストの高さ調整が不適切だったため、足が床に引っかかり前のめりになりそうになった |
どのような問題があった? | 作業環境の問題: 廊下に小さな段差があった 設備機器の問題: 車椅子のフットレストの調整機能が固くなっていた 作業方法の問題: 移動前の車椅子調整確認が不足していた あなた自身の問題: 利用者の足の位置に注意を払っていなかった |
原因 | ・車椅子のフットレストの高さが利用者の足の長さに合っていなかった ・車椅子の定期点検が行われておらず、調整部分が固くなっていた ・移動前のフットレスト位置確認が習慣化されていなかった ・複数の利用者で同じ車椅子を使用する際の調整手順が明確でなかった |
再発防止策 | ・車椅子使用前のチェックリスト(ブレーキ、フットレスト、シートなど)を作成し活用する ・利用者ごとに適した車椅子の調整値を表示し、すぐに確認できるようにする ・福祉用具の月次点検日を設け、専門業者による定期メンテナンスを実施する ・福祉用具の適切な選定と調整に関する研修を実施する |
まとめ:ヒヤリハットの書き方を覚えて利用者や自身を守ろう
ヒヤリハットの書き方を覚えておくことは、情報共有や再発防止の観点からとても大切です。
介護現場は多くの職種とかかわるので、それぞれが常に同じ情報を共有しておくことは不可能です。
また、万が一介護事故が発生した場合に職員や事業所が適切なケアをしていたことを証明するための書類になります。
そのため、介護職にはヒヤリハットのような記録を正確に書くスキルが求められます。
具体的には、5W1Hの意識や専門用語を避けるなどをして文章を作成するのがおすすめです。
また実際の事例や先輩の書類を読み、どのように書き進めているのか参考にしながら覚えていくことも大切です。
本記事で紹介したヒヤリハットの書き方を参考にし、文章作成をする抵抗感をなくしていきましょう。
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