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【記入例文あり】介護現場での事故報告書の書き方を4つのポイントで解説!
「事故報告書の書き方がわからない」という悩みを抱えていませんか?適切な書き方を知らないと、書き直しや指摘を受け、作成に時間がかかります。
具体的な例文も紹介するため、現場で役立つ内容です。
この記事を読めば、スムーズに事故報告書を作成でき、利用者に寄り添った再発防止策も提案できるようになります。ぜひご一読ください。
【ケース別マニュアル】介護事故における報告書の書き方を例文で紹介
事故報告書の記載項目は多く、初めて書く方は戸惑う場合もあるでしょう。
そこで、以下の状況別での記入例を紹介します。
- 転倒した場合
- 尻もちをした場合
- 誤嚥した場合
- 表皮剥離をした場合
上記の事例は実際の現場でも起こる可能性が高い事故なので、ぜひ参考にしてみてください。
転倒した場合
転倒が発生した場合の記入例は以下のとおりです。
【対象者】
佐藤花子様(85歳、女性)
要介護度4
【発生時状況・事故内容の詳細】
午後2時30分頃、2階廊下にて歩行器を使用して歩いている際、何らかの原因によりバランスを崩し前方へ転倒しているところを発見。
【発生時の対応】
佐藤様は歩行器を使用して自力歩行をされていた。
足取りには特に問題はない様子だった。
体調を確認するため声かけを行うと激しい痛みの訴えあり。
転倒現場からほかの職員に声をかけ看護師へ連絡。看護師によるバイタルチェックを行う。
15時00分に救急車を要請し、15時20分に○○総合病院に搬送。
【事故後の状況】
施設長から佐藤様のご長女に電話で連絡。事故の状況説明と病院案内
診断結果は、右大腿骨頸部骨折。
入院の上、手術予定
今後は約1ヶ月の入院加療が必要と診断された。
【事故原因の分析】
高齢による歩行時のバランス低下や床面の湿り気による滑りやすさ、見守り体制の一時的な不備が原因として考えられる
本人から話を聞くと「トイレに行きたかった」と言われていたため、急いで歩いてしまったのが原因として考えられる。
【再発防止策】
清掃後の床面を完全に乾燥させてから利用者の歩行を許可する。
歩行不安定な利用者の移動時は、常に職員が寄り添い、目を離さない。
歩行器の適合性を再評価し、必要に応じて変更する。
トイレ誘導や排泄介助が必要かを委員会で検討する。
ご家族からは、見守りの強化やリハビリの状況を週1回程度、電話で報告してほしいとのこと。
また、退院後の生活について、事前に詳しく説明してほしいとのこと。
尻もちをした場合
尻もちの事故が発生した場合の記入例は以下のとおりです。
【対象者】
田中正男様(78歳、男性)
要介護度3
【発生時状況・事故内容の詳細】
午前10時15分頃、1階浴室にて尻もちをつかれたところを発見。
脱衣所から浴室へ移動しようとした際、立ち上がろうとして転倒。
【発生時の対応】
田中様を脱衣所から浴室へお連れしようと立ち上がった際、尻もちをつかれた。その際、腰部を強打されたようで「腰が痛い」との訴えあり。こちらの声掛けには応じられているため意識はあり。
【事故後の対応】
痛みの訴えがあったため、その場から動かさずにすぐに看護師に連絡。バイタル測定実施。
体温〇〇
血圧△△/◻︎◻︎
血中酸素飽和度××
施設看護師の判断により、10時45分に協力医療機関の◻︎◻︎クリニックを受診。
診断の結果、腰部打撲とのこと。湿布薬処方、安静指示あり。
今後の見通しは、1週間程度の経過観察が必要とのこと。
【事故原因の分析】
直接的な要因としては、浴室床面の滑りやすさや立ち上がり動作時の不安定さが考えられる。
間接的な要因としては、入浴介助時の支援体制の不十分さや滑り止め対策の不足が考えられる。
【再発防止策】
浴室だけでなく脱衣所の床清掃を周知徹底する。
利用者を誘導する前に床面が濡れていないか確認し清掃する。
入浴介助時は常に利用者に寄り添い、体を支える態勢をとる
滑り止めマットの導入を検討する。
浴室の床に洗浄剤などの物品を置かない。
入浴介助技術向上のための研修を実施する。
必要に応じて入浴用の補助具(入浴用いす等)の使用を検討する。
誤嚥した場合
誤嚥事故が発生した場合の記入例は以下のとおりです。
【対象者】
山本和子様(92歳、女性)
要介護度4
【発生時状況・事故内容の詳細】
2023年9月5日 午後12時45分頃、2階食堂にて昼食を食べている山本様を確認すると、顔面の紅潮とむせ込みなどが見られ、呼吸が困難な様子だった。
【発生時の対応】
事故発生直後、すぐに背部叩打法の実施と応援要請をする。
気道確保のため他の職員を呼び、看護師に緊急連絡を依頼する。
【事故後の対応】
12時50分:施設看護師が対応し、症状が落ち着いたため、嘱託医に報告の上、施設内で経過観察となる。
13時00分:生活相談員からご家族へ事故の状況説明と経過報告。
嘱託医より誤嚥による一時的に呼吸困難になったため、酸素飽和度モニタリングを24時間実施するよう指示あり。
【事故原因の分析】
山本様は元々、食事をかき込んで食べられているので、食事摂取のペースが早かったのが要因として考えられる。
高齢に伴い、嚥下機能の低下も要因として考えられる。
食事介助時の見守り体制や食事形態の再検討の必要性もあり。
【再発防止策】
山本様の食事は必ず1対1で見守る体制をとる。
食事のペースをゆっくりにするよう声かけを増やす。
嚥下機能評価を再度行い、適切な食事形態を検討する。
食堂の座席配置を見直し、職員の見守りがしやすい環境を整える。
利用者全員の食事形態を見直す。
表皮剥離の場合
表皮剥離をした場合の事故報告書の例文は以下のとおりです。
【対象者】
中村洋子(88歳、女性)
要介護3
【発生時状況・事故内容の詳細】
2023年10月20日 午前11時20分頃、3階居室301号室にて中村様の居室へ伺った際、右腕前腕部(約5cm×3cm)の表皮剥離を発見。出血が少量見られた。
【発生時の対応】
発見後、すぐに看護師に連絡。
看護師にて創部の消毒と保護。
【事故後の対応】
11時28分:施設看護師が対応し居室内で感染予防と創部保護のため生理食塩水で洗浄後、消毒・処置を実施。
ガーゼで保護し医師への報告を行い、経過観察となる。
【事故原因の分析】
訪室した際、ベッド柵に血液が付着していたため、ベッド柵にぶつけてしまったと考えられる。
【再発防止策】
ベッド柵にクッション材を装着する。
中村様は認知症の傾向があるため、居室にいる際は定期的に訪室をして様子を確認する。
皮膚の状態に応じて保護材を使用する。
介護現場における事故報告書の作成手順
事故報告書は国が定めている記載事項に沿って書く必要があります。
具体的には以下の流れがおすすめです。
- 記載様式は厚生労働省が指定したものを使用する
- 報告期限は5日以内が目安
- 死亡事故や処置が必要な事故が発生した場合は必ず提出する
特に事故報告書の報告期限の目安は、事業所の信頼性や質の高い再発防止策を検討するうえでは重要なので、ぜひ参考にしてみてください。
記載様式は厚生労働省が指定したものを使用する
記載様式は厚生労働省が指定した様式を使用するよう、令和3年から決められています。
現在独自のフォーマットを使用している介護事業所も、将来的に統合される可能性があるため、指定様式を使用するのが望ましいでしょう。
報告期限は5日以内が目安
厚生労働省では、報告期限内は5日以内が目安とされています。
ただし、市区町村によっては3日以内などの場合もありルールが若干異なります。連絡期間を調べる際は、各都道府県のHPから確認してみましょう。
市区町村への事故報告の提出は、電子メールが望ましいようです。
死亡事故や処置が必要な事故が発生した場合は必ず提出する
事故報告書を記載する条件は以下のとおりです。
【事故報告書を記載する条件】
- 死亡に至った事故
- 医師(施設の勤務医、配置医を含む)の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故
その他の事故の報告については、各自治体により取扱いが異なります。
介護現場における事故報告書を記載する目的
事故報告書の意図がわかれば、事故の再発防止に努める意欲も変わります。こちらでは、介護現場における事故報告書に記載する目的を解説します。
具体的には以下のとおりです。
- 事故が起きた原因を明確にして再発防止に活用するため
- スタッフ全員に事故の対応を知ってもらうため
- 訴訟を起こされた際に職員を守るため
事故報告書を再発防止に活用できれば、同じ事故の発生を防げます。また書類の書き直しも少なくできるので、ぜひ参考にしてみてください。
事故が起きた原因を明確にして再発防止に活用するため
事故報告書は、事故が起きた原因を明確にして改善に努めるために記載します。
高齢者は、入所してからも少しずつ身体機能が低下していきます。時間が経つにつれて転倒や転落、誤嚥などが発生する危険性が高くなるのです。そのためケアを標準化するのは難しく、個別対応をしなくてはいけません。
事故報告書を記載することで事故の分析や収集が可能となり、事故が起こった原因が明確化できます。その結果、具体的な対策ができるため個別最適化した介護サービスが提供できるのです。
再発防止につながり、介護の質が上がるだけでなく、利用者の満足度もアップするでしょう。
スタッフ全員に事故の対応を知ってもらうため
事故報告書は事故の経緯をスタッフに共有するためにも大切です。
介護サービスは利用者の日常生活を安心・安全に送れるよう、知識と技術を持った専門職が連携しています。1人の利用者に対して多くの職員がかかわるので、再発防止策を統一するためにもスタッフ全員が事故の対応を知っておかなくてはいけません。
利用者やその家族のニーズに応えるケアを提供するためにもスタッフとの共有は重要です。
訴訟を起こされた際に職員を守るため
介護事故による訴訟リスクから職員を守るためにも事故報告書の記載は大切です。
事故によっては利用者やその家族から裁判を起こされる可能性があります。裁判に発展した際、弁護士に口頭で説明するだけでは、介護施設や運営会社の非が認められないケースもあるでしょう。その結果、職員個人が訴えられ、賠償金の請求をされることもあります。
しかし事故報告書の記録を残しておくことで、責任追及をするうえでの大切な証拠になるのです。
また事故内容によっては職員に非がある場合もあるので、謝罪をして示談に持ち込む場合もあります。家族に状況を説明するうえでも事故報告書は役立つのです。
大切な職員を訴訟されるリスクから守るためにも、事故報告書は重要です。
介護における事故報告書を書く際のポイント4つ
事故報告書を闇雲に書いてしまうと、事故対策や共有が適切にできません。質の高い再発防止をするためにも、事故報告書を書く際は4つのポイントを意識する必要があります。
具体的には以下のとおりです。
- 記憶が鮮明な当日に記載する
- 主観ではなく事実を伝えて客観的に記載する
- 5W1Hを意識して記載する
- 専門用語はなるべく使用しない
事故報告書を記載する際は客観性が大切です。主観的な記載になると、本来の問題が見えなくなってしまうからです。
事故を未然に防ぐためにも、事故報告書を客観的に書くポイントをマスターしましょう。
記憶が鮮明な当日に記載する
事故報告書は記憶が鮮明なうちに記載することが大切です。記憶が鮮明な状態であれば質の高い再発防止策が立てられ、利用者やその家族からの信用も上がるでしょう。
厚生労働省の発表では、5日以内と早い段階での報告が求められています。事故報告書は原則当日、夜間の場合は翌日などに記載するのがベストなタイミングです。
当日に記載できない場合は、事故の様子をメモしたり箇条書きしたりして残しておき、後日業務をする際に清書するのがおすすめです。
主観ではなく事実を伝えて客観的に記載する
事実を正確に伝えるためにも、事故報告書は客観的に記載しましょう。
「気をつけていなかった」「自分のミスにより」など主観的な意見や感想では、事故分析を深めるのは困難です。客観的な文章にするには、感想や推測ではなく事実や具体的な根拠を記入する必要があります。
具体的な文章例は以下のとおりです。
【事故概要のよい例】
2023年10月15日午前0時30分頃に巡視をした際、2階居室201号室にて、入居者の佐藤花子様(80歳、女性)が転倒しているのを発見。
【事故概要の悪い例】
10月15日の夜中に佐藤さんが転倒していた。私が見つけたときは居室のトイレ前で倒れていたので、おそらくトイレで目が覚めて歩いている時にふらついてしまい、転んだと思われる。とても痛そうにしていた。
悪い例は自分が思ったままを文章にしているため、根拠のない憶測が入っています。事実や利用者の特徴(ADLなど)の情報をもとに作成されていません。これでは本来の事故の様子がわからず、適切な事故防止ができないでしょう。
質の高い介護サービスを提供するためにも、よい例のように、数字や状況説明を用いて事故報告書を書く必要があります。
5W1Hを意識して記載する
事故報告書を記載する際は5W1Hを意識して書くのがおすすめです。
5W1Hを活用することで、受け手が状況を正確に把握でき、効率的に伝えられます。読み手の疑問点を減らせるので、情報共有がスムーズにいくのです。
介護職はケアマネジャーや看護師などの他職種と連携して利用者家族をサポートするため、統一したケアを提供するためにも情報伝達は大切です。素早い情報共有をするためにも、事故報告書は5W1Hを意識して書きましょう。
専門用語はなるべく使用しない
事故報告書は介護職だけでなく、他職種や家族も見る機会があります。
例えば「側臥位(そくがい)」や「臥床(がしょう)」などの専門用語があると、読み手に負担をかけてしまいます。書き手の意図が伝わらず、お互いの認識に違いが生まれてしまうこともあります。
後々のトラブルに発展する可能性もあるので、専門用語は使用しないのが望ましいです。
介護の事故報告書で再発防止策を考える際のポイント
事故報告書の最後には再発防止策を記載しますが、対策を考えるのが一番難しいのではないでしょうか。ここでは、事故防止策を考える際のポイントを紹介します。
具体的には以下のとおりです。
- 原因を排除する
- 環境を変更する
上記のポイントを抑えれば事故を事前に対処できる防止策が作れます。ぜひ参考にしてみてください。
原因を排除する
たとえば転倒事故を起こした利用者が、実は前日から睡眠導入剤を摂取し始めていたとします。原因の排除の視点で考えると、睡眠剤の量を減らしたり薬の種類を変えたりして利用者の様子を確認していきます。薬の種類を変えたことで転倒がなくなれば、その薬を辞めることで事故リスクがなくなるでしょう。
原因の追求は、利用者の心の状態や生活に目を向けないとリスクばかりに目がいってしまいます。その結果、本人の意思や思いを無視したケアになってしまう可能性があるのでバランスが大切です。
環境を変更する
事故に対して環境を変化させることでも事故を防げます。
具体的な例は以下のとおりです。
【転倒事故を起こした利用者の対策】
- ベッドから転落しても大きなダメージにならないよう緩衝材を置く
- ベッドから起き上がったのを確認するためのセンサーを設置する
- 歩行不安定な利用者に歩きやすい靴を提供する
介護用品を置いて環境を変化させることで、事故が再度起きないよう対策します。施設や在宅などの環境が事故要因であった場合は有効的な手段です。
事故報告書の例文に関するよくある質問
事故報告書の例文に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 事故報告書は誰が書くのですか?
- 事故報告書にはどんな内容を書けば良いですか?
- 事故報告書の書き方でよくある5W1Hとはなんですか?
それぞれ解説します。
事故報告書は誰が書くのですか?
事故報告書を書くのは、事故を発見した方や当事者です。
事故を見ていない人が記載すると、憶測や曲解のもと作成されてしまいます。その結果、正確な再発防止策や情報共有が行われなくなってしまいます。
そのため、事故報告書は事故を発見した方が担当しなくてはいけません。
事故報告書にはどんな内容を書けば良いですか?
事故報告書に記載する内容はおもに以下のとおりです。
- 発生時状況(事故内容の詳細)
- 発生時の対応
- 事故発生後の状況
- 事故原因の分析
- 再発防止策
事故報告書は再発防止や情報共有、訴訟リスクを減らすために記載します。したがって事故状況の事実や客観性に沿った内容を、時系列で書くことが大切です。
事故報告書の書き方でよくある5W1Hとはなんですか?
5W1Hの意味は以下のとおりです。
- 「When(いつ)」
- 「Where(どこで)」
- 「Who(だれが)」
- 「What(なにを)」
- 「Why(なぜ)」
- 「How(どのように)」
5W1Hとは上記の英単語の頭文字をとった言葉です。問題解決や情報整理をする際の型として活用されます。
フレームワークに沿って書けば、日時や場所、利用者の名前などを記載できます。読み手に負担をかけないメリットがあるので、事故報告書だけでなく資料作成などの際に多く活用されています。
まとめ:利用者に安全な生活を送ってもらうためにも、事故報告書を記載するポイントを押さえよう
事故報告書の正しい記載方法の流れを覚えることで、書き方に悩まなくなるだけでなく、利用者に寄り添った再発防止策が立てられます。
また、職員を訴訟から守るためにも役立つので、事故報告書を書くポイントは必ず押さえておかなくてはいけません。
具体的には自分の憶測や感想を書くのではなく、事実と客観性を意識することが大切です。理由は主観的な文章になってしまうと、適切な事故防止策が立てられず、同じ事故が発生してしまう可能性が高まるからです。
そのためにも事故報告書の必要事項には5W1Hを用いて客観的に記載していく必要があります。
また記憶が新しい当日、または翌日に書くことで正しい情報を入れられるので、質の高い分析ができます。今回紹介した具体例を元に事故報告書を記載し、利用者に安全な生活を送ってもらいましょう。
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