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喀痰吸引の資格取得の取り方|取得に必要な研修の種類・申し込みの流れも解説
喀痰吸引の資格を取得するには、基本研修と実地研修を受けなくてはいけません。しかし保有資格や介護福祉士を取得した年によって受講条件が異なります。そのため、喀痰吸引の資格の取り方に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
自身がどのルートで進めばいいか明確になるので、ぜひ最後までご覧ください。
喀痰吸引とは?資格が必要な理由
喀痰吸引は、医療と介護の現場において非常に重要な役割を果たす行為です。
ここでは、まず喀痰吸引の基本的な定義と行為内容を確認し、次に資格が必要とされる理由や背景、そして実際にどのようなケースで研修が求められるのかを詳しく解説します。
喀痰吸引の定義と具体的な行為内容
喀痰吸引とは、利用者の口、鼻、または気管カニューレ内にたまった痰を吸引機で除去し、呼吸を確保する医療的ケアです。これは介護職員等が医師の指示に基づき、特定の条件下で実施することが認められている医行為に該当します。
特に高齢者や重度障害者では、自力での痰排出が困難なケースが多いため、迅速かつ適切な対応が必要とされます。また、喀痰吸引を誤って行うと、気道の損傷や細菌感染のリスクが高くなるため、正確な知識と技術の習得が必須です。
なぜ資格が必要なのか?(法的背景と安全性)
喀痰吸引を介護職員が行うためには、法令に基づいた資格取得が必須です。これは、喀痰吸引が「医行為」に該当し、本来は医師または看護師が実施すべきとされている行為だからです。無資格での実施は、法律違反となる可能性があります。
その背景には、医療的処置に関わる安全性と利用者の生命保護が強く求められることがあります。
2012年の「社会福祉士及び介護福祉士法」改正により、一定の研修を受けた介護職員が、条件付きで喀痰吸引等の医行為を行えるようになりました。
しかしこれは、専門的知識と技術を有した者に限定されており、対象者や手順が明確に定められています。
喀痰吸引等研修が必要となるケース
喀痰吸引等研修が必要となるのは、医師や看護師以外の介護職員が、施設や在宅において喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアを実施する場面です。
その理由は、研修未受講の職員が医行為を行うと、法令違反や事故につながるリスクが高いためです。
また、医療的ケアが必要な利用者が増加している今、現場では介護職員の役割が拡大しており、法的に認められた範囲での対応力が求められています。
喀痰吸引の資格の取り方

喀痰吸引の資格を取る場合、介護職と介護福祉士では取得要件・取得方法が異なります。 ここでは、喀痰吸引の資格を取得するルートを紹介します。
介護福祉士以外の介護職の場合
介護福祉士を取得していない介護職が喀痰吸引の資格を取得するには、基本研修と実地研修を受けなくてはいけません。 ここでは、具体的な研修内容を紹介します。
基本研修+実地研修
講義内容とシミュレーター演習は以下のとおりです。
【講義内容】
・人間と社会
・保険医療制度とチーム医療
・安全な療養生活
・清潔保持と感染予防
・健康状態の把握
・高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論
・高齢者及び障害児・者の喀痰吸引実施手順解説
・高齢者及び障害児・者の経管栄養概論
・高齢者及び障害児・者の経管栄養実施手順解説
【シミュレーター演習】
・喀痰吸引(口腔内)
・喀痰吸引(鼻腔内)
・喀痰吸引(気管カニューレ)
・経管栄養(胃ろう・腸ろう)
・経管栄養(経鼻)
講義や演習を受けた後、実際の病院や介護施設で喀痰吸引や経管栄養を実践することで資格を取得できます。
介護福祉士の場合
介護福祉士や実務者研修を取得している方も、実地研修を受ける必要があります。 ここではその理由を紹介します。
実地研修を受講する
医療的ケアには、基本研修の内容が組み込まれています。 2015年以降に試験を受けた方や実務者研修の取得者は基本研修が免除されます。 しかし、喀痰吸引を実際の現場で行うには、実地研修を受けなくてはいけません。
登録研修機関となっている病院や施設に出向き、実際に利用者や患者に対して喀痰吸引や経管栄養を行います。

実地研修(喀痰吸引等研修)の種類

喀痰吸引の資格を取得するには、実地研修を修了しなくてはいけません!
実地研修は種類によって喀痰吸引の実践数や提供できる対象者が異なります。 自身がどの研修を受けるべきかを明確にするために、ここではそれぞれの特徴を紹介します。
1号研修
1号研修は、高齢者や障がい児・者に限らず、不特定多数の方に喀痰吸引や経管栄養を実施できる研修です。 研修対象者は介護職員です。
1号研修の場合は以下のとおりです。
【1号研修で行う喀痰吸引や経管栄養の回数】
・口腔内の喀痰吸引:5回以上
・鼻腔内の喀痰吸引:5回以上
・気管カニューレ内部の喀痰吸引:5回以上
・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養:5回以上
・経鼻経管栄養:5回以上
・救急蘇生法:1回
口腔内の喀痰吸引や経管栄養などを患者さんに5回以上実施します。さらに救急蘇生法の演習を1回受ける必要があります。
2号研修
2号研修も1号研修同様、高齢者や障がい者に限定せずに喀痰吸引が行えるようになります。 講義内容や対象者は同じですが、喀痰吸引や経管栄養の実施数が異なります。
【2号研修で行う喀痰吸引や経管栄養の回数】
口腔内の喀痰吸引:10回以上
鼻腔内の喀痰吸引:20回以上
胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養:20回以上
2号研修は喀痰吸引等の実施回数が、10〜20回以上と1号研修よりも多めです。また1号研修では、受けられた気管カニューレ内部の喀痰吸引と経鼻経管栄養の2科目が免除されます。
3号研修
3号研修では施術対象が限定されています。具体的な対象者は以下のとおりです。
【3号研修の施術対象者】
・ALS(筋萎縮性側索硬化症)
・筋ジストロフィー
・高位頸椎損傷
・遷延性意識障害
など
参考:平成24年度喀痰吸引等指導者講習事業第三号研修(特定の者対象)喀痰吸引等研修テキスト|厚生労働省
3号研修は重度障害の方が対象者です。受講対象者は、障がい者サービスや訪問介護事業所などの職員です。
3号研修は対象者が限定的なので講義時間が8時間と少なく、具体的には以下のとおりです。
【3号研修の講義内容】
・重度障がい児・者等の地域生活等に関する講義:2時間
・喀痰吸引等を必要とする重度障がい児・者等の障がい及び支援に関する講義:3時間
・緊急時の対応及び危険防止に関する講義:3時間
対象者が限定的なので、講義内容が少ないです。 また、喀痰吸引の実践回数は決められていません。 医師や看護師から知識や技能・技術の認定を受けるまで合格できない研修となっています。
実地研修の申し込みの流れ

実地研修を受けるには申し込みが必要で、具体的な申し込み手順は以下のとおりです。
- 登録研修機関で受講する
- 研修費用を支払う
- 実地研修を受講する
それぞれ解説します。
登録研修機関で受講する
そのため、まずは喀痰吸引等研修を受けられる登録研修機関を探しましょう。登録研修機関の名簿は、各都道府県のホームページにある福祉関連の項目から確認できます。
勤務先が登録研修機関に該当する方は、そのまま申請手続きを進めれば受講可能です。
研修費用を支払う
受講する登録研修機関が決定したら、研修費用を支払いましょう。研修費用は第1〜3号によって異なります。
具体的な費用は以下のとおりです。
第1号:80,000~200,000円
第2号:80,000~200,000円
第3号:25,000~60,000円
実地研修のみ:15,000~20,000円
実地研修を受講する
手続きが完了したら、実地研修を受講します。先述したとおり、第1・2号研修では、各医療行為に規定回数が定められています。
口腔内喀痰吸引は10回以上、鼻腔内、気管カニューレ内部、胃ろう、腸ろうの経管栄養、経鼻経管栄養は20回以上行わなくてはいけません。第3号研修のみ、医師や看護師により評価されます。

登録手続きと資格取得後の流れ
喀痰吸引等研修の修了後には、正式な資格として効力を持たせるための事務手続きが必要です。
ここでは、修了証明書の発行から、研修後の申請、実際に喀痰吸引を行うための現場での条件について順を追って解説します。
修了証明書の発行・交付までの流れ
喀痰吸引等研修の修了後、まず重要なのが「修了証明書」の取得です。この証明書が発行されることで、正式に喀痰吸引の実施が可能となる法的根拠が得られます。
その理由は、国や自治体が直接証明書を交付するのではなく、厚生労働省の指定を受けた登録研修機関に証明書発行の権限が委任されているためです。
受講者が所定のカリキュラム(講義・演習・実地研修)をすべて修了し、評価基準を満たした場合に限り、機関から交付されます。
研修修了後に行うべき申請とその方法
喀痰吸引等研修を修了しただけでは、すぐに現場で喀痰吸引ができるわけではありません。実務での実施には、所定の申請手続きを職場または事業所単位で行う必要があります。
その理由は、喀痰吸引の実施は「個人の資格」だけでなく、「職場での体制整備」や「利用者ごとの同意・指示」が前提となっているためです。
具体的な手順としては、まず研修修了者の情報を基に、所属事業所が都道府県または指定都市の福祉保健部局に「特定行為業務従事者届出書」を提出します。
さらに、医師による「指示書」や、利用者本人または家族の同意書を整備する必要があります。たとえば、神奈川県では「喀痰吸引等実施体制届出書」を県庁の高齢福祉課に郵送する形式が一般的です。
資格取得後に喀痰吸引を行うための職場での条件
喀痰吸引の資格を取得した介護職員が、実際に現場で医療的ケアを行うためには、職場側に複数の体制整備が求められます。単に資格保有者がいるだけでは、医行為は許可されません。
厚生労働省のガイドラインでは、「安全管理」「緊急時対応」「記録の整備」「医師との連携体制」が必須要件とされています。
喀痰吸引資格の取得で広がる可能性
喀痰吸引等研修の修了により、介護職員としての専門性が高まり、業務の幅が格段に広がります。
ここでは、どのような場面で活用できるのか、またキャリア面や家庭内介護への応用まで含めて、資格取得の実用性を掘り下げます。
対応できるケアの幅が広がる
喀痰吸引の資格を取得すると、これまで医師や看護師にしか対応できなかった医療的ケアを、自らの判断と技術で提供できるようになります。
その理由は、医行為の一部を担えるようになることで、急変時や突発的な症状にもスムーズに対応でき、利用者の安全と安心につながるからです。
また、医療依存度の高い利用者が増えるなかで、対応力のある介護職員は現場で重宝され、施設のサービス提供体制の強化にもつながります。
キャリアアップ・昇給のチャンスが増える
喀痰吸引等研修を修了すると、医療的ケアが可能な介護職としての専門性が評価され、キャリアアップや昇給に直結するケースが多くあります。
これは、研修修了者が「一定のリスクを伴う医行為」を安全に実施できるとみなされ、通常業務に加えて専門性の高い役割を担えるようになるからです。
また、特定行為を実施できる人材は、配置基準や人員要件の面でも加点評価の対象となるため、法人全体にとっても価値がある存在になります。
家族介護でも役立つ場面がある
喀痰吸引の資格は、介護施設や事業所だけでなく、自宅で家族を介護している方にとっても、非常に実用的な知識と技術になります。特に医療的ケアが必要な家族を在宅で支える場合、その重要性は高まります。
医師や訪問看護師が常時対応できるとは限らず、日常的な喀痰の吸引を家族が安全に行える体制が求められています。
よくある質問
喀痰吸引の資格に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 喀痰吸引を取得するのは難しい?
- 喀痰吸引研修の日程は?
- 実地研修が受けられる場所は確認できる?
それぞれ解説します。
喀痰吸引を取得するのは難しい?
喀痰吸引研修には合格基準が設定されています。正答率が9割以上で合格なので、講義内容をきちんと復習しておく必要があります。また、第1・2号研修では各医療行為の規定回数が定められていますが、第3号にはありません。
指摘された部分に気をつけたうえで医療行為を行いましょう。
喀痰吸引研修の日程は?
喀痰吸引研修の日程は地域によって異なります。そのため、学習しているスクールに問い合わせてみましょう。
実地研修が受けられる場所は確認できる?
厚生労働省から登録研修機関が掲示されています。全国の登録研修機関が掲載されているので、ぜひ確認してみてください。
喀痰吸引は保有資格によって取得方法が変わる
喀痰吸引の取得方法は、保有している資格や施術対象者によって異なります。介護福祉士や実務者研修を取得していない方は、基本研修を受ける必要があります。高齢者や障がい児・者に限らず喀痰吸引を提供したい方は第1・2号、重度障がい者を対象にしたい方は第3号を取得しなくてはいけません。自身の状況や取得したい資格に沿って研修を受講しましょう。
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