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【状況別】片麻痺の食事介助のポイントとは?食事が進まないときの原因も紹介
片麻痺のある利用者さんの食事介助は、一般的な介助方法とは異なります。これから片麻痺のある利用者さんのケアに携わる際、介助方法に悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。
車椅子や側臥位などの状況別の介助方法を示すだけでなく、食事が進まないときの原因も解説いたします。片麻痺の利用者さんの介助方法が一気に理解できる内容となっておりますので、ぜひ参考にしてください。
【食前】片麻痺の利用者さんを介助するときの基礎知識

片麻痺の利用者さんを介助するときには以下の注意点があります。
- 姿勢を整える
- 健側側から食事介助をおこなう
- 食べ物は健側の口角の下か横に入れる
- 飲み込みを確認してから口に運ぶ
片麻痺の利用者さんを介助するときの基礎知識なので、ぜひ確認してみてください。
姿勢を整える
片麻痺の利用者さんは、姿勢が崩れやすい特徴があります。定期的に姿勢を整える、クッションを置くなどの対策が必要です。
床に足がついていない利用者さんの場合は、台を置くことで姿勢が安定します。
姿勢は飲み込みに影響しますので、常にチェックしましょう。
声かけをおこなう
食事介助を始める前に、声をかけることが大切です。利用者さんによっては、目が覚めていない場合があります。
食事が始まることを利用者さんに認識してもらうため、声をかけることは重要です。
私の場合、利用者さんとコミュニケーションを取る際は、話を受け入れるように気をつけています。高齢者とは世代が離れているので、会話をしていると価値観の違いから考えが理解できないこともあるでしょう。
そこで相手を否定したり叱責したりしてしまうと、関係性を悪化させてしまう可能性があります。高齢者とコミュニケーションを取る際は、傾聴し相手の話を受け入れ、意見を述べるのではなく話を聞くコミュニケーションスタイルが大切です。
食事介助の際の声かけ例は以下で紹介しているので、ぜひご覧ください。

健側側から食事介助をおこなう
片麻痺のある方の食事介助は、健側から行うのが原則です。片麻痺の利用者さんの場合、麻痺側の口腔内から食事を提供すると、うまく咀嚼できず食べかすが残りやすくなります。
健側から介助することで、利用者さんはより咀嚼しやすく、食事中の様子も観察しやすくなります。
食事介助をする際は、健側から行いましょう。
食べ物は健側の口角に下か横に入れる
片麻痺の利用者さんの食事介助をする際は、食べ物を口角の下や横から入れることが重要です。口角の上から提供すると、あごが上がり誤嚥のリスクが増えます。
スプーンは口角の下や横から入れるようにしましょう。
以下では、食事介助時のスプーンテクニックを紹介しているので、併せてご覧ください。

飲み込みを確認してから口に運ぶ
片麻痺のある方は、顔面の筋肉が麻痺しているため飲み込むのが難しくなります。
食事介助をする際は、一口飲み込むことを確認した後に次の食事を運びましょう。
飲み込みの確認は、喉仏を観察することでわかります。喉仏が上に動くと、食事を飲み込んだ証拠です。食事の際には、利用者さんの喉仏を注意深く観察してください。
【食事中】片麻痺の利用者さんの食事介助をするポイント

介護施設や自宅では、さまざまな姿勢で食事介助をすることがあります。片麻痺の利用者さんの食事介助方法は、以下のような状況が考えられます。
- 座位の場合
- 車椅子上の場合
- 側臥位の場合
それぞれの姿勢にそった食事介助の方法を学びましょう。
座位の場合
座位での食事介助のポイントは以下のとおりです。
- 背中にクッションや枕を入れる
- 麻痺側の腕をテーブルに乗せる
- 足裏は床につける
利用者さんの目線より上から食事を運ぶと、あごが上がり誤嚥のリスクが高まります。そのため、背中にクッションや枕をセットして、姿勢の安定を図りましょう。
安定した姿勢を維持するため、麻痺側の腕をテーブルに乗せてください。また、足裏が床につかない場合、身体が安定しづらくなります。足裏を床につけることで安定感を得られます。足が床につかない利用者さんは、台の上に足を載せるとよいでしょう。
車椅子上の場合
片麻痺の方を車椅子上で食事介助する際のポイントは以下のとおりです。
- 姿勢が崩れないようにクッションを置く
- 足をフットレストから降ろす
車椅子上で片麻痺のある利用者さんを介助する際、フットレストに足を載せていると姿勢が安定しません。また、足がついていない状態は不安感を与え、食事の摂取に影響を及ぼす可能性があります。
足をフットレストから降ろし、車椅子の後ろにクッションを置くことで、身体の安定感を増すことができます。
側臥位の場合
側臥位で片麻痺の利用者さんの食事介助を行う際には、ベッドの角度や姿勢に注意が必要です。
- ベッドを30度ほどギャッチアップする
- 麻痺側を上にして身体を傾ける
- 背中にクッションを当てて安定させる
側臥位での食事提供時、むせ込みを防ぐためベッドの角度を調節しましょう。角度は30度程度が推奨ですが、利用者さんの身体の大きさや状態によっては40〜60度までギャッチアップすることが適切です。食事介助時、麻痺側を上にすることで、食事を運ぶ際の嚥下が容易になります。そのため、麻痺側を上にし、健側を下にすることが原則です。
食事中の姿勢の安定のために、背中にクッションを当てることをおすすめします。
ベッド上の食事介助について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【食後】片麻痺の方のケア方法2選

片麻痺の方は食後のケアも入念に行ってください。具体的な方法は以下のとおりです。
- 歯ブラシやスポンジブラシでケアをする
- 口腔内に食べ残しがないか確認する
誤嚥性肺炎を引き起こさないためにも知っておきましょう。
歯ブラシやスポンジブラシでケアをする
食後は歯ブラシやスポンジブラシで口腔ケアを行いましょう。スポンジブラシとは、先端がスポンジでできている棒状のブラシで、口腔内の粘膜を清拭するための介助用品です。
食べ残しや汚れを効率良く取り除けるような形状になっています。総義歯で歯がない方には、このブラシは非常に有効な介助用品です。
最後に、うがいをして食べ残しを取り除きましょう。
口腔内に食べ残しがないか確認する
口腔ケア後は口の中を確認しましょう。片麻痺の方は嚥下が難しいため、食べかすが残りやすいです。食べかすがあれば、歯ブラシやスポンジブラシできれいに取り除きましょう。
食べかすが残っていると誤嚥性肺炎の原因となりますので、食後やケア後は口腔内を必ずチェックすることをおすすめします。
なぜ片麻痺の方への食事介助は健側から行うのか?
片麻痺のある方への食事介助では、「健側からの支援」が基本です。これは、食事中の安全性を高め、残存機能を活かすことで自立を促すためです。
誤嚥やむせ込みのリスクを避けるだけでなく、本人の安心感にもつながります。ここでは、健側から介助すべき理由と、そうしない場合のリスク、そして麻痺側への配慮について詳しく解説します。
- 健側から介助する理由
- 健側から介助しないと起きやすいリスク
- 麻痺側に配慮すべきポイント
健側から介助する理由
健側から介助を行うことで、本人の残存機能を活かしながら、安全に食事を進めることができます。麻痺側は感覚や運動機能が低下しており、そちら側から介助をすると視野の死角になったり、食べ物を認識しづらかったりするため、誤嚥や拒否の原因になります。
健側からであれば、視覚的にも動作的にもサポートしやすく、口への運びも自然です。また、自力で咀嚼や嚥下ができる可能性が高まるため、自立支援にもつながります。
健側から介助しないと起きやすいリスク
健側から介助をしない場合、まず「誤嚥リスクの上昇」が懸念点です。麻痺側からの介助では、視野の死角となりやすく、口に運ばれた食べ物に気づかずむせ込みやすくなります。
また、咀嚼や嚥下のタイミングが取りづらくなり、不安や混乱を招くこともあります。加えて、介助者が姿勢を崩して無理な体勢になり、介護事故や介助者自身の腰痛リスクも引き起こしかねません。
健側からの介助は、本人と介助者の両方にとって理にかなった方法です。
麻痺側に配慮すべきポイント
介助は健側から行いますが、麻痺側にも細やかな配慮が必要です。
例えば、麻痺側の腕がテーブルから落ちていないか、緊張やこわばりで身体が傾いていないかを確認します。
また、麻痺側の顔が食べ物に気づきにくい位置にある場合は、軽く声をかけたり、顔の向きを整えたりして補助しましょう。クッションやタオルで体幹を安定させることも有効です。麻痺側を「無視せず、補う」意識が、安全で快適な食事支援につながります。
食事が進まない…食欲不振が疑われるときに考えられる6つのこと

利用者さんのなかには食事介助が進まない方もいるでしょう。食欲不振が疑われる原因は以下のとおりです。
- 消化器官に問題がある
- 口腔内の状態が悪い
- 食材や味付けが合わない
- むせるのが怖い
- 抑うつ傾向で食べる気分ではない
- 周囲との人間関係が悪化している
さまざまな原因を疑いながら、対応してください。
1.消化器官に問題がある
胃や腸などの消化器官に問題があると、食事が進まなくなります。消化器官の異常を見抜くため、腹痛の有無を確認しましょう。
1週間の排泄状況を調べるのもおすすめです。
ただし、介護職が自己判断してはいけません。腹痛の訴えや排便状況に問題があった場合、医師や看護師に相談し、適切な処置を検討しましょう。
2.口腔内の状態が悪い
歯や歯茎の痛みも食事が進まない原因の1つです。虫歯や口内炎など、歯の疾患が疑われる場合があります。また、入れ歯が合っていない可能性も考えられるため、看護師に相談し、歯科医に処置を依頼する必要があります。
口腔内に異常がある、または利用者さんから口の痛みの訴えがあった場合、食事形態を一時的に変更してみましょう。
3.食材や味付けが合わない
嫌いな食材や好みの異なる味付けの食事が提供されると、食べるのが進まない原因となります。身体に異常が確認できなかった場合の考慮要因の1つです。管理栄養士に相談し、嫌いな食材を避けるようにしましょう。
栄養バランスを考慮しつつ、好物を優先的に提供するのもおすすめです。
4.むせるのが怖い
高齢者になると、嚥下機能が低下してむせやすくなります。むせるのが怖くて食事を拒否している可能性も考えられます。加齢に伴う嚥下機能の低下があれば、食事形態の変更が必要です。
原因が不明な場合は、看護師に相談し、医療機関を受診しましょう。
5.抑うつ傾向で食べる気分ではない
高齢者は認知症や体調の変化など、さまざまな理由で抑うつ気分になることがあります。その結果、精神的な問題から食事が進まなくなることもあります。
利用者さんが「食べる気分にならない」と訴える場合、抑うつ症状による食事量の低下を疑いましょう。
看護師に相談し、治療の適用を検討することも考えられます。
6.周囲との人間関係が悪化している
食事環境に問題がある場合、食欲が低下することも考えられます。隣のテーブルの利用者さんとの喧嘩が原因で食事が進まないケースもあります。
周囲の人間関係が不調和な場合、席の変更で食事の状況が改善されることも考えられます。
身体や精神的な問題が考えられない場合、人間関係を気にかけてみましょう。
ここまで6つの原因を紹介しましたが、やはり私自身、新人時代は利用者さんの食事介助の方法に悩みました。利用者さんの介護度により噛む力や食べるスピード、飲み込むタイミングが異なります。
食事を口に運ぶ早さを間違えると誤嚥や窒息につながるので、恐怖心からどのくらいのペースで食事を提供すればいいか悩んだのも覚えています。乗り越えた方法は、先輩職員に普段の利用者さんの食べるスピードや飲み込むタイミングを聞き、適切な食事ペースを理解していきました。
また、スプーンを口に入れるときのポイントや、食事を口に運ぶ際の適切な量など、正しい食事介助の方法を学んだことで、不安を取り除いてきました。これらも参考に、利用者さんが安心できるような食事介助を実施してみてください。
以下では、食事介助を早くする方法を紹介しているので、ぜひご覧ください。

片麻痺の方の食事介助が難しいときの5つの工夫
片麻痺のある方の食事介助では、個々の症状や状態に応じた工夫が欠かせません。誤嚥や拒否、疲労など、食事中のトラブルに対応するには、食事環境や介助方法を柔軟に調整する必要があります。
ここでは、食事介助が難しい場面で役立つ5つの工夫を紹介します。利用者のQOL向上や介助者の負担軽減にもつながるため、現場でぜひ活用してください。
- むせ込みやすい方には「一口量」や「姿勢」を調整する
- 食事を拒否される場合は「声かけ」と「雰囲気づくり」を工夫する
- 食事中に疲れてしまう場合は「休憩」や「小分け提供」で対応
- 一人介助が難しい場合は「補助用具」を活用する
- 座位や体位が不安定なときは「事前のポジショニング」を整える
むせ込みやすい方には「一口量」や「姿勢」を調整する
片麻痺の方は嚥下機能が低下している場合が多く、むせ込みや誤嚥のリスクが高まります。そのため、まず「一口量」をスプーン半分程度に調整し、無理なく飲み込めるようにします。
さらに、姿勢は30〜40度程度のリクライニング姿勢か、安定した座位を保つことが基本です。顎を軽く引くよう促すと、気道が保たれやすくなります。これらの工夫により、安心して食事を続けられる環境を整えましょう。
食事を拒否される場合は「声かけ」と「雰囲気づくり」を工夫する
食事を拒否される原因には、体調不良だけでなく、不安や気分の落ち込み、環境への違和感など心理的要因も関わっていることがあります。そのため、まずは優しく名前を呼びかけ、食事内容やタイミングを説明するなど、「声かけ」で安心感を与えることが大切です。
また、食事の時間をリラックスできる雰囲気にするために、静かな環境や好きな音楽を活用するのも1つの方法です。信頼関係を築くことで、食事の受け入れもスムーズになります。

食事中に疲れてしまう場合は「休憩」や「小分け提供」で対応
片麻痺のある方は、体のバランスを取りながらの食事にエネルギーを使うため、短時間でも疲れてしまうことがあります。そのような場合は、無理に食事を進めるのではなく、適度な「休憩」を挟みながら対応するのが効果的です。
また、一度に多くの量を出さず、「小分け提供」することで、心理的・身体的な負担を軽減できます。短時間・少量を複数回に分ける方法も、体調に応じた柔軟な対応として有効です。
一人介助が難しい場合は「補助用具」を活用する
食事介助を1人で行うのが難しい場面では、福祉用具の活用が非常に役立ちます。
例えば、すべり止めマットや食器スタビライザーを使えば、片手で食事を進めやすくなります。
また、柄の太いスプーンやL字型のフォークなどの自助具も、本人の自立支援に有効です。介助者の負担を減らしながら安全性を保つためにも、適切な用具の導入を検討しましょう。地域のリハビリ専門職や福祉用具専門相談員に相談するのもおすすめです。
座位や体位が不安定なときは「事前のポジショニング」を整える
座位や体位が不安定な状態での食事は、誤嚥や疲労を招きやすいため、食事前の「ポジショニング」が重要です。車椅子の場合は、足台の高さや座面の傾き、体幹のサポートを確認し、必要に応じてクッションやタオルで調整します。
側臥位の方には、背中・頭・足の3点支持で身体を安定させ、左右のバランスをとることが大切です。正しい姿勢は安全な摂食を促し、食事時間の快適さにも直結します。
ここまで紹介した4つの工夫に加えて、利用者さんが少しでも自分らしく生活できるようにお手伝いする意識も欠かせません。介護をしていると、利用者さんの行動一つひとつに介入してしまいがちですが、介護者はあくまでも利用者さんをサポートする役割です。
利用者さんがやりたくてもできないことや、自力では難しいことを支援します。そのためにも介護者は、利用者さんが自身でできることと難しいことを判断してお手伝いすることが大切なのです。
片麻痺の食事介助に関するよくある質問
片麻痺のある方への食事介助では、「どちら側から介助するべきか」「姿勢はどうすればよいか」など、現場でよく挙がる疑問があります。こうした基本的なポイントを押さえることで、安全でスムーズな食事支援につながります。ここでは、食事介助の現場で頻出する3つの質問に対して、わかりやすく解説します。
片麻痺がある患者の正しい食事姿勢は?
基本は「安定した座位」が理想で、椅子や車椅子の場合は背もたれにしっかりもたれ、足裏が床についた状態で膝・股関節・足首が90度になるよう調整します。頭部は軽く顎を引き、体幹が左右に傾かないようにクッションなどでサポートします。ベッド上では30〜40度のリクライニングとし、体がねじれないよう正中位を保つ工夫が必要です。
食事介助は右側と左側どっちから?
食事介助は「健側(麻痺していない側)」から行うのが基本です。これは、健側の感覚や運動機能が保たれているため、口からの摂取がスムーズになり、誤嚥のリスクを減らせるためです。たとえば、右半身に麻痺がある場合は、左側(健側)から介助を行います。
食事介助で大切なことは何?
片麻痺の方への食事介助で最も大切なのは、「安全」と「尊厳」の両立です。誤嚥を防ぐために適切な姿勢や一口量を調整することは基本ですが、それ以上に重要なのが、本人のペースに合わせた丁寧な介助です。急がせたり、一方的に食べさせたりせず、「次、食べますね」と声かけをしながら進めることで、安心感と信頼を築けます。
片麻痺のある利用者さんには状況にあわせた食事介助をおこないましょう
片麻痺の利用者さんには、特有の食事介助法が必要です。基本的な原則は同じですが、車椅子やベッド上での介護には状況に合わせた技術が求められます。
姿勢や飲み込みに注意しながら、安全に食事介助を行いましょう。食事が進まない原因は多岐にわたるため、他職種と連携して、利用者さんに最適なサポートを提供しましょう。
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