ジャンル別記事
寝たきりで立てない人の入浴介助をするために必要な用具や手順を紹介
介護職は、立てない人の入浴介助を担当することもあります。しかし、立ち上がりが不安定な方の介助に不安を感じる介護職もいるかもしれません。
移乗方法や利用者さんの身体の位置など、詳細に紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
寝たきりで立てない人の入浴介助をする際に必要な福祉用具
立てない人を入浴介助する際に必要な福祉用具を紹介します。
- バスボード
- バスチェア
- 手すり
介助者や利用者さんの入浴介助をサポートする福祉用具なので、ぜひ利用してみてください。
バスボード
バスボードは、利用者が座った姿勢でバスタブに出入りできる福祉用具です。足が不自由である、またはうまく動かせないため浴槽のまたぎが困難な利用者にとって、非常に役立ちます。回転盤がついたものや浴槽の両端に設置できるタイプなど、多くの種類があります。
バスボードがあれば、立ち上がりが困難な方も安全に入浴介助を受けることができますので、必要に応じて使用しましょう。
浴槽内バスチェア
浴槽内バスチェアは、バスタブの中に置ける介護用の椅子です。高齢者は筋力の低下により、浴槽内での姿勢保持や立ち上がりが困難となることがあります。浴槽内バスチェアを使用すれば、バスタブでの姿勢崩れや溺れるリスクを減少させることができます。
立ち上がり時に不安を感じる利用者には、ぜひ活用してみてください。
手すり
介護用の手すりは、利用者が浴槽から出入りする際に、バランスを保つためのもので、バスタブの横に設置されています。浴槽をまたぐ際の縦型の手すりや立ち上がる動作を補助するタイプなど、多彩な種類があります。
事業所での主な使用例としては、浴槽にネジで固定される手すりが多いです。それらは家庭用のお風呂を模した「個浴槽」に設置されています。
寝たきりで立てない人の入浴介助をするための3つの方法
ここでは立てない人の入浴介助方法を紹介します。具体的には以下のとおりです。
- バイタルチェックをする
- お湯の温度を確かめる
- 浴槽に入れる
- 浴槽から上がる
介助者の身体の使い方や利用者さんを安全に入浴する方法を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
バイタルチェックをする
まず、バイタルチェックを行い、体調を確認します。場合によりますが、看護師が担当することや、介護職が実施することもあります。利用者さんのバイタルの結果や状態を確認した後、入浴を実施します。
気分不快の訴えがあれば、医師や看護師に相談してください。
お湯の温度を確かめる
お湯の温度を確かめる際の順序は以下のとおりです。
- 温度計で確認する(38〜40℃以内)
- 介助者が湯温を確認する
- 問題なければ利用者さんに湯をかける
入浴を実施する際は温度計で湯温を確認し、正常の範囲であれば介護職が確かめます。
湯の温度は38℃〜40℃が目安です。湯温に問題がなければ利用者さんにチェックしてもらいましょう。
利用者さんに湯をかける際は、まず指先や足先などの末端で確認してもらいます。熱さや冷たさを感じていなければ、次に肩や大腿部といった中心に向けて湯をかけていきます。
浴槽に入れる
利用者さんを浴槽に入れる際の流れは以下のとおりです。
- バスボードに座ってもらう
- 介助者の腰につかまってもらい背中を支える
- 足を片方ずつ湯船にいれる
- 介助者の足で膝を押さえる
- 介助者につかまる
- 前かかがみになってもらう
- 体の向きを変える
- 進行方向側の肩と反対側の腰を支える
- 手すりにつかまってもらい、足を踏ん張れる体勢に整える
まずバスボードに座ってもらいます。そして介助者の腰につかまってもらい、背中を支えます。
次に利用者さんの足を片方ずつ湯船に入れましょう。湯船に入れる際は介助者の足で膝を押さえると、利用者さんの身体が安定します。さらに介助者につかまりながら前かかがみになってもらうと、スムーズに立ち上がれます。
立ち上がったら身体の向きを変え、浴槽に入ってもらいましょう。身体の向きを変えるときは進行方向側の肩と反対側の腰を支えると、安定した移乗が可能です。
入水時は手すりにつかまってもらい、足を踏ん張れる体勢に整えて様子をうかがいます。
浴槽から上がる
浴槽から上がる際の流れは以下のとおりです。
- お尻を浴槽の端に寄せてもらう
- 前屈みになってもらい、バスボードに身体を載せる
- 立ち上がり時は進行方向側の肩と反対側の腰を支える
- 片方ずつ足を湯船の外に出す
- のぼせていないか確認し掛け湯をする
浴槽から出る前にまず、お尻を端に寄せてもらい介助者に身体を近づけてもらいます。身体につかまってもらったら前屈みになってもらい、ゆっくりとバスボードに移乗しましょう。立ち上がる際は進行方向側の肩と反対側の腰を支えると、スムーズに移乗できます。
また、利用者さんの両足の間に片足を挟むことで身体が安定します。バスボードに身体を載せたら片方ずつ足を湯船の外に出し、のぼせていないかの確認や掛け湯をしたら入浴は終了です。
寝たきりで立てない人を介助する際の3つのポイント
立てない人を介助する際には3つのポイントがあります。
- 身体の使い方を意識する
- 利用者さんの身体の動きを考える
- ほかの介護職員と協力する
入浴介助時にぜひ意識してみてください。
身体の使い方を意識する
立てない人を介助すると、介助者の腰や膝などにも負担がかかります。身体の使い方を意識することで、無理なく介助ができます。介護者が身体の使い方を意識する際には、ボディメカニクスを活用しましょう。
ボディメカニクスとは、少ない力で介助を行う介護技術のことを指します。足を開き、床面積を広く取るや重心を低く保つことで、腰や膝の負担を最小限に抑えることができます。
詳しく学びたい方は、介護職員初任者研修の受講をおすすめします。
この研修で、介護技術の知識や技能をスキルの高い講師から学ぶことができます。
利用者さんの身体の動きを考える
利用者さんの身体の動きを考慮しながら介助しましょう。特に足が不自由な方は、浴槽内で身体が不安定になることが多いです。浮力の影響で溺れる可能性があるため、利用者さんの介護度に応じた対応が求められます。
バスチェアを使用したり、機械浴を活用したりして、安定した姿勢を維持できるようにケアしましょう。
ほかの介護職員と協力する
無理に介助をすると、利用者さんに不快感を与えたり、怪我をさせてしまう可能性があります。また、介護者自身も怪我をするリスクが高まります。
1人では対応が難しいと判断した場合、ズボンの上げ下げや洗身の手続きは、複数の介護職員で行いましょう。
寝たきりで立てない人の介助をする際の3つの注意点
立てない人を介助する際の注意点を押さえておかないと、事故や怪我につながるリスクがあります。
具体的には以下の3つを知っておきましょう。
- 無理に介助しない
- 立ち上がり時にはとくに気をつける
- 見守りを忘れない
安全な入浴介助を実施するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
無理に介助しない
立ち上がりが困難な方を無理に介助するべきではありません。
慣れてくると、利用者さんの対応の仕方がわかりますが、中には無茶な入浴介助を行う方もいます。利用者さんや介助者の負担を考慮すると、これは危険ですので、絶対に避けてください。
怪我や事故を防ぐため、利用者さんの立ち上がり時の状態をよく確認し、1人での介助が不安な場合は、別の介護職の方と協力してください。
立ち上がり時にはとくに気をつける
立ち上がりが難しい方は、身体が不安定になることが多いです。特に立ち上がった直後は、膝が折れて転倒する可能性が高まります。
2人での入浴介助も、1つの有効な手段となります。
見守りを忘れない
入浴介助中は、利用者さんから目を離すべきではありません。特に浴槽に浸かっているときは、常に見守ってください。立ち上がりが困難な方は、足に力を入れることが難しく、浴槽での溺れるリスクが増えます。
どうしても立つのが難しい場合の2つの介助方法
立ち上がりが難しい方は機械浴を使用するのも1つの選択肢です。ここからは機械浴の入浴方法を紹介します。
- チェアー浴を利用する
- ストレッチャー浴を利用する
立つのが困難な方の介助方法に困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
チェアー浴を利用する
チェアー浴は、専用の椅子に座りながら入浴するための機械浴です。チェアと浴槽がドッキングする構造になっています。
立ち上がりが不安定で、通常の浴槽での入浴が難しい方に、チェア浴がおすすめです。
専用のチェアに移乗するだけで、座ったまま入浴することができます。利用者さんの希望を聞きながら、チェア浴の利用も検討してみましょう。
ストレッチャー浴を利用する
ストレッチャー浴は、身体をベルトで固定し、ストレッチャーを上下させることで湯船に浸かる機械浴です。四肢が不自由な方や寝たきりの利用者さんなど、介護度の高い人がこの方式を利用しています。搬送車に移乗するだけで、寝た姿勢のままでの着脱、洗身、入浴が可能となります。
2人での対応がしやすく、身体の大きい利用者さんの入浴介助にも適しています。
正しい手順を覚えて安全に入浴介助をおこないましょう
立ち上がるのが困難な方の入浴介助は、正しい手順が大切です。適切な方法を身につけて、安全に入浴介助を行いましょう。特に立ち上がるのが非常に難しい方の場合、複数の介護職と協力してケアを行うことをおすすめします。
無理に介助を試みると、介助者や利用者さんが怪我をするリスクが増えます。福祉用具や機械浴を活用し、利用者さんが快適に入浴できる方法をチームで考えることを推奨します。