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機械浴とは?種類別の入浴介助手順や注意点について徹底解説!
介護施設には、一般のお風呂とは異なる方法で入浴できる機械浴があります。しかし、機械浴の操作や入浴方法は複雑な面もあるため、利用方法がわからない方も多いでしょう。
これから、機械浴の導入によって始まる新人職員や介護未経験者の方には、ぜひ参考にしていただきたいです。
機械浴とは【基礎知識】

ここでは機械浴に関する基礎知識を紹介します。まだ入浴介助に関わったことがない方や機械浴の概要を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
機械浴は身体が不自由な方向けの入浴方法
機械浴は、身体が不自由な方向けの入浴方法です。機械浴を利用することで、身体に麻痺があったり、座位が保てなかったりする方も、安全・快適に入浴できます。
デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護サービス事業所に設置されています。
浴槽や入浴方法が一般浴とは異なる
機械浴は、介護度の高い方でも利用しやすい浴槽に改造されています。一般的な浴槽は自宅にある浴槽のような形になっていますが、機械浴では専用のチェアやストレッチャーを浴槽にドッキングして入浴します。
機械浴の種類

機械浴の種類は大きく分けて3つあり、具体的には以下のとおりです。
- 自立サポート浴
- チェアー浴
- ストレッチャー浴
機械浴の特徴を知り、利用者さんに合った入浴形態を選べるようにしましょう。
自立サポート浴
自立サポート浴はバスタブの形をしていながら、前面が開閉するので、専用の椅子に腰掛けるようにして入浴できる機械浴です。
立ち上がるのに不安がある方や、車椅子での生活をされている介護度の低い方におすすめです。
介助者は利用者さんと無理なく距離を取ることができるため、恐怖感を与えにくいでしょう。デイサービス、特別養護老人ホーム、小規模多機能型介護施設など、さまざまな事業所に配置されています。
チェアー浴
チェアー浴は、専用の椅子に座りながら入浴できる機械浴です。浴槽は開閉式になっており、椅子とドッキングできます。浴槽のドアを軽く閉めると、自動的にロックされます。横にあるスイッチを押すと、給湯が始まります。
ストレッチャー浴
ストレッチャー浴は、身体をベルトで固定し、ストレッチャーが上下動することで湯船に浸かることができる機械浴です。自分で身体を洗うことができない介護度の高い方に利用されています。
利用者さんを搬送車に移乗させることで、寝た姿勢のままでの着脱、洗身、入浴が可能となります。
機械浴での入浴方法

ここでは3つの機械浴の入浴方法を紹介します。入浴介助に取り組む際は、ぜひ参考にしてみてください。
自立サポート浴の場合
自立サポート浴を使用する際は、利用者さんをシャワーチェアに移乗させ、浴槽の前まで進めます。
シャワーチェアは、浴室内で座ったまま移動できる車椅子のようなものです。自立サポート浴の前に来たら、浴槽に設置されている手すりを下げて、腰かけるように移乗させます。
身体を回転させながら介助すると、スムーズに移乗できます。ドアの開閉はリモコンで操作し、浴槽のドアを最上限まで上昇させましょう。利用者さんの体勢や安全を確認したうえで、湯を入れていきます。
チェアー浴の場合
チェア浴は、専用の椅子に利用者さんを移乗させ、浴槽まで進めます。浴槽の目の前に来たら、搬送車をドッキングさせます。車椅子からチェア浴への移乗時には、椅子のブレーキがかかっていることを絶対に確認しましょう。
ゆっくりとドアを閉め、給湯ボタンを押して入浴を開始します。
ストレッチャー浴の場合
ストレッチャー浴を利用する際は、利用者さんをベッド型の搬送車に移乗させます。搬送車をストレッチャー浴にドッキングさせ、リモコンで下降させて入浴させます。ストレッチャー浴は寝たままの状態で進むので、利用者さんが恐怖感を覚えることがあります。
ベルトをつけたり、ドッキングする際は、声をかけて安心させるよう心掛けましょう。
介護職として働く私が、体位交換や移乗介助で工夫しているポイントは、利用者を安心・安楽な姿勢で移乗や体位交換をすることと、介助側の身体の負担を減らすことを意識しています。身体を引っ張り上げたり勢いをつけたりして移乗・体位交換をすると、利用者の身体に怪我をさせてしまいかねません。
そのため、ゆっくり丁寧な移乗を心がけています。また、介助側の腰や膝の負担も考慮する必要があります。
高齢者を移乗する際は「ボディメカニクス」と呼ばれる介護技術を活用し、介助者は身体の負担を軽減することが可能です。ボディメカニクスとは、人間の構造に沿って身体の動かすための技術です。
例えば、身体の重心を低くして、足の幅を広く取ることで身体が安定するので、移乗時や体位交換をする際の腰や膝にかかる負担を少なくできます。ボディメカニクスの活用は、利用者に安楽な介護を提供するうえでも大切な技術なので、介護をする際は意識する必要があります。
機械浴の基本的な手順と流れ

機械浴は、身体機能の低下した高齢者や障害を持つ方でも安全に入浴できるよう設計された介護機器を活用した入浴方法です。しかし、その安全性や快適性を最大限に活かすには、正確で丁寧な手順の実践が欠かせません。
ここでは、介護職の方が現場で実践できるよう、機械浴の一連の流れを紹介します。
- 事前準備:必要物品と環境整備
- 入浴前:バイタル確認・声かけ・衣服の脱衣補助
- 入浴中:安全確認と観察ポイント
- 入浴後:拭き取り・更衣・記録の作成
- 【補足】緊急時対応や中止の判断基準
① 事前準備:必要物品と環境整備
機械浴を安全かつ円滑に行うためには、入浴前の準備が欠かせません。まず、必要な物品(バスタオル・着替え・入浴用具・防水シーツなど)を確認・準備し、機械の動作確認やバッテリー残量のチェックも忘れずに行います。
浴室は転倒やヒートショックのリスクを防ぐため、室温・浴室温ともに適温(22〜25℃)に保つよう配慮が必要です。また、緊急時にすぐ対応できるよう、スタッフ間で連携体制を事前に確認しておきましょう。

② 入浴前:バイタル確認・声かけ・衣服の脱衣補助
入浴前には、必ずバイタルサイン(体温・血圧・脈拍・呼吸)を確認し、入浴の可否を判断します。利用者には「これから入浴を始めます」と優しく声をかけ、不安を軽減する配慮が重要です。
脱衣の際はプライバシーを守るためにカーテンを閉めたり、タオルで覆うなどの工夫も求められます。衣服の着脱は無理のない姿勢で行い、皮膚の状態も合わせて観察しておきましょう。
③ 入浴中:安全確認と観察ポイント
入浴中は常に利用者の表情や状態を観察し、急激な変化に対応できる体制を整えておくことが求められます。湯温は40〜41℃を目安とし、のぼせやヒートショックを防止するため、長湯は避けて10分以内に収めましょう。
水圧による皮膚刺激や体位の変化がないかも定期的に確認してください。特に寝たきりの方は、圧迫による皮膚損傷や関節の拘縮に注意を払う必要があります。
④ 入浴後:拭き取り・更衣・記録の作成
入浴後は、身体をすぐにタオルで拭き取り、冷えないように素早く衣類を着せます。特に足元や指の間、褥瘡のリスク部位は丁寧に乾かす必要があります。
その後、バイタルサインの再確認と、入浴中に見られた皮膚トラブルや利用者の反応を記録として残します。記録は「SOAP」形式や施設内の電子記録システムに即して簡潔かつ正確に記載し、情報共有を徹底しましょう。

【補足】緊急時対応や中止の判断基準
入浴中に「顔色が急に青白くなった」「呼吸が乱れた」などの兆候が見られた場合、直ちに入浴を中止し、バイタルサインを確認します。中止の判断基準の目安は以下のとおりです。
- 収縮期血圧が160mmHgを超える
- 90mmHg未満になった場合
また、呼吸苦や強いめまい、意識レベルの変化がある場合も即座に対応が必要です。事前に緊急対応フローをチームで共有し、いざというときに迷わず行動できるようにしましょう。
機械浴を利用するメリット

機械浴を利用するメリットは以下のとおりです。
- 身体が不自由な方でも入浴を楽しめる
- 介護者・利用者への負担が少ない
機械浴を利用すれば介護度が高い方でも入浴ができ、生活の質を高められます。
身体が不自由な方でも入浴を楽しめる
機械浴は、寝たきりや座位を保持できない方でも、入浴が可能です。
入浴ができないと、皮膚を清潔に保つのが難しくなり、感染症や褥瘡などの皮膚疾患の原因となります。身体の匂いが気になると、他の利用者さんとのコミュニケーションが取りづらくなることも考えられます。
機械浴を使用することで、介護度が高くても入浴が難しい方が清潔感を保ち、その人らしい生活を続けることができます。
介護者への負担が少ない
麻痺や立ち上がりが困難な方を一般浴で入浴させるのは難しいです。
介護者の腰や膝への負担だけでなく、転倒のような利用者さんの事故リスクも高まります。機械浴を活用すると、介護者の負担は軽減され、利用者さんも気持ちよく入浴することができます。
安全で快適な介助のために、機械浴の利用をおすすめします。
機械浴によるデメリット
機械浴は介助者・利用者双方にとって負担を軽減できる画期的な入浴支援方法ですが、すべてのケースで最適というわけではありません。特に利用者の心理的負担や、導入・運用コストの高さといったデメリットも現場では無視できません。
ここでは、実際に現場から報告されている代表的な2つの課題について詳しく解説します。
利用者の心理的負担や不安を招くことがある
機械浴は見た目や動作音、機械的な構造によって、特に高齢の利用者にとって「怖い」といった印象を与えてしまうことがあります。主な心理的不安の要因は以下のとおりです。
- 慣れない機械や設備による緊張
- 自身の身体状況を改めて認識し、自尊心の低下につながることがある
- 機械音や動作の振動による不快感
これらを解消するために、丁寧な説明や声かけで安心できる雰囲気をつくることが大切です。必要に応じて個別対応も検討し、利用者一人ひとりに最適な方法を考えましょう。
導入・維持にコストはスペースがかかる
機械浴の設置には、高額な初期投資と、定期的なメンテナンス費用、さらに十分な設置スペースの確保が必要です。本体価格が高いことはもちろん、設置場所の拡張・電源・配管工事が必要な場合もあります。
加えて、定期点検や修理など、維持費が想定以上にかかることがあるかもしれません。補助金や助成制度を活用したり、汎用性の高いタイプを選定したりなどの工夫で対処しましょう。
機械浴を利用するときの注意点

機械浴は一般浴よりも気をつける点が多いです。具体的には以下のとおりです。
- 操作方法に気をつける
- 介護度に合わせた機械浴を利用する
- 利用者の見守りを忘れない
- 利用者に恐怖感を与えないようにする
- プライバシーの配慮に気をつける
入浴時には気をつけましょう。
操作方法に気をつける
機械浴の操作方法には注意が必要です。チェアを上下する方法やキャスターのブレーキの位置を事前に確認しましょう。
機械浴の使用頻度が高いと故障の可能性も上がるため、定期的に動作確認を行うことが大切です。
介護度に合わせた機械浴を利用する
利用者さんの介護度に合わせた機械浴を選ばないと、入浴が難しくなります。立ち上がりが困難なのに自立サポート浴を利用すると、移乗時の事故や怪我のリスクが高まります。
事業所では、入浴・排泄・食事等の委員会が設置されています。入浴委員会に所属している方は、浴室の環境や入浴方法に関して、チームメンバーと定期的に話し合うよう努めましょう。
利用者の見守りを忘れない
入浴中の見守りは絶対に欠かさないでください。
機械浴を使用すると、浮力の影響で座位の維持が難しくなることがあるため、利用者さんの安全を確保する必要があります。万が一の事態を避けるため、目を離さず見守りを続けましょう。
自分が離席する際は、他の職員に見守りを依頼するよう心掛けてください。
プライバシーの配慮に気をつける
機械浴を使用する際は、利用者さんのプライバシーを尊重しましょう。搬送車への移乗や介助は便利ですが、一部の利用者さんは恥ずかしさを感じることがあります。
機械浴を使用する際の利用者さんの尊厳を常に考慮して行動しましょう。
利用者に恐怖感を与えないようにする
機械浴を使用する際、利用者さんに恐怖感を与えないように注意が必要です。移乗や浴槽のドアを閉める時には、静かにゆっくりと操作しましょう。
利用者さんが次の動作を予測しやすいように、事前に声掛けをすることも入浴の秘訣の1つです。
利用者さんが恐怖を感じることで入浴を拒否するリスクもあるため、細やかな配慮が必要です。
また、現場で働く私が、介護拒否がある方への対処法として実践したいことは、ハードルを下げていくのがおすすめです。例えばお風呂に入るのを嫌がる利用さんを入浴させたい場合、「お風呂に入りましょう」と言っても入ってくれない可能性が高いです。
しかし、「シャワーだけでも浴びてみませんか?」や「着替えだけでもお願いします」など、行動のハードルを下げるとお風呂に入ってくれる場合があります。

機械浴の導入現場から学ぶ3つの工夫
機械浴は介護者の身体的負担を軽減し、要介護者の入浴機会を広げる優れた設備です。しかし、導入すれば自動的にうまくいくわけではなく、現場での運用に工夫が必要です。ここでは、実際に導入している介護施設の現場から得られた、安心・安全な入浴支援のための工夫を3つ紹介します。
- 入浴前に予行演習や説明を行う
- 声かけで安心感を伝える
- 異常時対応のフローを整備しておく
入浴前に予行演習や説明を行う
機械浴を初めて体験する利用者は、不安や緊張を感じやすくなります。そのため、入浴前に機械の動作説明や予行演習を行うことは非常に効果的です。
- 実際に機械を動かして見せる
- 利用者にも操作体験してもらう(可能な範囲で)
- 使用中にどんな音や動きがあるか事前に共有
こうした準備により、心理的ハードルを下げ、スムーズな入浴へとつながります。
声かけで安心感を伝える
機械浴中は機械音や動作があるため、利用者が孤独や不安を感じやすい場面です。そこで、介護者が常に声をかけて状況を説明し続けることが重要です。
以下は効果的な声かけになります。
「今からお湯が出ますね」
「少し揺れますが大丈夫ですよ」
「気分はどうですか? つらくないですか?」
これにより、利用者の安心感や信頼を得ることができ、事故防止にもつながります。
現場で働くなかで、高齢者の転倒や事故を防ぐために、危険予知と声かけは重要です。事故が発生するリスクのある場所では、事前に声かけを行い、危険があることを伝える必要があります。
例えば入浴場の床は濡れやすく、歩いているときに転倒してしまう可能性が高い場所です。入浴場で介助をする際には「滑りやすくなっているのでゆっくり歩きましょう」や「気をつけてくださいね」など利用者に声をかけるようにしています。
そのためにも介助者は、トイレや食堂など施設内それぞれで危険な場所を把握しておくことも大切です。
異常時対応のフローを整備しておく
緊急時に適切な対応ができるよう、事前に異常時対応のフローやマニュアルを整備しておくことは不可欠です。整理すべき対応事項の例は以下のとおりです。
- 機械の停止方法・エラー解除手順
- 緊急通報体制(ナースコール・応援体制)
- 急変時の入浴中止と搬送の段取り
さらに、シミュレーション訓練を定期的に行い、全職員で共通認識を持つことも重要です。
安全に注意しつつ入浴を楽しんでもらいましょう
機械浴は、麻痺や座位保持が難しい方向けの浴槽です。ベッドから搬送車への移乗や、ストレッチャー上での洗身など、特定の介助技術が求められます。機械浴の使用方法や特性をしっかり学び、安全に介助を行いましょう。
不安を感じる場合は、先輩職員や上司に相談し、サポートを受けることをおすすめします。
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