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延命治療のメリット・デメリットは?介護士としてできることを解説
高齢化社会に伴い、命を繋ぐ延命治療の需要がますます増えている昨今。
介護施設でも延命治療を選択されることは増えています!
介護士として延命治療中の利用者や家族と関わる中で、「どのような問題があり、どんな心境であるのか」を理解しておきたいものですよね。
介護士としてできることも紹介していきますので、コミュニケーションの取り方に悩んでいる人は、特に参考にしてみてください。
延命治療の種類

延命治療の種類は主に以下の3つになります。
- 人工透析
- 経管栄養
- 人工呼吸器
ここからは、3つの延命治療について更に詳しく解説していきます。
人工透析
人工透析は、腎不全などが原因で老廃物が血液中に蓄積しやすい場合に、全身の血液をろ過し、血液を綺麗にする治療法のことです。
また、食事制限がある場合も多く、不自由さに不満や苛立ちを覚えてしまうこともあります。
経管栄養
経管栄養は、なんらかの理由で経口から食事を摂取することができなくなってしまった方が、鼻から胃にかけて管を繋ぎ、経口以外の方法で食事を摂取するというものです。
利用者が経管栄養を行っている場合は、上記のような辛い思いをしている可能性があることを頭に入れておきましょう。
人工呼吸器
呼吸が上手くできない利用者が人工呼吸器を使用することで、息がしやすくなり命が繋がるという延命治療方法もあります。
人工呼吸器は、介護施設に持ち込みOKである場合が多いため、介護現場で働いていれば、使用する利用者の介護ケアに関わることがあるかもしれません。
人工呼吸器をつけていても呼吸を苦しそうな場合は、頭部を少し高くするなど工夫してあげるようにしましょう。
延命治療のメリット

延命治療を行うことで得られるメリットがあります。以下では、利用者とご家族が延命治療を望む理由とも繋がる、その大きなメリット2つを解説していきます。
命を繋ぎゆっくりと最期を過ごすことができる可能性が高まる
延命治療の最大のメリットは、利用者の命を繋ぐことができることです。
家族にとってかけがえのない大切な家族の尊い命であり、一緒に過ごせる時間が増える可能性も高まります。
一緒に過ごす時間が増えることで、今まで言えなかった感謝の気持ちを伝えたり、思い出に残るようなことをしてあげたりできるでしょう。
延命治療を決断した利用者本人やご家族には、そのような思いがあるということを頭の片隅においておきましょう。
家族の負担を軽減する
ターミナルケアなど、「先が長くない」と考えることでの精神的苦痛は計り知れないものがあります。
しかし、延命治療を行うことで、尊い命を繋ぐことができ、一緒に居られる時間が増える可能性も高いです。
そうした精神的負担などを軽減できるメリットが延命治療にはあるのです。
延命治療のデメリット

延命治療は、メリットがある一方でデメリットもあります。介護ケアで延命治療中の方と関わる場合には、そのデメリットも理解しておくことが大切です。延命治療のデメリットは主に以下のような内容になります。
- 費用の負担が増える
- 本人の意思とは違う方向に行く可能性もある
- 延命治療の辞め時がわからなくなる
ここからは、3つのデメリットについて詳しく解説していきます。
費用の負担が増える
延命治療中は、さまざまな医療行為や処置、医療機器の使用により、費用がかさむケースが多いです。
また、延命治療はいつまで続くかわからないことも多く、「いつまで費用負担が続くのか」という不安をご家族が抱えなければならないこともあります。
本人の意思とは違う方向に行く可能性もある
利用者と意志疎通を行うのが難しい状況である場合、本人の意思に反して延命治療が行われてしまう可能性もあります。
だからこそ、延命治療に対する判断は難しいのです。意思疎通が可能であるうちに本人の意思を確認しておくことが大切です。
延命治療の辞め時がわからなくなる
延命治療を続けることで経済面や精神面で家族が辛くなってしまうことも。
そうなった場合にも延命治療の辞め時がわからず、悩む家族は多いものです。「延命治療中断 = 死」と考えてしまい、中止を決意するのに大きな罪悪感を持ってしまうこともあります。
延命治療中の利用者に介護士としてできること

延命治療中の利用者は、辛い気持ちでいることも多いです。それに寄り添うような介護ケアが必要となります。延命治療中の利用者に、特に介護士として気を付けるべきことは以下の3つです。
- その人の気持ちを想像しながら声掛けする
- 身体に負担がかからないよう丁寧な介護ケアを心掛ける
- ご家族の気持ちにも寄り添いながらコミュニケーションを取る
ここからは、介護士としてすべきこと3つをさらに詳しく解説していきます。
その人の気持ちを想像しながら声掛けする
延命治療中は、痛みがでたり、気持ち的に不安定になったりと辛い現実と向き合う利用者や家族もいます。
そのため、一人ひとりの気持ちを想像しながら、それに寄り添うような介護ケアを提供しましょう。
利用者をより深く理解するために家族に思い出話を聞いたり、ケアプランを改めてみてみることもおすすめです。
身体に負担がかからないよう丁寧な介護ケアを心掛ける
延命治療中の利用者の身体はデリケートであることも多いです。例えば、体位交換時のちょっとの刺激で、嘔吐を促してしまうこともあります。
介護ケアに入る際には、必ず声掛けをし、本人に介助に入ることを認識してもらったあとに優しく身体を触るなど、負担をかけないことを意識しましょう。
ご家族の気持ちにも寄り添いながらコミュニケーションを取る
延命治療中に辛いのは、本人だけでなくご家族も一緒です。
ご家族の辛い心情を理解し、それに寄り添うようなコミュニケーションを心掛けましょう。
「自分の家族が延命治療をしていたら」と想像してみると、ご家族の心情がより想像しやすいかもしれません。
一日一日を大切にする
延命治療中といえど、最期に近い可能性もあります。その人との関わりは永遠には続かないということを心得ておきましょう。
利用者と一緒に過ごす瞬間を大切にし、後悔のない丁寧なコミュニケーションを意識することが大切です。
どこからが延命治療とされるのか?
延命治療という言葉はよく聞かれるものの、「どの医療行為が延命治療にあたるのか?」と明確に説明するのは難しいと感じる方も多いでしょう。
ここでは、延命治療の定義や救命治療との違い、そして判断に関わるポイントについて解説します。
延命治療の定義と救命治療との違い
延命治療とは、病気の治癒や回復を目指すのではなく、生命を人工的な手段でできるだけ長く維持することを目的とした医療行為です。
代表的なものに、人工呼吸器の装着や経管栄養、人工透析などがあります。
一方で、救命治療は一時的に命を救うための医療行為であり、たとえば心停止時の心臓マッサージや除細動などが該当します。
この2つの違いは、「その治療が終わったあとに回復や改善の見込みがあるかどうか」によって線引きされることが多いです。
延命治療は、根本的な改善が見込めない場合にも行われることがあり、身体への負担やQOL(生活の質)への影響も大きくなりがちです。
医療現場での判断基準(医師の判断や診療ガイドライン)
医療現場では、「その医療行為が生命維持のためだけに行われるものか」「治療の先に回復があるかどうか」が、延命治療か否かの判断材料となります。
ただし、延命治療の判断に明確な線があるわけではなく、医療者の経験や倫理観、家族の希望なども大きく影響します。これが、現場での判断を難しくさせている大きな要因の一つです。
家族や本人の意思によって変わることもある
延命治療に該当するかどうかは、患者本人やその家族の意思によっても左右されることがあります。
同じ医療行為であっても、患者本人が「苦しんででも生きたい」と望めば、それは希望に沿った治療となり、逆に「自然に最期を迎えたい」と考える場合には、それが延命治療として受け取られるかもしれません。
そのため、治療方針を考える際には、本人の意向や人生観、価値観を尊重することが非常に重要です。本人の意思を確認する手段としては、事前の話し合いや書面(リビング・ウィルなど)を通じて明文化しておく方法もあります。
延命治療に該当しやすいケースと判断の難しさ
延命治療にあたるかどうかの判断は、患者の状態や病気の進行度、年齢などによって異なります。
ここでは、介護・医療現場で特に判断が難しいケースを例に挙げて解説します。
高齢者の場合
高齢の方が病気や老衰によって体力や臓器の機能が著しく低下しているとき、積極的な医療処置が延命治療とされることがあります。
家族の「少しでも長く生きてほしい」という想いと、「自然に最期を迎えさせてあげたい」という気持ちが交錯し、判断に迷う場面が多く見られます。
認知症末期の場合
認知症が進行し、言葉での意思疎通が困難になったり、食事や水分摂取ができなくなったりした段階では、「どこまで医療を行うべきか」が大きな課題となります。
このような状況での胃ろうや経鼻栄養、点滴による栄養補給などは、延命治療と判断されることがあります。
ただし、認知症患者本人の意思を確認することが難しいため、家族やケアスタッフとの綿密な話し合いが必要です。
がんの終末期の場合
がんの治療をすでに終了し、痛みの緩和を中心とした「緩和ケア」に移行している状態では、延命を目的とした治療(抗がん剤や点滴による水分補給など)を行うかどうかが検討されます。
がんの終末期では、「命を少しでも延ばす」よりも、「いかに穏やかに過ごすか」「苦しまずに最期を迎えられるか」が重視されるため、過度な延命措置を控えるケースが増えています。
本人の意思を確認できないとき
患者本人が意識不明や重度の認知症などで、意思を伝えることができない場合、延命治療を行うかどうかの判断は家族や医療者に委ねられます。
このような場面では、「本人だったらどう考えるか」を家族と一緒に想像することになりますが、意見が分かれることも多く、介護職や看護職としても対応に悩む瞬間です。
そのため、あらかじめ本人の意思がわかるような記録(リビング・ウィル)やACP(アドバンス・ケア・プランニング)などの準備が重要になります。
延命治療を行うかどうかの判断プロセス
延命治療を行うかどうかは、単に医師が決めるのではなく、本人・家族・医療・介護職など複数の立場が関わる重要な判断です。
とくに介護現場では「この人にとって本当に必要な治療か?」と日々向き合う機会が多いため、判断の背景やプロセスを知っておくことは大切です。
誰がどうやって決めるのか?(本人・家族・医療者)
基本的に、医療方針は本人の意思が最も優先されます。
しかし、本人が判断できない状態にある場合には、家族が代わりに意思決定を行うことになります。医師や看護師は、病状や見込みを説明し、判断をサポートする役割を担います。
介護職は直接の決定権は持ちませんが、日常の様子や価値観をよく知る存在として、家族や医療チームとの橋渡し役を果たすことが期待されます。
その人が「どう生きて、どう最期を迎えたいのか」を考えるうえで、介護士の視点は非常に重要です。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の活用
ACPとは「人生会議」とも呼ばれ、将来の医療やケアについて、本人と家族、医療・介護従事者があらかじめ話し合っておく取り組みです。
延命治療が必要になる前の段階で、「どんなときにどうしたいか」「望むケアの内容」などを整理しておくことで、いざという時に迷いのない選択ができるようになります。
介護士としては、ACPの存在を家族に案内したり、日々の会話の中から本人の価値観をくみ取って、医療者に共有することも大切な役割です。
リビング・ウィルや尊厳死宣言などの書面
本人が延命治療を望まない意思を明確にしておく手段として、「リビング・ウィル」や「尊厳死宣言公正証書」があります。これらは、「苦痛の多い延命治療はしないでほしい」という意思表示を文書で残すものです。
法的拘束力は必ずしも強くはありませんが、本人の明確な意志が示されていることで、家族や医療者も判断しやすくなります。
介護の現場でも、こうした書類の存在を知っておくだけで、家族の相談に対して安心感を与えられる場合があります。
延命治療中の難しい心境に寄り添いながら介護ケアを行おう!
延命治療中の利用者本人やご家族は、辛い心境でいることが多いです。
延命治療についてのことをよく知り、理解を深めることも介護ケアを行う上で重要であるといえるでしょう。
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