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【拘縮移乗の注意点と対策法】安全な移乗を実現するためのポイント

介護施設では、さまざまな疾患を抱えた方が入所していて、なんらかの原因で身体の部位が拘縮している方もいます。拘縮のある方に対して適切な介護ケアを行うことで、本人の負担が減り、拘縮進行予防が期待できます。

今回では、拘縮がある方への正しい介護ケア方法や注意点などを解説。

移乗・入浴・オムツ交換などの介護ケア方法を具体的に理解し、介護現場で実践していきましょう。

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目次

拘縮について

拘縮がある方へ適切な介護ケアをしたいと思ったら、まずは知識を得ることが大切です。

ここからは拘縮の種類や原因、辛さなどを紹介していきます。

拘縮とは?

拘縮は、怪我や病気などが原因で関節を動かす機会が減り、それによって関節が硬くなってしまう症状です。関節が硬くなり、可動域が狭くなることによって、「動かせなくなる」「曲げられなくなる」など、日常生活が制限されてしまう不具合が起こります。

身体を動かさないこと=関節を動かさないことで発症してしまった拘縮の影響で、日常生活が営みにくくなり、更に動かなくなってしまうことで拘縮の進行は起こってしまいます。

寝たきりなどが原因で発生し、更にこの先も寝たきりの原因を作ってしまう厄介な症状なのです。

拘縮の原因と起こりやすい部位

高齢者に多い拘縮の原因は加齢によるものや病気、ケガなどです。さまざまなきっかけで寝たきりになり、廃用症候群の延長として拘縮が生じるケースもあります。

拘縮が起こりやすい部位はこちらになります

手 / 足 / 指 / 肘 / 股 / 膝

上記の関節部位に拘縮が生じます。

拘縮の程度は個人差がありますが、軽度の場合でも進行リスクがあるため注意が必要です。

拘縮による辛さ

拘縮によって出る生活への影響は以下になります。

  • 指が曲がらず、ものが掴めない
  • 腕が上がらなくなり、衣類の着脱ができない
  • 腕や手が動かず、食事がうまくとれない
  • 何もしていないのに痛い
  • 股が拘縮し、立つ・座る・歩くの動作ができない
  • 転倒しやすくなる
  • 入浴がしづらい

拘縮があることで、日常生活に制限が出てしまうのが辛いところです。また、痛みなどの苦痛が発生するのも拘縮による辛さであるといえます。

拘縮がある方への介護ケア注意点

拘縮があることで痛みを感じやすかったり、悪化してしまったりするリスクがあります。そのため拘縮の方に介護ケアを行う際は特に注意が必要です。

ここからは拘縮がある方への介護ケアの注意点を解説していきます。

ケアを行う前に必ず何をするか説明する

介護ケアを行う前には必ず本人に声掛けをしましょう。本人が「今から何をされるか」を理解した上で介護ケアを行わないと恐怖心を与えてしまい、体が余計に強張ってしまいます。

ケア前に優しく声掛けをし、本人になんのケアを始めるかが伝わるようにしましょう。

本人の様子を確認しながらゆっくり行う

拘縮部分に急に触れて早く動かしてしまうと、痛みを感じる場合もあります。痛みや違和感にすぐ気づけるように、本人の表情を確認しながらゆっくりと介助を行うようにしましょう。

本人と息を合わせながら介助を行うとスムーズです!

強く触れない

拘縮部分から痛みが出ることがあります。

特に強く触れてしまった場合、激痛が走ることもあるため注意が必要です。

介助を行う際には、ゆっくりと優しく触れるように心掛けましょう。

触れる部位に気を付ける

拘縮のある方の介護ケアを行う際には、関節部分を支えることが基本です。関節部分は、痛みが出にくいだけでなく、触れることで内出血などが出来てしまうリスクを防ぐことができます。

特に着脱介助などの場合は、できるだけ関節部分をゆっくりと触れるようにしましょう。

【ケア別】拘縮がある方の介護ケアの方法と注意点

拘縮がある方の介護ケア方法と注意点はシーンによって違います。

ここからは、介護ケア別にケア方法と注意点を解説していきます。

移乗の場合

拘縮がある方を移乗介助する場合、できるだけ本人の負担を減らしたいものです。そこでおすすめなのが「スライディングシート」を使った移乗介助です。

こちらでは、スライディングシートを使って移乗介助する方法とその注意点を解説していきます。

【スライディングシートを使いベッドからリクライニングへ移乗する時の介助の方法】

  • ベッドに寝ている利用者にリクライニングに移ることを伝える
  • 介護者のこぶしの位置くらいになるようにベッドの高さを調整する
  • スライディングシートを利用者の身体の下に敷く
  • ベッド横にリクライニングを用意し、リクライニング側に介護者が立つ
  • 拘縮している部位を巻き込まないように注意しながらリクライニング側にシートを引く
  • 移乗し終わったら利用者にその旨を伝える

移乗時に拘縮の部位を巻き込まないようにすること。

リクライニングへの移乗介助は、介護者2名で行うのが理想的です。

スライディングシートは移乗時の摩擦も少ないため、皮膚が傷つくリスクも軽減できます。

着替えの場合

着替えを介助する場合の方法とその注意点はこちらです。

【着脱介助の方法】

  • 服を脱がせることを伝える
  • 片腕に拘縮や麻痺がある場合は反対側の腕を先に脱がせる
  • 首元を脱がせたら拘縮や麻痺がある側の腕を支えながらゆっくりと脱がせる
  • 今度は服を着せることを伝える
  • 拘縮や麻痺がある側の腕から脱ぐ時の逆の手順で服を着せていく
  • 上が終わったら今度は下のズボンなどを上から同じ手順で行っていく

着脱で拘縮のある部分を支える時は下から支えるようにして持つこと。

拘縮がある部分を支える際には、介助者の手のひらや腕など広い範囲で支えることで安定させられます。また、関節に近い部分を持つと痛みが緩和されます。

拘縮や麻痺がある方の介助は、丁寧に行う必要がありますが、羞恥心に配慮することも大切です。

露出の時間がなるべく短く済むように、適切な時間配分で介助するようにしましょう。

オムツの場合

股や膝などに拘縮があり、オムツ介助が必要な方もいます。

拘縮がある方へのオムツ介助の方法はこちらです。

【オムツ交換の方法】

  • 声掛けをし、排せつ交換に入ることを伝える
  • 拘縮の反対側からズボンを脱がせる
  • オムツを取り、陰部洗浄する
  • オムツを閉じて拘縮があるほうからズボンをはかせる
  • 排せつ介助が終わったことを本人に伝える

オムツ交換で大切なのは本人にしっかりと声掛けすること。

誰にでも共通して言えることですが、拘縮がある方は特に急に体に触れられると緊張し、体が固まってしまうことがあります

発語が少ない方に対しても、しっかりと声掛けすることが大切です。

入浴の場合

拘縮がある方はほとんどの場合、一部介助や全介助で入浴をサポートします。

拘縮がある方の入浴介助方法は以下です。

【個浴で一部介助の場合】

  • 声掛けをして着脱の手伝いをする
  • 拘縮があり、足などが不自由である場合は拘縮があるほうに介護者が立ち浴室までの移動を支える
  • バスチェアに座ってもらい声掛けをしながら必要な部分はサポートする
  • 拘縮部分を支えながら浴槽に入るのを手伝う
  • 浴槽から出たら拭ける部分は自分で拭いていただき残り部分を介護者が拭く
  • 拘縮で動かないほうの腕や足から服を着る

入浴時は肌の露出が多いため、移動時の転倒などに注意しましょう。

【特別浴槽で全介助の場合】

  • ベッド上で衣服を脱ぐ介助を行う
  • 衣服を全て脱いだら特浴用のストレッチャーに利用者を移乗する
  • 洗髪・洗身をストレッチャー上で行い、特浴に入る
  • 浴槽から出たらシャワーで体を流し、タオルで全身を拭く
  • タオルを全身にかけた状態でベッドに移乗する
  • ベッド上で着衣介助を行う

全介助で特浴利用の場合、特に注意する場面は着脱時と入浴時、移乗時です。

移乗時やストレッシャーで特浴に入る際に、拘縮部分を巻き込まないよう注意しましょう。

拘縮部分は利用者が上手く力を入れたり、動かしたりできない部分であるため、介護者が注意していないと巻き込んで怪我に繋がる可能性があります。

体位交換の場合

拘縮がある方が、ほとんどベッド上で過ごされている場合は、拘縮予防や悪化を防ぐために、定期的な体位交換をする必要があります。

以下では、拘縮のある方への体位交換方法を紹介していきます。

【体位交換方法】

  • 体位交換する旨を本人に伝える
  • 現在向いている方向の反対になるよう利用者の身体の向きをゆっくりと変える
  • ポジショニングを安定させるためにクッションなどを挟む
  • 姿勢が安定しているか再度確認する

体位交換時は、摩擦で怪我などしないようゆっくりと行うこと。

クッションは、拘縮の部位により、

  • 頭部
  • 胸部
  • 大腿
  • 下腿

などの下に挟み込みます。

ベッドと身体の接触面を増やすことで姿勢が安定するだけでなく、床ずれ防止効果も。また、手指の拘縮の場合は、ポールや茶握りなどを握ってもらい拘縮の進行を防ぎます。

クッションは物により、大きすぎり、弾力がありすぎたりと不適切な場合もあるため、不自然に感じたら作業療法士や理学療法士、看護師などに相談してみるのも良いかもしれません。

拘縮のある方への「正しい介護ケア方法」を習得しよう!

拘縮のある方に対しての介護ケアは簡単ではありません。しかし、ポイントをしっかりと抑えて介護ケアを行うことで、利用者さんの苦痛を軽減し、安心感を与えることができます。

記事を参考に拘縮のある方に配慮した介護ケアを実践しましょう。

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