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看護師必見!インスリン注射の打ち方完全ガイド|手順・注意点・自己注射指導のコツ
「インスリン注射の正しい方法が不安」「患者さんへの指導に自信がない…」と悩んでいませんか?
不正確な知識や手技は、患者さんの血糖コントロール不良や合併症のリスクを高めるだけでなく、看護師自身の不安にもつながるかもしれません。
訪問看護における管理ポイントや、よくある疑問への回答も網羅しました。
この記事を読み終える頃には、インスリン注射に関するあらゆる疑問が解消され、自信を持って患者さんに質の高いケアを提供できるようになるはずです。
患者さんの安全と安心を支える、頼れる看護師として活躍できるでしょう。
インスリン注射の基礎知識
インスリン注射は、糖尿病治療において血糖コントロールを良好に保つために不可欠です。
看護師として、インスリン注射の適切な実施と患者さんへの指導には、以下の基礎知識を理解しておくことが大切です。
- インスリン注射の目的と効果
- インスリン製剤の種類と特徴
- インスリン注射に適した部位とローテーション
これらの基礎知識は、患者さんが安心して治療に取り組めるよう支援するための知識になるでしょう。
インスリン注射の目的と効果
インスリン注射の主な目的は、体内で不足しているインスリンを補い、血糖値を適切な範囲にコントロールすることです。
これにより、糖尿病による合併症の発症や進行を防ぎます。
特に、1型糖尿病の患者さんや、2型糖尿病で内服薬では血糖コントロールが難しい患者さんにとって、インスリン注射は生命維持に不可欠な治療法です。
注射されたインスリンは、ブドウ糖を細胞に取り込ませることで血糖値を下げ、エネルギー源として利用を促進します。
インスリン製剤の種類と特徴
インスリン製剤には、作用するタイミングや持続時間によっていくつかの種類があります。
ここでは、主要なインスリン製剤の種類とそれぞれの特徴を表にまとめました。
| 種類 | 作用発現時間 | 作用のピーク | 作用持続時間 | 主な使用タイミング | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 超速効型 | 10~20分以内 | 1~3時間 | 3~5時間 | 食直前 | 食後の急激な血糖上昇を抑える。 |
| 速効型 | 30分~1時間 | 2~4時間 | 5~8時間 | 食前(30分前) | 食後の血糖上昇を抑える。 |
| 中間型 | 1~3時間 | 4~12時間 | 18~24時間 | 1日1~2回 | 基礎インスリンを補い、長時間にわたり血糖値をコントロールする。 |
| 混合型 | 作用発現まで30分程度 | 成分による | 成分による | 食前 | 超速効型または速効型と中間型を混合。1本で食後と基礎の両方をカバー。 |
| 持効型溶解 | 1~2時間 | ピークなし | 24時間以上 | 1日1回 | 基礎インスリンを補い、安定した血糖コントロールを長時間維持する。 |
患者さんの治療計画に合わせて、これらのインスリン製剤がどのように使い分けられているかを理解し、患者さんへの正確な情報提供と適切な指導をしましょう。
インスリン注射に適した部位とローテーション
インスリン注射は、皮下脂肪の多い部位に注射します。
主な注射部位は、以下です。
- 腹部
- 大腿部
- 上腕
- 臀部
特に腹部は、インスリンの吸収が安定しているため推奨されます。
しかし、同じ場所に注射を続けると、皮膚が硬くなったり、吸収が悪くなったりするリポハイパートロフィー(脂肪組織の肥厚・硬結)がおこる可能性があります。
これを避けるため、注射部位を毎回少しずつずらす「ローテーション」をすることがポイントです。
目安としては、前回の注射部位から指2本分(2~3cm)以上離すようにします。
患者さんに、部位の選択肢やローテーションの必要性を具体的に指導することが、安定した血糖コントロールにつながるでしょう。
看護師がおこなうインスリン注射の正しい打ち方と4つの手順
看護師がインスリン注射をおこなう際は、患者さんの安全を確保し、正確な薬効を得るために正しい手順を遵守する必要があります。
準備から注射、抜針後の処理まで、以下のステップを確実に実施しましょう。
- 注射の準備と患者さんへの説明
- 空打ちと皮膚の確保
- 薬液注入と針を抜くタイミング
- 注射後のケアと針の廃棄
これらの手順を適切におこなうことで、患者さんは安心して治療を受けることができ、合併症のリスクを低減することが可能です。
1.注射の準備と患者さんへの説明
インスリン注射を安全かつ正確におこなうためには、事前の準備と患者さんへの適切な説明が欠かせません。
医師からの指示書を確認し、薬剤の種類、量、投与時間などを正確に把握します。
現物のインスリン製剤と指示書を照合し、薬剤名、単位、使用期限に間違いがないかダブルチェックを徹底しましょう。
次に、必要物品(インスリン製剤・注射針・アルコール綿・廃棄ボックスなど)を揃え、破損がないか確認します。
準備が整ったら、患者さんにこれからおこなう注射について丁寧に説明し、不安を軽減することも大切です。
2.空打ちと皮膚の確保
インスリンの準備が整ったら、患者さんに声かけをおこない、注射部位を決定します。
選定したペン型インスリン製剤を使用する際は、「空打ち」を必ずおこないます。
これは、針の中の空気を抜き、薬液が確実に注入されることを確認する大事な工程です。
ダイヤルを2単位に合わせ、上向きにしてボタンを押し、先端から薬液が1滴出るのを確認しましょう。
空打ち後、患者さんに声かけをして注射部位を決定します。
腹部、大腿部、上腕など皮下脂肪の多い部位を選び、患者さんにあった消毒液(アルコール・クロルヘキシジンなど)で消毒します。
消毒液が完全に乾いてから、注射部位の皮膚を軽くつまみましょう。
これは、薬液が確実に皮下組織に届き、筋肉への誤った刺入を防ぐためです。
痩せている患者さんでは特に、皮膚をしっかりと確保しましょう。
3.薬液注入と針を抜くタイミング
皮膚を確保したら、針を基本的に90度の角度(脂肪が少ない場合は45度でも可)で刺入します。
そして、注入ボタンをゆっくりと押し、ダイヤルが「0」になるまで完全に薬液を注入します。
薬液がすべて注入されたことを確認した後も、注入ボタンを押したまま5秒から10秒間保持しましょう。
これは、薬液が逆流したり、皮膚表面に漏れ出たりするのを防ぎ、正確な量が投与されるためのステップです。
保持時間を経過したら、注入ボタンを押したまま針をまっすぐ抜きます。
この一連の動作をスムーズにおこなうことで、患者さんの不快感を最小限に抑えることができます。
4.注射後のケアと針の廃棄
抜針後、刺入部をアルコール綿で軽く押さえ、絶対に揉まないように患者さんに伝えます。
刺入部を揉んでしまうと、インスリンの吸収が早まり、急激な血糖値の変動を引きおこす可能性があるため注意が必要です。
使用済みの注射針は、リキャップせずに専用の廃棄ボックスに直接捨てましょう。
これは、針刺し事故を防ぎ、医療従事者だけでなく、患者さんや周囲の人々の安全を確保するためのルールです。
患者さんが自宅で自己注射をおこっている場合は、家庭での適切な廃棄方法(地域のルールにしたがうなど)についても指導を徹底する必要があります。

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インスリン注射における看護師の注意点
インスリン注射は、患者さんの血糖コントロールに直結するため、看護師は細心の注意を払う必要があります。
特に、薬剤の管理や患者さんの状態観察、使用済み物品の取り扱いに関しては、以下の大事なポイントを理解し実践しましょう。
- インスリンの指示量の確認
- インスリン注射後の低血糖症状
- インスリン製剤の保管方法
- 使用済み針の適切な廃棄方法
これらの注意点を守ることで、安全で効果的なインスリン療法を提供できます。
インスリンの指示量の確認
インスリン注射において、指示量の確認は大事な注意点の一つです。
医師からの指示は、薬剤の種類、単位数、投与タイミングなど多岐にわたります。
そのため、実施前には必ず指示書と現物のインスリン製剤を照合し、ダブルチェックを徹底することが不可欠です。
特に、単位数の読み間違えや、他の患者さんの薬剤との取り違えは、重大な健康被害につながる可能性があります。
疑問に思う場合は、自己判断せずに必ず医師や薬剤師に確認しましょう。
インスリン注射後の低血糖症状
インスリン注射後には、低血糖症状の出現に注意が必要です。
低血糖は、インスリンの作用によって血糖値が下がりすぎた状態を指します。
一般的に血糖値が約70mg/dL以下になると自律神経症状が、50mg/dL以下になると中枢神経症状が現れるでしょう。
主な症状には、以下があります。
- 冷や汗
- 動悸
- 手の震え
- 空腹感
- 意識レベルの低下など
看護師は、注射後の患者さんの状態を注意深く観察し、これらの症状が見られた場合は迅速に対応することが求められます。
軽度であれば、ブドウ糖や砂糖を含む食品を摂取してもらい、意識障害がある場合は医療的介入が必要となるでしょう。
患者さん自身や家族にも低血糖の症状と対処法を指導し、いざというときに備えることが大切です。
インスリン製剤の保管方法
インスリン製剤は、その効果を保つために適切な保管方法を遵守する必要があります。
未開封のインスリンは、凍結を避けて2〜8℃で冷蔵保存が基本です。
しかし、一度開封し使用を開始した製剤は、室温(約25℃以下)での保存が可能であり、使用期限は通常28日です。
ただし、製品によって異なる場合があるため、添付文書を確認しましょう。
高温多湿や直射日光の当たる場所は避け、携帯時は保冷剤を使用するなど、温度管理に注意が必要です。
誤った保管は、インスリンの劣化を招き、薬効の低下や血糖コントロール不良の原因となります。
【体験談】
ある糖尿病患者さんは、残ったインスリンがもったいないからと1か月以上使い続けていました。
打ち方に注意が偏り、保管方法や保管期間を忘れがちになります。
繰り返しの説明が必要でした。
使用済み針の適切な廃棄方法
インスリン注射後の使用済み針は、針刺し事故や感染リスクを避けるため、適切な方法で廃棄しましょう。
使用済みの針は、リキャップせずに専用の廃棄ボックスに直接捨てるのが基本です。
医療廃棄物専用のボックスを使用することで、針が外部に露出するのを防ぎ、安全に回収・処理できます。
一般ごみとして廃棄すると、清掃作業員や動物が針に触れてしまう危険性があります。
患者さんにも、自宅での使用済み針の正しい廃棄方法を指導し、地域のごみ収集ルールにしたがうよう促しましょう。
インスリン自己注射の指導方法|患者さんの個別性を考慮したかかわり
患者さんが安心してインスリン自己注射を継続できるよう、看護師は個別性を考慮した指導が求められます。
患者さんの理解度や生活背景に合わせて、以下のポイントを押さえたかかわりを心がけましょう。
- 患者さんの理解度と習熟度のアセスメント
- 患者さんに合わせた具体的な指導内容
- 患者さんがインスリン注射を継続するための支援
個別性に応じた指導は、患者さんの治療アドヒアランス(治療への主体的な取り組み)向上にもつながります。
患者さんの理解度と習熟度のアセスメント
インスリン自己注射の指導では、まず患者さんの理解度と習熟度を正確にアセスメントすることが大切です。
医療知識の有無、学習意欲、視力や細かい手の動きの器用さ(手指の巧緻性)などを観察します。
また、実際に注射器を操作してもらい、手技の習得状況を確認することも大切です。
高齢の患者さんや、認知機能が低下している患者さんの場合は、どの程度家族の協力が得られるかも評価し、適切な支援体制を検討します。
患者さんに合わせた具体的な指導内容
患者さんの理解度や生活背景に合わせて、具体的な指導内容を調整しましょう。
指導の際は、一方的に説明するのではなく、パンフレットや動画などの視覚教材も活用し、患者さんが主体的に学べるように工夫します。
インスリン製剤の種類や単位の合わせ方、正しい注射部位の選び方とローテーション、低血糖時の対処法などを丁寧に伝えます。
特に、初めて自己注射をおこなう患者さんには、不安を軽減するために、実際に注射器を使って模擬的に練習してもらうのが効果的です。
患者さんがインスリン注射を継続するための支援
インスリン自己注射は、一度指導すれば終わりではありません。
患者さんが日々の生活のなかで継続できるよう、長期的な支援が不可欠です。
災害時などの緊急事態における対応計画も一緒に考える必要があります。
患者さんの生活環境や心理状態を定期的に確認し、困っていることや不安な点を傾聴しましょう。
必要に応じて、地域の医療機関や自治体、訪問看護ステーションなどと連携し、多職種によるサポート体制を整えることも必要です。
訪問看護におけるインスリン療法の管理ポイント
訪問看護において、インスリン療法をおこなう患者さんの管理は、個々の生活環境を考慮したきめ細やかな視点が必要です。
特に、高齢者や在宅療養の患者さんに対しては、以下のポイントが大切になります。
- 高齢者糖尿病患者さんへのインスリン注射管理
- 在宅でのインスリン注射の注意点
- 家族への指導と連携の重要性
これらの点を踏まえることで、患者さんが住み慣れた地域で安心して治療を継続できるよう支援できます。
高齢者糖尿病患者さんへのインスリン注射管理
訪問看護における高齢者糖尿病患者さんへのインスリン注射管理は、身体機能や認知機能の変化を考慮することが大切です。
高齢者は視力の状態、細かい手の動きの器用さの低下から、正確な単位調整や注射手技が困難になる場合があります。
また、低血糖のリスクが高いため、血糖変動を注意深く観察し、必要に応じて医師と連携して投与量の調整を検討しましょう。
【体験談】
インスリンではありませんが、GLP-1受容体作動薬であるマンジャロやオゼンピックのような投与回数を減らせる注射製剤もあります。
訪問時に看護師が投与するといった支援方法をとる場合があります。
在宅でのインスリン注射の注意点
在宅でのインスリン注射では、病院とは異なる環境ゆえの注意点があります。
まず、インスリン製剤の適切な保管場所を確保し、温度管理が徹底されているか確認しましょう。
また、患者さんや家族が使用済み針を安全に廃棄できるよう、専用の廃棄ボックスの設置と適切な処理方法の指導が不可欠です。
注射手技が自己流になっていないか定期的に確認し、必要に応じて再指導をおこないます。
食事時間や活動量など、患者さんの生活リズムに合わせた注射タイミングの調整もします。
家族への指導と連携の重要性
在宅でインスリン療法をおこなう患者さんにとって、家族の理解と協力はとても大切です。
インスリン注射の必要性や手技、低血糖時の症状と対処法、製剤の保管方法などについて、家族にも丁寧に指導する必要があります。
特に、患者さん自身での管理が難しい場合は、家族が注射を補助したり、血糖測定をサポートしたりするケースも少なくありません。
訪問看護師は、患者さんと家族が抱える不安や疑問を傾聴し、地域医療機関やケアマネージャーと連携しながら、在宅療養のサポート体制を構築します。
インスリン注射でよくある疑問
インスリン注射に関して、患者さんや看護師自身からよく寄せられる疑問にお答えします。
これらの疑問を解消することで、より安心してインスリン療法に取り組めるようになります。
インスリン注射をするとき、なぜつまむのですか?
インスリン注射時に皮膚をつまむのは、薬液が確実に皮下脂肪組織に注入されるようにするためです。
皮下注射は、皮膚と筋肉の間にある皮下組織に薬液を届ける手技です。
皮膚をつまむことで、皮下脂肪層が持ち上がり、誤って筋肉に注射してしまうリスクを軽減できます。
特に、痩せている患者さんや、小児に注射する際に有効です。
筋肉内注射になると、インスリンの吸収速度が早まり、急激な血糖値の低下を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
インスリン注射はなぜ10秒押すのですか?
インスリン注射後、注入ボタンを押したまま5秒から10秒間保持するのは、薬液が完全に注入され、逆流を防ぐためです。
注入直後に針を抜いてしまうと、薬液の一部が皮膚表面に漏れ出したり、皮下から逆流したりする可能性があります。
これにより、正確な量のインスリンが投与されず、血糖コントロールに影響を及ぼすことがあります。
特に、量の多いインスリンを注入する際や、粘性の高い製剤を使用する際には、十分な保持時間が必要です。
インスリン注射の痛みへの対処法は?
インスリン注射の痛みは、患者さんにとって大きな負担となることがあります。
痛みを軽減するためにはいくつかの対処法があります。
まず、注射針は毎回新しいものを使用し、針の先端が劣化するので使い回さないようにしましょう。
また、注射部位をアルコール綿で消毒した後、完全に乾いてから刺入することで、アルコールによる刺激を抑えられます。
皮膚をつまむ際も強く握りすぎないようにし、リラックスして素早く針を刺すことも大切です。
注射部位のローテーションを徹底し、同じ場所に連続して打たないことも痛みの軽減につながります。
まとめ|看護師がおこなうインスリン注射の打ち方と注意点
この記事では、インスリン注射の正しい手技と、安全に実施するための注意点を詳しく解説しました。
看護師は、インスリン製剤の種類や特性を理解し、患者さん一人ひとりに合わせた適切な注射部位の選択とローテーションを確実におこなう必要があります。
また、注射前の準備から抜針後の処理まで、清潔操作を徹底し、感染リスクを最小限に抑えることが不可欠です。
特に、患者さんの命を守るためには、指示量の厳守が欠かせません。
低血糖症状の早期発見と対処法、そして使用済み針の適切な廃棄方法に関する知識も重要です。
これらを理解し実践することで、患者さんは安心してインスリン療法を継続できるでしょう。
患者さんへの自己注射指導においても、患者さんの理解度を考慮した丁寧な説明と、疑問に寄り添う姿勢が大切です。
適切な注射手技とリスク管理を徹底し、患者さんが安全にインスリン療法を続けられるよう、看護師として最大限のサポートを提供していきましょう。
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