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介護士の医療行為はどこまで可能?現場で役立つ具体例と注意点
介護士として働く中で、「どこまで医療行為をしても良いのか」と悩んでいませんか?
このような不明確なまま医療行為を行ってしまうと、思わぬトラブルや法的リスクを招くおそれがあります。正しい知識がないままでは、自身のキャリアや利用者の安全にも影響を及ぼす可能性があるのです。
記事を読み終える頃には、介護士として法律に沿った安全な医療行為の範囲を理解し、現場での不安を減らして、自信をもってケアに取り組めるようになるでしょう。
介護士にとっての「医療行為」とは?厚生労働省の定義と背景
介護士にとって「医療行為」とは、法律上、医師・看護師・歯科医師などの有資格者がおこなう行為を指します。
医業とは、医師の医学的判断や高度な技術をもって、人体に危害を及ぼすおそれのある行為を繰り返し提供することと厚生労働省は定義しています(医師法第17条等)
2005年(平成17年)および2022年(令和4年)の通知で、「原則として医行為ではない行為」の範囲が示され、介護現場におけるケアの範囲が明確化されてきました
介護士がおこなえる3つの医療行為
介護士に認められている医療行為は具体的にどういったものでしょうか。ここからは、介護士に認められている医療行為の種類とその具体例を解説していきます。
バイタルサイン測定(体温・血圧・SpO₂など)
体温や血圧、SpO₂(動脈血酸素飽和度)の測定は、医療資格がなくても介護士が行える範囲です。
ただし異常値が出た場合や利用者の体調が急変した場合には、必ず看護師や医師へ速やかに報告する必要があります。
軽微な処置と日常ケア
専門的な判断を必要としない範囲であれば、介護士も軽微な処置や日常的なケアを行うことができます。
- 軽い切り傷や擦り傷
- やけどに対する簡単なガーゼ交換
- 軟膏や湿布の塗布
- 点眼薬の点眼
- 一包化された薬の服薬介助など
また、健常な爪の爪切りや耳垢の除去、口腔内の清掃も認められています。ただし皮膚炎や感染兆候がある場合は医療職に引き継ぐ必要があります。
医療機器の補助・管理
介護士が医療機器に関して行えるのは、準備や補助的な作業に限定されています。
- ストーマ装具にたまった排泄物の処理(ただしパウチの貼り替えは除外)
- 吸引器の汚水廃棄や水の補充
- 酸素療法に用いるマスクやカニューレの装着準備・片付け
- 加湿瓶の水交換や機器の清拭など
これらは「機械の環境整備」として扱われ、医学的判断を伴わない範囲に限られます。
介護士に禁止されている医療行為【罰則対象となる代表例】
介護士が医師法第17条や看護師法第31条に違反しうる「医療行為」を行った場合、罰則対象となります。ここでは、罰則対象となる代表例を3つ紹介します。
注射・点滴などの侵襲行為
皮膚に針を刺す注射や点滴は、介護士には認められていない侵襲行為に該当し、法的に禁止されています。
現場で依頼された場合も、断り、医師や看護師に速やかに報告してください。
褥瘡(床ずれ)の処置
褥瘡(床ずれ)の処置は、創傷管理や感染予防といった医学的判断を伴うため、介護士には認められていません。
軽微なケガとは異なり、専門職である医師や看護師による治療が必要です。
褥瘡の予防のための体位変換は介護職でも実施可能ですが、実際の処置は必ず医療職に引き継いでください。
摘便・血糖測定・気管吸引など高度技術が必要な行為
摘便、血糖測定(穿刺を伴うもの)、気管・鼻腔吸引などは、高度な医療的技術を要するため、介護士には認められていません。
判断に迷った際は、必ず医師や看護師と相談するようにしましょう。
介護士が研修を受けると可能になる「特定医療行為」
医療行為は基本的には医師法に基づき、医師や看護師のみが施行できるものとされています。しかし、医療行為と一般的に呼ばれている行為の中には、研修を受けると介護士でも実施できるものもあります。
そこで、ここからは、研修を受けると行える介護士の医療行為2つを紹介していきます。
喀痰吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ内部)
喀痰吸引は介護保険法第一部改正法により、平成27年度以降、介護福祉士をはじめとする介護士が喀痰吸引を行うことが可能になりました。
ただし、喀痰吸引を実施するためには、研修をクリアする必要があります。また、平成29年1月に実施された介護福祉士の国家試験の合格者は、登録喀痰吸引事業者である就業先で実地研修を行うことにより喀痰吸引ができるようになります。
研修を受けて喀痰吸引の資格を持った介護士が実施できるのは具体的に以下の喀痰吸引です。
- 気管内カニューレ
- 口腔
- 鼻腔
経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)
胃ろうや鼻腔から身体に栄養を入れる経管栄養も介護士が実施可能な医療行為の一つです。
ただし、実施ができるようになるには以下の条件をクリアする必要があります。
- 喀痰吸引等研修を修了していること
- 介護福祉士資格を取得している、または認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けていること
- 登録事業者である施設で勤務をすること
上記3つの条件をクリアしていない状態で経管栄養を実施した場合、違法になる可能性が高くなりますので、注意が必要です。
介護士が医療行為を無資格で行った場合の通報・罰則・事例
介護士が法律で禁止された医療行為を無資格で実施した場合、医師法や看護師法に違反し、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。これは介護福祉士であっても同様です。
違法行為は、施設責任者だけでなく実施した本人にも法的責任が及ぶため、自己判断による実施は避け、判断に迷った場合は必ず医師や看護師へ報告・相談することが大切です。
介護士が施行してはいけない医療行為は、以下サイト記事にも記載がありますので、ぜひご参照ください。

介護士が医療行為を行うときの注意点とリスク管理
介護士が医療的ケアを行う際には、感染予防や衛生管理、観察ポイントの理解、医療職との円滑な連携が欠かせません。
たとえば、ケア前後の手指洗浄・手袋着脱・使用機器の消毒などは必須で、異常時対応や判断に迷った際の相談ルートも事前に明確にすべきです。
また、利用者の状態把握(表情やバイタルの変化など)を丁寧に行い、ケア記録に残すことで、安全な介護につながります。
介護士の医療行為に関するよくある質問
介護士の医療行為について、記事を読んでもまだ疑問が解消されないという人もいるでしょう。そこでここからは、さらに詳細に理解していただくために、介護士の医療行為に関するよくある質問を元にその回答を紹介していきます。
介護士の医療行為を見かけたら通報義務はありますか?
医師や看護師の資格を持たない介護士が医療行為を行った場合、医師法違反に該当する可能性が高いです。事業所の不正行為に対し、見て見ぬふりをすることで状況によっては、責任を問われる可能性があります。
社会的信頼を失う恐れもあるため、介護士の医療行為等、事業所の不正行為を見つけたら自治体の窓口に相談してみるようにしましょう。
介護士の医療行為はいつから一部解禁になりましたか?
介護士の医療行為は平成24年度の制度改正により、条件を満たせば「医療的ケア」として実施が許されるようになりました。
以下は、文部科学省の「学校における医療的ケアへの対応について」の一部文章になります。
医師免許や看護師等の免許を持たない者は、医行為を反復継続する意思をもって行うことはできないが、平成24年度の制度改正により、看護師等の免許を有しない者も、医行為のうち、たんの吸引等の 5つの特定行為に限り、研修を修了し、都道府県知事に認定された場合には、「認定特定行為業務従事者」として、一定の条件の下で制度上実施できることとなった。
それまでは医療行為を介護士が行うことを禁止していましたが、一部の医療行為に関しては条件により解禁されるようになりました。
介護士の医療行為で逮捕された事例はありますか?
実際に逮捕事例があります。
このように違法な指示や行為があった場合、介護士自身や施設責任者にも法的責任が及ぶ可能性があります。
安全に介護士ができる医療行為を実施しよう!
介護士が実施できるのは医療的ケアや厳密には医療行為に該当しないものとなります。
しかし、介護士に許された医療的ケアであっても実施の際には不安になることもあると思います。記事内の注意点を守れば、安全に実施できる可能性は高くなりますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、別職種から介護士への転職を考えている人も、施設内の医療行為については気になるところではないでしょうか。そのような場合にも、記事を読んで、介護士の医療行為についての理解を深めていってください。
安全を保持しながら確実な医療的ケアを実施し、利用者さんにも安心してもらえる環境を整えていきましょう。
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