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看護サマリーを書く目的とは?記載すべき情報や書き方のポイントを解説!
看護要約や退院時要約とも言われ、患者が転院などする際に必要となる大切な情報です。しかし何を目的としているのか、記載する項目について詳細を知らない人も多いのではないでしょうか。また患者に関する情報が膨大になってしまい、長文でダラダラと書いてしまうこともあるでしょう。
記載項目やサマリーを書く際の注意点についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
看護サマリーの意味
日本看護協会の資料の中で、看護サマリーは以下のように定義されてます。
要約(サマリー):看護を必要とする人の健康問題の経過、情報を要約したものである。
出典:日本看護協会「看護記録に関する指針」
つまり看護サマリーとは、患者の病歴や治療方針、ケア情報を要約した書類のことです。看護は患者が施設や自宅、別の病棟などに移動する際にも統一したケアが求められます。看護師が入院中に提供した情報をまとめておくと、引き継ぎが素早く行えます。
患者に継続支援を素早く提供するためにも看護サマリーは重要です。
看護サマリーを書く目的
日本看護協会の『看護記録に関する指針」の中では、看護記録の目的は以下と定義されています。
1:看護実践の証明
2:看護実践の継続性と一貫性の担保
3:看護実践の評価及び質の向上
看護サマリーは、質の高いケアを継続的におこなうための記録です。
そのため、患者の経過について必要な情報がまとめられていることが大切です。ここでは、看護サマリーを書く3つの目的を詳しく解説します。
看護実践の証明
本人やその家族は、どのような看護ケアが行なわれているか具体的にはわかりません。何らかの理由により、医療従事者との間でトラブルが起こることもあるでしょう。しかし看護記録があることで、適切なケアをしてきた事実を証明できます。
間違ったケアをしていなかったことを説明できるので、ときには看護師を守れます。
看護記録は看護実践の事実証明のための重要な資料です。
看護実践の継続性と一貫性の担保
患者は在宅へ復帰したり別の病棟に移動したりします。しかし、そのまま看護ケアを継続するケースも少なくありません。
作成した看護サマリーを看護師間で共有できれば、患者へ一貫した看護ケアを継続して提供できます。
看護の一貫性を担保するためにも看護サマリーは作成されるのです。
看護実践の評価及び質の向上
看護記録があると、実践してきたケアの評価や振り返りができますそのため、全体的な看護ケアの質向上につながるでしょう。患者の満足度を高めるためにも看護サマリーは重要です。
看護サマリーの記載項目
ここでは、具体的に看護サマリーに記載する情報を整理していきます。最低限記載するべき項目は大きく分けて以下の3つです。
- 個人情報
- 医学的情報
- 介護情報
各項目における詳細を解説していきます。
個人情報
細かい書式は各病院ごとで異なりますが、サマリーの上段には患者の基本情報が記載されます。記載項目の内容は以下が一般的です。
- 氏名
- 性別
- 電話番号
- 入所日(入院日)
- 生年月日
- 緊急時の連絡先
- 担当者(主治医)
病院によっては家族のサポート有無や、提供したサポートによる心理状態、家族との関係性など社会性に触れる病院もあります。
医学情報
看護サマリーのなかで医学情報は大きな役割を担います。具体的な記載項目は以下のとおりです。
- 病状(疾患名・既往歴)
- 服薬中の情報
- 入院中の経過
- 医療処置
- 病状と看護経過
- その他
基本的な医学情報を網羅的に記載します。入所経過はまとめて書いておくことで、状態変化が起きても記載の負担を減らせます。
病状(疾患名・既往歴)
看護サマリーの後半では症状や状態を記載するので、疾患名や既往歴などの病状を記入するのみです。既往歴がない場合は空欄にしておきます。
服薬中の情報
患者の服薬状況を記載します。看護サマリーを別の人に渡しても問題ないように、どの薬をどのくらい服用しているか詳細に記入しましょう。
入院中の経過
入院中の様子も細かく記載する必要があります。たとえば認知症患者のサマリーを書く場合、コミュニケーションがどの程度行えるのかは病状を確認するうえで重要です。患者の情報が少ないと、他の病棟に移ったときや在宅に復帰した際に統一した看護ケアが提供できません。
相手の会話を理解できるのか、約束ごとは可能かなど、患者情報は詳細に記載しましょう。また、最新のバイタルサインを書いておくのも大切です。ほかの施設への移動時だけでなく、引き継ぎ時の参考にもなるためです。
職員とスムーズに連携できるように、入院中の経過情報を書く必要があります。
医療処置
看護サマリーには、医療処置の情報を記載します。具体的には以下のとおりです。
- 褥瘡の有無
- 点滴の有無
- 経管栄養の有無
- 服薬管理の有無
- 吸引の可否
医療処置の欄には、患者の処置内容を書いたり◯でチェックしたりする必要があります。備考欄にはアレルギーや感染症の有無、医療処置を施す際の注意点などを記載します。
病状と看護経過
病状と看護経過を記載する欄は、現在の状況を時系列に書いていきます。具体的な記載方法は以下のとおりです。
アルツハイマー型認知症糖尿病の内服加療中、状態管理、内服管理目的で訪問看護介入。
◯月◯日の訪問時、左咽頭部に膿栓あり、往診医により脳腫瘍の疑いとの診断を受け抗生剤内服開始。
近所の耳鼻科で排膿するのも改善には至らず。
病院受診し検査の結果、悪性リンパ腫と診断。
加療目的で貴院へ入院となる。
どのような病状なのか、いつ処置を施したのか詳細に記載していきましょう。
その他
その他の欄には、病状に対する本人の理解度や家族との関係性などを記載します。
介護情報
介護情報はADLとIADLを、各カテゴリーに沿ってチェックします。ここでは、ADLとIADLの詳細や記載する情報を解説します。
ADL
利用者の介護度をチェックするうえでは重要な指標です。ADLは以下の項目で判断されます。
- 食事
- 移動
- 排泄
- 入浴
食事や排泄、入浴といった身体面に関わる部分です。食事であれば、介助や見守りの有無、咀嚼・嚥下状態がチェックされます。移動に関して、起き上がり動作に問題はないか、移動手段は何かを詳細に記載します。
入浴なら更衣の制限、排泄は排尿・排便の時間帯やオムツ使用の有無などが評価ポイントです。
IADL
利用者が日常生活のなかで可能な動作を知るための指標です。IADLは以下の項目で判断されます。
- 掃除や料理
- 洗濯
- 買い物
- 服薬管理の可否
- 金銭管理
IADLは備考欄に記載するケースがほとんどです。病棟でケアをしていると記載する機会は少ないですが、訪問看護でサマリーを書くときは大切な情報です。
看護サマリー作成業務の問題点
看護サマリーは、患者さんへより良い看護を実践するために大切ですが、作成業務には問題点もあります。
ここでは、看護サマリーの作成業務に関する問題を4つご紹介します。
日々の業務が多忙で看護サマリーを作成する時間の確保が難しい
看護師の現場は、業務量が多かったり人手不足だったりとハードです。そのため看護サマリーの作成時間が少なく、場合によっては残業をしなくてはいけません。また先輩看護師も多忙なため、看護サマリーの書き方やまとめ方などの指導を受ける機会も少なめです。
何をどこまで記入すべきなのか
看護サマリーの記入様式は定められていないため、記入する内容に困る方もいるでしょう。新人の方は特に患者の情報をどこまで記載すればいいか判断できません。自分なりに書いたものの、ダメ出しを受けてしまう方も多いのではないでしょうか。
看護サマリーを書く際は、先輩看護師に記入方法を聞くのをおすすめします。
受け入れ先で継続されているのか把握できない
看護サマリーは、患者さんが病院や在宅に移る際に提出する書類です。そのため、受け入れ先で看護サマリーの内容が継続されているのか把握できません。自分が作成した内容がどこまで活用されているかわからないだけでなく、改善点も理解しにくいです。
フィードバックされる機会が少ないので、看護サマリーを書く意識が上がりにくいでしょう。
患者情報の取得・整理が難しい
看護サマリーを記入するには、患者の正確な情報を取得する必要があります。しかし看護師は常に同じ患者の状況を把握できないので、情報の取得や整理をするのが困難です。病院や施設では引き継ぎが行われますが、口頭のみで伝達する場合も少なくありません。
場面別の看護サマリーの記入例とポイント
現場で活躍する看護師のなかには、看護サマリーをどのように記入すればいいのかと悩んでいる方も多いでしょう。
そこでここでは、看護サマリーの例文を場面別で2つ紹介します。現場で起こり得る内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
記入例①:患者が退院し、別の施設あるいは自宅へ移る場合
氏名:A氏
生年月日:○月○日
性別:男性
住所:〇〇市〇〇1-1-1
主治医:〇〇 担当看護師:〇〇
○月○日尿路感染症で入院。現在、点滴や抗生剤投与にて症状は改善されている。
感染リスクを看護計画として挙げ、尿の性状・量などを確認しつつ、IN/OUTバランスの確認を実施した。
入院当初認知レベルがⅡであったが、現在は少し進行しておりⅡbである。
ADLは自立しているが、服用薬の飲み忘れが生じることが今後の課題として挙げられる。
症状や炎症所見の改善が見られ、本人の意向により退院となった。
【ポイント】
看護計画の内容に触れることで、次に携わる者がどのような部分に注意し対応すべきなのかが理解できます。退院に至った経緯や本人または家族の意向についても触れます。
長文で記載するのではなく、簡潔にわかりやすくまとめるのが大事です。
記入例②:症状が悪化し、訪問看護から病院へ移る場合
氏名:B氏
生年月日:○月○日
性別:女性
住所:〇〇市〇〇1-1-1
主治医:〇〇
糖尿病で訪問看護を利用。
血糖値チェックやインスリン注射、内服管理に加え食事管理を週5日実施していた。
ADLは中等度介助で、食事や排泄、入浴に関して軽度の介助が必要である。
通常のバイタルは、体温・〇〇、脈拍:〇〇、血圧:〇/〇、SpO2:○%。
○月○日昼食時にむせ込みがあったようで、ADL低下で排泄時以外体を動かせなくなる。
この時のバイタルは、体温・〇〇、脈拍:〇〇、血圧:〇/〇、SpO2:○%。
意識レベル低下は見られないが、呼吸苦の増強が見られたため救急搬送。
【ポイント】
訪問介護の内容や回数は状態の目安を把握する際に必要となるため、記入します。ADLやバイタルなどの通常時との変化も必要となります。
緊急搬送する場合は、当時の状況・状態がわかるように記入しましょう。
看護サマリーを記載する際の注意点
上記では看護サマリーの記載項目について解説をしてきました。記載項目だけを見ると細かな点のチェックに加え、気になったことを所感として記載するなど大変に感じるかもしれません。
また、書式や項目は各施設・病院に依存する点でもあり、人によって書き方も異なります。基本的には直属の先輩に教えてもらう形を踏襲しましょう。
そして以下では記載する際の注意点について解説をしていきます。看護サマリー作成の際の参考にしてください。
日頃からチーム間でしっかりと情報共有をする
看護サマリーを作成するにあたって、患者の情報を正確に把握しておく必要があります。 1人の看護師が毎日ずっと見続けることは不可能なので、日頃からチーム間で情報共有できる体制を整えることが重要です。
情報共有が上手く行えていると、看護サマリーをスムーズに記入できます。 結果として、患者さんが適切なケアを受けられるようになるため、現場の工夫は必須です。
通常業務もよりスムーズになり、現場の雰囲気も改善されるメリットが生じます!
病歴や現在の状況・状態などを日々の業務内で引き継げる体制を整えておきましょう。
サマリーはポイントを抑えて記入する
看護サマリーは要約して記載する必要があります!
入院歴が長い患者の場合、これまでの経過を長々と書いてしまう方もいるのではないでしょうか。しかし振り返りには時間がかかるので、「入院時、途中経過、現在」など、各フェーズ毎に分けて記載する必要があります。
看護サマリーはポイントを抑えた記述を心がけましょう。
「誰に」「何を」目的に書くものかを明確にする
看護サマリーは、患者の情報を引き継ぎ先に届けるための書類です。病院や家族にとって有益な情報が書かれていなければいけません。そのため、情報は具体的に書く必要があります。
「誰に」「何を」「いつ」などを意識して詳細に記載しましょう。
医療従事者以外の者も理解しやすいように記入する
患者さんがかかわる人は医療従事者だけではありません。特に高齢者は介護施設へ移ることもあり、介護スタッフが看護サマリーを読むこともあります。
医療専門用語を多く使用して記入していると、必要な情報が伝わりづらくなってしまいます。そのため、第三者が読んでも理解しやすい言葉でまとめることが大切です。
一度記入した内容を読み返し、わかりづらい部分がないか確認しましょう。
勤務先の看護サマリー様式や先輩看護師の書き方を参考にする
看護サマリーは職場内で記入の様式が定められている書類です。間違って記入してしまうと、書き直しの手間が発生します。そのため、過去の看護サマリーや先輩看護師の書き方を参考にしましょう。
記入のルールが定められていない場合は、先輩看護師に直接聞いてみるのをおすすめします。
書ける時に記入する
複数の患者さんの看護サマリーを一気に処理している方もいるのではないでしょうか。一気に書くと時間がかかるだけでなく、精神的にも負担を感じます。
一連の看護過程をどのように行なってきたのか、問題はどこにあったのかなどを思い出すにも時間がかかります。そのため日頃から常に患者のメモをとり、気になった点を書き留めておきましょう。
書けるタイミングで記入し始めることで、焦らずに記入できます。
介護と看護サマリーの関係性|サマリーは円滑な業務連携に必要
利用者が施設や在宅に移る場合、看護師はケアマネージャーにサマリーを渡します。そのため高齢者支援には看護サマリーが必要です。
ここでは、介護現場における看護サマリーの役割や現状の課題などを解説します。介護ケアをするにあたり、重要な内容なのでぜひ参考にしてみてください。
看護サマリーは退院後の介護のケアに役立つ
看護サマリーにADLや内服状況など、利用者さんの詳しい情報が記載されていると、施設や在宅でも速やかに看護を提供することが可能です。
継続的なケアをしていくうえでは、以下の情報も必要です。
- 利用者さんの性格
- 家族関係
- ケアマネージャーへの要望
詳細な情報があればケアの方針が立てやすいので、利用者さんが満足する介護を提供できます。
他職種連携との情報共有にも役立つ
看護サマリーは他職種との情報共有にも役立ちます。しかし現状では記入欄の兼ね合いにより、他職種に向けた情報が記入されていないのが現状です。
2008年の論文『継続看護のためのサマリーの検討』には、ケアマネージャーからリハビリの状況を知りたいという意見が多く出ていました。
介護は理学療法士や作業療法士などのリハビリ職、管理栄養士との連携が必要です。看護サマリーでリハビリの経過情報や病院での食事状況を知れれば、他職種連携の質を高められます。
記入様式は病院によって異なりますが、自由記載欄にADLやリハビリの状況、栄養状態などを記載しておくと良いでしょう。
介護現場に看護サマリーが届かないケースも
介護現場にサマリーが届いていないケースもあるようです。
平鹿総合病院地域医療連携室が20件の居宅介護支援事業所に調査をおこなったところ、約半数以上の事業所にサマリーが届いていない状況となっています。
同調際によると病院によっては作成していない場合もあるようです。そのため、利用者の正確な情報をケアマネージャーや介護職は知れません。医療情報の共有が介護・看護現場の課題です。
よくある質問
看護サマリーに関する質問を紹介します。
- 看護サマリーは誰が書くの?
- 看護サマリーは誰に渡すの?
- サマリーとカルテの違いは何?
- 看護サマリーに規定の様式はある?
- 看護サマリーは必要?
記事を読み進めていくなかで気になる点がある方は、ぜひ確認してみてください。
看護サマリーは誰が書くの?
看護サマリーは施設や別の病棟、在宅でスムーズなケアと継続的な看護が続けられるようにするために記載する記録です。そのため看護サマリーは、利用者さんを担当している看護職が書きます。
看護サマリーは誰に渡すの?
看護サマリーは本人の家族かケアマネージャーへ渡します。本人の家族へ渡す場合は、速やかにケアマネージャーに提供するように説明をします。
もちろんケアマネージャーにも、家族に看護サマリーを渡していることを伝えましょう。ケアマネージャーへ渡す際は、本人か家族の同意を得たうえで提供します。
サマリーとカルテの違いは何?
サマリーは患者さんの既往歴や治療歴、家族歴を要約した記録のことです。一方カルテとは、医師の診断結果が記載されている書類です。
ADLや家族との関係性は看護サマリーに記載されていますが、カルテには記入されていません。カルテには病気やケガなどの診断内容や処方薬、経過観察が書いてあります。
看護サマリーに規定の様式はある?
看護サマリーの様式に規定はありません。病院やクリニックによって異なります。
看護サマリーは本当に必要なの?
看護師は一貫した医療的ケアを提供しなくてはいけません。看護サマリーがあれば、利用者が病院から施設や在宅に移った場合でも速やかに情報共有ができます。そして同等のケアを受けられるため、看護サマリーは必要です。
まとめ
本記事では看護サマリーの意味・目的に始まり、記載項目や書く際の注意点について解説をしてきました。看護サマリーは、患者さんの重要な情報を引き継ぐと同時に、より良い看護・ケアを行うために作成する書類です。
看護における過程を詳細に記載すると、つい長文になるのは決して珍しくありません。しかし大切なのは引き継ぎ先含めた「読み手」の気持ちになって考えることです。
今回で解説した注意点を踏まえ、少しでも看護サマリーの書き方を上達させると同時に、今後もより良い看護を目指してみてください。