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看護師のための「傾眠傾向」対策と予防方法ガイド
「傾眠傾向」という言葉は、高齢者の患者さんや施設の利用者さんを対応する際に、よく耳にすることでしょう。この傾向が一見、ただうとうとしているだけに見えるかもしれませんが、実は重大な病気のサインである可能性もあります。
傾眠傾向のある患者さんや利用者さんを発見した場合、どのような対処をすべきなのでしょうか?
「傾眠傾向」どのような状態?
この状態の特徴は、弱い刺激、例えば声をかける、肩を軽く叩くといった刺激で意識が取り戻せる点です。
傾眠傾向は意識障害の4段階のうち最も正常に近い状態ですが、頻繁に発生すると危険性が増します。特に、誤嚥や筋肉量の低下などの原因となる可能性があるためです。加えて、車椅子や椅子に座った状態で発生した場合、大きな事故に繋がる可能性もあります。
患者や利用者を保護するため、看護師は傾眠傾向について十分な知識を持つことが重要です。
傾眠傾向の主な要因
傾眠傾向は一見、ただのうとうとしている状態に見えますが、実は深刻な病気や症状の可能性を示す重要なサインとなる場合があります。
これは昼夜問わず発生する場合が特に該当します。このような重大な兆候を見逃さないように、看護師は常に注意深く観察する必要があります。
こちらでは、傾眠傾向の主な要因について詳しく説明します。
認知症
認知症の初期症状の一つに、「アパシー(無気力)」があります。
これは前頭前野の障害により、意識が低下し行動が起こせない状態を指します。アパシーになると、脳の活性化が低下し、傾眠傾向が強くなる可能性があります。
重要なことは、アパシーには自覚症状が少なく、必ずしも気分が落ち込んでいるわけではないという点です。さらに、認知症の影響で睡眠リズムが崩れることがあります。これにより、夜間に十分な睡眠が取れず、日中に傾眠がみられるケースも存在します。
脱水症状
高齢者は体内に水分を貯めておく機能が低下し、脱水になりやすいです。
噛む力や飲み込む力も低下し、食事を満足に取れなくなる方もいます。このような状態が続くと、脱水症状や栄養不足が生じ、それが原因で意識が朦朧とし、傾眠傾向がみられることがあります。また、脱水状態は意識レベルの低下だけでなく、ひどい場合には幻覚症状を引き起こす可能性もあります。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は脳疾患の一種で、頭部の打撲により脳と硬膜の間に血が溜まると発生します。
血腫が脳を圧迫すると、傾眠傾向だけでなく頭痛や歩行障害などの症状が現れます。特徴的なのは、頭部を打撲した直後ではなく、数週間から数ヶ月後に症状が現れる点です。この病状は通常、外科手術が必要であるため、早期発見が重要となります。
内科的疾患
内蔵の異常、例えば肝臓や腎臓の病変、または病原菌による発熱は頭がボーッとする症状を引き起こすことがあります。
このような場合、内蔵の活動が正常に戻るか、熱が下がると症状は収まります。
薬の副作用
抗てんかん薬や認知症の薬など、傾眠傾向を副作用として引き起こす可能性のある薬が存在します。
血圧の薬や精神科の薬、胃薬など、多種類の薬を同時に服用することによって効果が重複し、傾眠傾向を誘発する可能性もあります。新しい薬を服用した後に傾眠が見られた場合、それは薬の影響が考えられます。
低血圧
「食後性低血圧」は、食事から約1時間後に強い眠気が襲う現象を指します。
食事を摂ると消化器系への血流が増えるため、その結果として脳への血流が減少し、めまいやふらつき、そして傾眠傾向を引き起こします。また、入浴後にも傾眠傾向が現れることがあります。これは入浴によって血圧が急激に下がるためです。
特に、高血圧や心臓、肺に問題を抱える方は、肩まで浸かるような熱いお湯に入ると血圧が下がりやすいため、注意が必要です。入浴前の水分補給など、食後から入浴までの時間帯には特に注意を払うべきです。
老衰による体力の低下
老衰による体力の低下は、傾眠傾向を引き起こすケースがあります。
これは、加齢に伴って神経伝達機能が低下し、その結果、意識レベルが徐々に低下する自然な過程です。この状態で傾眠傾向が見られる場合、それは体力を温存し、苦痛を和らげるための自然な反応とも考えられます。
傾眠傾向の看護師の対処法
傾眠傾向のある方に対して、看護師はどのように対処すべきなのでしょうか?
こちらでは、傾眠傾向のある患者さんや利用者さんを発見した場合に、看護師が行うべき対処法についてご紹介します。
コミュニケーションを取り、会話の機会を増やす
傾眠傾向が見られる方には、積極的に話しかけて会話の機会を増やすことが重要です。
認知症などで脳の機能が低下している場合に有効です!
日中に患者さんや利用者さんが可能な限り活動的に過ごせるよう支援します。さらに、可能であれば、散歩や適度な運動を促し、身体機能の向上を図ることもおすすめします。また、認知症の症状により睡眠リズムが乱れている可能性も考慮する必要があります。
生活リズムを整えるアプローチを心がけ、日中に眠る機会を与えないようにすることが効果的です。
服薬量の調整をする
薬の副作用や効果の重複が原因である場合は、医師と相談して服薬量の調整を行います。普段から、医師によって服用薬が決められている場合でも、安定するまではコントロールが必要です。
看護師は、患者さんや利用者さんが服用している薬を把握し、副作用や注意事項など、薬に関する知識を身につけておくことが大切です。
水分補給をさせる
高齢になると、脱水症状になりやすくなります。
脱水症状は、傾眠傾向を引き起こす原因になり、深刻な症状に発展することもあります。こまめな水分補給を促し、注意深くチェックすることが大事です。
症状が進行すると、疲労感、頭痛、めまいが起こり、最悪の場合は死に至ります。脱水症状を疑ったら、脇の下を確認してみましょう。脇の下が乾いていたら、脱水症状の可能性があります。他にも、舌の状態や握手の強さなどで確認する方法があります。
疑わしい場合は、すぐに確認するようにしましょう!
特に高齢者は、水分を取らなくなる人も多く、水分補給の重要性を伝えることが大切です。水分補給の時間帯についても注意しましょう。朝に水分補給することで、傾眠傾向を和らげることができる場合もあります。
普段から患者さんの様子を観察し、異変を察知するスキルを高めよう!
傾向傾眠がみられると、一見うとうととしているだけに見えますが、実はさまざまな危険性が隠れています。
高齢者にとっては、認知症や脱水、薬の副作用などが要因として挙げられます。正常に近い意識障害ではありますが、小さな異変を察知することで患者さんや利用者さんを守ることができます。
看護師は、普段から患者さんや利用者さんの様子をよく観察しておくことが必要です。また、要因になる可能性がある項目を把握し、リスクを最小限に抑えることが大切です。