ジャンル別記事
【事例あり】介護施設から救急搬送するときはどうすればいいの?
介護士として働いていると、施設利用者の病態が急に悪くなってしまったり、段差で転んでケガをしてしまったりということがあります。
自分たちだけで応急処置をした方が良いのか、119番通報した方が良いのか悩んだことがあるのではないでしょうか?
どんな症状なら119番通報するべきなのか?
患者の病態が悪化した際に、どのような症状、状態であれば119番通報するべきなのかを知っておかないといざというときに冷静に対処できません。
原則として、入所時に「同意書」を作成しましょう!
これは緊急時に介護士の判断で119番通報してもよいか、などの家族の方の同意を得るものです。
治療費などのお金のこともありますので、必ず同意書を記載してもらうようにしましょう。その上で「介護士が施設内で応急処置できない症状・状態」であれば119番通報した方が良いです。また、例えば以下のような状態のときも通報した方が良いです。
- 意識がない
- 出血多量
- 感染症などで隔離が必要な場合 など
介護士はどこまで対応するべきなのか?
施設内でできること(AED、人工呼吸、心臓マッサージなど)は通報前、通報してから救急隊員が到着するまでにやっておきましょう。
また、介護士が利用者の家族に連絡することもあるため、状況を正確に伝えられるように救急隊員や医師などと情報を共有しておくことも大切です。
介護士は付き添った方が良い?
基本的には介護士も搬送に付き添った方が良いでしょう。それは家族に連絡する際、正確に状況を伝えるためです。
また、今後の対応も家族、介護士や施設側、搬送先の病院の3者で話し合っていかなければならないため、1人担当者を決めた方(付き添った人が担当になるケースが多い)が良いでしょう。
救急隊員に何をどうやって伝えれば良い?
救急隊員が施設に到着したら、隊員たちが適切な処置、対応をできるように以下のことを伝えましょう。
- 今の状態
- 病態が悪化してからどのくらい時間が経ったか
- 抱えている病気
- 考えられる悪化の原因 など
ただし、基本的に処置に必要なことは隊員の方からきいてきますので、最低限、質問に答えられれば良いでしょう。わからないことはわからないと素直に答えましょう!
家族への連絡はいつしたら良い?
日中であれば、救急搬送した段階もしくは応急処置を済ませて落ち着いた段階で家族に連絡するのが望ましいです。
命がかかわるような重篤な危機状態にある場合や手術が必要な場合、本人の意識がない場合などは処置、搬送の途中でも連絡した方が良いでしょう。
緊急であれば、深夜であってもためらわずに連絡を入れましょう。
入院費・治療費などはどうするの?
介護士が119番通報した場合であっても、長期の入院にわたる治療費などは基本的に家族に出してもらいましょう。
ただし、施設側の過失でケガをさせてしまった場合や家族と連絡が取れない場合などは施設が入院費や治療費を払うことになることもあります。
いずれの場合であっても、1人の介護士が独断できるものではないため、判断に迷ったら施設長に相談しましょう。
施設でできる予防策8選
これまで施設の利用者が急な病態悪化などによって搬送される場合の対応について解説してきました。しかし、そもそも施設側としてはケガや病気の悪化が起こらないよう、予防しておくことも大切です。
ここでは、施設でできる予防策を8つ紹介します。どれも基本的なことですので徹底するようにしましょう!
手洗い・うがいの徹底
コロナやインフルエンザなどの感染症を防ぐためにも、まずは手洗い・うがいの習慣を施設利用者に身に付けさせましょう。特に、外出先から帰ってきたとき、リハビリなどの作業をした後などは介護士が率先して手洗い・うがいをさせましょう。
食事前などは手指の消毒もするとなお良いです!
バリアフリー化
施設の構造の問題なので介護士がどうにかできるものではありませんが、施設内はバリアフリーにしておきましょう。
車いすを利用している人もいるでしょうから、段差だけでなく凹凸や障害物などもなくすようにしましょう。
階段だけではなく、施設内の複数個所にエレベーターを設置しておくのも喜ばれるでしょう。
処方薬の確認
利用者が服用している薬を把握しておきましょう。処方薬を確認する際にはお薬手帳などを見て、以下のことを確認しておくと良いです。
- 服用するタイミングの確認(食前なのか食後なのか、朝夕なのか毎食後なのか、など)
- 服用したか確認する(毎回)
- 副作用
- 他の薬との飲み合わせ
- 薬を服用する際の注意点
- 過去に服用していた薬
- 薬を購入するタイミング
適切なケアをするためにも、必ず確認、共有しておきましょう。
食事に注意
健康維持・促進のために栄養を管理することはもちろん大事ですが、それ以外にも食材の大きさや硬さにも気をつけましょう。
小さすぎると気管に入ってしまう可能性もありますので、適切な大きさ・硬さにしましょう。
温度や気圧などの環境にも気を付ける
実は人間は気温や気圧、湿度などの環境からも影響を受けています。体内の機能が正常に働いていればある程度適応できるのですが、それらの機能が衰えてくるとちょっとした変化でも大きなストレスになります。
施設内の環境は空調などを利用して適度に保っておきましょう。
かかりつけの病院と連携を取っておく
あらかじめ、利用者のかかりつけ医とコミュニケーションを取っておくことも、緊急時の迅速な処置のためには必要です。緊急時にお互いが何も知らない状態ですと、状況説明・把握に時間が取られてしまい、その分、治療の進みが遅くなってしまうことがあります。
日頃から利用者の状態などについてコミュニケーションを取っておくことで、いざというときにスピーディに対応できるのです。
緊急時用の器材をすぐに用意できる場所に置いておく
利用者の病態が急に悪化した際に、すぐに対応できるよう、緊急時用の器材(AED、ナースコールなど)を多く用意しておきましょう。
トイレや浴場、ロビーなど共用の空間にはAEDを、個室や廊下にはナースコールを設置しておくと良いでしょう。
研修や講習などの実施
認知症など特定の病気に対する知識やケアの方法を学び、理解を深めるためにも研修や講習を実施・受講したり資格を取得したりすることも大切です。
個人でも受講できるものは積極的に受けていきましょう!
【事例付き・ケース別】具体的な対応の仕方
今までは基本的な対処法をお伝えしてきました。しかし、現場での適切な対応というのは状況によって変わってくるもの。
ここでは、実際に過去に起きた事例を紹介していきます。
ケース1.施設内で何かあった時
施設内で転倒、ケガをした場合にすぐに搬送しないと参考サイトのように深刻になる場合があります。場合によっては利用者に後遺症が残ってしまったり死亡してしまったりすることも。
そうなると施設が訴えられてしまい、多額の慰謝料を支払わなくてはならなくなります。また、そういった事件がニュースとして広まると今後の運営にも響いてきます。
自分1人では対応しきれなくなりますので「このくらい大丈夫だろう」と思わず、すぐに119番通報するようにしましょう。
参考サイト:https://www.iryou-tominagaai-law.com/post-3797/
ケース2.利用者がお酒を辞められない場合
利用者がお酒やたばこなどの嗜好品を辞められないことがあります。
健康管理上、そういった嗜好品の利用を止めたいと思うこともあるでしょう。しかし、残念ながら介護士は強制的に止めることはできません。
同意書があれば、注意程度の声掛けはできますが、それでも「止めてください」とは言えません。
わがままな利用者、介護士の言葉を聞かない利用者も中にはいる、ということを覚えておきましょう。
引用ツイート:https://twitter.com/myusky_Everyday/status/1584541413290971137
ケース3.頻繁に救急搬送される場合
利用者は体の弱い高齢者ですから、コロナやインフルエンザ、早急な対応が求められます。
そのようなとき「仕事だ」と割り切って淡々と作業を進めることが必要です。もちろん、1人1人に真摯に向き合い、心配することも大切ですが、介護士側が一喜一憂していては他の利用者にも悪影響を及ぼしてしまいます。
介護士には優しくて強い心が必要なのです!
引用ツイート:https://twitter.com/No197751057/status/1585850612222406656
緊急時には慌てず、冷静な対応を
深夜の見回り時など、他に誰もいないときに利用者の状態が悪化していたらパニックになってしまいますよね。
まずは深呼吸をして落ち着きましょう!
介護士であり、第一発見者のあなたが冷静でなければ助かる命も助からなくなってしまいます。
その場でできる状態確認・応急処置⇒119番通報⇒他の介護士や施設長への連絡(仲間が必要な場合)⇒家族への連絡 という流れで行動すればOKです。慌てず焦らず、冷静に対処しましょう!