ジャンル別記事
【事例あり】介護ケアの統一に向けて必要なことを解説!
介護職を行う中で「人によってやり方が違う!」「ケアのルールが統一されていない」という悩みを抱えていたり、新人教育時にバラツキが出てしまうなど苦労を抱えている方も多いのではないでしょうか。場合によっては利用者の方から直接指摘されることもあるでしょう。
年齢・立場の違う人が多く働く介護の職場では、統一感のあるケアをするというのは非常に大変です。しかし、チームとして統一感のある介護サービスを提供すれば、組織の成長はもちろん、利用者の満足度上昇にも繋がります。
ケアの統一に悩む方は是非参考にしてください!
介護ケアとは何を指すのか
そもそも統一的な介護ケアを行うにあたり、「介護ケア」という言葉は何を指すのかはっきりしない点もあると思います。
そこで、以下では言葉の定義や良質なケアを実現するにあたり、何が必要かを明確にしていきます。
定義
介護ケアという言葉の意味についてですが、具体的に法律や辞書で定義されているものではありません。「介護」と「ケア」という言葉を組み合わせた造語です。
それぞれの言葉の意味について、「介護」についてはみなさんご存じかと思いますが、高齢者や身体が不自由な方の人の行為を助けるものです。厳密に法律等で明記されているものではなく、一般的なイメージとなります。
対して「ケア」という言葉は幅広い意味があります。「注意・用心」という意味もあれば、「心遣い」「「世話をする」という意味までありますが、いずれの意味でも介護業界で使う意味としては間違いはないと言えます。また、より実務的な側面で言うと、「ケアマネージャーによって計画されたケアプランに基づく行為」を指すとも言えます。
似ている2つの意味ですが、ケアという言葉の幅広さを鑑みると、
介護ケアというのは「高齢者や身体が不自由な方向け」の「行為」や「コミュニケーション」などを包括した言葉と言えるのではないでしょうか。
「ケア」という言葉が包含する意味合いについては、下記についても参考にしてみてください。
出典:https://www.takada-jc.ac.jp/files/campus/fukushi/r02kiyou-01.pdf
良質なケアには「職場単位の取り組み」が必要
介護ケアという言葉を明確にしたところで、介護におけるケアの形について確認していきましょう。従来では一部屋に3から4人の入居者が暮らす多少室が中心となった「集団ケア」が一般的でした。しかし高齢人口の増加と共に、ケアの本質である「本人の意思・希望に沿う」ケアの重要性が高まり、「個別ケア」を行う事業者も増え、「ユニットケア」やという新たなケアスタイルへ派生していきました。
ユニットケアは少ない職員で多くの利用者を見ることが出来ると同時に、介護職員にとってマルチタスクを要求されるようになります。また、複数の職員でケアを行う場合、申し送りを含めた日々の情報伝達の抜け・漏れや精度の違い、更に職員一人一人の考え方の違いからケアにバラツキが生じてきます。
利用者のQOLを高めるためには、職場単位で統一感のあるケアを行うための取り組みが必要と言えます。
介護ケアが統一されていないことで不適切なケアを提供してしまうことも
良質なケアを提供するにあたって、ケアが統一されていることが必須となります。介護ケアが統一されていない場合、利用者に対して不適切なケアを提供してしまうケースも起きてしまいます。
何気ない会話の一言や必要だと思って行ったケアが、利用者にとっては適切ではなかったということもあるため、職員間で認識を合わせることが重要です。
介護が必要な状態になり、これまで通り身体を自由に動かせなくなったり、認知症の症状が進んでいたとしても、利用者にとってのプライドや大切な想いは変わりません。
介護士には、利用者の尊厳を守りながら支援することが求められます。不適切なケアが蓄積されると、利用者やその家族からの信頼度も低下してしまうでしょう。
利用者のためにどのようなケアが適切なのか、利用者目線の考えを職員全員が持つことが望ましいです。
介護ケアの統一にチームワークが大切な理由
上記では介護ケアの言葉の定義や、良質なケアにおける職場単位の取り組みの重要性について述べてきました。では、なぜ個人の介護スキルではなく、職場「チーム」としての取り組みが大切になるのでしょうか。
以下ではチームワークが必要になる理由を解説していきます。
様々な職種の人と関わるため
介護職場の場合、介護士に関わらず、医師や看護師、介護福祉士やケアマネージャーなど多くの職種の方と関わる形となります。
様々な職種の方が関わる以上、チームワークが良くないと、利用者に対しても良質なサービスを提供する事はできません。また、同じ介護職員によっても得手不得手が当然あります。入浴介助が得意な方がいれば、食事介助が得意な方など一括りに出来るものではありません。
良いチームワークを維持すれば、職員同士のフォローも可能となり、結果として利用者へのサービスの質を上げることに繋がります。
利用者との良い関係性を維持するため
職員と利用者との間で、当然相性の問題が存在します。幾ら努力をしても細かな点がどうしても合わない部分は人間同士仕方がないと言えます。しかし、そこで苦手意識を持ってしまったり、お互いが無理や我慢をしてしまう状態では、両者にとって良い状態とは言えません。
関係性をうまく築けない際、他の職員や他職種の方が間に入って取り持つことが出来れば、職員・利用者双方の関係性を維持できることもあり、職員同士の連携は大切と言えるのではないでしょうか。
介護の質を統一するため
3つ目は誰が行っても同じクオリティの介護サービスを提供し、介護の質を統一するためです。
シフト制で勤務する介護職員にとって、決まった担当者がサポート出来ないのは致し方ないことです。しかし、「〇〇さんじゃないと嫌だ」「今日は〇〇さんはいないの?」という質問の裏には、サービスに対する不安や不満が見え隠れしています。
職員のサービス内容・粒度に違いを生じさせて、利用者を不安に感じさせることがないよう、日頃からコミュニケーションを密に取り、何かあった際にしっかりと報告・相談できる体制が必要と言えます。
チームワークが発揮されていない介護施設の特徴
介護ケアが統一されていない事業所は、チームワークが充分に発揮されていません。
チームワークが発揮されていない場合、以下のような特徴が挙げられます。
チームケアへの理解が不足している
チームワークが発揮されていない事業所は、チームケアへの理解が不足していることでしょう。よって、利用者にとって最適なケアを提供することができなくなってしまいます。また、チームケアへの理解不足な介護施設は、職員個人主体で動いており、コミュニケーション不足であると考えられます。
職員同士の空気感は、利用者にも伝わってしまい、居心地が悪い環境を提供してしまいます。
それぞれの専門職が連携することで、良質な介護ケアの提供に繋がります!
利用者目線のケアが行えていない
自分の考えが正しいと思い込み、個人主体の考えで介護ケアを行なってしまいます。相手の目線に立って行動するという考えが根付いていないため、利用者が求めることを把握できません。
自分の体調の異変を言葉で訴えることが難しい利用者もいます。そのため、介護士がよく観察をし、表情や態度などから見極めるスキルが必要です。一人ひとりが利用者の目線に立ってケアを行うことで、より質の高い介護ケアを提供できます!
報連相ができていない
報連相は、どの職場においてもチーム一丸となって業務を遂行するために必要なコミュニケーションです。
介護ケアは、職員1人で利用者を対応するわけではありません。他職種を含め、多くのスタッフが利用者に対して適切なケアやサービスを提供していきます。
適切なケアを行うためには、利用者の状態、好み、異変などを共有し合い、問題点を解決するためにどのように対応すべきなのかを周知する必要があります。報連相が上手くできていないことで、最終的に被害を被るのは、利用者本人やその家族です。
事業所全体の信頼にも大きく関わってしまうため、常日頃から職員間で充分なコミュニケーションを取ることが重要となるでしょう。
介護ケアの統一によって生じる効果
事業所内で介護ケアが統一されることで、次のような効果が得られます。
ヒヤリハットが減少する
転倒や転落などのヒヤリハットは、利用者本人だけでなく介護をする側や環境が原因で発生するケースもあります。介護は人と人が密に接する場面であるため、それぞれの心身の状態によって集中力や信頼関係に大きく影響してくるものです。
職場環境が劣悪である場合、その分、事故や災害リスクも高まってしまいます。また、床が滑りやすい、物品が散乱しているなど介護に相応しくない環境は、もちろんヒヤリハットが発生するリスクが高いです。
介護ケアの統一に努めることで、職員間で課題や問題点を共有し合うことができます。人によって観点が異なるため、自分が気付けていない部分を他の職員が発見できるケースも多々あり、様々な視点から改善策が生まれます。
ヒヤリハットが起きる原因をゼロに近づけることが可能となります!
接遇が改善される
信頼関係を築くためには、接遇マナーも大切になります。挨拶や身だしなみ、言葉遣い、表情など各項目でルールを統一しておくことで、より高い信頼を得られます。
介護ケアが統一されていないと、職員それぞれで独自のケアを提供してしまいがちです。
事業所内でケアの統一を図ることで、接遇も改善され、より質の高い介護を提供できるようになります。
「ここの介護士さんはみんな良い人」と事業所全体の評判に繋がるため、大きな効果を得られるでしょう!
より安心・安全な環境に整えられる
介護ケアを統一することで、より安全で安心な環境に整えられます。介護施設は利用者にとって、安心・安全な環境づくりが求められます。設備に関することだけでなく、心から安心できる環境づくりが重要で、介護士との信頼関係にも大きく影響します。
職員間で介護ケアの統一が行われることで、利用者に高い安心感を与えられるでしょう!
全体の介護の質が向上する
介護ケアの統一によって、施設全体の介護の質を高めることができます。
職場で統一したマニュアルを設けることで、入職したばかりのスタッフも安心して業務を行えます。育成マネジメントに関する項目にも改めて目を向けることができるので、職員の定着率もアップするでしょう。
また、人によって価値観や考えが異なるため、統一したルールを設けることは重要です。
それぞれが抱える問題、職場の環境設備に関する課題を洗い出し、チームとしてまとまることで質の高い介護ケアの提供に繋がります!
介護の質を統一させるために必要なこと
利用者にとって快適なサービスとなるよう、介護の質を統一させることは大切です。
以下では、介護の質を統一させるために必要なことについて解説をしていきます。
目標・理念を周知・共有する
チーム全体で同じ方向を向いて動くためには、共有できる目標・理念をしっかりと周知し、実践していくことが必要です。個々の職員が理念や目標の下バラバラに動いていては、ケアの質を統一することはできません。
具体的には理念や目標にプラスして、職員間の考え・価値観を擦り合わせ、目指すべき方向性を揃えていく必要があります。そして決めた目標や趣旨に対し、利用者へのサービスや情報共有を通してフィードバックを重ね、イメージを理想に徐々に近づけていくことが必要となります。
職員同士で目指すべき理想像が共有されていれば、必然的に利用者へのサービスも均一化され、統一感のあるケアが可能となると言えます。
職員同士のコミュニケーションを取る機会を増やす
介護の質を統一させるためには、職員同士のコミュニケーションを取る機会を増やすことが重要です。
- 朝に数分ミーティングの時間を設ける
- ツールを活用して常にコミュニケーションが取れる状態を設ける
などの改善策を設けることが必要です。それぞれの価値観や考えを確認し合うことで、一つのチームとしてケアを提供できます。
介護の現場では、個人主体ではなく連携し合うことが大切です。
統一した介護ケアを作り上げるためにも、職員同士のコミュニケーションが大事なポイントとなります!
職場独自のマニュアルを作成する
シフト勤務を行う介護職員にとって、サービスの個人差を埋めるのは非常に重要です。サービスが利用者の満足を決めると言っても過言ではないからです。しかし、新人への教育時など教える人によってバラツキがあり、理解度に差が出てしまうことに困っている事業者の方もたくさんいるのではないでしょうか。
そこで、理念や目標の周知だけでなく、職場内の誰が教えても同じ教育となるよう、施設独自のマニュアルを作成しましょう。介護職として教わる基本的な知識だけでなく、過去の新人からの声を踏まえ、わかりやすいマニュアルを作成することが大切です。
アセスメントの重要性を知る
介護の質を高め、統一感を持たせるためには、職員同士がアセスメントの重要性をしっかりと理解していることが大切になります。
良質なケアの基となるケアプランを作成するには、利用者の能力状態ばかりに目を向けるのではなく、価値観や考え方・習慣に寄り添って利用者の全体像を把握していく必要があります。
まとめ
本記事では介護ケアという言葉の定義から、介護ケアの統一に向け必要なことを解説してきました。
様々な職種が関わる介護職場においては、どうしても個々人の考え方や価値観がサービスに反映されがちです。しかし、本当に大切なのは利用者にとって最適なサービスを提供することであり、そのためにも職員間の横の連携及び目標をしっかりと共有することが大切となります。
本記事を読み、少しでも統一した介護ケアを行うきっかけとなって頂ければ幸いです。