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クーリング(冷罨法)とは?目的や効果、実施手順を看護師向けに解説!
- 発熱の時には氷枕で頭を冷やすのは当たり前
- 発熱や怪我をしたときに、どのタイミングでクーリングをしたらいいのだろう
- 複数クーリングをしていることが、どのように効果があるのかわからずやっている
看護の場面において、このような疑問を持ちながらも通常どおりだと思ってクーリングをしてはいませんか? 実は、効果がない方法でクーリングを行っている方も一定数います。
冷やしてはいけない場合や、クーリングによる弊害を知らないことで、患者さんに大きな負担をかけてしまわないように、本記事の内容を参考にしてください。
クーリングとは

クーリングとは、体の一部や全身を冷やすことで体温を下げたり、安楽を図ったりする看護技術のひとつです。一般的には、以下の道具を使用し、体表面から熱を逃がす方法がとられます。
- 氷枕
- 冷却シート
- アイスバッグなど
特に、発熱時や外傷後の腫脹、疼痛緩和など幅広い場面で活用されます。単なる解熱行為ではなく、患者の快適さを保ち、症状の悪化を防ぐ意味も含まれています。
ただし、適応や禁忌を正しく理解しなければ、低体温や循環障害などのリスクを伴うため、看護師には正しい知識と判断力が必要です。
クーリングの目的・効果

クーリングの目的は大きく分けて3つに整理できます。クーリングは単なる冷却処置ではなく、症状の緩和と安楽の両立を目的とした看護技術といえます。
「安楽」のためのクーリング
クーリングは体温を下げるだけでなく、患者の「安楽」を得るために行われることがあります。発熱による熱感や寝苦しさを和らげる目的で、氷枕や冷却シートを用いる方法が一般的です。
ほかにも、ケガによる炎症、ストレスによる負担に対して、安楽のためにクーリングをすることも症状を軽減させるためにも有効です。ただし体温を下げすぎると逆に震えや不快感を引き起こすため、冷却の強さや時間は患者の反応を見ながら調整することが大切です。
快適さを優先することで、結果的に回復を支える効果が期待できます。
「発熱時」のクーリング
発熱時のクーリングは、体温を直接下げることよりも、患者の苦痛を軽減する目的で行われます。
たとえば、38℃以上の発熱で全身の熱感や倦怠感が強い場合、頸部や腋窩など大血管が走る部位を冷やすと効率よく熱を逃がせます。
ただし、無理に平熱まで下げる必要はなく、過度な冷却はシバリングを誘発し、かえって代謝を高めてしまいます。そのため、解熱薬の使用と併せ、安楽を目的にバランスよく活用することが大切です。
【発熱のメカニズム】
人の体は常に一定の体温を調整する機能が備わっています。この機能のことをセットポイントといい、発熱時にはシバリング(震え)して骨格筋を収縮させることで効率よく体温を上昇させています。
しかし、体温が上昇するのは、体内に侵入した細菌やウイルスに対して体を守っている状態です。過度なクーリングをすることで体温を下げてしまい、体の防御機能まで下げてしまう可能性があります。
これにより、治癒を遅らせてしまったり、熱の産生量が増加して体力を消耗させてしまったりする可能性があるので注意しましょう。
発熱は、感染症だけではなくケガによる炎症やアレルギー反応、心理的ストレスなども原因となる場合があります。
「整形外科」のクーリング
整形外科の分野で行うクーリングは、関節痛や手術、スポーツによる外傷に対して患部をクーリングします。特に、関節手術や骨折後では、局所を冷却することで疼痛を和らげ、血流をコントロールして腫れの進行を防ぎます。
筆者も実際に術後にクーリングを受けたことがあります。膝の前十字靭帯再建術を受けた後に24時間のクーリングです。
決まった時間ごとに看護師が氷を追加し、クーリングによるスキントラブルがないかを観察していました。この処置で、術後の疼痛緩和と腫脹の軽減ができ、リハビリもスムーズに行えたのを覚えています。

クーリングの方法
クーリングによる冷却方法には、主に以下2つの種類があります。各方法と目的を理解し、患者一人ひとりに適したクーリングを実施しましょう。
2点クーリング
2点クーリングは、主に「腋窩(わきの下)」と「鼠径部(足の付け根)」を冷やす方法です。これらの部位には太い血管が走っているため、効率的に体温を下げることができます。
特に、発熱時に有効で、患者の全身に循環する血液を冷却するイメージです。氷枕やアイスバッグを用いて、皮膚に直接当てすぎないようタオルで包んで使用します。
3点クーリング
3点クーリングは、「腋窩(わきの下)」と「鼠径部(足の付け根)」、「頸部(首)」を冷却する方法です。
頸部には頸動脈が通っており、冷却することで全身に冷えた血液が循環しやすくなります。そのため、より速やかな体温低下が期待できます。
特に、高熱による不快感が強い場合に用いられることが多いです。ただし、頸部は皮膚が薄く、過度に冷やすと不快感や血流障害につながる可能性があるため、患者の表情やバイタルを確認しながら慎重に実施する必要があります。
状況に応じて使い分けることが安全で効果的なケアにつながります。
クーリングの手順

クーリングは、患者の状態に応じて安全かつ効果的に実施することが大切です。そのためには、必要な物品を整え、事前準備をしっかり行ったうえで、実施中も観察を続けることが欠かせません。
ここでは、3つのステップに分けて手順を解説します。
必要物品の用意
クーリングに必要な物品は、氷枕、留め具、氷です。病院によっては、100mlの生理食塩水の空きパックに色付きの水を入れ、冷凍しているところもあります。
これをタオルまたはガーゼに当てて使用することもありました。膝や肩などのアイシンングでは、専用の氷嚢も使用します。
クーリングの準備
氷枕や氷嚢を準備しますが、破れや亀裂がないかを事前に確認しましょう。
次に、氷枕や氷嚢に氷を入れる際には、氷は中身の2/3を目安にします。また、氷枕には氷と一緒に水も入れますが、留め具をとめた後に水が漏れないか、氷がゴツゴツして違和感がないかを事前に確認してください。
その後、氷枕内の空気を抜き金具で止めます。氷枕の金具により皮膚が当たったりしないように設置しましょう。
アイシングのための氷嚢には、基本的に氷を入れますが、水を入れた方が安楽と感じる患者の場合は入れてもよいでしょう。
クーリングの実施
まずは、患者さんの状態からクーリングの必要性を判断します。そこから、患者さんへクーリングの必要性を説明し、承諾を得ます。
クーリングを開始する際には、患者さんに低温やけどの危険性を説明し、氷枕は快適に使用できそうかを確認しましょう。
クーリング時の注意点
クーリングは体温上昇や疼痛、不快感の軽減に有効な看護技術ですが、実施方法を誤ると合併症や不利益を招く恐れがあります。ここでは代表的な注意点を4つに整理して解説します。
低体温やシバリングを引き起こさないようにする
冷却を長時間続けたり広範囲に行ったりすると、体温が必要以上に低下し、低体温症を引き起こすリスクがあります。さらに、体温低下に伴って起こるシバリング(震え)は、筋肉の収縮による産熱反応であり、かえって代謝や酸素消費量を増加させます。
これは呼吸・循環系への負担を強め、特に高齢者や心疾患を抱える患者には危険です。そのため、冷却の時間は適度に区切り、体温をこまめに測定することが必要です。
皮膚トラブルや循環障害に気をつける
氷枕や保冷剤を直接皮膚に当てると、短時間でも凍傷やびらんといった皮膚トラブルを起こす危険があります。そのため必ずタオルで包み、直接接触を避ける工夫が欠かせません。
また、末梢循環が悪い患者や糖尿病性神経障害を持つ患者では、冷感に鈍感であるため皮膚障害が進行しても気づきにくい点に注意が必要です。さらに血流障害のある部位にクーリングを行うと、循環不全を悪化させる可能性があるため、適応部位の選択には細心の注意を払う必要があります。
意識状態・バイタルサインを観察する
クーリング中は、単に冷却効果を期待するだけでなく、患者の全身状態を継続的に観察することが看護師の大きな役割です。体温の変化だけでなく、脈拍・血圧・呼吸数の変動や酸素飽和度もチェックし、循環・呼吸への影響を見逃さないことが重要です。
特に意識レベルの変化は、低体温や循環障害のサインとなる場合があります。患者が「寒い」「息苦しい」と訴えたり、顔色が蒼白になるなどの症状が見られた場合には、直ちに中止して医師への報告が必要です。
バイタル測定のタイミングは事前・中間・終了後に加え、異常時には臨機応変に追加することが望まれます。
禁忌のある患者には行わない
クーリングは万能なケアではなく、患者によっては禁忌となる場合があります。
たとえば、重度の循環不全や末梢動脈疾患を有する患者、皮膚に炎症や外傷がある部位への冷却は避けるべきです。
また、寒冷過敏症や寒冷蕁麻疹の既往がある患者では、全身状態を悪化させるリスクが高いため禁忌となります。禁忌が疑われる場合は必ず医師に確認し、必要であれば他の方法で安楽や解熱を図ることが大切です。
看護師は「すべての患者にクーリングが適応するわけではない」という点を念頭に置き、常にリスクとベネフィットを天秤にかけた判断を心がける必要があります。
クーリングに関するよくある質問
最後に、クーリングに関してよく寄せられる質問に1つずつ回答していきます。
クーリングとアイシングの違いは?
クーリングとアイシングはいずれも「冷却」を目的としたケアですが、用途や実施方法に違いがあります。
クーリング(冷罨法)は、発熱や全身の熱感、不快感を和らげるために体温を下げる目的で行われます。特に頸部や腋窩、鼠径部など大血管の走行部位を冷やすことで効率的に体温を下げ、安楽を図ります。
一方で、アイシングはスポーツや整形外科領域で多く用いられ、打撲や捻挫、術後の腫脹・炎症を抑えるために患部へ局所的に冷却を行うものです。
つまり、クーリングは「全身の体温調整」、アイシングは「局所の炎症や疼痛の緩和」が主な目的です。
クーリングは何度以上の方に実施する?
クーリングは一般的に 38℃以上の発熱がある場合や、局所の炎症・疼痛の軽減を目的として行われます。ただし、患者の基礎疾患や全身状態によって適応が異なるため、医師の指示や施設マニュアルに従うことが基本です。
クーリングは意味ない?
「意味がない」とされるのは、目的や方法を誤って実施した場合です。たとえば、発熱の根本原因を改善するわけではなく、一時的に体温や不快感を和らげるケアです。解熱剤と併用することで効果を高めることが多く、安楽や苦痛緩和の手段としては有効とされています。
3点クーリングの冷やす場所は?
3点クーリングでは、頸部・腋窩・鼠径部の大血管が走行する部位を冷却します。これにより効率的に体温を下げることができます。ただし、冷却時間が長すぎると低体温や皮膚トラブルのリスクがあるため、こまめな観察が必要です。
頭部のクーリングは意味ない?
頭部のクーリングは「全身の体温を下げる効果」は限定的です。ただし、頭痛や局所的な熱感の緩和には有効とされます。患者が心地よいと感じる場合には安楽ケアの一つとして活用できますが、発熱対策の主手段にはなりません。
クーリングをしてはいけない状態とは?
循環不全や末梢動脈疾患のある患者、寒冷過敏症・寒冷蕁麻疹の既往がある患者、皮膚に外傷や炎症がある部位は禁忌です。また、強い悪寒が出ているときに行うと、かえって体力を消耗させるため避ける必要があります。
クーリングによる弊害はある?
過度な冷却により、低体温・シバリング・皮膚障害・循環動態の悪化といった弊害が起こる可能性があります。特に高齢者や循環器疾患を持つ患者ではリスクが高いため、体温やバイタルサインを確認しながら慎重に実施することが求められます。
目的・根拠を持って正しいクーリングを実践しましょう!
病院や自宅でもクーリングをする場面は多くあるでしょう。
そして、クーリングをしてはいけない状態や、クーリングによる弊害について考慮しないと患者さんの苦痛となってしまいます。せっかく患者さんの苦痛を緩和させようと思っても、逆に苦痛にさせては意味がありませんよね。
目的や根拠を持って正しいクーリングを実践しましょう!
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