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【現場視点】介護現場で遭遇する’わがまま’利用者への対処法
わがままな利用者に困っているというようなことはありませんか?
介護士として、優しく接したいものの、行き過ぎたわがままに手を焼いてしまうということもあると思います。
記事を参考に、わがままな利用者を理解し、お互いに気持ちよくコミュニケーションが取れるようにしましょう。
あなたの職場にもいる?対応が大変な利用者の特徴
対応が大変な利用者さんには以下のような特徴があります。
- 暴力的な人
- わがままな人
- 他人の悪口を言ってくる人
- 思い込みが激しい人
- 介助負担が大きい人
自分の状況と照らし合わせながらぜひ参考にしてみてください。
暴力的な人
利用者からのパワハラは大きな問題となっています。介護職をやっていると、利用者に噛みつかれたり怒鳴られたりした経験はあるのではないでしょうか。
暴力的な利用者とかかわると、自分が怪我を負うリスクがあるので恐怖感を覚えます。そのため「この利用者の対応は大変だ」と感じるでしょう。
わがままな人
無理な要望が多い利用者は対応したくないと感じるでしょう。たとえば「食堂の席に嫌いな利用者がいるから、食事は居室で食べたい」や「お風呂は一番じゃないと入らない」と発言される方がいます。
なかには対応したにもかかわらず、さらにわがままを言う方も少なくありません。わがままな人への対応に疲れてしまう介護職は多いです。
他人の悪口を言ってくる人
他人の愚痴や悪口を言ってくる方には注意が必要です。
本当か嘘かわからないような情報の精度が低い方の対応はとくに大変です。たとえば「テレビを観ている利用者の笑い声がうるさい」や職員のプライベートな情報を話してくる方が施設にはいます。
思い込みが激しい人
思い込みが激しく、何かちょっと違うことがあると怒り出す人がいます。
月1回のみ特別メニューが出る予定を、毎週だと思い込んでいて「今日はおやつのメニューが違う」と怒る方がいます。また、「自分だけナースコールを呼んでも来てくれない」との理由で怒る方も多いです。
説明してもヒートアップしているため、うまく話が通じない場合も少なくありません。
介助負担が大きい人
利用者のなかには、自分でできることをやらない方がいます。
意欲のない利用者のケアは介助負担が大きく、身体的にきついです。なかには身体が大きい方もいるので、女性はとくに疲れるでしょう。
自分ができることをやらない利用者に対応すると「わがままだな」と感じます。
利用者がわがままを言う理由
利用者がわがままを言ってしまうのは何故でしょうか?
実はただの自分勝手ではなく、背景にさまざまな要因が隠れています。
そこでここでは、利用者がわがままを言う原因を以下にまとめました。
- 寂しさや不安を抱えている
- 認知症や精神疾患を抱えている
- 性格的な問題によるもの
詳しく解説していきます。
寂しさや不安を抱えている
利用者がわがままを言う場合、その人の心境を考えてみましょう。
高齢になると、寂しさや不安を抱えやすいです。介護施設や自宅で一人暮らしをしていると「自分の気持ちを理解してくれる人はいない」と感じる方もいるでしょう。
利用者がわがままを言っている背景には、寂しさや不安が隠れている場合があります。
認知症や精神疾患を抱えている
認知症や精神疾患があると、正常な判断能力を失ってしまいます。脳が病気になることで利用者本人の性格にも影響し、本来言いたくないはずの言葉がでてきてしまうのです。
利用者のわがままな言動に困った際は、既往歴を確かめてみましょう。
認知症やうつ病のような精神疾患を患っている場合があります。
性格的な問題によるもの
わがままに感じる人間性は、元々の性格である可能性が高いです。
人は人生のなかで多くの経験を通して、性格が形成されていきます。しかし、高齢になると新しい経験が少なくなるので、過去の出来事をもとに物事を判断します。
意見や要望が通らないと、「昔は言うことを聞いてもらえた」と言い、怒り出す方もいるでしょう。
わがままな利用者と関わる際のポイント
わがままな利用者とのコミュニケーションが上手くいかず、困って疲れ果ててしまうことがあるでしょう。
そこでここでは、わがままな利用者と関わる際のポイントを以下にまとめました。
- 利用者の性格や行動パターンを把握する
- 高齢者の心理状況や病気などへの理解を深める
- 生活にメリハリをつける
詳しく解説していきます。
利用者の性格や行動パターンを把握する
暴力や暴言がみられる利用者がいる場合、なぜ暴力を振るうかを考えてみましょう。行動の背景には、何かしらの理由があるからです。家族に会えない不安や介護施設に住む恐怖を抱えている場合があります。
介護職が不安を取り除けるのであれば、叶えてあげるのが理想です。
高齢者の心理状況や病気などへの理解を深める
高齢になると、前頭前野と呼ばれる脳機能が低下する傾向にあります。そのため昔よりも怒りっぽくなったり、暴言を吐いたりしやすくなるのです。
また、認知症の症状や死別を経験した孤独感から暴力的になる方もいます。高齢者の心理状況を理解できていると、冷静に判断できるので落ち着いた行動が取れます。
利用者に適切な対応をするためにも、介護者は研修や勉強会、本などで高齢者について学びましょう。
生活にメリハリをつける
利用者がわがままを言いだす時期で多いのは、施設生活に慣れてきた頃です。環境に慣れてくると、利用者の素の部分が出てきます。
同時に施設での生活にメリハリがなくなり、退屈になっている状況でもあります。利用者がわがままを言うようになったと感じたら、生活リズムを見直してみましょう。
利用者の好きなことや気分転換になるようなレクリエーションを導入してみるのも1つの手段です。
【シーン別】利用者にわがままを言われた際にしたい具体的な行動
利用者にわがままを言われた際、介護職はどのような行動を取れば良いのでしょうか?
ここでは、具体的な行動例を以下のシーン別に分けて紹介していきます。
- 暴力行為をされたり怒鳴られたりする場合
- 自分を最優先してほしいと言う場合
- 利用者の思い込みで怒り出す場合
- 出来ないことも無理矢理頼んでくる場合
それぞれ解説します。
暴力行為をされたり怒鳴られたりする場合
暴力行為や暴言を吐く方の支援方法は、職員間で統一したケアを実施しましょう。同じ支援を提供できないと、利用者は混乱してかえって怒りが爆発します。
怒りがみられる利用者の申し送りや介護記録はとくに細かく記載し、共有を徹底してください。そのうえで環境整備をして、職員や周囲の利用者が怪我を負うような事態を防ぎます。
自分を最優先してほしいと言う場合
「自分を優先して対応して欲しい」と言う方には、納得する説明が必要です。「本当に重要に考える部分」と「妥協しても大丈夫な部分」を本人と話し合い、折り合いをつけるのがベストです。
たとえば配膳を早くして欲しいうえに、トイレ介助も1番にして欲しいと言う方が時々います。わがままを言う利用者ばかり優先すると、他の利用者のケアが遅れてしまいます。そのため、本当に優先してほしいことを利用者から聞き出しましょう。
利用者が大切にしている対応が送れないよう、職員間で共有することが大切です。また、わがままが増えているのは生活環境に慣れてきている証拠です。
利用者の自己表現の時間となるような、音楽療法や身体を動かすレクリエーションを取り入れるのもおすすめです。
利用者の思い込みにより怒り出す場合
利用者の思い込みにより、計画通りにいかないと怒る方には傾聴しましょう。
自分の意見が正しいと怒っている状態に、介護職まで「それは間違っている」と言い出すと、利用者の怒りは上昇します。利用者の話を頭ごなしに否定せず、まずは意見に耳を傾けてください。
利用者自身が冷静になったタイミングで、丁寧に説明すると理解してくれる可能性もあります。
他人の愚痴や悪口を言ってくる場合
他人の愚痴や悪口を言う利用者の情報は、慎重に判断する必要があります。相手の話を聞くことは重要ですが、鵜呑みにしてはいけません。利用者も職員と話したいだけの場合があるので、聞き流しながら聞くことも重要です。
話を聞き入れつつ、情報は冷静に判断しましょう。
出来ないことも無理矢理頼んでくる場合
できないことを無理に頼まれた場合は、他の介護職員に依頼するのも1つの手段です。
たとえば、自分よりも身体が大きくて体重のある利用者がベッドから車椅子に移乗したいと頼まれたとします。無理に介助をすると、自分や利用者が怪我をする可能性が高いです。
職員間で協力し、2人対応にしたり別の対策を考えたりする必要があります。
わがままを言いたくなる利用者の心理を理解しよう
わがままな利用者とのコミュニケーションに困ると振り回されているような気分になり、滅入ってしまうものですよね。
利用者がわがままを言ってしまう背景には、本人の淋しさや病気が隠されている可能性もあります。わがままへの対応に困った場合は、スタッフ側が一度冷静になり、利用者がその言動をしてしまう理由を考えてみましょう!
利用者のことを理解しようという気持ちを持って接すれば、その想いは自然と相手に伝わるものです。
利用者の複雑な想いにも寄り添うことができる介護士は、今後、施設やご家族、利用者からも重宝される存在となるでしょう。