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看護師のインシデント|事例と対策、落ち込んだときの立ち直り方まで解説
「またインシデントを起こしてしまった…」「自分は看護師に向いていないのかもしれない」と、罪悪感や恐怖で押しつぶされそうになっていませんか?
その辛い気持ちを一人で抱え込むと、自信を失い、看護の仕事そのものが怖くなってしまいます。
最悪の場合、大好きだったはずの看護の道を諦めてしまうことにもなりかねません。
この記事を読み終える頃には、インシデントへの不安が和らぎ、明日からまた看護師として前向きに働くための一歩が踏み出せるはずです。
看護師のインシデントとは?
インシデントを起こしてしまったとき、言葉の正確な意味や、なぜ報告が重要なのかを理解しておくと、冷静な対応と次への一歩につながります。
- インシデントの定義と意味
- アクシデント(医療事故)・医療過誤との違い
- 医療現場でのインシデント報告の重要性
ここでは、インシデントの基礎知識から、安全な医療を提供するために欠かせない報告の意義までを詳しく解説します。
インシデントの定義と意味
インシデントとは、患者さんに健康被害はなかったものの、一歩間違えれば医療事故につながっていた可能性のある「ヒヤリ・ハット」のことです。
厚生労働省医政局の「医療安全対策検討会報告書」などでも、インシデントを定義しています。
誤った医療行為が患者に実施される前に発見された場合や、実施されたものの結果的に影響がなかった場合をインシデントと位置づけています。
たとえば、「患者Aさんに投与すべき薬を患者Bさんのために準備したが、投与直前に間違いに気づいた」というケースです。
この段階では患者さんに実害はありませんが、これがインシデントの持つ重要な「意味」です。
インシデントは決して個人の失敗談ではなく、医療システムに潜むリスクを可視化する貴重な情報源です。
アクシデント(医療事故)・医療過誤との違い
インシデントとアクシデント(医療事故)の大きな違いは、患者さんへの実害の有無です。
さらに、医療過誤はアクシデントのなかでも医療従事者の過失が認められた場合のことです。
インシデントが患者さんに影響を及ぼさなかった「ヒヤリ・ハット」で、アクシデントは実際に患者さんがケガをするなど、なんらの健康被害が発生した事象を指します。
これらの関係は、下記の表のように整理できます。
| 患者への実害 | 医療従事者の過失 | |
|---|---|---|
| インシデント | なし | 問わない | 
| アクシデント(医療事故) | あり | 問わない | 
| 医療過誤 | あり | あり | 
転倒しそうになったが支えて無事だった場合はインシデント、実際に転倒して骨折してしまった場合はアクシデントとなります。
これらの言葉を正しく理解し区別することは、状況を正確に報告し、適切な再発防止策を講じる上で不可欠です。
医療現場でのインシデント報告の重要性
医療現場でのインシデント報告は、個人の責任を追及するためではなく、重大な医療事故を未然に防ぐためにあります。
産業安全分野で提唱された「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件のヒヤリ・ハットが潜んでいるとされています。
つまり、小さな「ヒヤリ・ハット」の段階で情報を共有・分析が、組織的な問題を特定し、システム全体を改善するきっかけとなるのです。
たとえば、薬剤の取り違えインシデントが複数報告されれば、それは個人の不注意だけでなく、「保管場所が紛らわしい」といった環境要因が問題かもしれません。
インシデント報告は決して「犯人探し」ではなく、より安全な医療環境を全員で築くための重要な活動なのです。
看護師に多いインシデントの具体的事例
看護師として働く上で、インシデントは避けて通れない問題かもしれません。
しかし、どのような事例が多いのかを知ると、予防策を考える第一歩になります。
- 事例1:与薬・注射・点滴に関するインシデント
- 事例2:療養上の生活に関するインシデント(転倒・転落)
- 事例3:医療機器・器具の取り扱いに関するインシデント
- 事例4:ドレーン・チューブ類の自己抜去に関するインシデント
- 事例5:患者の誤認・確認不足のインシデント
ここでは、多くの看護師が経験する可能性のある代表的なインシデントを、具体的な場面とともに紹介します。
事例1:与薬・注射・点滴に関するインシデント
与薬・注射・点滴に関するインシデントは、看護業務のなかで報告件数が多く、注意が必要な場面です。
その主な原因は、薬剤の種類や投与量、投与する患者さんを間違えるといったヒューマンエラーです。
特にインスリンやカリウム製剤といったハイリスク薬の取り扱いは、わずかなミスが重大な事故につながるため、細心の注意が求められます。
たとえば、同姓の患者さんの点滴を誤って接続しかけることがあります。
また、インスリンの単位を1桁多く準備したものの、ダブルチェックで気づく場合もあるでしょう。
これらは誰にでも起こりうるインシデントです。
事例2:療養上の生活に関するインシデント(転倒・転落)
療養上の生活のなかでも、患者さんの転倒・転落は骨折などの大きなケガにつながりかねないインシデントです。
入院による環境の変化や、疾患・治療による身体機能の低下、夜間のせん妄(一時的な意識の混乱)など、さまざまな要因が重なって発生します。
特に筋力やバランス能力が低下している高齢の患者さんは、注意が必要です。
具体的には、ポータブルトイレへ移乗する際にふらつき、転倒しそうになることがあります。
また、ベッド柵を乗り越えようとしているところを発見するといったヒヤリ・ハットも報告されています。
患者さん一人ひとりのADL(日常生活動作)を正確に評価し、離床センサーの活用や滑りにくい履物の提案など、環境整備が予防のカギです。
事例3:医療機器・器具の取り扱いに関するインシデント
医療の高度化にともない、輸液ポンプや人工呼吸器といった医療機器の取り扱いに関するインシデントもあります。
これらの機器は正しく使えば治療の助けとなる一方、操作ミスや設定間違いは患者さんに直接影響を及ぼす可能性があります。
流量やアラームの設定ミス、チューブ類の接続間違いなどが、インシデントの主な内容です。
輸液ポンプの流量を間違えて入力しかける事例があります。
あるいは、他の業務に追われ、モニターのアラームへの確認が遅れてしまうケースも考えられます。
新しい機器を導入した際や、使用経験の浅い機器を扱う際は特に注意が必要です。
事例4:ドレーン・チューブ類の自己抜去に関するインシデント
ドレーンやカテーテル、経鼻胃管といったチューブ類の自己抜去も、治療計画に影響を与えかねないインシデントです。
特に、せん妄状態にある患者さんや認知機能が低下している患者さんが、無意識のうちにチューブを引き抜いてしまうケースが多く報告されています。
また、体位変換や移乗の際に、チューブが引っかかって抜けてしまう「事故抜去」も少なくありません。
「患者さんが無意識に点滴ルートを抜いてしまい、シーツが血液で汚れていた」「介助中にドレーンが抜けかかっているのを発見した」といった事例が挙げられます。
事例5:患者の誤認・確認不足のインシデント
患者の誤認や確認不足は、重大な医療事故に直結しかねないインシデントです。
特に多忙な業務のなかで「いつもと同じだろう」という思い込みが生まれやすく、基本的な本人確認が疎かになることで発生します。
同姓同名の患者を取り違えて誤った薬を投与しかける、検査室への申し送りミスで違う患者を案内する、といった事例がその典型です。
手術室への入室時の確認不足が、手術部位の間違いにつながる危険性も指摘されています。
こうした事態を防ぐには、いかなる場面でも「フルネームと生年月日」での本人確認を徹底することが不可欠です。
ネームバンドの照合といった基本的な動作を省略しない姿勢が求められます。

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看護師がインシデントを繰り返してしまう4つの原因
インシデントを繰り返してしまう背景には、さまざまな原因が複雑に絡み合っています。
インシデントを減らすためには、何が原因で起きたのかを理解し、対策の立案が大切です。
- 確認不足や思い込みによるヒューマンエラー
- 多重業務や疲労による注意力の散漫
- 報告・連絡・相談の不足
- 知識・技術・経験の不足
ここでは、インシデントを繰り返してしまう主な4つの原因を解説します。
1.確認不足や思い込みによるヒューマンエラー
確認不足や思い込みは、インシデント発生の大きな原因の一つです。
患者さんの氏名や薬剤名、投与量などを確認する際に、注意力が散漫になったり、経験にもとづいて「この患者さんにはこの薬」と安易に判断してしまう場合が挙げられます。
「患者さんの名前を確認せずに薬を渡してしまった」「いつもと同じ薬だから、確認しなくても大丈夫だろう」といった思い込みは、大きなミスになる可能性を秘めています。
インシデントを予防するには、ダブルチェックの徹底や、チェックリストの活用など、多角的な視点からの確認が不可欠です。
2.多重業務や疲労による注意力の散漫
多重業務や疲労は、看護師の注意力を低下させ、インシデントのリスクを高めます。
複数の患者さんの対応に追われたり、記録業務に時間がかかったりと、集中力が途切れがちになります。
睡眠不足や過度なストレスも、注意力の低下を招く要因です。
「夜勤明けで疲労困憊のなか、薬の準備をしたら間違えてしまった」「複数の患者さんの対応に追われ、患者さんの訴えに気づけなかった」といったケースが考えられます。
業務の優先順位を明確にし、休憩時間を確保するなど、心身ともに余裕を持てるような工夫が大切です。
また、疲労を感じたら、無理せず周囲に助けを求めることも大切です。
3.報告・連絡・相談の不足
報告・連絡・相談の不足は、インシデントの早期発見を妨げ、状況を悪化させる可能性があります。
「忙しくて報告する時間がない」「報告しても意味がない」といった考えから、インシデントを隠蔽してしまうケースも少なくありません。
しかし、インシデントを報告しないことで、問題が放置され、再発するリスクが高まります。
「患者さんの異変に気づいたが、忙しくて報告を後回しにしてしまった」「報告したが、上司からの指示がなく、対応が遅れてしまった」といったケースが考えられます。
インシデントを報告しやすい環境を整え、早期対応が大切です。
4.知識・技術・経験の不足
知識や技術、経験の不足は、インシデントを誘発する大きな要因といえます。
新しい医療技術や薬剤に関する知識が不足していると、適切な対応ができません。
また、経験不足から、患者さんの状態を正確にアセスメントできず、必要な処置が遅れる場合もあります。
初めて扱う薬剤の知識が不足し、投与方法を間違えてしまうケースがあります。
また、経験のない症状の患者さんを前にして、どう対応すればよいかわからなくなることもあるでしょう。
そのため、自己学習を継続し、研修に参加するなど、常に知識と技術をアップデートすることが大切です。
また、経験豊富な先輩看護師に指導を仰ぎ、実践を通してスキルを磨きましょう。
【体験談】
腹部エコーの事前説明をした際、どの薬を中止すべきか正確に理解していませんでした。
そのため内服が必要な降圧剤まで、念のため飲まないようにと患者さんに説明してしまったのです。
完全に私の知識不足が原因でした。
インシデント発生した際にとるべき正しい対処フロー
万が一インシデントを起こしてしまったら、誰でも動揺し、冷静さを失いがちです。
しかし、そんな時こそ、正しい手順に沿って行動することが、患者さんの安全と自身の誠実さを示す上で大切になります。
- 患者の安全確保と状態確認(最優先)
- 上司・医師への迅速な報告・連絡・相談
- 必要な処置の実施と経過観察
- 経緯の正確な記録(5W1H)
ここでは、パニックにならず、次にとるべき行動が明確になる具体的な対処フローを時系列で解説します。
1. 患者の安全確保と状態確認(最優先)
インシデントが発生したら、何よりもまず患者さんの安全確保が最優先です。
自分の動揺や報告への焦りよりも、患者さんの生命と健康を守る行動を第一に考えます。
たとえば、薬剤の誤投与に気づいた場合は、直ちに投与を中止することが必要です。
転倒しかけた患者さんであれば、まずは安全な場所へ移動させ、外傷の有無を確認します。その後、速やかにバイタルサインを測定し、意識レベルや皮膚の状態など、全身の状態に変化がないかを注意深く観察します。
パニックになりそうな時こそ、「まず患者さんのもとへ」と意識を向け、冷静に初期対応を行うことが不可欠です。
2. 上司・医師への迅速な報告・連絡・相談
患者さんの安全を確保したら、次は一人で抱え込まず、速やかに上司や担当医師へ報告します。
迅速な報告は、専門的な判断を仰ぎ、組織として最適な対応を行うために不可欠だからです。
報告が遅れることで対応が後手に回り、状況が悪化する可能性も否定できません。
師長や主任には「いつ、どこで、何が起きたか」を客観的な事実のみで簡潔に伝えます。
この時、自己判断で状況を過小評価したり、言い訳をしたりするのは避けましょう。
医師へも同様に報告し、次の指示を仰ぎます。
たとえ軽微なインシデントだと思っても、必ず報告・連絡・相談を徹底する姿勢が求められます。
3. 必要な処置の実施と経過観察
上司や医師への報告後は、その指示にもとづいて必要な処置を行い、患者さんの経過観察を続けます。
インシデント後の患者さんの状態は、時間経過とともに変化する可能性があります。
そのため、継続的な観察は異常の早期発見に直結するのです。
医師の指示があれば、採血や心電図モニターの装着、拮抗薬の投与などを実施します。
その後も定期的にバイタルサインを測定し、意識レベルや皮膚の状態といった全身の状態を注意深く観察します。
些細な変化でも見逃さず、適宜医師へ追加報告することが大切です。
4. 経緯の正確な記録(5W1H)
一連の対応と並行して、起こった出来事や対処の経緯を時系列で正確に記録しておくことが重要です。
人間の記憶は時間と共にあいまいになるため、正確なインシデントレポートを作成するには、客観的な事実にもとづいたメモが欠かせません。
メモ書きなどに、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)を意識して書き留めます。
「〇時〇分、A氏の点滴交換時、B氏の薬剤と気づく」「〇時〇分、師長へ報告」といった形です。
自分の主観や感情は含めず、事実のみを淡々と記録するのがポイントです。
この客観的なメモが、あとの振り返りと再発防止策の検討において、価値のある資料となります。
成長に繋げるインシデントレポートの書き方
インシデントレポートは「始末書」や「反省文」ではありません。
その本来の目的は、起きた事象を客観的に分析し、組織全体で共有することで、同じミスを繰り返さないための仕組みを作ることです。
- ポイント1:5W1H(6W1H)で状況を客観的に記述する
- ポイント2:主観(「~と思った」)や憶測、他者批判を排除する
- ポイント3:原因分析(なぜなぜ分析)と具体的な改善策を記載する
ここでは、個人の責任追及で終わらせず、チーム全体の成長につなげるための質の高いレポート作成のポイントを解説します。
ポイント1:5W1H(6W1H)で状況を客観的に記述する
インシデントレポートの基本は、事実を客観的に記述することです。
そのために、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)や、Why(なぜ)を加えた6W1Hのフレームワークを活用します。
この型に沿って書くことで、誰が読んでも状況を正確に、かつ誤解なく理解できる資料になります。
「〇月〇日〇時〇分、A病室で、看護師〇〇が、患者B様の内服薬を準備した際、C様の薬剤を誤ってセットした」のように、情報を整理し時系列で記述します。
ポイント2:主観(「~と思った」)や憶測、他者批判を排除する
質の高いレポートを作成するには、主観的な表現を完全に排除する必要があります。
レポートはあくまで客観的な事実を記録するものであり、個人の感情や憶測を記述する場所ではありません。
「忙しくて焦っていた」「多分大丈夫だろうと思った」といった感情や推測は、原因分析の妨げになります。
また、「〇〇さんの確認が遅れたから」のような、他者を批判したり責任転嫁したりする表現は、チーム内の人間関係を悪化させるだけでは、問題解決にもつながりません。
起きた事象そのものに焦点を当て、事実のみを淡々と記述する姿勢が求められます。
ポイント3:原因分析(なぜなぜ分析)と具体的な改善策を記載する
インシデントの根本原因を突き止めるには、「なぜ?」を繰り返す「なぜなぜ分析」が有効です。
たとえば、「なぜ薬剤を間違えたのか?→思い込みがあったから」で終わらせてはいけません。
「なぜ思い込みが生まれたのか?→薬剤の配置が似ていたから」というように、システムや環境の問題まで掘り下げます。
その上で、「今後は気をつけます」といった精神論ではなく、具体的な改善策を提案することが重要です。
「類似薬の保管場所を離す」「ダブルチェックの手順をマニュアル化し、チェック項目を声出し確認する」など、誰が実践しても効果のある行動計画を記載します。
個人の反省ではなく、仕組みの改善につなげることがレポートの価値を高めます。
看護師がインシデントを未然に防ぐための対策
インシデントは「個人の資質」だけでなく、「仕組み」によっても防げます。
日々の業務に潜むリスクを意識し、基本的な対策を習慣化することが、患者さんと自分自身を守ります。
- 与薬は「R(Rights)」を施設方針どおり徹底する
- 指差し・声出し確認を習慣化する
- 憶測をなくして不明点は必ず確認する
- 過去のインシデント事例から学ぶ
ここでは、明日からすぐに実践できるインシデントの具体的な予防策を紹介します。
与薬は「R(Rights)」を施設方針どおり徹底する
与薬に関するインシデントを防ぐための基本は、「5R」を一つひとつ確実に確認することです。
5Rとは、与薬時に遵守すべき5つの「正しい(Right)」要素を指し、これらを機械的に確認をして、思い込みや見落としによるミスを防止します。
具体的には次の5項目です。
- Right Patient(正しい患者)
- Right Drug(正しい薬剤名)
- Right Dose(正しい用量)
- Right Route(正しい投与経路)
- Right Time(正しい時間)
どんなに忙しい状況でも、この5つの確認プロセスを省略してはいけません。
一つひとつの確認作業の習慣化が、安全な与薬の基本であり、患者さんと看護師自身を守るための大切な課程となります。
施設によって「Right Documentation(正しい記録)」、または「Right Reason/Indication(正しい理由・適応)」を加えた「6R」を、定めるケースがあります。
施設の方針にしたがって徹底しましょう。
指差し・声出し確認を習慣化する
指差し・声出し確認は、単純ですがヒューマンエラー防止にとても効果的な手法です。
ただ目で追うだけの「黙読」では、慣れからくる思い込みで見落としが発生しやすくなります。
しかし、対象を指で差し、その名称や数値を声に出すことで、視覚と聴覚の両方から脳に情報をインプットできます。
これにより注意が対象に集中し、間違いに気づきやすくなるのです。
たとえば、薬剤のラベルを指差して「〇〇、50mg」と声に出して確認します。
患者さんのネームバンドを確認する際も同様に実践しましょう。
この一手間が、確認の精度を格段に高め、安全性を確保します。
憶測をなくして不明点は必ず確認する
インシデントを防ぐ上で、「たぶんこうだろう」という憶測や曖昧な自己判断は禁物です。
医師の指示が読みにくかったり、初めて使う薬剤で知識に自信がなかったり、患者さんの様子がいつもと少し違うと感じたりした際は、決して憶測で行動してはいけません。
少しでも疑問や不安を感じたら、必ず医師や先輩看護師に確認を取りましょう。
「忙しそうだから聞きづらい」「こんな初歩的なことを聞いていいのだろうか」といった遠慮は、患者さんの安全を脅かすリスクになりかねません。
自分の判断に100%の確信が持てない場合は、何度でも質問・確認する勇気を持つことが大切です。
過去のインシデント事例から学ぶ
院内で共有される過去のインシデントレポートや、公的に公開されている医療事故事例からの学びは、未来の事故を防ぐための重要な対策です。
他者が経験した「ヒヤリ・ハット」は、自分自身が同じような状況に陥る危険性を予知し、回避するための貴重な教材となります。
事例には、インシデントが発生した背景、直接的な原因、そしてその後の対策が具体的に記されています。
院内の医療安全研修に積極的に参加したり、定期的にインシデントレポートに目を通したりすることで、エラーが起こりやすい状況を学ぶのが有効です。
インシデントで落ち込む・辞めたいときの立ち直り方
インシデントを起こしてしまったあと、「自分は看護師に向いていないのでは」と深く落ち込み、辞めたくなるのは自然な感情です。
しかし、その辛い経験を乗り越えることで、あなたはさらに成長できます。
- 自分を責めすぎない
- 信頼できる上司や同僚に相談する
- 気持ちを切り替える時間を作る
ここでは、心が少しでも軽くなるような、具体的な立ち直り方を紹介します。
自分を責めすぎない
インシデントを起こしてしまったあとは、何よりもまず自分を責めすぎないようにしましょう。
過度な自責は、冷静な判断力や客観的な視点を失わせ、前向きな行動を妨げてしまいます。
完璧な人間はいませんし、誰にでもミスが起こりうるものです。
大切なのは、失敗した自分を責め続けることではありません。
「大変な状況のなかで、自分はよく頑張った」と、まずは自分自身を労ってあげましょう。
このように自分に優しさを向ける「セルフコンパッション」の考え方は、心理学的にも心の回復に役立ちます。
信頼できる上司や同僚に相談する
辛い気持ちは一人で抱え込まず、信頼できる上司や先輩、同僚に話してみましょう。
自分の感情や状況を言葉にして誰かに打ち明けるだけで、心の負担は大きく軽減されます。
また、第三者からの客観的な意見は、自分一人では気づけなかった問題の原因や、解決のヒントを与えてくれるでしょう。
「こんなことで相談したら迷惑かも」と考える必要はありません。
同じような経験をもつ先輩からは具体的なアドバイスがもらえるかもしれませんし、同期に話すだけでも「自分だけじゃなかったんだ」と共感を得て安心できます。
気持ちを切り替える時間を作る
仕事はいったん忘れ、意識的に気持ちを切り替える時間を作りましょう。
インシデントのことばかり考えていると、気持ちは沈んでいく一方です。
一度仕事から完全に離れ、心と体をリフレッシュさせる時間をもつと、冷静さを取り戻し、明日へのエネルギーを充電できます。
休日には好きな音楽を聴いたり、友人と会ったり、自分が「楽しい」「心地よい」と感じることをしましょう。
入浴や散歩、マインドフルネスなどのリラクゼーション法も効果的です。
大切なのは、インシデントについて考えなくても済む環境に身を置き、心をリセットすることです。
看護師のインシデントに関するよくある質問
インシデントを経験すると、「クビになったらどうしよう」「なぜ自分ばかり…」といったさまざまな不安が頭をよぎるものです。
ここでは、そうしたインシデントに関するよくある質問に、一つひとつ丁寧にお答えしていきます。
インシデントを起こしたらクビになりますか?
インシデントを一度起こしただけで、ただちにクビ(解雇)になることは、まずありません。
日本の労働基準法や厚生労働省のガイドラインでは、従業員の解雇には合理的な理由が求められ、一度のミスで即解雇となるケースはごくまれです。
多くの医療機関では、本人の成長や再発防止策が重視されます。
インシデント報告の本来の目的は、個人の責任を追及することではなく、組織全体で原因を分析し再発防止につなげることにあるからです。
ただし、インシデントを意図的に隠蔽したり、改善の姿勢が見られなかったりする場合は処分の対象となり得ます。
患者さんに重大な危害を及ぼした場合は、懲戒処分が検討される可能性もあるでしょう。
新人(1年目)がインシデントを起こしやすいのはなぜですか?
新人(1年目)の看護師がインシデントを起こしやすいのは、知識・技術・経験が不足していることに加え、臨床現場特有の緊張感や環境に慣れていないためです。
学生時代に学んだ知識や技術と、実際の臨床現場で求められる判断力や応用力には大きなギャップがあります。
また、複数の業務を同時にこなす「多重課題」や、予測不能な急変対応など、経験のない状況に戸惑う場合も少なくありません。
「先輩に聞きづらい」「早く一人前にならなければ」というプレッシャーから、確認を怠ったり、一人で抱え込んだりすることも、ミスにつながる一因です。
これは成長過程で多くの新人が通る道であり、インシデントの経験から学び、次に活かしていきましょう。
インシデントを繰り返してしまう私は「ダメな看護師」なのでしょうか?
インシデントを繰り返してしまうからといって、あなたが「ダメな看護師」ということにはなりません。
インシデントが繰り返される背景には、個人の注意深さだけが原因とは限りません。
人員不足による過度な業務量や複雑な業務フローなど、職場環境やシステムの問題が隠れている場合も多くあります。
もちろん、同じミスを繰り返す場合は、その原因を自分なりに分析し、対策を考える必要はあります。
しかし、「自分はダメだ」と責め続けるだけでは、視野が狭くなり、かえって次のミスを誘発しかねません。
一人で抱え込まず、上司や先輩に相談し、客観的な視点から原因を探り、具体的な改善策を一緒に考えてもらうことが大切です。
業務振り返りやチームミーティング、KYT(危険予知訓練)など、多職種協働の工夫も活用しましょう。
看護師がインシデントを隠すとどうなる?
「怒られたくない」「評価が下がるのが怖い」という気持ちから、インシデントを報告せずに隠したくなる瞬間があるかもしれません。
しかし、その一時の安堵のために払う代償は計り知れません。
まず、インシデントを隠す行為は、患者さんの安全を直接的な危険にさらします。
報告がなければ必要な観察や処置がおこわれず、状態の悪化を招く恐れがあります。
次に、隠蔽が発覚した場合、周囲からの信頼を大きく損なうでしょう。
医療現場ではミスそのものより「隠した」という不誠実な行為が重く受け止められ、職場での孤立につながりかねません。
さらに、「いつバレるか」という恐怖と罪悪感は、あなた自身の心に大きな負担をかけます。
この精神的な負担は集中力を低下させ、さらなるミスを引き起こす悪循環を生むでしょう。正直な報告は、患者さん、チーム、そして何よりあなた自身を守るための最善の行動です。
まとめ|看護師のインシデントは成長の糧!次に活かすことが大切
この記事では、看護師のインシデントについて、その定義から具体的事例と原因、そしてレポートの書き方や落ち込んだときの立ち直り方まで詳しく解説しました。
インシデントは、どれだけ注意していても誰にでも起こりうる出来事です。
大切なのは、インシデントを起こしてしまった自分を責め続けることではありません。
なぜ起きたのかを客観的に振り返り、次に活かすための学びを得るのです。
インシデントの経験は、あなたを決して「ダメな看護師」にはしません。
むしろ、その痛みを知るからこそ、より患者さんの安全に配慮できる、思慮深い看護師へと成長させてくれるはずです。
この記事で紹介した対策や立ち直り方を参考に、辛い経験を未来の看護へとつなげる一歩を踏み出していただければ幸いです。
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