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介護職でももらえる?退職金制度の仕組みや相場・調べ方を解説!
長年勤務してきた職場を退職する際、誰しも気になるポイントが「退職金の有無」ですよね。
昨今は各企業において退職金制度が目まぐるしく変わり、ニュースでも取り上げられることが増える中で「果たして介護職に退職金はあるのだろうか?」「そもそも介護職はもらえるのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
介護職も退職金をもらえる!
結論から述べると、介護職も退職金をもらうことはできます。
こちらでは、介護職の退職金の実情についてご紹介します。
退職金制度を設けている介護事業所は多い
退職金を導入している介護事業所であれば、退職金を受け取ることができます。
平成23年度介護労働実態調査によると、約8割の法人が正規社員の退職金制度を導入していると回答しています。このことから、正社員の介護職は退職金を受け取れる可能性が高いと言えるでしょう。
制度を導入していると回答する法人の多くは、社会福祉法人や医療法人の介護事業所です。社会福祉法人や医療法人の介護事業所は、一般的に「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」を活用しています。
退職手当共済制度は、独立行政法人社会医療機構が定める制度であり、加入している職員は退職時に退職金が支給されるというメリットがあります。
制度開始時より年々加入職員が増加しており、退職金支給の対象者は増加傾向にあります。
参照
- http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h23_t_chousa_H.pdf
- https://www.wam.go.jp/hp/guide-taisyokuteate-outline-tabid-229/
非正規雇用の場合は退職金が支給されない可能性が高い
正社員の介護職に関しては、退職金制度を設けている事業所が多いですが、非正規雇用の場合は規定に含まれていない事業所が多いです。
よって、パートやアルバイトの介護職は退職金が支給されない可能性が高いです。
一般的な企業でも、パートやアルバイトスタッフが退職金の対象者であることは稀であり、ほとんどは正社員に対してのみ退職金を支給しています。
非正規雇用者に対して退職金制度を設けている場合でも、正社員と同等の金額ではなく、寸志程度であるケースが多いようです。
正社員に比べると、退職金に関する制度は整備されていないと言えるでしょう。
細かいルールは、各事業所によって異なるため、職場の就業規則を確認してみましょう!
退職金がもらえる条件
退職金がもらえる条件は、事業所や企業が導入している退職金制度によって異なります。
一般的には、「○年以上勤務した者」「正社員」というように、一定期間の勤続年数や雇用形態を条件としているケースが多くあります。
また、制度によっては退職金がもらえる条件が複雑なケースもありますので、転職や辞職を検討する前に、退職金がもらえる条件を確認しておくことをおすすめします。
そもそも退職金とは?
退職金とは、従業員が勤務先を退職する際に支給される手当のことです。退職金は法律で義務として明記されているものではなく、企業独自の制度となり、企業毎で取り組みが異なります。
以下では基本的な退職金制度の仕組みや種類について解説をしていきます。
退職金制度の仕組み・種類
企業の退職金制度は大きく分けて4つあります。
- 退職一時金制度
- 退職金共済制度
- 確定給付企業年金制度
- 確定拠出年金制度
それぞれ支給方法やメリットが異なりますので、自身の職場がどのような退職金制度を導入しているのか調べておくと良いでしょう。
それでは、4つの退職金制度について詳しくみていきましょう。
退職一時金制度
介護職員にとっては、まとまった金額を受け取れるというメリットがあります。退職時の勤続年数や役職により金額が変動するため、企業側で独自のルールを設けて行われていることが一般的です。
同時期に退職する職員が複数いる場合、職員によって退職金が受け取れるケースとそうでないケースがあります。 勤続年数が長かったり、スキルや能力が高い程、支給金額が高く設定される傾向にあります。
長く勤務するほど多くの退職金が受け取れる可能性が高くなります。
退職金共済制度
自社で積立・運用する退職一時金と違い、一定の掛金を毎月金融機関へ納付するため、企業が倒産した場合でも退職金を受け取ることが可能です。
退職金は、事業所や会社を通さずに、直接職員に支給されることになります。
介護業界で有名な退職金共済制度としては、従事者共済会の共済制度や、福祉医療機構が運営する社会福祉施設職員等退職手当共済制度があります。
両制度に加入している場合は、各制度から退職金が支給されるという仕組みになっています。 社会福祉医療機関の退職金制度は、令和2年度の実績において約7.7万人の退職者に対して、約1,157億円の退職金を支給しています。
多くの事業所が加入していると考えられるので、共済制度に関する仕組みや必要な手続きを把握しておきましょう!
確定給付企業年金制度
規約型と基金型の2種類からなる制度です。従業員が受け取る金額が予め約束されているのが特徴です。よって、将来確実に受け取れる退職金が定まっているという安心感があります。
規約型は保険会社など金融機関が運用・管理を行うのに対し、基金型は企業が設立した法人が資産運用を行うことが殆どです。一時金と違い、年金として受け取れるのがメリットです。また、中途退職時にも受給することができます。
ただし、導入にあたり、人数要件が定められているので、比較的大規模な事業所で導入されていることが多いでしょう。
確定拠出年金制度
企業型DCとして多くの企業で導入が進んでいる年金制度です。企業が毎月掛金を積み立て、従業員が自身で年金の運用を行います。将来支給される金額は、運用次第で異なります。
従業員の運用成績を企業側は担保する必要がないため、企業側のリスクを減らせることが大きな特徴です。また、積み立てた掛け金が所得控除になったり、受取時に税軽減となるメリットはありますが、デメリットも大きいです。
介護職における退職金の現状
上記では退職金制度の仕組みと種類について解説をしてきました。全産業において約9割の企業が退職金制度を導入していることもあり、介護業界でも退職金制度を設けている事業者は多いといえます。
出典:https://www.jinji.go.jp/kisya/2109/r03akimincho_bessi.pdf
そこで以下では介護事業者における退職金の現状や、何年働けばどれくらいの金額を貰えるのか、解説をしていきます。
介護職における退職金の相場
退職金制度や金額の詳細は各事業者により異なります。上述の通り企業独自で資産管理・運用している事業所もあれば、企業型DCや共済制度などリスクヘッジをしながら運用しているパターンもあります。
以下いくつかのパターンにおける退職金の相場について紹介していきます。尚、計算にあたり各制度毎の違いをわかりやすくするため、5年間ごとに以下の本棒月額で計算をしています。
- 5年・・本棒月額20万円
- 10年・・本棒月額22万円
- 15年・・本棒月額26万円
- 20年・・本棒月額28万円
福祉医療機構における退職金制度の場合
上記制度は、昭和36年度に創設され、これまで200万人以上の職員の方へ退職金を支給してきた歴史ある制度です。
支給例としては、いずれも普通退職で以下の金額となっています。10年勤務して100万を超えてくる制度なので、金額としては一般的な企業と大差はないと言えるでしょう。
- 5年間勤務して退職(退職時本俸月額20万円) ………… 49万5900円
- 10年間勤務して退職(退職時本俸月額22万円) ………… 114万8400円
- 15年間勤務して退職(退職時本俸月額26万円) ………… 269万7000円
- 20年間勤務して退職(退職時本俸月額28万円) ………… 572万4600円
出典:https://www.wam.go.jp/hp/guide-taisyokuteate-outline-tabid-229/
従事者共済会における退職金制度の場合
従事者共済会の退職金制度を導入している事業者の場合についても、上記の計算例を基に算出してみましょう。
各県毎に細かな数字や会費等に違いはありますが、岩手県社会福祉協議会におけるシミュレーションは以下となります。尚、計算にあたり会費免除期間は考慮していません。
- 5年間勤務して退職(退職時本俸月額20万円) ………… 48万7200円
- 10年間勤務して退職(退職時本俸月額22万円) ………… 117万7500円
- 15年間勤務して退職(退職時本俸月額26万円) ………… 227万2400円
- 20年間勤務して退職(退職時本俸月額28万円) ………… 353万1900円
事業者独自の退職金制度の場合
法人独自の退職金制度の場合、金額や金額の上がり幅などは事業者毎にまちまちです。大手の事業者であれば、20年勤務すれば高額の金額を貰える会社もあるかもしれませんが、一方で一律10万などの金額もあり得ます。
金額の有無については企業の総務・人事に伺うと良いでしょう。
退職金の有無を調べる方法
上記では介護事業者における退職金制度の実態や金額について解説をしてきました。
では自身が勤務している事業者において、退職金制度の有無を確認する方法は以下の3つとなります。
- 給与明細を確認する
- 自職場の就業規則を確認する
- 事務・総務へ確認する
それぞれの方法について解説をしていきます。
給与明細を確認する
一番簡単な方法は、すでに何らかの事業所で働いている場合、毎月の給与明細をチェックすることです。退職一時金や退職年金等の記載で、毎月一定額が控除されていれば、将来的に退職金が支給されることがわかります。
制度の種類によって、給与明細に記載があるかどうかが変わってきますので、一つの判断材料としてみてください!
自職場の就業規則を確認する
自職場の就業規則が配布・閲覧できる状態にある場合は、就業規則を確認するのも簡単な確認方法です。
事業者が退職金制度を導入している場合は、事業者における退職金制度の概要や支給条件・方法等記載がされています。
これまで、就業規則を把握していなかったという方は、再度確認してみましょう!
事務・総務へ確認する
就業規則や給与明細等で確認できなかった場合、最終手段となりますが事業者における総務・事務の方へ伺うのが良いです。制度の有無や、ある場合のおおよその金額なら算出してもらえる可能性は高いでしょう。
介護職の退職金に関する注意点
退職金を受け取るにあたって、支給日や税金といった意外と知られていない項目もあります。また、転職を検討する際にも退職に関する内容を把握しておくことが大切です。
こちらでは、介護職の退職金に関する注意点についてご紹介します。
退職金の支給日は法人によって異なる
一般的には、退職後1〜2ヶ月以内に支払われるケースが多いです。
ほとんどの場合は、退職月の給料と同時に退職金も振り込まれるので、給料日に確認をしてみましょう。
退職金制度を導入している企業は、退職金の支払い時期についても記載しなければならないと定められています。そのため、就業規則に「退職金は○ヶ月以内に支払うものとする」といった記述があります。
明確な支給日を把握しておきたい場合は、事業者に直接確認しておくと良いでしょう!
退職金にも税金がかかる
退職一時金として受け取る場合は「退職所得控除」となり、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」として扱われます。
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のための財前確保として創設された税金であり、令和19年12月末までに生じる所得が対象です。
住民税は、居住地の都道府県と市区町村に納める2つの地方税からなり、一律10%が課税されることになります。
退職金に課せられる税金は、総支給額ではなく、控除により算出された金額にかかります。
控除を受けるには、「退職所得の受給に関する申告書」の提出が必要になりますので、事前に必要な手続きを確認しておきましょう!
転職先の求人票を確認する
各介護事業所によって、退職金に関するルールが異なります。できれば、退職金があることが望ましいですが、必ずしも制度が導入されているとは限りません。そのため、転職活動時には、応募する事業所の求人票の退職に関する項目を確認しておくと良いでしょう。
退職時に把握するよりは、事前に確認できている方がメリットが大きく感じられます。面接時に、退職金に関して尋ねてみる方法もありますが、退職を前提に転職するというあまり良くないイメージを与えてしまうかもしれませんので、注意が必要です。
まずは、求人票をチェックしながら転職活動を進めてみましょう!
退職金制度をしっかりと確認し、後悔のない職場選びをしよう!
本記事では一般的な退職金制度の概要や種類に始まり、介護事業者における退職金制度の実態や、金額相場、更に退職金制度の有無を調べる方法について解説をしてきました。
あくまでも退職金制度は義務ではないため、設けていても従業員にとって消極的な結果となることも考えられます。しかし、折角腰を据えて働くのであれば、退職時にまとまった金額が貰えると嬉しいですよね。
退職時に纏まった金額を希望するのであれば、事業者選定の段階で退職金など待遇面をチェックすることも大切です。事業者選定においては理念や働きがいだけでなく、待遇にも目を向けて、後悔のない職場選びをしましょう!