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【ホームヘルパー1級とは】実務者研修との違いなどの疑問を徹底解説
ホームヘルパー1級は10年ほど前(2013年)に廃止され、現在は受験できなくなった資格です。その後、「介護職員初任者研修」や「実務者研修」が新たに導入されています。
介護の仕事をするにあたって、求人情報などの資格欄に様々な種類の資格が記載されており、混乱する人も多いと思います。また、介護福祉士を目指す場合、ホームヘルパー1級で受験資格を満たすのか気にされる方も多いでしょう。
記事を読んでそれぞれの資格の違いや介護福祉士の受験資格に有効かを理解していきましょう。
ホームヘルパー1級と実務者研修との違い
現在は、「介護福祉士実務者研修」へ引き継がれています。
実際に後継資格になりどのように変化をしたのでしょうか?
ホームヘルパー1級と介護職員実務者研修、それぞれの内容を解説していくので、今回の記事を機に理解を深めていきましょう。
①ホームヘルパー1級とは
ホームヘルパーは、名前の通り自宅で介助する人を指し、訪問介護員と言われます。
以前の資格は訪問介護に必要な知識・技術を学習するものでした。取得のためには、前段としてホームヘルパー2級の講座を修了していることと、実務経験が必須でした。
取得のために、講義や演習、実務を合わせて230時間の受講時間が定められていました。主な内容としては、「介護技術に関する講義・演習」、「福祉用具の操作法に関する演習」、「介護実習」などです。
②実務者研修とは
実務者研修は、かつてのホームヘルパー2級の後継資格である介護職員初任者研修と比較し、より幅広く介護業務に従事する為に必要な知識・技術を習得するためのカリキュラムとなっています。
受験資格に制限はなく、無資格でも受験ができ、更に実務経験も必要ないのが大きな特徴です。
実務者研修と実務経験が3年以上あれば国家資格である介護福祉士の受験資格を得ることができると同時に、介護事業所でサービス提供責任者として活躍することができるなど、キャリアの幅を広げることが出来ます。
また、介護に関連する資格があれば、一部科目の免除される形となっており、以下の有資格者はそれぞれ次の受講時間数で取得可能となります。
- 介護職員基礎研修:50時間
- ホームヘルパー1級:95時間
- ホームヘルパー2級:320時間
- 介護職員初任者研修:320時間
実務者研修を取得するメリットとしては、知識及び業務の幅が広がることです。
まずあらゆる介護事業者に必要な知識・スキルを包括的に学ぶことができ、事業者としても中核として働くことが可能です。また、国家試験である介護福祉士へのチャレンジ・更なるキャリアアップも望めます。
更に、訪問介護事業所でサービス提供責任者として働くことが出来るなど、資格を取得することで多岐に渡るキャリアが開かれていると言えます。
③2つの資格は同じではない
実務者研修はホームヘルパー1級の後継資格でありながら、実務経験の有無など細かな違いがあります。
ホームヘルパー1級が訪問介護を中心とした技術・知識の学習であるのに対し、実務者研修は全ての介護事業所における介護業務に必要な知識・技術を学習するカリキュラムとなっており、医療的ケア、介護課程Ⅲの内容は実務者研修で追加となったカリキュラムです。
ホームヘルパー1級では介護福祉士の受験資格にはならないため、2つの資格は同じものではないと言えます。
ホームヘルパー1級の廃止及び資格制度改定の理由
上記では2つの資格の違いについて述べてきました。ではなぜホームヘルパー1級は廃止になったのでしょうか。
こちらでは 、資格制度が改定された背景を解説していきます。
①少子高齢社会の進展
まず日本社会で進展している少子高齢社会の進展が影響しています。
人口に占める高齢者の割合が高まっており、介護の事業も訪問に限らず、様々な事業所で対応できるスキル・知識が必要になっていることが影響しています。
②人材の確保・介護の質の向上
増え続ける高齢者に対して介護を担う人材の数は不足しています。
厚生労働省の調査によると、65歳以上の人口伸び率と、生産年齢人口(15から64歳)・労働人口の減少などを勘案した結果、2025年までには現在の2倍近い介護職員数が必要と試算されています。
一方介護を担う人材は、長らく低賃金且つ重労働というイメージが定着してきたことと、労働環境や待遇等が追いつかず、高い離職率となっていることから、現在も高い有効求人倍率となっています。
制度改定に伴いキャリアパスを明確にすることで、担い手を増やすと同時に、医療的ケアなど学習カリキュラムを追加することで、全ての介護事業所で必要とされる知識・技術を体系的に学ぶ仕組みを作り、介護の質を上げていくことが必要となっていました。
③キャリアパスがわかりづらい
人材の確保にあたり、キャリアパスのわかりづらさが以前の資格制度の問題点となっていました。
かつての資格は、ホームヘルパー1級・2級と、さらに上位資格として都道府県が事業者を指定して行っていた介護職員基礎研修に分かれており、両者は異なる資格ながら研修内容も重複している部分が多く、効率の悪い体制となっていました。
改定に伴い初任者研修→実務者研修→介護福祉士と明確な仕組みが確立し、介護の中核を担う介護福祉士の確保を目指す形となりました。
ホームヘルパー1級は今も有効?
資格が廃止されたことで、気になるのは現在も有効であるのかということです。
こちらでは、ホームヘルパー1級は現在も有効な資格なのかどうか解説していきます。
ホームヘルパー1級は今まで通り業務に活かせる資格
結論を述べると、ホームヘルパー1級は現在も有効な資格です。今まで通り、保有しながら介護業務を行うことができます。
介護施設や訪問介護施設等で、入浴や食事、排泄等の身体介助業務、調理や清掃、洗濯等の生活援助を行えます。
ホームヘルパー1級が廃止されてから10年程しか経過していないため、保有している方も多くいるでしょう。これから転職活動や再び介護業界に復帰を目指している方も、ホームヘルパー1級を持っていれば充分業界で活躍することは可能です。
履歴書に記載する正式名称は、「訪問介護員1級養成課程」となります。
現在も業務に活かせる資格であるため、履歴書に記載しても問題ありません。
キャリアアップは実務者研修の受講が必須
ホームヘルパー1級を保有したまま介護業務を行うことはできますが、介護福祉士へのキャリアアップを目指している場合は実務者研修を取得する必要があります。
介護福祉士を取得するためのルートは、主に4つのルートがあります。
- 実務経験ルート
- 養成施設ルート
- 福祉系高校ルート
- EPAルート
実務経験ルートは、介護に関する業務を3年以上と、実務者研修を取得することで受験資格が得られます。一方、ホームヘルパー1級は介護福祉士を実務経験ルートで受験することはできません。
実務経験ルートで介護福祉士を目指す場合は、実務者研修が必要となります。また、介護福祉士を取得することで、ケアマネージャーや施設長を目指したり、独立を目指すことも可能です。
実務者研修を受講することで、将来の夢が広がります!
様々なキャリアプランを計画している方は、ひとまず実務者研修を目指してみましょう。
働きながら実務者研修を取得するためのポイント
介護の現場で働きながら取得を目指すことも可能です。ただし、働きながら取得を目指すとなると大変なことも多いため、いくつかポイントを抑えておくことが大事です。
こちらでは、働きながら実務者研修を取得するためのポイントについて解説していきます。
通信講座を活用する
通信講座か通学講座で取得を目指すことが可能です。働きながら取得を目指す場合は、通学講座よりも通信講座の方がおすすめです。
使用する教材・学習内容は、通信講座と通学講座で大差はありません。通学講座の場合はスケジュールが決められていますが、通信講座は、自分のスケジュールに合わせて勉強を進められます。
介護の仕事が忙しくて、通学が難しいという方は通信講座を活用してみましょう。ただし、講座によっては通学が必要となる科目もあります。
通学しなければならない科目も事前に把握しておくことをお勧めします。
スクールのスケジュールや振替制度を確認する
学習するスクールが決まったら、スケジュールや振替制度の有無を確認しましょう。 働きながら資格取得を目指すとなると、スケジュールが気になりますよね。
どのぐらいの期間で取得ができるのか、無理なく自分の都合に合わせて学習しやすいのかを確認しておきましょう。また、スクールによって振替制度の有無や内容が異なります。
受けれなかった講座を振替できるのか、または無料で振替受講ができるのかどうかを事前に把握しておくと良いでしょう。
職場に支援を仰いでみよう
資格取得を目指すにあたって、職場に支援を仰ぐこともお勧めします。
学習のためのシフトを調整してもらえたり、なかには受講費用をサポートしてもらえるケースもあるようです。
資格を取得するとなると、学習や受験に費用や時間が掛かり、負担が大きくなってしまうこともあります。職場にとっても、職員がスキルアップすることは望ましいことです。
資格取得支援を設けている職場も多くありますので、少しでも負担を減らすためにも一度相談してみると良いでしょう。
実務者研修を取得した後の働き方
実務者研修を取得した後は、さらに業務の幅が広がり、キャリアアップの道も近づきます。業界で長く働きたいと考えている方にとって大きなメリットになるでしょう。
こちらでは、研修修了後の働き方について解説していきます。
受講を迷っている方は、ぜひこちらの内容を参考にしてみてください!
医療的ケアを業務に活かす
実務者研修は、喀痰吸引や経管栄養等の医療的ケアを学ぶことができます。
課程を修了することで、医療的ケアを業務に活かせるようになり、担当できる業務の幅が広がります。
ときには、高齢者の体調が急変するケースに立ち会うこともあります。医療的ケアを学んでおくことで、落ち着いて冷静な判断やケアを行えるようになります。
緊急時に対する不安も軽減されます。しかし、「医療的ケアは難しそう」と感じる方も多いでしょう。
通信講座を選択した場合でも、医療的ケアを学習する際には通学が必須となっています。
シミュレーターを使用してしっかりと学習することができるので、安心して学習していきましょう。
サービス提供責任者を目指す
実務者研修を取得することで、サービス提供責任者への道が近づきます。
サ責とも呼ばれるサービス提供責任者は、資格名ではありませんが、訪問介護事業所において非常に重要な役職です。サービス提供責任者になるには、一定の要件があり、実務者研修修了者も含められています。
出世をすることになるので、責任が大きくなりますが、任される業務も増えやりがいもより大きく感じられます。また、役職が付くことで、収入アップも期待できます。
待遇面でのメリットもさらに大きくなり、高いモチベーションとなります。
介護福祉士の取得を目指す
実務者研修を取得することで介護福祉士の受験資格が得られます。
実務者研修を取得した後に、介護福祉士を目指すという道もあります。介護福祉士は、介護業界の国家資格です。取得することで、社会的信頼も増します。
実務者研修に有効期限はありませんので、将来介護福祉士を取得することを見据えて今から実務者研修を取得しておくのもいいでしょう。
介護福祉士を目指すにあたり理解しておきたいポイント
上記の背景を経て改定していった資格制度ですが、今後介護福祉士を目指すにあたり、理解しておきたいポイントを以下に解説していきます。
①介護福祉士を目指すにあたり、ルートは4つ
介護福祉士を目指すにあたっては、大きく4つのルートに大別されます。
主なルートは以下となります。
- 介護福祉士養成施設を卒業していること
- 福祉系高校を卒業していること
- 3年以上の介護業務実務経験+実務者研修修了
- 経済連携協定(EPA)ルート
養成施設及び福祉系高校は、それぞれ専門機関を卒業することが条件となり、学校によっては実務や講習が必須となっていることがあります。
EPAルートは日本と協定を結んでいるインドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国で条件を満たしていることが条件となります。
中でも実務経験を経ていくルートは最も受験者の多いルートになります。実務経験ルートは、ホームヘルパー1級では受験資格が得られません。
実務経験ルートで介護福祉士を目指している方は実務者研修を受講しましょう。
②ホームヘルパー1級は受験資格を満たさない
かつてのホームヘルパー1級は、後継資格として実務者研修へと改定されましたが、2つの資格は同一資格でない旨は解説をしました。
介護福祉士を目指すにあたっては、ホームヘルパー1級の内容にプラスして、実務者研修から追加となった医療的ケアに関するスキル・知識及び、介護課程Ⅲの科目受講が必須となります。
③ホームヘルパー1級所持者は実務者研修の科目が一部免除
実務者研修の修了にあたり、
- 無資格の場合・・・受験科目は20科目・450時間の講習が必要
- ホームヘルパー1級を持っている場合・・・無資格の講習のうち18科目・355時間分が免除
新たに介護福祉士を目指すにあたり、ホームヘルパー1級の資格があれば、受講科目や時間を大きく削減することが可能です。
実務者研修の取得でホームヘルパー1級から介護福祉士へキャリアアップ
今回の記事では、ホームヘルパー1級について、実務者研修との違いや制度改定の背景などを解説してきました。
すでにホームヘルパー1級を保持している方は、もちろんこれまでの経験を活かして今まで通り資格を活用することもできます。しかし、実務者研修を受講することで、医療的ケアを担うことができ、サービス提供責任者や介護福祉士といったキャリアアップの道が開けます。
後継資格である実務者研修を受講すると、今以上にキャリアの選択肢を広げられます。これまで以上に深く介護業務に携わることができ、やりがいやメリットも多く感じられるでしょう。
実務者研修は、通信講座を活用することで働きながら受講することも可能です。これから腰を据えて介護業界で働くことを考えている方は、是非後継資格の実務者研修を受講していきましょう。
スケジュールや制度、職場の支援等を上手く活用してみてください。