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シンプルに解説:介助と介護の違いとは?
「介護」と「介助」という言葉は、日常生活においてはあまり違いがないように思われますが、介護の現場では明確に使い分けられています。
介護と介助の違いをきちんと理解し、介護業務に生かしましょう!
介護と介助の違いとは
介護は、超高齢社会の日本にとって、今や深刻な問題の一つとなっています。一方で「介助」も、介護の現場ではよく聞かれる言葉です。
これら二つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか?
それぞれの目的もあわせてご紹介します。
介護は「日常生活の自立をはかる行為」
介護とは、高齢者や身体の不自由な方など、一人で日常生活を送ることが困難である人に対して、身体的・精神的・社会的に健康な生活を送るためのサポートをすることを意味します。
介護では、これらのサポートを通して、要介護者が満足できる生活の自立をはかることを目的としています。また「介護の三原則」という、日本だけでなく世界各国で取り入れられている介護の基本的な考え方があります。
介護の三原則は、1982年に福祉の先進国であるデンマークで生まれました。介護される人、一人ひとりを尊重し、自分らしく生活していくことを目的としています。介護の三原則は以下3つのことを基本としています。
介護の三原則
- 生活の継続性
- 自己決定の尊重
- 残存能力の活用
生活の継続性
これまで暮らしてきた生活を少しでも継続できるように、それまでの生活環境やリズムなどに配慮し、その人らしく暮らすべきという考えです。
自己決定の尊重
介護が必要になっても自分の暮らし方を要介護者自身で決め、その選択を尊重するということ。「自分がどのように暮らしたいのか」自分自身で決定できる環境であることが大切です。
残存能力の活用
日常生活において自分でできることは自分でしてもらい、自身の能力を活かすことが大切だという考えです。
日本では、デンマーク同様に介護を提供することは難しい現実がありますが、できる限りこの三原則に沿ってサポートを行い、介護を必要としてる人が少しでも自分らしく生活できる環境を整えることが大切です。
介助は「日常生活をサポートするための具体的な手段」
介助とは、食事、排泄、入浴、更衣、歩行、移乗など日常生活で生じるあらゆる動作のサポートを行うことを意味します。
つまり、介助は介護の一環として提供されるサポートであり、介護を実現するための「具体的な手段」と考えられているのです。「介護」が要介護者の生活の全体を見るものだとすると、「介助」はそのときに必要な手段だといえます。
「介護士」と「介助士」の違いとは
介護業界には、「介護士」と「介助士」という職種が存在します。
これらにどのような違いがあるのか、下記でご紹介します。
介護士は「介護職に関わる仕事」
簡潔に述べると、介護職に関わる仕事をする人のことを「介護士」と呼びます。
主な仕事内容としては、介護を必要とする人に対して身体介助や生活援助など日常生活において必要なことをサポートすることです。
介護施設をはじめ、訪問介護事業所や病院などで勤務しています。介護職には、業務を行うにあたって必要な資格が定められていますが、資格の種類を問わず介護に関する職に就いている人は「介護士」に該当します。
介助士は「介助に関するスキルを保有する証明」
「介助士」は介助に関するスキルを保有する証明になります。
高齢者や障害者などに対して介助によって様々なサポートを提供できるという資格になります。活用できる場は多岐にわたるため、介護業界だけでなく観光業やレジャー産業などでも介助士の育成が行われています。
高齢者や障害者が公共交通機関を利用する際のサポートや接客なども介助士の行為のひとつです。
介助士の資格を取得することで、社会問題に対する意識がより身近に感じられるでしょう。
介護の種類
介護は、一人で日常生活を送ることが困難である人に対して、自立した生活を送るためのサポートをすることを意味します。
具体的な内容は以下のようになります。
- 身体介護
- 生活援助
一つずつ、くわしく見ていきましょう。
身体介護
身体介護とは、要介護者の身体に直接触れて行われる介助や、それにともなう準備、片付けなどを指します。
具体的な内容としては以下のものがあります。
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 着替え介助
- 歩行介助
- 移乗の介助 など
身体介護には、要介護者の自立を後押しする観点から、介護をする側がすべてやってあげるのではなく、要介護者を近くでサポートしながら見守る支援も含まれます。
これらの見守り的援助は、安全を確保しつつ、常に介助できる状態で実施する必要があります。
生活援助
生活援助とは、直接身体に触れる仕事以外で、利用者の身の回りのお世話を行うことです。
具体的な内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 食事の準備、片付け
- 洗濯
- アイロンがけ
- 居室内、トイレ、テーブルの上などの掃除
- ゴミ出し
- 日常生活に最低限必要な物品の購入
- 日常生活必需品の代金支払い
- 薬の受け取り
- 公共サービスの申請
- 衣服の整理
- 衣服の補修 など
介護保険における訪問介護では、ホームヘルパーが利用者のもとへ伺い、これらの日常生活の援助を行います。
ただし、訪問介護による生活援助は、原則、同居の家族等がいる場合は利用できません。
しかし、利用者の同居家族がやむを得ない事情により、家事が困難な場合には、利用者の個別状況により利用できる場合があります。
精神的援助
精神的援助とは、利用者が抱える不安やストレスを緩和させるためにサポートを行うことです。
具体的な内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 挨拶やコミュニケーションを積極的に取り、孤独感を味わせない
- 自分でできることを増やし自信をつけてもらうために、時折見守りサポートをする
- 幸せな時間を過ごしてもらうために、利用者の好きなことをレクリエーションに取り入れる
要介護になると、周囲の人とのコミュニケーションを断ち、引きこもってしまうケースも多くあります。
精神的な疾患も患う可能性も高くなるため、精神的援助が必要となります。
老人ホームやデイサービスなどの施設、訪問介護などでのケアによってコミュニケーションを取る機会を設けることもストレスケアに繋がります。
社会的支援
社会的支援とは、ソーシャルサポートといい、物理的・心理的にサポートを行うことです。
具体的な内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 買い物支援
- 地域団体による交流サロンの運営
- 介護予防サービスの推進
- 認知症高齢者の支援
自治体が主体となって、要介護者を社会的にサポートするために地域包括ケアシステムという仕組みをつくっています。主に、ケアマネージャーや地域包括支援センターがコーディネートを行なっています。
地域一体となったサポート体制が整えられています!
介助の種類
介助とは、介助は介護の一環として提供されるサポートであり、日常生活で生じるあらゆる動作のサポートを行うことを意味します。
介助の種類には以下のようなものが挙げられます。
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 着替え介助
- 歩行介助
- 移乗介助
一つずつ、くわしく見ていきましょう。
食事介助
食事を一口ずつ提供することはもちろん、口腔内のチェックやケア、食事内容や食事にかかった時間などを記録することも含まれます。
食事介助では、食事前の体調をチェックしたり食事中の姿勢を整えたりするなど、誤嚥を予防するための対策も重視されています。
排泄介助
トイレの介助はプライバシーに配慮して、できるところは自分でやってもらうように環境を整える必要があります。また、トイレ介助では、トイレに移動する際やトイレから立ち上がる際の転倒などに注意しましょう。
入浴介助
入浴は介助する側はもちろん、介助される側も体力が必要です。
冬場の入浴は、気温差によって血圧が急激に上下し、心臓や血管にダメージを与えるヒートショックが起こりやすくなります。そのため、脱衣所や浴室に暖房器具を設置するなど、できるだけ家の中の温度差を小さくするなどの対策が重要です。
着替え介助
更衣中は室内をおよそ22~25度の適温に保つことや、更衣前は着替えやすい衣服を用意することなども含まれます。また、更衣中はできるだけ自分で着替えてもらい、困難な部分のみをサポートするという姿勢も大切です。
歩行介助
歩行介助では、転倒に配慮して付き添う必要があります。室内を移動する際には敷居や電気のコードなどの障害物をどかし、段差に気をつけるなど、足元に気を配ることが重要です。
移乗介助
自力で乗り移ることが困難な場合に、介助を行います。
移乗は生活していくうえで頻繁に行われ、介助者には介助される方の体重がかかる動作です。そのため、人体力学という身体の動きのメカニズムを活用することにより、介助される方の不安などを減らすだけでなく、介助者の身体負担の軽減にもなります。
介助の4段階を知ろう
一言で介助と言っても、大きく分けて4段階に分けられています。
続いては、介助の4段階についてご紹介します。要介護であっても行動によって段階の違いがありますので、どのような介助が必要なのかが変わってきます。
介助の範囲を見極めることで、介護をする側の負担が軽減されます。また、本来は一人で行える行動もサポートに入ると、本人のやる気やモチベーションを軽減させてしまうこともあるでしょう。
適切なケアを行うためにも、介助の段階をしっかり把握しておくことが大事です。
自立
一人でできる状態であるため、介助は不要となります。自立している行動であるならば、本人に任せるようにしましょう。
一部介助
これまで自立してできていた行動が、転倒のようなことが発生すると一部介助という段階になります。全てをサポートする必要はありませんが、転倒のようなリスクを避けるために見守りや誘導を行います。
半介助
何らかのサポートを必要としながらも、まだ本人の能力も残っている状態になります。
見守りや誘導を行いながら、自分でできる範囲のことは任せるようにして、少しでも能力を維持・向上させる働きが必要です。
全介助
全介助になると、介護をする側の身体的な負担も大きくなります。ときには自分よりも身体の大きな利用者をサポートすることもありますので、介護スキルを磨くことが大事です。
介助のスキルアップに役立つ資格
介助に関するスキルを高めるには、資格取得を目指してみましょう。
こちらでは、介助のスキルアップに役立つ資格を2つご紹介します。
サービス介助士
高齢者や障害者などその人に応じたサポートの方法を身につけられる資格です。
介護業界だけでなく、空港や駅、デパートなどでもサービス介助士は存在します。車椅子の人に対する移動時の介助や聴覚障害者に対する接客など様々な場面で活用できます。
資格取得するには、座学と実技によるセミナーを受講し、確認テストを受けることで修了証が授与されます。
1日で取得することが可能であるため、働きながらでも取得しやすいでしょう!
認知症介助士
認知症に関する正しい知識を学び、適切な対応方法を身につけることができる資格です。そのため、介護職としてはもちろん、家庭内に認知症の人がいる場合でも大いに活用できる資格になります。
認知症介助士の認定を受けるためには、検定試験に合格しなければなりません。
受験対策として、テキストや問題集が販売されています。セミナーも開催されていますので、スケジュールや会場を確認して受講してみましょう。
介護のスキルアップに役立つ資格 / 研修
介護に関するスキルを高めるには、資格取得や研修を受講することがおすすめです。
こちらでは、介護のスキルアップに役立つ代表的な資格や研修を4つご紹介します。
介護職員初任者研修
介護に関わる仕事をするうえで、初めに受講する研修となります。介護職として必要となる介護に関する基礎的な知識や技術を学ぶことができます。
業務上、資格がなければ行えないものもあります。また、介護職員初任者研修を修了することで、資格保有者となるため資格手当も付きます。
これから介護職を目指す方で、まだ何も資格を取得していないという方は介護職員初任者研修を取得しましょう。
介護福祉士実務者研修
上記の介護職員初任者研修の上位資格にあたる研修です。介護に関する知識や技術だけでなく、経管栄養や喀痰吸引などの医療的なケアも学べます。
受講するための要件は特に定められていないので、いきなり実務者研修の取得を目指すということも可能です。
実務者研修を取得することで、介護福祉士の受験要件を満たすこともできます!
キャリアアップ・スキルアップを目指したい方は介護福祉士実務者研修を目指しましょう。
介護福祉士
介護福祉士は、国家資格になります。
上記の2つの資格と違い、受験要件が定められています。
様々なルートがありますが、実務経験ルートの場合は3年以上の実務経験且つ実務者研修の取得が必要です。介護福祉士になると、一般的な介護業務に加えて、現場のリーダーとしての役割も担うようになります。
介護に関わる資格の中で、唯一の国家資格であるため社会的信頼も得られるでしょう。
ケアマネージャー
さらにキャリアップやスキルアップを望む場合は、ケアマネージャーという道もあります。
ケアマネージャーは、言わば介護保険に関するスペシャリストです。ケアプランの作成や自治体、事業所などの連携も担います。
受験するためには、国家資格に加えて5年以上の実務経験が必要です。
より専門的な知識や技術を持った人材になります!
介助は、介護における手段の一つ
介護と介助は混同されやすい言葉ですが、介助は介護における手段の一つです。また、介護を提供するときは、介護される方の自立支援を念頭に、それぞれの介助をおこなうことが大切です。
今回ご紹介した介護と介助の目的や、介助を行う際のポイントを理解し、安心・安全な介護を行いましょう。