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看護マネジメントとは?看護管理者の役割や人材育成について解説!
看護主任や部長に就任すると、看護管理者としての役割も担うことになります。これまでの業務とは全く別のスキルを求められることになり、新たな問題に直面することもあるでしょう。
看護マネジメントとは、一体どのような目的や役割があるのでしょうか?
看護マネジメントに関する育成や実習に関してもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
看護マネジメントとは?
看護マネジメントとは何か、在り方やプロセス、中心となるリーダーについてご紹介します。
看護マネジメントの在り方
看護師同士が協力し合って仕事を行うことで、さらに高度な看護管理が実現します。看護管理体制が整理されていないと、看護師一人ひとりが自分の判断で行動することとなり、連携が上手く図れず非効率的な看護体制となってしまいます。
組織の中で役割や課題を明確にし、効率良く看護チームを運営するために行うのが看護マネジメントです。
看護マネジメントの4つのプロセス
看護マネジメントには以下4つのプロセスがあります。
- 計画化
- 組織化
- 指揮
- 統制
計画は月次や年次で計画を立てます。目標を達成するために有効活用できるリソースと、適切な人員配置や権限を設定するのが組織化です。
目標達成までに必要な情報や資源に気づいたら、指揮をして目標達成に向けた活動をチームメンバーに働きかけます。最後に目標達成に向けた活動の結果を受け、仮説検証を行いながらチームを統制していきます。マネジメントの方向性や目標は、看護主任や看護師長が代表して決めていくケースが多い傾向です。
統一された質の高いケアを提供するためにも、4つのマネジメントプロセスを踏むことは大切です。
看護マネジメントを行う役職に求められる役割
看護マネジメントを担う役職者に求められる経験やスキルを紹介します。リーダー経験をする予定の方には参考になるでしょう
看護部でのリーダー経験
看護部のリーダーは以下のメンバーで構成されています。
- 看護部長
- 看護師長
- 看護主任
看護部長は現場のマネジメント業務を行うことになります。看護師長や主任と連携してチームをまとめていきます。
現場の看護マネジメントのリーダーとなる役職は、看護師長です。チームメンバーの相談に乗る機会が多いポジションです。
看護主任はチーメンバーだけでなく、管理職とも距離が近い役職なので、両方の意見を吸い上げる必要があります。看護師としてのキャリアを積んでいくごとに、看護主任・看護師長・看護部長の順でキャリアアップしていきます。
看護マネジメントを続けるうえでは看護部でのリーダー経験が必要です。
看護管理者はマネジメントに関するスキルが求められる
看護部長を始め、看護師長や看護主任といった看護管理者には、看護師としてのスキルだけでなくマネジメントに関するスキルも求められます。
危機的状況に陥った場合のリスクを最小限に抑える危機管理能力や看護の質を組織として保障する質管理能力も必要です。さらに、部署内の看護の質を向上させるためには、制度や計画の立案力・創造力が求められる場面も多々あります。
部署内・病棟内の看護職員が抱える悩みを解決に導く
スタッフの悩み・課題を解決に導くことも看護マネジメント業務の1つです。そのため看護管理者は、部署内または病棟内のスタッフの個人のキャリア志向や現在抱えている問題・課題を把握しておく必要があります。
また看護師としてのキャリアが長くなるにつれ、後輩の指導を行う立場になります。看護主任・看護師長・看護部長と看護管理者という立場になると、さらに指導者としての責任が大きくなるでしょう。
看護人材を組織的に育成・指導していく必要がありますので、一人ひとりのスキルや状況を把握し、適切な指導・助言を行っていきます。
現場の問題を正しく見極め、改善する
現場のリーダーは、問題を正しく見極め、改善に導く役割を担います。
看護マネジメント業務は基本的にチームメンバーのサポートです。しかし患者さんに対する看護過程にも影響する面があります。
現場スタッフが円滑に行えない業務を改善することで、患者さんに対しても質の高い看護を提供できます。
仕事内容のどこに問題があるのかを見極めましょう。
看護マネジメントを担う役職別の仕事内容
現場の看護師にとってリーダーとなるマネジメント職は、様々な役職があります。具体的には以下のとおりです。
- 看護主任
- 看護師長
- 看護部長
役職別にそれぞれの仕事内容についてご紹介します。
看護主任
現場の看護師が最初に就く役職が看護主任です。
看護主任は、現場スタッフと看護師長の橋渡し的な存在になります!
主な仕事内容としては、一般的な看護業務に加え、新人教育や看護師長のサポート・補佐、病棟運営の状況把握・問題点の改善などを行います。
病棟内のスタッフや患者全体の状況を把握し、危機管理やヒヤリハット、インシデントの発生率を抑えるよう努めることが看護主任の役割です。
スタッフが抱える悩みに対して相談を受けるといった現場の看護の質を向上させるサポートも担っています。
看護師長
看護主任からひとつ昇級すると看護師長となります。
看護師長は、現場を統括し、経営陣との橋渡し的な役割を担います。
主な仕事内容としては、現場スタッフの支援・育成、地域社会との連携、組織体制の管理、看護研究の支援・推進などです。
現場スタッフを統括する立場であり、各部門との連携を図りチーム医療の推進も行います。また、看護師長が中心となって看護研究を推進していきます。
これまで以上に深い知識や技術が求められる役職です!
看護部長
看護師長からさらに昇級すると看護部長となります。
看護部長は、病院の看護部全体の責任者という立場であり、院内の運営にも大きく関わる役職です。
年間計画や人材計画を作成し、経営会議への出席、病院長・事務長との交渉や調整などを行います。他部署のスタッフと連携や調整を行いながら、現場の看護師が働きやすい環境を築いていきます。
現場で看護業務を行うというよりもマネジメント業務がメインとなります。
マネジメント職に求められるスキル
看護主任や看護師長、看護部長というマネジメント職になるには、さまざまなスキルが求められます。具体的には以下のとおりです。
- 豊富な臨床経験
- コミュニケーションスキル
- リーダーシップ
- マネジメントスキル
- 観察力
- 分析力
自身に足りないものがないか確かめてみましょう。
豊富な臨床経験
マネジメント職は現場スタッフのリーダーなので、看護師の充分な経験が必要です。看護主任の場合は約10年、看護部長クラスになるには20年程度の臨床経験を積むとマネジメント職に昇格できます。
近年では地域ケアシステムが推奨されているので、看護の知識だけでなく介護や医療の知識も重要です。1つの病棟だけでなくあらゆる病院や介護施設での臨床経験が求められます。
マネジメント職を目指している方は、現場でさまざまな経験を積みましょう。
コミュニケーションスキル
マネジメント業務に関わるようになると、他部署のスタッフや経営陣と関わることも多々あります。部署内のスタッフが円滑な業務が行えるよう努める必要もあり、コミュニケーションスキルは必須です。
リーダー看護師や管理職が新人やチームメンバーが看護師が話しやすい雰囲気作りをできると、風通しの良い職場が作れます。スムーズに意見交換ができる環境でなければ、新人がミスをしても報告を遅らせてしまう可能性があります。
将来的に大きなミスに発展するケースも少なくありません。提案しても職場は変わらないとあきらめる職員も生まれます。
チームに悪影響を及ぼさないためにも、リーダー看護師にはコミュニケーション力は大切です。
リーダーシップ
看護マネジメントを勤めるには、リーダーの資質も必要です。
ある一定の目標に対して、個人やチーム全体の行動を促す力が求められます。
個人の特性を見抜き、個人に応じた指導・育成力が必須です。またリーダーシップがある人の特徴としては、常に精神が安定しており、自分の気持ちに左右されない精神的な強さがあります。
ときには反対意見を受けることもありますが、冷静に受け止める器の大きさも必要です。
マネジメントスキル
組織を管理する力も必要です。現場の多くのスタッフに対して的確な指示をし、成果を上げるための手法を考え、組織を管理していきます。状況を正確に把握し、人を動かす力が求められるでしょう。
新人教育や人材育成にも直接関わっていくようになるため、マネジメントスキルは必須となります。
観察力
看護現場でマネジメントする際は、観察力も重要です。冷静に観察できる力があれば問題点を発見できます。
現場ではチームや患者間で緊急性の高いトラブルから、慢性的な問題が発生しています。リーダー看護師に観察力がないと、問題の本質が見抜けないでしょう。
マネジメントを取る際は、物事を俯瞰して観察しなければいけません。
分析力
観察して見えた問題や課題を分析する力も必要です。リーダー看護師は、チームや現場に必要な解決策を提示します。また提示した施策を、具体的に取り組める手段に落とし込みます。
分析した結果を、チームで話し合い、最善の方法を見つけましょう。
物事の状況を俯瞰的に理解できるスキル
何かトラブルが起きたときも慌てず、冷静に対処していく力が求められます。物事の状況を俯瞰的に理解し、正しい方向に導きます。しかしひとつの物事に集中していると、全体の状況が捉えられなくなってしまいます。
看護部のことだけに集中するよりも、他の部署に関する理解も必要となるでしょう。
課題を発見し、改善案を提案するスキル
看護部全体がより良い環境で勤務し、看護の質を向上させるよう努めます。自ら課題を発見し、改善案を提案していくスキルも必要となります!
どのような職場でも必ず課題があり、それを見つけて改善へ導いていくことがマネジメント職の役割です。
課題解決のために積極的に適切な施策を提案していけるだけの力が求められます。
看護マネジメントをする際のポイント
初めてマネジメントをするのを不安に感じている方もいるでしょう。
ここでは、看護マネジメントをするうえでのポイントを解説します。2つのみ押さえることで、チームメンバーに頼られるリーダー看護師に近づけます。
看護マネジメントラダーを使用する
看護マネジメントラダーは、日本看護協会が公表している管理者の能力を6つに分類した指標です。具体的な評価ポイントは以下のとおりです。
組織管理能力:組織の方針を実現するために資源を活用し、看護組織をつくる力
質管理能力:患者の生命と生活、尊厳を尊重し、看護の質を組織として保証する力
人材育成能力:将来を見据えて看護人材を組織的に育成、支援する力
危機管理能力:予測されるリスクを回避し、安全を確保するとともに、危機的状況に陥った際に影響を最小限に抑える力
政策立案能力:看護の質向上のために制度・政策を活用および立案する力
創造する能力:幅広い視野から組織の方向性を見出し、これまでにない新たなものを創り出そうと挑戦する力
看護マネジメントラダーを使用することで、マネジメントスキルを客観的に分析できます。これからリーダー看護師になる方は、ぜひ取り入れてみてください。
マネジメントリフレクションをする
リフレクションとは、自分の経験を振り返り、行動や思考を改善につなげるプロセスのことです。リフレクションを進める際は、型に沿って進めることで効果を発揮します。
ここでは、代表的な方法を3つ紹介します。
【KPT】
Keep(できていることを続ける)
Problem(問題点を見つける)
Try(改善する)
【KDA】
Keep(継続すべきこと)
Discard(今後は破棄すること)
Add(追加して行うこと)
【YWT】
Y:やったこと
W:わかったこと
T:次にやること
リフレクションは看護師の特性に合わせてマネジメントできるツールです。使用する際は、メンバーやチームの状況に合わせて実践していきましょう。
看護師がマネジメント職を目指すメリット
看護師としてマネジメント職を目指している方も多いでしょう。役職が与えられることで新たな業務を任され、責任も大きくなりますがメリットも多々あります。
具体的には以下のとおりです。
- 夜勤に入る機会が減る
- 役職手当が付く
- 職場環境の改善に貢献できる
- 自分自身のスキルアップに繋がる
- 転職に有利になる
ぜひ参考にしてみてください。
夜勤に入る機会が減る
現場によって異なるケースもありますが、基本的に看護師長以上の役職は夜勤に入りません。主に、現場スタッフが夜勤をシフトで回しているので、夜勤に入る機会は大きく減ります。
日勤がメインとなりますので、生活リズムも安定しやすいでしょう!
基本的に、規則正しいシフトで看護師として勤務していくことが可能になります。
役職手当が付く
看護師は役職が就くとそれに応じた手当が支給されます。基本給も昇給しますが、毎月の給与にプラスで手当がつくので大幅な年収アップが望めます。
責任や業務が増えることに対して、しっかり給与に反映されています。
職場によって金額は異なりますが、大規模な病院で勤務しているほど支給額はアップします。
職場環境の改善に貢献できる
一般的な看護業務に加えて環境改善に関する業務も担います。自ら課題を見つけ、それに対して改善策を積極的に経営陣へ提案していくことが可能となります。
勤務していて「ここを改善したい」という部分は、誰しもが持っているでしょう。役職でない場合、なかなか経営陣と接する機会も少なく、直接意見を述べるが難しいです。
マネジメント職は、経営陣に直接交渉することが可能な立場になります。
職場環境の改善に貢献できるようになるため、今まで以上の責任ややりがいを感じられます。
自分自身のスキルアップに繋がる
マネジメント職は、看護師としてのスキルの他にリーダーシップやコミュニケーションスキルなど様々な能力が求められます。
マネジメント業務も担うことで、自分自身のスキルアップに繋がります!
人として大きな成長を実感できるでしょう。責任や業務は増えることになりますが、その分やりがいも大きくなります。責任あるポジションだからこそ、成長できる機会が多くあります。
転職に有利になる
マネジメント職を経験していると、充分な臨床経験があり、マネジメント業務も担える優秀な人材であるとみなされます。転職の際には非常に有利になるでしょう!
自分が興味のある職場や分野にスムーズに転職できる可能性が高いです。人手不足な看護業界ですが、必ずしも自分が希望する職場に再就職できるというわけではありません。
どこの職場も優秀な人材を採用したいと思っていますので、マネジメント職経験者は充分な自己PRに繋がります。
看護マネジメントに関する育成・実習
最近は、看護マネジメントを育成・実習する学校や病院が増えてきています。
こちらでは、看護マネジメントに関する育成や実習についてご紹介します。
看護マネジメント育成・実習の目標
規模が大きい医療機関で実習が行われることが多いです!
看護マネジメントに関する教育を取り入れている看護系の大学などで、実習が組まれており、学生のうちから現場の空気に触れながら学ぶことができます。また、現場で働く看護師に対しても、マネジメントに関する育成が行われています。
新しいスタッフが入職するにつれ、指導者との立場や年齢に差が出てきます。
中間管理職のような立場のスタッフを育成することで、組織内のコミュニケーションがより円滑化しやすくなります。
看護マネジメントの実習内容
指導者と一日中行動を共にし、看護マネジメントが現場で活用されていることを学んでいきます。行動を観察しながら、適宜指導を受けていくことで、より看護マネジメントの重要性を理解することができるでしょう。
言葉で説明するだけでは、看護マネジメントの全般を理解することは難しい部分があります。
現場で実際に見て、管理者の立場から指導を受けることで、理解が深まります!
認定看護管理者制度との関連
認定看護管理者とは、患者さんやそのご家族、地域の方に対して質の高いサービス提供をすることを目的とし、管理下にある組織の課題を明確にし、働きかけることで組織全体のサービス向上に取り組む看護師です。つまり、看護管理におけるスペシャリストと言えるでしょう。
病院や介護施設などでの看護部長といった方々が、認定看護管理者として活躍しています。
取得したからといって年収に大きく影響するというわけではありませんが、より高いレベルの看護マネジメントを実践するためには、取得を視野に入れるといいでしょう。
組織を円滑に動かすことで高度な看護サービスを提供できる
看護マネジメントを実践することで、看護師が属する組織全体を円滑に運営することができます。結果的に、患者さんに対する看護過程に通じることになりますので、全体で取り組むことが大事です。
リーダーとなる看護管理者だけでなく、全ての看護師が看護マネジメントを意識することで、より高度なサービスの提供に繋がります。
看護管理者となり、マネジメント業務に戸惑う方もいるかもしれませんが、これまで経験してきた看護過程の考え方を振り返ることでどのように行動すればいいのかが見えてくるでしょう。
役職に就くことで、やりがいが大きくなるだけでなく、給与面や勤務体制など様々なメリットを感じられます。認定看護管理者の取得を目指すなどをして、より質の高いマネジメントの実践に活かしてみてください!