ジャンル別記事
2025年から無資格では働けなくなる?!介護職に義務化された「認知症介護基礎研修」を徹底解説
現在、介護職は無資格でも勤務できるので、現場でも無資格の介護職員は多いです。しかし、今後は無資格では働けなくなると言われていることをご存じでしょうか?
2021年4月の介護報酬改定で、無資格の介護職員に「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されました。これにより、無資格では介護現場で働けなくなるのです。
無資格で介護現場にお勤めの方や、今後介護職を目指している方は、ぜひ最後までご覧ください。
2024年4月から義務化!「認知症介護基礎研修」がないと働けないの?
2021年4月の介護報酬改定にて「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されました。
認知症介護基礎研修が義務付けとなったことで、どのように変化するのでしょうか?
ここでは、認知症介護基礎研修の概要を紹介します。
すぐに働けなくなるわけではない
認知症介護基礎研修は2021年4月に義務化されましたが、受講していないからといってすぐに働けなくなるわけではありません。 2021年4月から2024年3月31日までの3年間は経過措置期間です。
期日を過ぎてしまわないように注意しておきましょう。
採用後は1年間の猶予期間がある
2024年4月以降に無資格で採用された方には、1年間の猶予期間が設けられています。
期間を過ぎても受講していない場合は、事業者が行政処分の対象になります。採用後はなるべく早めに受講しましょう。
認知症介護基礎研修とは
ここでは、認知症介護基礎研修の概要を解説します。具体的には以下のとおりです。
- 認知症介護基礎研修とは認知症を学べる研修
- 認知症介護基礎研修の対象者
- 認知症介護基礎研修の免除者
それぞれ解説します。
認知症介護基礎研修とは認知症を学べる研修
認知症介護基礎研修とは、認知症の方に対する介護技術を学べる新任者向けの資格です。認知症の定義や基礎知識、ケアにあたるうえでの技術を学べます。
1つの章を学んだら、確認テストをして進んでいく学習スタイルです。チャプターは全部で5つあり、認知症の知識や技術を網羅的に理解できるカリキュラムとなっています。
認知症介護基礎研修の対象者
認知症介護基礎研修の対象者は、無資格や未経験から介護の仕事をする方です。居宅介護や施設介護など、働く施設の形態は問われません。
また、認知症の基礎知識が学べる研修の「認知症サポーター」も義務化の対象です。認知症サポーターを保有している方は、認知症介護基礎研修を受講する必要があります。
認知症介護基礎研修の免除者
以下の資格を保有していると、認知症介護基礎研修の受講が免除になります。
【介護系の資格】
・介護福祉士
・実務者研修修了者
・介護職員初任者研修修了者
・生活援助従事者研修修了者
・介護職員基礎研修課程修了者
・訪問介護員養成研修(一級・二級)修了者
・認知症介護実践者研修修了者
・認知症介護実践リーダー研修修了者
・養成施設で認知症の科目を受講した人や福祉系高校の卒業生
(認知症の科目を履修していることを証明できる書類が必要)【リハビリ系の資格】
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・あん摩マッサージ師
・はり師
・きゅう師
【相談業務】
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・介護支援専門員
【医療系の資格】
・医師
・歯科医師
・薬剤師
・看護師
・准看護師
【その他の資格】
・管理栄養士
・栄養養士
医療・福祉の国家資格や認知症に関する資格を保有している方は、免除対象者です。
認知症介護基礎研修の取得方法
ここでは、認知症介護基礎研修の取得方法を紹介します。
- 受講形式
- カリキュラム
- 費用・時間
それぞれ解説します。
受講形式
研修の受講方法はおもに以下の2つです。
- eラーニング
- 集合型研修
半日間eラーニングと集合型の研修を行う場合もあり、各自治体によってさまざまです。受講希望者は、事業所の代表者から発行された「事業所コード」と登録時の「事業所名」を受け取ります。そして、認知症介護基礎研修eラーニングサイトから受講を申し込みます。集合型研修を希望者は、各自治体のホームページから確認が可能です。
受講を希望されている方は、勤務先やお住まいの自治体の案内を確認してみてください。
カリキュラム
認知症介護基礎研修のカリキュラムの内容は以下のとおりです。
【認知症介護基礎研修のカリキュラムの内容】
序章:認知症の人を取り巻く現状
・わが国の認知症施策の動向(認知症施策推進大綱の概要)
第1章 : 認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
・はじめに
1.パーソン・センタード・ケア
2.認知症の人への偏見・誤解とその解消
3.介護者の視点
4.認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援とは
第2章 : 認知症の定義と原因疾患
1.認知症とはなにか①・②
2-1.認知症の原因疾患:アルツハイマー型認知症の原因と主要な症状
2-2.血管性認知症の原因と主要な症状
2-3.レビー小体型認知症の原因と主要な症状
2-4.前頭側頭型認知症の原因と主要な症状
第3章 : 認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
1.認知症の中核症状と行動・心理症状の理解①・②
2.中核症状の生活への影響
3.中核症状が心理面に与える影響
4.行動・心理症状のとらえ方と出現原因
5.認知症の人にとっての環境①・②
6.健康管理①・②
第4章 : 認知症ケアの基礎技術
1.認知症の治療①・②
2-1.認知症の人の適切な関わり方(事例演習)
2-2.認知症の人の適切な関わり方②
3-1.認知症の症状への対応(事例演習)
3-2.認知症の症状への対応②
4-1.意思を尊重する支援方法とは①
4-2.意思を尊重する支援方法とは②
5.チームケアの基本
6-1.家族介護者の理解と支援方法①
6-2.家族介護者の理解と支援方法②
カリキュラムは、5つのチャプターに分かれています。認知症に関する基礎知識や介護技術を網羅的に学習できる内容となっています。
費用・時間
eラーニングの受講時間は150分間あり、確認テストの解答時間が別途で発生します。集合型研修の場合は講義3時間+演習3時間の計6時間のカリキュラムなので、1日で修了できます。
受験費用は各自治体によって異なりますが、平均3,000円です。仕事や育児を両立しながら学習したい方は、eラーニングがおすすめです。
短期間で学習を修了したい場合は、集合型研修を受講しましょう。
認知症介護基礎研修を受講するメリット
主に、無資格者が受講することになる「認知症介護基礎研修」。受講することで、様々なメリットがあります!
こちらでは、認知症介護基礎研修を受講するメリットを3点ご紹介します。
認知症に関する知識が深まる
認知症介護基礎研修は、認知症介護ケアで必要となる基礎的な知識や技術、考え方を学ぶことができます。介護職に就くと、認知症の方と関わる場面が多くあります。
正しいスキルを持っていなければ、上質なケアを提供することができません。
充分なスキルを持っていないことで不安を抱えやすくなってしまいます。ときには、認知症の高齢者とのトラブルに発展してしまうこともあります。
認知症に関する基本の知識や正しい対応を身につけておくことで、あらゆるトラブルを回避できるメリットも得られます。
有資格者として介護の仕事ができる
認知症介護基礎研修を受講することで、資格を一つ保有することができます。有資格者ということで、利用者やその家族、他の職員からもより高い信頼を得られます。
現場で活躍できる介護職員になれるので、自信を持って業務にあたることができるでしょう。
資格手当を設定している職場も多いため、収入面がアップしやすいというメリットもあります。
他の資格よりも安く、早く取得できる
認知症介護基礎研修は、1日約6時間で費用も数千円で取得が可能です。他の資格は、受験するまでに数年もの実務経験が必要であったり、費用も数万円必要なものもあります。
比較的、他の介護に関する資格よりも安くで受講でき、短期間で取得できるという部分もメリットでしょう。
今までは、無資格で介護の仕事をすることができましたが、2025年からは資格が必須となります。
取得までに時間が掛かりませんので、できるだけ早めに受講をしましょう。
義務化にあたって介護事業者が確認すべきこと
介護事業者は、無資格者に「認知症介護基礎研修」を受講させる義務があります。
完全義務化になる前に、以下の内容を確認しておきましょう。
無資格者の把握
「認知症介護基礎研修」は事業者への義務付けとなっており、今後事業者は無資格者に介護業務を指示することが不可能になります。よって事業者は、事業所内の職員の無資格者を把握する必要があります。
さらに、義務対象者を雇用している場合は、受講のための措置を講じる必要があります。
完全義務化される前に、全ての無資格者が「認知症介護基礎研修」を受講修了できるように把握しておきましょう。
義務対象となる職員の把握
「認知症介護基礎研修」の受講が義務化される中で、対象外となる職種もあります。
介護事業者は雇用している職員が義務対象となるか否か、確認・判断が必要です。
基本的には、医療・福祉に関する資格を保有しておらず、直接介護に携わる職員が義務対象となります。しかし、人員配置基準上、従業員数として含まれる従業員以外の者や直接介護に携わる可能性が低い職員に関しては、事業者の判断に委ねられています。
事業者が必要なことは、義務対象となる職員の把握です。
介護職員自身が義務対象者である場合や受講を希望する場合は、事業者に申し出るようにしましょう。
放置している場合は行政指導対象となる
事業者の義務付けとされているため、上記の確認を行わず、そのまま放置してしまうと、その事業所が行政指導対象となってしまう可能性があります。
未受講のまま義務対象者を雇用することはできなくなるので、完全義務化される前に情報・状況の把握が必要です。
認知症介護基礎研修と初任者研修どちらを目指すべき?
認知症介護基礎研修と初任者研修のどちらを受講すればいいか考えている方もいるでしょう。
ここでは以下の内容を紹介します。
- 認知症介護基礎研修と初任者研修の違い
- 未経験の方は認知症介護基礎研修が受講しやすい
- 長く介護業界で働きたい場合は初任者研修を目指す
それぞれ解説します。
認知症介護基礎研修と初任者研修の違い
認知症介護基礎研修と初任者研修の違いを学習範囲や受講料などの項目別に分類しました。
【認知症介護基礎研修】
・講座の特徴:認知症ケアに特化
・受講料:3,000円程度※自治体による
・受講期間:1日
【初任者研修】
・講座の特徴:介護全般を学べる
・受講料:5万円~20万円
・受講期間:1~3カ月
初任者研修は、介護の基礎スキルを学べる講座です。一方、認知症介護基礎研修は介護全般ではなく認知症に特化しているカリキュラムです。
初任者研修では介護の基礎知識から技術までを幅広く学べるので、価格や受講期間が認知症介護基礎研修よりも長く設定されています。
初任者研修がしんどい理由は?スムーズな受講方法や資格メリット解説
未経験の方は認知症介護基礎研修が受講しやすい
免除対象者になる資格を保有していない方や完全に未経験から介護の仕事を始める方は、認知症介護基礎研修を取得しましょう。認知症介護基礎研修は初任者研修より費用をかけず期間も短いため、すぐに取得できます。
初任者研修は、仕事を始めてからでも取得するのは遅くありません。職場によっては資格取得の援助があるので、就職後に初任者研修を実質無料で取れる可能性があるからです。
早めに介護の仕事を始める準備をしたい方は、ぜひ取得を検討してみてください。
長く介護業界で働きたい場合は初任者研修を目指す
介護業界で長く働きたい方は、介護の知識や技術を体系的に学べる初任者研修を取得しましょう。認知症介護基礎研修に比べると取得までに時間や費用はかかりますが、介護全般の知識や技術を身につけられます。
資格を保有していると就職や転職活動も有利に進められるので、介護職を検討している方はぜひ取得してみてください。また、訪問介護は初任者研修を取得していないと働けません。
訪問介護員を目指したい方は、初任者研修を取得する必要があります。
認知症介護基礎研修受講後のステップアップ例
認知症介護基礎研修を受講した後には、どのようなステップアップが可能なのか気になる方も多いでしょう。
こちらでは、認知症介護基礎研修受講後のステップアップ例についてご紹介します。
認知症介護実践者研修
認知症高齢者に対して、より質の高い介護ケアを提供できる専門職員を養成するための研修です。すでに介護施設等で介護業務を行っている職員が対象となります。
より専門性の高い講義や実践的な研修となっているため、さらに認知症ケアに関するスキルを高めたい方は取得しておくべきでしょう。
修了試験は設けられていませんが、指定された全ての学科を受講し、報告書を提出しなければなりません。
勤務しながら受講を進めていかなければならないため、大変だと感じる方も多いでしょう。国で指定された資格であり、加算の対象となるため転職時に大変有利に働きます。
認知症介護実践リーダー研修
介護施設等で認知症介護ケアに関する指導を行えるリーダーを育成するための研修です。
受講するためには、上記の認知症介護実践者研修を修了していなければなりません。5年以上認知症の方に対しての介護業務も必要となります。
指導者を育成することを目的としている研修ですので、受講することでキャリアアップが実現します。認知症に関する高度なスキルを持つ人材として、現場でも重宝されるでしょう。
認知症介護指導者養成研修
介護施設等で介護サービスの質の改善について指導できる人材を育成したり、認知症基礎研修や認知症介護実践者研修を自ら立案し、講義等を担当することができる人材の育成を目的としています。
認知症介護に関する資格のなかで、最上位資格となります。
受講するためには、上記にある認知症介護実践リーダー研修まで修了しておく必要があります。
他にも、介護福祉士や社会福祉士等の資格を保有していたり、介護実務経験も受験資格に含まれています。
地域全体の認知症介護に関するサービスを高めるための貢献活動に携わることができる資格です。
資格が無い人が介護職を目指す場合は?
2025年以降は「認知症介護基礎研修」が実質必須となりますが、無資格でも介護事業所に就職できるのでしょうか?
結論から言うと、資格がなくても介護事業所に就職することは可能です。しかし、医療・福祉に関する資格を保有しているに越したことはありません。
こちらで詳しくご説明します。
採用後1年間は猶予期間がある
新入社員が医療・福祉に関する資格を保有していない場合は、採用後1年間の猶予期間が設けられています。
この場合も、2024年3月31日までは努力義務とされています。
よって、無資格で介護事業所に就職した場合は、猶予期間の間に「認知症介護基礎研修」を受講すれば問題ありません。
2024年3月末以降に入社する人は、1年間の猶予期間以内に受講する必要があります。
無資格ではできない業務がある
これから介護職を目指す人は、無資格ではできない業務があるということを把握しておきましょう。
介護職員は、デイサービスなどの施設や利用者の自宅にて、介護サービスを提供します。
利用者の自宅にて介護サービスを提供する「訪問介護」は、無資格では行えません。
いわゆるホームヘルパーとして勤務する場合は、資格が必要です。
施設で介護職員として勤務する場合は、現在は無資格でもできる業務があります。しかし、今後は「認知症介護基礎研修」の受講が必須になるため、完全に無資格で介護現場で働くことはできません。
介護のプロとして働くためには資格が有効
上記で、無資格ではできない介護業務があるとお伝えしました。そのため、より専門的な業務、介護のプロとして働きたい場合は、資格取得が必要です。
介護が必要な場面は多岐にわたります。 そのため、求められる知識・技術は非常に多いです。
長期的な勤務やキャリアアップを目指している場合は、介護に関する資格取得を目指すことをおすすめ。
「認知症介護基礎研修」では基礎的な知識・技術を受講することができます。しかし、さらなるレベルアップ、介護のプロになるためには、よりレベルの高い資格取得が必要です。
よくある質問
認知症介護基礎研修に関するよくある質問を紹介します。
- 無資格だとできない業務があるの?
- 認知症介護基礎研修の難易度は?
それぞれ解説します。
無資格だとできない業務があるの?
2024年以降に未経験で採用された方や無資格者は、認知症介護基礎研修の取得が必須です。そのため、研修を受講していないと介護業務に携われません。
介護の仕事をしたい方は、認知症介護基礎研修を早めに取得しましょう。
認知症介護基礎研修の難易度は?
認知症介護基礎研修の取得難易度は高くありません。無資格や未経験の介護従事者を対象にした講義のため、わかりやすく解説されています。
また、認知症介護基礎研修では確認テストが行われます。しかし修了試験は実施されず、受講すればその日に修了証明書が受け取れる仕組みです。
テスト勉強をする必要がないので、比較的簡単に取得できるでしょう。
介護現場で働くために余裕を持って「認知症介護基礎研修」を受講しよう
今後の介護業界は、義務化された「認知症介護基礎研修」により、無資格での勤務は難しくなります。
しかし、1日で取得が可能であり、猶予期間も設けられているため、今すぐ介護の現場で働けなくなるという訳ではありません。
このような制度が進むにつれ、さらに介護への意識が高まり、質の高いサービスの提供に繋がります。
現在、介護現場で働く人もこれから目指す人も、猶予期間や内容を確認し、余裕を持って受講するようにしましょう!