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「看護観」の重要性とは?看護師が知っておくべきポイント解説
「あなたの看護観を教えてください」看護職になるにあたり、面接でも聞かれることの多い質問です。
実際多くの方が苦労して答えを捻り出しているのではないでしょうか。しかし看護感を持つことは、非常に大切です。看護で働くにあたって、自身の中に一つのブレない軸を作ることにつながるからです。
さらに、面接での質問に上手く相手に伝わる答え方のコツや回答例をお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
看護観とは何か
看護観と言われると、言葉の意味や定義が分かりづらく答えに窮する方も多いのではないでしょうか。
面接でも聞かれることの多い単語ですが、改めて意味や定義について解説をしていきます。
看護観の意味
「あなたの看護観を教えてください」というのは、簡単に言うと「あなたは看護の仕事をどのように考えていますか?」と聞かれているようなものです。「看護観がある=看護の仕事への考え方・軸を持っている」と捉えられ、面接の際の印象も上がることが多いです。
逆に答えが見つからないようだと「本当に考えているの?」と突っ込まれることになるので、回答を用意しておくことをおすすめします。
看護への考え方を問うということは、自身の看護の目的や意義・理想がどこにあるか聞かれていることと同じです。他者と同じような考え・答えであっても問題はありません。
大切なことは自身が「なぜこの看護観なのか」を過去の経験や出来事を通じ、しっかりと説明できることです。
看護職の行動指針
看護観を見つけるにあたり、参考にしてほしいのは日本看護協会が定める看護職の行動指針
看護職が倫理的に正しい行動をするための指針が16個示されています。
人としての基本から、看護師独自の働き方についても言及されているので、参考にしてください。
- 看護職は、人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重する。
- 看護職は、対象となる人々に平等に看護を提供する。
- 看護職は、対象となる人々との間に信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する。
- 看護職は、人々の権利を尊重し、人々が自らの意向や価値観にそった選択ができるよう支援する。
- 看護職は、対象となる人々の秘密を保持し、取得した個人情報は適切に取り扱う。
- 看護職は、対象となる人々に不利益や危害が生じているときは、人々を保護し安全を確保する。
- 看護職は、自己の責任と能力を的確に把握し、実施した看護について個人としての責任をもつ。
- 看護職は、常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める。
- 看護職は、多職種で協働し、よりよい保健・医療・福祉を実現する。
- 看護職は、より質の高い看護を行うために、自らの職務に関する行動基準を設定し、それに基づき行動する。
- 看護職は、研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する。
- 看護職は、より質の高い看護を行うため、看護職自身のウェルビーイングの向上に努める。
- 看護職は、常に品位を保持し、看護職に対する社会の人々の信頼を高めるよう努める。
- 看護職は、人々の生命と健康を守るため、さまざまな問題について、社会正義の考え方をもって社会と責任を共有する。
- 看護職は、専門職組織に所属し、看護の質を高めるための活動に参画し、よりよい社会づくりに貢献する。
- 看護職は、様々な災害支援の担い手と協働し、災害によって影響を受けたすべての人々の生命、健康、生活をまもることに最善を尽くす。
日本看護協会:「看護職の倫理綱領」
看護観が必要とされる理由
こちらでは、看護観が必要とされる主な理由についてご紹介します。
実際の看護に反映される
看護観が必要な理由を簡潔に述べると、実際の看護に反映されるものであるからです。
自分でしっかり看護観を持っていると、実現するために自然と行動します!
例えば、「患者さんの気持ちに寄り添い、不安を取り除くケアをする」という看護観を掲げているとします。この場合、患者さんの些細な変化をキャッチするために、よく観察したりコミュニケーションを取ることを心がけるはずです。
どのように行動すべきなのかが明確になり、患者さんに必要な看護を提供することが可能となります。反対に、看護観を持っていないと患者さんに対して上質な看護を提供できなくなります。
看護観を明確に持っておくことで、患者さんが求める看護を行うことができます。
採用面接で質問されることが多い
採用面接において、看護観に関する質問をする職場が多くあります。「あなたの看護観は?」という直球な質問の他にも看護観に繋がる質問はよく聞かれます。
例えば、「どのような看護師になりたいですか?」「あなたが看護を提供するうえで大切にしていることは?」「どのような看護をしたいですか?」等です。
看護師として就職・転職活動を成功させるためには、看護観をしっかり持っておくことが重要となります。
はっきりと答えられないでいると、面接の印象が悪くなってしまうので看護観を明確にしておきましょう。
看護観の実態
看護観の意味や指針について解説をしてきましたが、「実際に看護観を持っている人っているの?」と疑問点が浮かぶ方もいるでしょう。
そこで、以下では看護観の実態について、看護観を持つ人・持たない人それぞれの考え方について紹介していきます。
看護観を持っている人の意見
看護観を持っている人の意見としては以下のようなものがあります。
- 看護師としてではなく一人の人間として接する
- 患者を自分や自分の家族に置き換えて看護をする
- 家族のような温かみのある存在になりたい
- 看護を通じて、人としても社会としても有用な存在になりたい
多くの方はどのような看護を行いたいのかをベースに考えていることが分かります。看護師としての社会的な意義を踏まえて、自身の看護観に落としている人も多いです。
また、「看護観がない=職業に対しての考えを何も持っていないに等しく、そんな人に看護は受けたくない。」など厳しい意見もあります。
看護観を持っていない人の意見
一方、看護感を持っていない人の意見としては以下のようなものがあります。
- 看護師としては患者が元気になってくれるのが一番
- 忙しすぎてそれどころではない
- 看護観が何かわからない
- 昔レポートで苦労した経験が・・
など様々です。もちろん看護観自体が漠然としており、「これが看護観だ!」と言えるほど分かりやすいものではないため、自身の人生観や死生観など様々な観念と一緒になってしまっているというのもあるでしょう。
また、忙しすぎて考えている暇がないというのも、心身ともにハードな看護職としてあるあると言えます。
看護観を見つける方法
看護観の実態について解説をしてきました。以下では看護感を見つける方法について解説をします。
見つける方法については、大きく分けて以下の2つの観点で考えてみましょう。
- どんな看護をされたいのか
- どんな働き方をしたいのか
どんな看護をされたいのか考える
どのような看護をされたいのかというのは、看護師としてのスキルはもちろんのこと、看護師の性格や雰囲気、コミュニケーションなど細かな点を含めての話です。
大切なのは患者さんとして一線を引くのではなく、「自分ごと」で考えて落とし込むことです。
自分のなかで理想の看護像があるとしても、患者さん目線で見ると求めているものとの違いが出てくる場合があります。 患者さんの立場になって考えてみることで、本当に必要となることが見えやすくなり、看護観が明確になりやすいです。
客観視してみることで、看護観を上手くまとめることが可能になります。
どのような働き方をしたいのか考える
どのような働き方をしたいのかを考えるにあたり、以下2つの視点に分解して考えることをおすすめです。
- 自己実現
- 社会貢献
両者の違いは、看護を通じて「自分がこうなりたい」と考えるか、「誰かのためになりたい」と考えるかです。
「看護を通じて自身のキャリアや専門性を高めていき、自身の理想の働き方を追求したい」となれば前者ですし、「看護を通じて地域や社会の役に立てる人になりたい」と考えると後者です。
いずれにしても、上記を導くためには自身の価値観を振り返る自己分析は欠かせません。自身の体験や経験談を良い面悪い面含めて振り返り、自身の価値観に納得感と説得力を持たせるようにしましょう。
看護観が面接で聞かれる理由
看護観の意味に始まり、見つけ方について解説をしてきました。
では、なぜ面接で看護観について聞かれるのでしょうか。大きく分けて以下の2つの理由があります。
- 看護職への覚悟が見たいから
- 採用におけるミスマッチを防ぎたいから
以下で詳細を解説していきます。
看護職への覚悟が見たいから
まず面接を行うにあたり、面接官は応募者の情報はほとんど持っていません。履歴書など紙面での基本的な情報のみであり、当人の性格などはわからない状態でスタートします。その上で、応募書を篩にかける意味で看護観について質問を行います。
看護観を持っていることや、自身の看護観について説得力のある回答ができると、面接官は「看護についてちゃんと考えている」となるわけです。反対に答えられなかったり、答えに窮するようだと「本当に考えているの?」と疑問に思ってしまうことでしょう。
看護観を答える場合、自身の経験やエピソードを通じて「なぜこのように考えたか」を言えるまでしっかりと考え抜きましょう。
採用におけるミスマッチを防ぎたいから
看護職の仕事は一般的にも周知の通り、心身ともにハードです。
具体的には、夜勤があり、生活リズムへの負荷が高いです。また、患者さんや医者との板挟みで色々と言われたり、クレームを受けることもあるでしょう。さらに人間の「生と死」を間近に見る現場でもあり、慣れるまでは精神的にショックの大きい場面を見ることも多いのではないでしょうか。
だからこそ看護観の質問を通じて、看護への考えの深さを測るわけです。また、採用側としては折角お金をかけて採用する人間です。採用してすぐ辞めることを防ぐために、長く働いてくれそうな人を選ぶのは当然と言えます。
長く働いてくれる人を選ぶために、自身の考えをしっかり持つ人を好むのは、必然の流れとも言えるのではないでしょうか?
看護観を上手く伝えるコツ
「あなたの看護観を教えてください」この質問は採用試験の面接でよく聞かれる質問の一つです。
面接時に上手く伝えるためには、コツを押さえておくことが重要となります。
こちらでは、採用試験の面接で看護観を上手く伝える4つのポイントをご紹介します。
自分の考えを自分の言葉で伝える
「看護観」と調べると、多くの回答例がヒットします。しかし、他の人の回答をそのまま使うのではなく、自分の考えを述べることが望ましいです。
自分の考えをはっきり持っていないと、さらに深く質問されても上手く答えられません。
上手くまとまらないという場合は、まずはこれまでの経験や学びを書き出してみましょう。印象的なエピソードを元に、自分が看護をするうえで大切にしたいことや実現していきたいことが明確になります。
時間がかかっても、自分の言葉で伝えることが大切です!
過去の出来事に対して、なぜそのように行動したのか、なぜそう感じたのか自問自答していき納得できる回答を導き出しましょう。
話す順序に気をつける
面接の際に、上手く相手に看護観を伝えるには話す順序が重要となります。PREP法を用いて、話す内容を考えてみましょう!
PREP法とは、結論(Point)・理由(Reason)・実例や具体例(Example)・結論(Point)の頭文字を取ったもので、文章構成方法の一つです。
自分の看護観を述べ、次にその理由を述べます。その看護観を持つきっかけとなった出来事を話して、最後に結論で締めます。
いくら強い信念や思いを抱いていたとしても、話す順番が整理されていないと伝わりにくくなってしまいます。このPREP法を意識して話すことで、相手に伝わりやすい文章を構成することができます。
文章を作ることが苦手という方は、ぜひ参考にしてみてください。
志望先の理念に合わせて表現を変える
就職や転職活動をするにあたって、いくつか面接を受けるという方もいるでしょう。
全ての面接で同じ答え方をするのは適切ではありません。なぜなら、求める看護観が職場によって異なります。
看護師が活躍する職場は、病院だけでなく介護施設やクリニックなど多岐にわたり、それぞれでニーズが違います。そのため、志望先の理念を理解したうえで、表現を変えることもポイントのひとつです。
看護観自体を変える必要はありませんが、できるだけ理念と共通する部分を合わせるようにしましょう。
自分の看護観と合わないと感じる場合は、志望先を変更することも検討してみると良いでしょう。
先輩や指導教員にアドバイスをもらう
第三者の視点からアドバイスをもらうこともポイントのひとつです。
面接のための回答を自分なりにまとめてみて、先輩や指導教員に一度チェックしてもらうと良いでしょう。
先輩や指導教員にアドバイスをもらうことは、有効な面接対策になります。特に、新卒者の場合は面接の経験が少ない分、わからないことも多いでしょう。
本番である採用面接の前に、チェックを受けることでより伝わりやすい内容にまとめることができます。
自分の言葉が上手くまとめられているか、志望先の理念とマッチしているかを確認してもらいましょう。
「あなたの看護観は?」面接の答え方
看護観はそれぞれの立場によっても異なります。
採用試験の面接でも新卒者と転職者では答え方が変化します!
こちらでは、新卒者と転職者それぞれの面接での答え方の例をご紹介します。
新卒者の場合
私は、自分の力を過信せずに、常に学び続けることをモットーに看護の仕事に励みたいと考えています。以前、実習先の先輩看護師の方に、行動計画の内容が患者様の疾病や状態を理解したものではないと指摘をされたことがあります。
当初は充分に調べて作成したものだと思っていましたが、先輩からの指摘を受け、まだまだ勉強不足であると実感しました。
患者様に適切で上質な看護を提供するためには、「これぐらいで充分だろう」という気持ちではなく、「もっと必要なこと、できることはないか」を考えることが重要であると感じました。
看護師として経験を重ねるうえで、過信をせずに看護の知識や技術向上を心がけて、信頼される看護師を目指したいです。
転職者の場合
私は、患者様への適切な処置対応だけでなく、精神的なケアを含めて看護にあたりたいと考えています。
以前、がんで闘病中の患者様が治療に対する不安を口にされていたことがありました。そのとき、私は患者様の不安が少しでも取り除けたらという思いで、お声がけを続けました。次第に患者様の表情が明るくなり、治療に対しても前向きなお気持ちになられたようです。
この出来事をきっかけに、看護師は処置だけでなく患者様のお気持ちに寄り添うことで、不安を取り除くことができる存在であると再認識しました。
日々のコミュニケーションを大切にし、安心して治療を受けられる環境づくりを心がけていきたいと思います。
自分なりの言葉でまとめ、面接に備えておこう
今回は看護観を中心に解説をしてきました。看護観は漠然としており、いざとなるとなかなか浮かばないものです。
また、実際働くにあたり毎日意識できるものでもないのかもしれません。しかし看護観を持つことで、迷った時や不安な際に自分の中での「軸」として機能してくれます。
まずは、これまでのエピソードを振り返り、自分の考えを自分の言葉に書き出してみましょう!
日頃働いている中では難しいと思うので、少し時間がある際や、業務と離れた時間で考えてみてはいかがでしょうか。