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介護費用が払えないとどうなる?介護にかかる費用と、払えないときの対処法
超高齢社会を突き進む日本において、介護は深刻な社会問題のひとつです。
そんな中、自分の両親が高齢化し、介護施設への入居を検討している方もいるのではないでしょうか。介護施設へ入居するためにはそれなりの費用がかかるため、途中で費用が払えなくなるという事態は、誰にでも起こりうることです。
介護施設の費用を支払えないときの対処法もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
介護施設を利用するための費用とは
実際に介護施設を利用するとなると、いったいどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
ここでは費用の相場や、費用は誰が負担するのかなど解説します。
万が一、介護施設への支払いを滞納してしまった場合の対処法についてもお伝えしますので、参考にしてみてください。
介護にかかる費用相場
例えば、介護施設利用料や在宅介護サービス利用料のほかにも、介護用ベッドの購入、おむつ代や介護食代などが含まれます。
生命保険文化センターが行った調査によると、介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用は平均8.3万円となっています。
また、介護を行った期間は平均5年1カ月となっています。これらのデータをもとに単純計算すると、介護費用の平均総額は、約580万円にも上ります。これらの数値はあくまで平均であり、介護を必要とする方の状態によって、費用は増減する可能性があります。
出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
介護にかかる費用は誰が払う?
こちらの2パターンがあります。
- 親にかかる介護費用は親自身が負担する場合
- 子どもが代わりに負担する場合
親自身が負担する場合は、収入、年金、貯蓄、資産などを充てます。親に介護費用を払えるだけの貯蓄がない場合、子どもが支払うことになります。しかし、先に述べたように、介護のための費用は月々の平均が8.3万円であるため、一人暮らしの1人分ほどの費用がかかります。それを子育て世代である30〜40代の子どもが支払うことは、負担が大きいでしょう。
介護にかかる費用は、あくまで親自身のお金で払うことを前提にし、親が受け取ることのできる年金額についても把握しておくことが大切です。
支払いを滞納するとどうなる?
介護施設への支払いを滞納した場合、即時退去を求められるということはありません。施設にもよりますが、1~2カ月の猶予が認められていることが一般的です。
入居している本人が支払えない場合、身元引受人(連帯保証人)に請求されます。連帯保証人に請求しても支払われない場合は、強制的に退去を求められる可能性が高くなります。
支払いができない状況になってしまったときは、すぐに入居している施設のケアマネジャーや生活相談員に相談をしましょう。
費用を抑えたいなら公的施設がおすすめ
介護施設には大きく分けて、公的施設と民間施設があります。
- 民間施設
- 民間企業が運営しているため費用が高くなりますが、サービスが充実していることが特徴です。
- 公的施設
- 国や地方自治体、社会福祉法人、医療法人などが運営しているため、比較的、利用料が安いというメリットがあります。
ここでは代表的な4種類の公的施設について、それぞれの特徴をお伝えします。
①特別養護老人ホーム
在宅で介護を受けることが困難で、要介護3以上の高齢者が入居できる施設です。安定した介護サービスを提供することを最優先としており、原則として終身利用も可能です。
ただし、特別養護老人ホームは人気が高い傾向にあります。地域によっては入所まで数年かかる場合も…
②介護老人保健施設
原則として要介護1以上の高齢者の自立を支援し、在宅復帰を目指すための施設です。医師や看護師による医療ケアのほか、作業療法士や理学療法士によるリハビリテーション、合わせて日常サービスを受けられます。
在宅復帰を目指す医療ケアとリハビリが中心の施設であるため、入所期間は3~6ヶ月と限定されています。
③介護医療院
長期的な医療ケアが必要な、要介護1以上の高齢者を対象に、日常生活の介助はもちろん、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」などの医療機能を提供できる施設です。
介護医療院は、2024年に廃止することが決定している「介護療養型医療施設」の主な転換先として、新しく創設されました。
④ケアハウス
自立して生活することが難しい60歳以上の高齢者を対象にした介護施設です。軽費老人ホームの一種であり、「軽費老人ホームC型」と呼ばれることもあります。
ケアハウスには「自立型」と「介護型」の2種類があり、より一般的な自立型ケアハウスでは、食事や掃除、洗濯などの生活支援のサービスが受けられます。
介護施設の費用が払えないときの対処法
「介護施設を利用したいけど、利用料が支払えない」「現在、入居している介護施設からもっと費用が抑えられる施設に移りたい」と思ったとき、どのような基準で介護施設を選べばいいのでしょうか。
ここでは、費用が安い介護施設の選び方や、公的な補助制度についてお伝えします。
費用がより安い施設を選ぶ
現在、入居している介護施設への支払いが難しいと分かったとき、利用料がより安い施設を探して転居するという選択肢があります。
月額の利用料が比較的抑えられる施設の条件として、下記のような項目があります。
- 築年数が古い
- 駅から遠い
- 地方にある
- 個室ではなく相部屋
介護施設探しも住まい探しと同様、立地条件や設備によって利用料は変わってきますので、これらの条件を参考に、今一度探してみるといいでしょう。
補助制度を活用する
公的な補助制度に利用できるものがないか、チェックしてみましょう。
生活保護の受給
年金だけで介護施設の費用が賄えず、家族も支払うことができない場合は、生活保護を受けることで介護施設に入居できるケースもあります。
そして、生活保護を受けていても介護施設に入居することは可能で、介護にかかる費用も生活保護の扶養対象となります。生活保護を受給し、介護施設への入居を希望している場合は、生活保護受給を担当している自治体のケースワーカーに相談してみましょう。
高額介護サービス費制度
介護保険が適用されるサービスを利用すると、1〜3割の自己負担に抑えられますが、それでも、支払いが積み重なると気づけば高額に。そんなとき、介護サービスを利用して支払った自己負担が高額になり、上限額を超えた分が返還される制度です。
高額介護サービス費制度では、所得などの条件によって上限額が異なります。通常、居住している自治体から支給申請書が送られてきますので、申請書が届いたら、忘れないうちに申請しておきましょう。
介護保険料の減免制度
40歳になると納付義務が発生する介護保険料ですが、一定の条件で減免制度を受けることができます。
前述した3つの制度のほかにも、さまざまな制度が設けられていますので積極的に情報収集をすることが大切です。
在宅介護も検討する
介護施設へ入居するための費用が支払えない場合、在宅介護ができないかを考えてみましょう。
介護は1人で抱え込むと精神的にも肉体的にも負担になりやすいですが、家族で分担して行うことができれば、家で介護を続けられるかもしれません。また、現在は在宅介護のニーズの高まりに応える形で、ホームヘルパーによる在宅介護や、日帰りで通えるデイサービスなど充実しています。
これらのサービスをうまく活用し、家族の負担を減らしながら介護できそうであれば、在宅介護を検討してみてもいいでしょう。
ライフプランに合わせて入居を検討しよう
介護施設に入居後に経済状況が変化する可能性も十分考えられます。その場合には、速やかに相談し、移転先を検討するなど、落ち着いて対応を行うことが必要です。また公的制度を利用するための情報収集を行うことも重要です。
いつどのタイミングで介護に直面するか、予測は難しいものです。そのため、介護施設への入居を検討しているなら、あらかじめ年金や貯蓄額などを確認し、家族で話し合う機会を設けるなど、しっかりライフプランを立てておくことが大切です。