【2024年版】短期入所生活介護と短期入所療養介護 (ショートステイ)の介護報酬改定

2024年度は介護報酬改定がおこなわれ、短期 入所(ショートステイ)の加算や算定要件も見直されました。しかし短期入所は生活介護と療養介護の2種類がありわかりづらいと感じている方もいるのではないでしょうか。

今回では、短期入所生活介護と短期入所療養介護の2つを分けて紹介します。

それぞれの共通点と長期利用との異なる部分がわかるので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

短期入所生活介護と短期入所療養介護 (ショートステイ)の介護報酬改定の共通点

短期入所生活介護と短期入所療養介護には介護報酬に共通点があります。

ここでは2024年に改定された、2つの介護サービスの同じ介護報酬を紹介します。介護保険の最新情報がわかるのでぜひ参考にしてみてください。

基本報酬

短期入所生活介護の改定前と改定後の介護報酬の一覧は以下のとおりです。

【単独型・従来型個室】

要支援1: 474単位→479単位
要支援2:2589単位→596単位
要介護1: 638単位→ 645単位
要介護2:707単位→715単位
要介護3:778単位→787単位
要介護4:847単位→856単位
要介護5:916単位→926単位

【併設型・従来型個室】

要支援1:446単位→451単位
要支援2:555単位→561単位
要介護1:596単位→603単位
要介護2:665単位→672単位
要介護3:737単位→745単位
要介護4:806単位→815単位
要介護5:874単位→884単位

【単独型・ユニット型個室】

要支援1:555単位→561単位
要支援2:674単位→681単位
要介護1:738単位→746単位
要介護2:806単位→815単位
要介護3:881単位→891単位
要介護4:949単位→959単位
要介護5:1,017単位→1,028単位

【併設型・ユニット型個室】

要支援1: 523単位→529単位
要支援2:649単位→656単位
要介護1:696単位→704単位
要介護2:764単位→772単位
要介護3:838単位→847単位
要介護4:908単位→918単位
要介護5:976単位→987単位

おおよそ10単位近く上がっています。

短期入所療養介護の改定前と改定後の単位数は以下のとおりです。

【介護老人保健施設(介護予防)短期入所療養介護(Ⅰ)(iii)(多床室)(基本型)】

要支援1:610単位→613単位
要支援2:768単位→774単位
要介護1:827単位→830単位
要介護2:876単位→880単位
要介護3:939単位→944単位
要介護4:991単位→997単位
要介護5:1,045単位→1,052単位

【介護老人保健施設(介護予防)短期入所療養介護(Ⅰ)(iv)(多床室)(在宅強化型)】

要支援1: 658単位→672単位
要支援2:817単位→834単位
要介護1:875単位→902単位
要介護2:951単位→979単位
要介護3:1,014単位→1,044単位
要介護4:1,071単位→1,102単位
要介護5:1,129単位→1,161単位


短期入所療養介護の介護報酬は、20〜40単位近く上がっているので職員の収入アップに役立ちます。

ただしロングショートの利用者が、連続30日を超えてサービスを使い続けると算定が適用できなくなりました。

施設入所と土応用の利用形態になっていることを踏まえ、基本報酬を特養の水準に合わせる形で適正化しています。自費の宿泊を挟んで利用を連続していく場合は、31日目から1日30単位の減算が適用されます。

厚生労働省は今回、61日を超えるとる更に低い単位数を新設しています。

業務継続計画(BCP)未実施減算

業務継続計画(BCP)とは、自然災害や火災などの非常事態の際にも事業を継続していくための方法が記載されている計画書です。

令和6年の3月以前まではBCPの作成が努力義務でしたが、厚生労働省では令和6年4月以降からは完全義務化しています。BCPを作成していない場合、1%の減算がされますが事業所にとってはさらに重い措置が下されるケースも少なくありません。

近年ではコロナウィルスが流行しましたが、災害や感染症が発生した際にサービス提供を停止すると、利用者の生命維持が脅かされます。そのためBCPを策定していない施設は、クラスターの発生や死亡事故などに対応していないとされ、安全配慮義務違反となり損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。

BCPを作成していない事業所は早急に対応する必要があります。

高齢者虐待防止の推進

通所介護では令和6年3月以前まで高齢者虐待防止措置は努力義務でしたが、厚生労働省では今回の改定で完全義務化し、未実施の場合1%の減算対象となります。

高齢者虐待防止措置を実施している基準は以下のとおりです。

  • 対策検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
  • 虐待防止指針の整備
  • 虐待防止研修の定期実施
  • 虐待防止担当者配置

虐待防止に関わる職員の配置やルール作りが必要なので、提供している職員のケアやサービスを見直す必要があります。

身体的拘束等の適正化の推進

通所介護における身体的拘束の指定基準や文言は今までありませんでした。

しかし厚生労働省では今回の改定により、「身体拘束の必要性が生じる可能性がある」といった文面が掲載されます。

身体拘束による減算はなく、運営基準への明記にとどまっています。

身体拘束が認められる状況は以下のとおりです。

  • 利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限る
  • 身体的拘束等を行う場合には理由と実施状況を記録する

緊急性がある状況のみ身体拘束が認められますが、その場合は上記のルールに該当する必要があります。

口腔管理に係る連携の強化

口腔管理連携強化加算が新設されました。単位数は以下のとおりです。

【単位数】

50単位/回
※1ヶ月に1回限り算定可能

介護職員が利用者の口腔状態を確認し評価を行い、歯科専門職やケアマネジャーに情報を提供をすることで算定できる加算です。介護職と他職種の口腔管理の連携強化が目的です。

ユニットケア施設管理者研修の努力義務化

ユニットケアの質向上を目指すため、個室ユニット型施設の管理者は、ユニットケア施設管理研修の受講が求められます。研修受講は努力義務です。

テレワークの取扱い

個人情報を適切に管理や情報共有ができることが前提であれば、テレワークを実施することで加算を算定できます。
職場環境の改善や業務負担の軽減が目的です。

生活相談員の業務をテレワークで対応する施設が増えるのではないでしょうか。

職員の負担軽減や人材を確保したい事業所では、テレワークを利用するのがおすすめです。

テレワークの取り扱いは、居宅介護支援にも適用しています。そのため、訪問介護事業所でも実施できます。

生産性向上推進体制加算の新設

施設の生産性を高める観点から、生産性向上推進体制加算が新設されました。

【加算名】

生産性向上推進体制加算(Ⅰ):100単位/月
生産性向上推進体制加算(Ⅱ):10単位/月

【算定要件】

・生産性向上推進体制加算(Ⅰ)
加算(Ⅱ)の要件を満たしている
テクノロジー機器を複数導入している

・生産性向上推進体制加算(Ⅱ)
利用者の安全や介護サービスの質の確保、職員の負担軽減に向けた委員会の開催や安全対策を実施する
1つ以上のテクノロジー機器を導入する

テクノロジー機器とは以下のとおりです。

・ベッドセンサー
・インカム
・介護記録ソフト

生産性向上推進体制加算を取得するには、見守り機器や職員間の連絡調整や業務効率に役立つICT機器を導入している必要があります。

ベッドセンサーのような利用者のプライバシーに影響する機器を導入する際は、利用者の意向や情報を確認する必要があるので注意しましょう。

ユニット間の勤務体制に係る取扱いの明確化

ユニット型施設では、日中の職員は1ユニットに1人配置とすることになっていました。しかし新規採用職員の指導に当たる場合や、夜間に担当する他ユニットの入所者の生活歴を把握する目的で、ユニットを超えた勤務を含むケアをする場面があります。

今まではそのようなケースが起きた場合、柔軟なサービス提供ができませんでしたが、今回の改定により職員の所属ユニットを明確にしたうえであれば、ユニット間での勤務が可能です。

なお、基準省令及び解釈通知の規定には変更がないため、従来どおりの職員配置は必要です。

処遇改善加算の一本化

今までの処遇改善加算は、介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加処遇改善加算の3本柱でした。

今回の介護報酬改定により、介護職員等処遇改善加算との名称で一本化されます。

事業者の事務負担軽減や利用者からの理解の得やすさ、そして事業者として柔軟な事業運営をしやすくするのが目的です。介護職員等処遇改善加算は4区分あり、厚生労働省の資料をもとに単位数や算定要件を消化します。

【短期入所生活介護の単位数】

Ⅰ: 14.0%
Ⅱ :13.6%
Ⅲ :11.3%
Ⅳ :9.0%

【療養介護の単位数】

Ⅰ:7.5%
Ⅱ:7.1%
Ⅲ:5.4%
Ⅳ:4.4%

【算定要件】

◾️加算Ⅰ
・新加算Ⅱに加え、経験技能のある介護職員を事業所内で一定割合以上配置していること(訪問介護の場合、介護福祉士30%以上)

◾️新加算Ⅱ
・Ⅲに加え以下の要件に加え、改善後の賃金年金額440万円以上が一人以上
・職場環境の更なる改善、見える化

◾️新加算Ⅲ
・Ⅳに加え以下の要件に加え、資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備

◾️新加算Ⅳ
・新加算Ⅳの1/2(7.2%)以上の月額で配分
・職場環境の見直し(職場環境等要件)
・賃金体系等の整備及び研修の実施等

参考:厚生労働省

国家資格を持つ介護職の配置や職位に準じた昇給の仕組みを実践している施設が評価されます。

短期入所生活介護のみの改定内容

短期入所生活介護のみに該当する改定内容を紹介します。

看取り対応体制の強化

看取り対応の強化をするため、連携体制加算が見直されました。対象者が以下のように変更されます。

【看取り対応体制の対象者】

・医師が一般に認められる医学的知見に基づき回復の見込みがないと判断した者
・看取り期における対応方針に基づき、利用者の状況や家族の求めなどに応じ、介護職員、看護職員などの介護記録などの利用者に関する記録を活用し行われるサービスについての説明を受け、同意したうえでサービスを受けている者

医学的知見での判断を受け、利用者やその家族の同意を得た人が対象者です。また看取り連携体制加算の単位数は据え置きです。

【単位数】

看取り連携体制加算:単位数64単位/日

看取り連携体制加算を取得する際には死亡日及び死亡日以前30日以下において1回に限り、また死亡日及び死亡日以前30日以下について7日を限度として算定することに注意しましょう。

短期入所療養介護のみの改定内容

短期入所療養介護のみの改定内容を紹介します。生活介護と区別して見たい方には役立ちますのでぜひ参考にしてみてください。

総合医学管理加算の見直し

医療ニーズのある利用者の受け入れを強化するため、前回の改定により総合医学管理加算が新設されました。

今回の改定により、入所期間や緊急ショート以外も対象となります。単位数と算定要件は以下のとおりです。

【単位数】

総合医学管理加算
275単位/日

【算定要件】

・居宅サービス計画において計画的に行うこととなっている指定短期入所療養介護も治療管理を目的とするのは同加算の対象とする
・算定日数について7日を限度としているところ、10日間を限度とする

今までは算定に必要な入所期間が7日間でしたが、今後は10日間に伸びます。

介護老人保健施設等における見守り機器等を導入した場合の夜間における人員配置基準の緩和

見守り機器などを導入している介護老人保健施設の人員配置基準が見直されました。現行では2人以上でしたが、現在は1.6人以上となっています。

今回の人員が認められるには、以下の算定要件を満たす必要があります。

  • 施設内の全床に見守り支援機器を導入している
  • 夜勤職員全員がインカムなどのICT機器を装着
  • 安全体制確保の要件を満たしている

職員の休憩や業務の効率化などが含まれている安全体制確保の要件を満たしている必要があります。

環境改善に充てられる費用に応じて対応しましょう。

短期入所は基本報酬が大幅に引き上がる

短期入所生活介護と短期入所療養介護の基本報酬は大幅に引き上がります。そのためショートステイの施設では、職員の収入が上がっていくと予想できます。

BCPの作成や見守り機器などの導入など、新しく進めることもあるでしょう。しかし今回の改定内容を実施することで、職員の満足度も上がっていくのでぜひ取り組んでみてください。

この記事を書いた人

山田亮太のアバター 山田亮太 介護福祉士

2016年から特別養護老人ホームに勤務。日常生活支援から身体介護を経験し、リーダー業務にも就く。2019年に介護福祉士を取得し、2020年に認知症実践者研修を修了。

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