【令和6年度】介護予防・日常生活支援総合事業の介護報酬改定について

介護予防・日常生活支援総合事業は市町村が中心となり、地域が抱える高齢者やその家族の悩みを解決する介護サービスです。

通所介護と訪問介護が介護保険給付から切り離されると同時に、介護予防事業に統合される形で発足しました。総合事業は住民の主体的な参加を促すため、報酬単価や基準を地域で自由に設定できます。そのため、介護報酬改定がどうなっているかわからないと悩んでいる方もいるでしょう。

今回では、総合事業の介護報酬改定や現状の問題点を解説します。「総合事業で新設・廃止された報酬改定を知りたい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

【前提】総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の介護報酬改定やサービスは市町村によって異なる

総合事業の介護報酬改定は市町村によって異なります。

なぜなら、市町村の多様なニーズに柔軟に対応することを目的に始まった介護サービスだからです。

総合事業では介護報酬の単価やサービスは全国一律ではなく、市区町村ごとに決定できます。各市町村が地域の実情に合わせた基準や単価設定をするため、市町村によって改定内容が異なるのです。

総合事業の介護報酬改定が気になる方は、お住まいの市区町村のホームページか厚生労働省が発表しているサービスコード表をチェックしましょう。

介護予防・日常生活支援総合事業費単位数サービスコード表(案)(令和6年4月施行版)

【2024年最新】総合事業の介護報酬改定はどうなった?

総合事業で新設・廃止された改定内容を紹介します。先述しましたが、細かい単価やサービス内容は地域によって異なるので注意しましょう。

一体的サービス提供加算の新設

一体サービス提供加算とは、運動器機能や栄養改善、口腔機能改善のサービスを提供することで算定できる加算です。

今回の改定で運動機能向上加算や選択的サービス複数実施加算が廃止されたため、それを補う加算として新設されました。単位数や算定要件は以下のとおりです。

【単位数】

480単位/月

【算定要件】

・栄養改善サービス及び口腔機能向上サービスを実施していること。
・利用者がデイサービスを利用した日に、当該利用者に対し、栄養改善サービス又は口腔機能向上サービスのうちいずれかのサービスを行う日を1月につき2回以上設けていること。
・栄養改善加算、口腔機能向上加算を算定していないこと。

栄養改善サービスとは、栄養状態が良くない利用者に対して栄養管理や相談を通して支援することです。

管理栄養士と連携し、食事量や食事内容を検討する必要があります。口腔機能向上サービスとは、利用者の口腔機能改善につながるケアです。口腔・義歯装着の指導や実施、歯科衛生士による教育や相談などを指します。

口腔機能向上加算の見直し

通所リハビリテーション(デイケア)での口腔機能改善加算が見直されました。(Ⅰ)は変更はありませんが、(Ⅱ)がイ・ロに分かれました。

【口腔機能向上加算】

【口腔機能向上加算】
口腔機能向上加算(Ⅰ):150単位/回(変更なし)
口腔機能向上加算(Ⅱ)イ:155単位/回
口腔機能向上加算(Ⅱ)ロ:160単位/回

口腔機能向上加算(Ⅱ)のイとロの違いは、リハビリテーションマネジメント加算(ハ)を算定しているかどうかです。

  • リハビリテーションマネジメント加算(ハ)を算定している場合
    • 口腔機能向上加算(Ⅱ)イ のみ算定可能
  • リハビリテーションマネジメント加算(ハ)を算定していない場合
    • 口腔機能向上加算(Ⅰ)か口腔機能向上加算(Ⅱ)ロ を算定可能

なお口腔機能向上加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)の算定要件に加え、LIFEへの情報提出が必要です。

運動器機能向上加算の廃止

運動器機能向上加算とは、要支援者を対象に介護予防サービスを提供した場合に算定できる加算で、2024年度の改定で廃止されました。

単位数は事業所によって異なりますが、1人あたり月225単位を算定できます。高齢者が住み慣れた地域で日常生活を送れるように、要介護状態にならず自立した生活を送れるような支援が目的です。

運動器機能向上加算が廃止されたことで、通所介護の基本報酬が増額されました!

【1ヵ月あたりの単位数】

要支援1・事業対象者:1672単位→1798単位
要支援2・事業対象者:3428単位→3621単位

【1回あたりの単位数】

要支援1・事業対象者(月1〜4回):284単位→436単位
要支援2・事業対象者(月1〜8回):395単位→447単位

運動器機能向上加算で取得できる単位数が基本報酬に包括されたかたちです。

事業所評価加算の廃止

今回の改定により、通所サービスの事業所評価加算が廃止されました。

事業所評価加算とは、利用者の要支援状態が維持・改善された割合に応じて算定される加算です。

廃止された背景は、算定率の低さや介護認定期間の長さが原因に挙げられています。単位数は事業所によって異なりますが、1人につき月120単位なので決して高い加算ではありません。また、要介護認定の期間は現在最長で48ヵ月かかります。

申請してから認められるまで時間が長いため、事業所に合致した加算ではないと評価され廃止されています。

要支援・介護の実情や問題点

総合事業について知るには、要支援・要介護の実態や地域介護の問題点を把握する必要があります。そこでここでは、以下の内容を紹介します。

  • 要介護1・2も総合事業に含まれる可能性がある
  • 総合事業は提供サービスや報酬単価にばらつきが起きる

報酬改定の内容にも関わるのでぜひ参考にしてみてください。

要介護1・2も総合事業に含まれる可能性がある

総合事業は要支援者を対象にしたサービスですが、今後は要介護1・2も総合事業に含まれるとの議論が挙がっています。

令和5年の厚生労働省の報告によると、要支援1・2の人数は197万人、要介護は262万人となっています。

要介護者の人数は今後も増え続けると予想されているため、新たなニーズの獲得や地域介護の推進が目的です。しかし、要介護1・2の方が総合事業へ移管されると、介護保険事業所の報酬単価が下がります。

介護保険事業所にとっては運営に影響するため、総合事業から撤退する可能性もあるでしょう。その結果、要支援1・2の方々のケアが行き届かなくなる可能性が出てきます。

総合事業は提供サービスや報酬単価にばらつきが起きる

総合事業は国が運営する介護・予防給付とは異なり、市区町村によって運営されているサービスです。そのため、地域ごとに介護サービスに差が生まれたり、報酬単価にばらつきが発生したりします。

市町村の境界が道路一本で分かれている場合、向かいに住んでいる住民で受けられるサービスに差が生まれます。また、事業所でも報酬単価のばらつきが起こるため、提供できるサービスが不安定になってしまいます。

運営方針の特色や独自性に悩む事業所も少なくありません。

長期目線で総合事業の発展を見守る必要がある

総合事業は要支援者を対象にしたサービスです。介護負担が増えないためにも、総合事業が充実することは要介護者の抑制につながります。日本の健康長寿や介護負担の軽減に貢献するのも事実です。まだ課題はあるものの、長期的な視点で総合事業の発展を見守っていきましょう。

この記事を書いた人

山田亮太のアバター 山田亮太 介護福祉士

2016年から特別養護老人ホームに勤務。日常生活支援から身体介護を経験し、リーダー業務にも就く。2019年に介護福祉士を取得し、2020年に認知症実践者研修を修了。

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