介護報酬改定は何年ごとに実施?2024年の制度改正で議論になったポイントも解説

介護報酬改定は3年に1度見直されていますが、その理由や議論のポイントを知りたい方もいるでしょう。

今回では、介護報酬改定が行われる理由や2024年に議論になった点を紹介します。

今回の改定で見送りになった議論や今後決定される可能性のある施策がわかります。給与にかかわる内容もあるので、管理職はもちろん、現場職員の方もぜひ参考にしてみてください。

目次

介護報酬改定とは基礎知識や改定頻度を解説

ここでは介護報酬改定のポイントを紹介します。 介護報酬や診療報酬がなぜ改定されるのかがわかるので、ぜひ参考にしてみてください。

介護報酬改定とは

介護報酬改定とは、介護サービスを提供した場合に支払われる介護報酬を見直すことを指します。

介護報酬は利用者負担が2〜3割、残りが介護保険1号・2号保険料と都道府県や市町村などの公費です。 保険者や利用者、サービス提供者といった社会情勢に影響する要素で成り立っています。

内閣府の調査によると、65歳以上の人口は3,589万人となり、日本の総人口の28.5%が高齢者となっています。

高齢者の数が増えると、医療や福祉の需要が高まり保険料も上がります。 介護報酬の制度を変更しないと、現役世代に負担をかけてしまったり利用者負担額が増加したりしてしまいます。

国民に負担を負わせ続けるような状況を避けるため、介護報酬は定期的に見直されています。

介護報酬改定は3年ごとに行われる

介護報酬は社会や時代の変化に合わせて3年に1度改定される制度です。 厚生労働大臣が審議会(介護給付費分科会)を開催し、大学教授や独立行政法人のグループリーダーなどの専門家により話し合いが行われます。

約3年間にわたり議会が開かれ、基本報酬の引き上げや加算の新設・廃止などを決定していきます。 議事録や資料は厚生労働省のホームページから見られるので、気になる方はぜひ確認してみてください。

診療報酬改定は2年ごとに行われる

診療報酬改定とは、医療行為を受けた際に医療機関に支払われる「診療報酬」を見直すことです。

日本では全国民に加入が義務付けられている公的医療保険制度があります。 公的医療保険制度があることで、保険証を提示すれば誰でも必要な診察や治療、処方などの医療行為を受けることが可能です。

公的医療保険制度を利用して医療機関を受診した場合の医療費を診療報酬と呼びます。原則3割は患者が負担し、残りは加入している医療保険者が支払う仕組みです。

診療報酬も国民が負担しているため、内容や点数を2年に1回見直します。 なお、2024年は介護報酬と診療報酬、障害福祉サービス等報酬の改定が重なった年です。

2024年の介護報酬改定で話題になったポイント

2024年の介護報酬改定でどのような内容が決まったのか気になる方もいるでしょう。

ここでは、介護報酬改定で話題になったポイントを厳選して紹介します。

要介護1・2の介護保険外しを見送り

社会保障審議会介護保険部会では、要介護1・2を介護保険から外し、「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行するといった議論が挙がっていました。介護予防・日常生活支援総合事業では、要介護1・2の比較的自立している方を対象に介護サービスを提供します。

市町村によって運営されているため、介護事業とは異なり有資格者の配置基準がありません。

介護福祉士や看護師のような専門職が必要なく、ボランティアスタッフで運営できます。 日本では年々高齢者が増えており、それに合わせて介護費も増加しています。 そこで総合事業へと移行し、介護サービスを介護費で対応しない意見が挙がっていましたが、今回の改定では見送られています。

ケアプランの有料化を見送り

ケアプランの有料化も今回の審議会では見送られています。 財務省によれば他の介護サービスが定着してきている中、「ケアプランの作成も利用者負担を導入することは当然」との見解からケアプランの有料化が検討されていました。

現場からは「利用者・家族の意向を反映する圧力が強まり、ケアマネジメントの中立性が失われる」「ケアマネ業務が多忙な中、自己負担化によるプレッシャーも高まる」との反対意見が挙がり、今回の改定では見送りに至っています。

厚生労働省では2027年の制度改正までに結論を出す方向性となっています。

利用者負担引き上げを見送り

今回の改定では、利用者負担引き上げは見送りとなっています。

介護サービスの利用者負担額は、所得に応じて現在1〜3割に設定されていますが、現在介護サービスを利用している9割の方が1割負担です。 そのため財務省は「介護サービスの利用者負担額を原則2割に上げる」と提言しました。

「高齢者の負担が増える」「サービス利用を控える高齢者が増え、早期のケアマネジメントができない」との反対意見が挙がり、次の夏までの見送りとなっています。

通所+訪問介護サービスの見送り

在宅支援の人材不足や介護ニーズの高まりを受け、訪問介護と通所介護をまとめたサービスを新設する構想が上がっていました。

既存の通所介護・デイサービスの事業所が訪問介護サービスを提供できるようになるイメージです。 この2つを組み合わせた新たなサービスを類型に定めて2024年度から介護保険に創設する予定となっていました。

事業所側からは「サービスが複雑化する」「内容が不透明」などの声が挙がり、今回の改定では見送られています。

現場職員に影響を与える介護報酬改定の論点

介護報酬の改定は、給与や待遇にも影響するため、現場で働いている方も気になっている方が多いのではないでしょうか。

そこでここでは、現場職員に直接影響を与える介護報酬改定の論点を4つ紹介します。介護職員の収入にかかわるので、ぜひ読み進めてみてください。

介護職員の人員配置の緩和

介護職員の人員配置基準の緩和が検討されています。介護施設では現在、入居者3人に対して職員1人の人員配置基準を設けていますが、今後は「4人に1人」に変更する動きがあります。

「3人に1人でもきついのに4人に1人は無理」といった現場からの声も挙がっています。そのため、今回の改定ではICTや見守りセンサーなどを活用することで人員緩和を期待する結果となっています。テクノロジーの活用を推進するため、「生産性向上推進体制加算」も新設されています。

人員配置基準は3対1のままですが、介護ロボットやICTの活用により生産性を高めることで、3.3対1まで配置基準を緩和するようです。

特養の入所要件を要介護1からに検討

特養の入所要件は要介護3からとなっていますが、今後は要介護1以上にする案が検討されています。特養の待機者が減少傾向にあり、経営状況が悪化している施設が増加しているのが主な理由です。

令和5年の東京都社会福祉協議会によると、前年度の待機者数は52,991人となっており、前年比では31.4%ほど減少している結果となっています。

回答施設の82.9%は、入所申込者には「医療ニーズが高い方」が増加しているようです。同調査では92.2%の施設が入所に至らない理由に、「医療依存度の高い方が多い」と回答しています。

そのため、医療依存度の低い要介護1の方を入所させることで、特養の利用者が増えると予想し、今回の改定で議論に挙がりました。しかし、2024年の介護報酬改定では見送りとなっています。

処遇改善加算の一本化

処遇改善加算は現在、処遇改善加算と特定処遇改善加算、ベースアップ加算の3つで成り立っています。しかし、2024年の改定では一本化され、加算率が引き上がります。

介護職員の給与アップや書類業務の煩雑さの改善が見込めます。事業所側は新設された加算や区分などを確認しておきましょう。

介護助手の採用

審議会では介護助手の採用も検討しています。介護助手とは、排泄介助や食事介助など利用者の身体に触れる介護にはかかわらず、介護職をサポートする職種です。食事の配膳や清掃、シーツ交換など間接的な業務も担当していることが多い傾向です。

今回の改定で職員の人員配置基準が緩和されたため、介護助手制度が検討されています。

介護報酬改定は3年に1度行われる

介護報酬は利用者負担額や介護保険のような公費でまかなわれています。そのため、社会情勢により影響を受けることから、3年に1度改定が行われています。介護報酬改定により、現場職員の給与や職場環境に影響を与える場合もあるでしょう。そのため、カイテクでは介護報酬改定に関する情報を引き続き紹介していきます。

この記事を書いた人

山田亮太のアバター 山田亮太 介護福祉士

2016年から特別養護老人ホームに勤務。日常生活支援から身体介護を経験し、リーダー業務にも就く。2019年に介護福祉士を取得し、2020年に認知症実践者研修を修了。

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