【2024年度対応:介護報酬改定】認知症対応型共同生活介護(グループホーム)におけるの内容

2024年は介護報酬改定がおこなわれた年です。認知症の方を対象として、少人数で共同生活を送る施設「グループホーム」でも基本報酬の見直しや加算の新設が実施されました。そのためより詳しく知りたい方は多いでしょう。

今回では、グループホームにおける介護報酬改定の内容を紹介します。

具体的な単位数や新加算の算定要件がわかるので、「収入・費用の変化が気になる」「施設側における体制の整える必要性の有無を知りたい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

【2024年版】認知症対応型共同生活介護(グループホーム)における介護報酬改定の内容

2024年に改定されたグループホームにおける介護報酬改定の内容を紹介します。

基本報酬

認知症対応型共同生活介護の基本報酬の単位数は以下のとおりです。

【入居の場合】

・1ユニットの場合
要支援2:760単位→761単位
要介護1: 764単位→765単位
要介護2:800単位→801単位
要介護3: 823単位→824単位
要介護4:840単位→841単位
要介護5:858単位→859単位

・2ユニット以上の場合
要支援2 748単位 749単位
要介護1 752単位 753単位
要介護2 787単位 788単位
要介護3 811単位 812単位
要介護4 827単位 828単位
要介護5 844単位 845単位

【短期利用の場合】

・1ユニットの場合
要支援2: 788単位→789単位
要介護1:792単位→793単位
要介護2:828単位→829単位
要介護3:853単位→854単位
要介護4:869単位→870単位
要介護5:886単位→887単位

・2ユニット以上の場合
要支援2: 776単位→777単位
要介護1:780単位→781単位
要介護2:816単位→817単位
要介護3: 840単位→841単位
要介護4:857単位→858単位
要介護5: 873単位→874単位

基本報酬は1単位増加しています。

医療連携体制加算の見直し

グループホームの医療連携体制加算が見直されました。看護体制の整備や医療的ケアが必要な者の受入れについて適切に評価する観点から、体制要件受入要件を分けて評価します。

具体的な内容は以下のとおりです。

厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改正事項について

医療連携体制加算(Ⅰ)の体制要件では単位数の見直しがされました。
医療連携体制加算(Ⅱ)の受入要件は単位数と要件が変更されています。

協力医療機関との連携体制の構築

グループホームで医療行為を超えた対応をする場合、協力医療機関と素早く連携できるシステムを構築していることが求められるようになりました。

具体的な内容は以下のとおりです。

ア 以下の要件を満たす協力医療機関(3については病院に限る)を定めることを義務付ける(複数の医療機関を定めることで要件を満たしても差し支えない)。その際、義務付けにかかる期限を3年とし、連携体制に係る実態把握と必要な対応について検討する。
1.入所者が急変した場合等に、医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保している。
2.診療の求めがあった場合に、診療を行う体制を常時確保している。
3.入所者の急変が生じた場合等に、当該施設の医師または協力医療機関、その他の医療機関の医師が診療を行い、入院を要すると認められた際、入院を原則として受け入れる体制を確保している。

イ 1年に1回以上、協力医療機関との間で、入所者の急変が生じた場合等の対応を確認し、当該協力医療機関の名称等について、指定を行った自治体に提出する。
ウ 入所者が協力医療機関等に入院した後に、病状が軽快し、退院が可能となった場合は、速やかに再入所できるように努める。

協力医療機関は病院に限定されています。

施設側は急変対応の方法を確認し、自治体へ書類を提出する必要があります。

協力医療機関との定期的な会議の実施(協力医療機関連携加算)

今回の改定で協力医療機関と平時からの連携も求められるようになりました。入所者の既往歴や現病歴を情報共有する定期的な会議を開催することで加算に算入できます。

単位数は以下のとおりです。

【協力医療機関連携加算】

1〜2の要件を満たす場合:100単位/月
それ以外の場合:40単位/月

1・2は医療連携加算のアの算定要件です。医療連携体制加算に該当しているかで、協力医療機関連携加算の算定数が変化します。

入院時等の医療機関への情報提供(退居時情報提供加算)

入居者が施設から医療機関へ移動する際、食事形態や日中の過ごし方など生活支援に必要な情報提供を行うことで新たな加算を取得できます。

【新設】

退居時情報提供加算:250単位/回

大きな単位数なので取得していきましょう。

高齢者施設等における感染症対応力の向上(高齢者施設等感染対策向上加算)

施設内で感染者が発生した場合、医療機関と連携する必要があります。

そのため、医療機関と協力して感染者の療養や入居者への感染拡大防止を評価する新たな加算が設けられました。

【新設】

高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ):10単位/月
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ):5単位/月

【算定要件】

<高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)>
・感染症法第6条第17項に規定する第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること。
・協力医療機関等との間で新興感染症以外の一般的な感染症の発生時等の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時等に協力医療機関等と連携し適切に対応していること。
・診療報酬における感染症対策向上加算又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に行う院内感染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること。

<高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)>
診療報酬における感染症向上加算に係る届出を行った医療機関から、3年に1回以上施設内で感染者が発生した場合の感染制御等に係る実地指導を受けていること。

高齢者施設等感染対策向上加算は、感染症対策をしっかり行なっている施設を評価する加算制度です。

施設内療養を行う高齢者施設等への対応(新興感染症等施設療養費)

新興感染症のパンデミックが発生した際、施設内で感染した高齢者に対して必要な医療やケアを提供しなくてはいけません。

感染対策や医療機関との連携体制を確保したうえで、感染した高齢者を施設内で療養することで新たに評価する加算が設けられました。

【新設】

新興感染症等施設療養費:240単位/日

感染拡大に伴う病床のひっ迫を避けた施設に算定されます。現時点では指定されている感染症はなく、パンデミック発生時に決める方針のようです。

新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携

利用者が新興感染症に感染するリスクを考えると、感染者の診療を迅速に対応できる体制を平時から構築しておく必要があります。その観点から、感染者の診療や処置を行う協定締結医療機関と連携し、新興感染症発生時の対応を取り決めるよう明文化されています。

協定締結医療機関とは、都道府県知事と新興感染症対策を行う医療機関が協議を行い、感染症対策に関わる協定を結んだ医療機関のことです。

協力医療機関が協定締結医療機関である場合には、施設側と双方で新興感染症の発生時の対応方法を協議することが義務付けられています。

平時からの認知症行動・心理症状の予防、早期対応の推進(認知症チームケア推進加算)

認知症の行動・心理症状(BPSD)を未然に防いだり早期に対応したりするため、常に取り組みを推進する観点から、 新たな加算が設けられました。

【新設】

認知症チームケア推進加算(Ⅰ)150単位/月
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)120単位/月

【算定要件】

認知症チームケア推進加算(Ⅰ)1
(1) 事業所または施設における利用者または入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者の占める割合が2分の1以上
(2)認知症の行動・心理症状の予防および出現時の早期対応(以下「予防等」)に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者または認知症介護に係る専門的な研修および認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員から成る認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいる
(3) 対象者に対し、個別に認知症の行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施している
(4) 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、認知症の行動・心理症状の有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を行っている

認知症チームケア推進加算(Ⅱ)
・(Ⅰ)の(1)、(3)および(4)に掲げる基準に適合すること。
・ 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員から成る認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいる

認知症チームケア加算(Ⅱ)を取得するには、(Ⅰ)の基準を満たしていなくてはいけません。

科学的介護推進体制加算の見直し

科学的介護推進体制加算の単位数は現行と変わらず、40単位/月と据え置きとなっています。しかし算定要件において質の高い情報収集や入力負担を軽減した科学的介護を推進する観点から以下の見直しを行っています。

  • 入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直しを実施
  • LIFEへの初回データ提出時期について他のLIFE関連加算と揃えることが可能
  • 医師の医学的評価を少なくとも「6ヵ月に1回」から「3ヵ月に1回」に見直す
  • 初回データ提出時期について他のLIFE関連加算と揃えることが可能

データを提出する期間が6ヵ月から3ヵ月に変更されたため、実質的な労力に対する単位数は減少します。

介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化

今までの処遇改善加算は以下の3つでした。

  • キャリアパス要件
  • 月額賃金改善要件
  • 職場環境等要件

今後は処遇改善加算と一本化され、加算区分はⅠ〜Ⅳまでとなります。また、グループホームの介護職員等処遇改善加算の加算率は以下に変更されます。

Ⅰ18.1%
Ⅱ 17.4%
Ⅲ 15.0%
Ⅳ 12.2%

介護職員の処遇改善を目的としているため、加算率は2.5%引き上げられています。

利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務付け

介護現場における生産性向上を促進する観点から、職場環境の見直しを行うための委員会設置が義務付けられました。現場における課題を抽出・分析したうえで、介護サービスの質向上や職員の負担軽減を目的としています。

委員会の設置には時間がかかるため、3年間の経過措置期間が設けられています。

介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進(生産性向上推進体制加算)

介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボットやICTのテクノロジーの導入を支援する加算が新設されました。

生産性向上推進体制加算は、見守りセンサーや記録のIT化を進めている施設を評価する加算です。

【新設】

生産性向上推進体制加算(Ⅰ)100単位/月
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)10単位/月

【算定要件】

<生産性向上推進体制加算(Ⅰ)>
・(Ⅱ)の要件を満たし、(Ⅱ)のデータにより業務改善の取組による成果(※1)が確認されている
・ 見守り機器等のテクノロジー(※2)を複数導入している
・ 職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っている
・ 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行う
※生産性向上に資する取組を従来より進めている施設等においては、(Ⅱ)のデータによる業務改善取組による成果と同等以上のデータを示す等の場合には、(Ⅱ)の加算を取得せず、(Ⅰ)の加算を取得することも可能

<生産性向上推進体制加算(Ⅱ)>
・利用者の安全ならびに介護サービスの質の確保および職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行っている
・ 見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入している
・ 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行う

夜間支援体制加算の見直し

令和3年度介護報酬改定における介護老人福祉施設等に見守り機器等を導入した場合の夜勤職員配置加算の見直しがおこなわれました。今回の改定では、グループホームの夜間支援体制加算も見直されています。

【夜間支援体制加算】

夜間支援体制加算(Ⅰ) 50単位/日(共同生活住居の数が1の場合) 
夜間支援体制加算(Ⅱ) 25単位/日(共同生活住居の数が2以上の場合)

【算定要件】

夜勤職員の最低基準(1ユニット1人)への加配人数:事業所ごとに常勤換算方法で0.9人以上の夜勤職員を加配すること。
見守り機器の利用者に対する導入割合:10%
その他の要件:利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を設置し、必要な検討等が行われていること。

職員の負担軽減を目的としたIT機器の導入や委員会の設置、夜勤職員の数が新たに算定に加わっています。

外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し

改定前では、日本語能力検定試験N1・N2の合格者で勤務6ヵ月未満の方のみ人員基準に算入でき、そのほかの人材は6ヵ月以上の勤務が必要でした。しかし、今回の改定で要件が緩和されたことで、本人の日本語能力を受け入れ施設側で判断できるようになります。

日本語能力検定試験合格の有無や勤続年数に関係なく、外国人介護人材を採用できるようになったのです。

グループホームの基本報酬は+1単位増加

グループホームの基本報酬は+1単位増加し、各加算も大きな単位数となっています。そのため、グループホームで働く職員の報酬は上がっていくでしょう。また、パンデミックや認知症などの対策をしている施設の単位数も上がるような新加算が設立されました。施設として取り組む加算が多く、管理職の方はマニュアルや書類作成に力を入れていく必要があります。

この記事を書いた人

山田亮太のアバター 山田亮太 介護福祉士

2016年から特別養護老人ホームに勤務。日常生活支援から身体介護を経験し、リーダー業務にも就く。2019年に介護福祉士を取得し、2020年に認知症実践者研修を修了。

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