【+1.59%アップ】介護報酬改定の推移とは?変更ポイントも解説

介護報酬改定の推移はどのように変化してきたのか気になる方もいるのではないでしょうか。結論から述べると、介護報酬改定は毎年微増を続けながら伸びています。

今回では、介護報酬改定の変更ポイントを解説します。

変更内容をすることで、今後の介護報酬の方向性が理解できるでしょう。事業所でできる今後の対応を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

介護報酬改定とは?過去の推移や改定頻度を解説

ここからは、介護報酬改定の概要を説明します。介護報酬改定を詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

介護報酬改定を行う理由

介護報酬は保険者や利用者、サービス提供者といった社会の情勢で変動する要素で成り立っています。

介護保険制度は利用者負担が2〜3割、残りが1号・2号保険料と都道府県や市町村などの公費です。そのため、高齢者の数が増えると、医療や福祉の需要が高まり保険料も上がります。

内閣府の調査によると、65歳以上の人口は3,589万人となり、日本の総人口の28.5%が高齢者となってきている状況です。

このように社会情勢が変化すると、現役世代に大きな負担をかけてしまったり、利用者負担額が増加したりしてしまいます。このような状況を避けるため、介護報酬は定期的に改定されて見直されています。

介護報酬改定の推移【2024年は1.59%アップ】

介護保険制度は2000年に創設され、3年に一度改定されてきています。年度ごとの推移は以下のとおりです。

2003年度: -2.3%
2006年度: -0.5%
2009年度:3.0%
2012年度:1.2%
2014年度:0.63%
2015年度: -2.27%
2017年度:1.14%
2018年度:0.54%
2019年度:2.13%
2021年度:0.70%
2024年度:1.59%

2024年度は1.59%改定率が上がりました。

介護報酬改定の改定頻度

介護報酬改定は3年に1回見直されます!

厚生労働大臣が審議会(介護給付費分科会)を開催し、大学教授や独立行政法人のグループリーダーなどが話し合い、介護報酬の改定を実施します。専門家の意見をもとに、基本報酬の引き上げや加算の新設・廃止を行います。

なお、2024年は2年に1回実施される診療報酬改定も行われた年です。加えて3年に1回実施される障害福祉サービス等報酬も改定されたため、トリプル改定の年と呼ばれています。

2024年度介護報酬改定定における4つの改定ポイント

2024年の介護報酬において改定された部分は以下の4つです。

  • 地域包括ケアシステムの深化・推進
  • 自立支援・重度化防止に向けた対応
  • 良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  • 制度の安定性・持続可能性の確保

それぞれ解説します。

地域包括ケアシステムの深化・推進

在宅と介護施設の連携や医療ニーズへの対応を強化するため、地域包括ケアシステムの深化・推進が行われます。具体的には以下の点です。

  • 看取りへの対応強化
  • 感染症や災害への対応力向上
  • 高齢者虐待防止の推進
  • 認知症の対応力向上
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売の見直し

看取りを強化することで得られる加算区分や、感染症対策をすることで算入できる新加算が新設されました。今後はますます在宅と施設の連携を評価する加算が行われる可能性があります。

自立支援・重度化防止に向けた対応

高齢者の自立支援や重病化を防ぐため、他職種との連携やICTを活用したデータ入力を推進しています。具体的には以下のとおりです。

  • リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取り組み
  • 自立支援・重度化防止に係る取り組みの推進
  • LIFEを活用した質の高い介護

介護・医療の一体化やLIFE(科学的介護推進体制)でのデータ入力に対応する施設を評価する加算の新設・見直しが行われました。

良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」では、人材不足への対策や介護サービスの質向上を図る職場を評価する制度が新設されています。具体的には以下のとおりです。

  • 介護職員の処遇改善
  • 生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
  • 効率的なサービス提供の推進

処遇改善加算が一本化され加算率がアップしたことにより、介護職員の処遇改善を実施しています。また、ICT・介護ロボットの活用や訪問看護などの勤務体制の見直しが行われ、職員の業務負担を減らす評価区分や加算が新設されました。

制度の安定性・持続可能性の確保

介護保険制度を継続させるための制度が登場しました。具体的には以下のとおりです。

  • 評価の適正化・重点化
  • 報酬の整理・簡素化

訪問看護における同一建物減算や、長期利用される短期入所利用者の単位が見直されました。ほかにも制度をわかりやすくするため、廃止や見直しが行われています。具体的には運動器機能向上加算を基本報酬に包括化したり、認知症情報提供加算や地域連携診療計画情報提供加算の廃止などが挙げられます。

2024年の介護報酬改定で見送られた内容

2024年の介護報酬改定では見送られた内容もあります。具体的には以下のとおりです。

  • 複合型施設の創設
  • ケアプランの有料化

それぞれ解説します。

複合型施設の創設

在宅支援の人材不足や介護ニーズの高まりを受け、訪問介護と通所介護をまとめたサービスを新設する構想が上がっていました。

内容は要介護1・2の対応を一体にし、総合事業にするという構想です。しかし、「必要性の根拠がない」「制度の複雑化、負担増につながる」といった反対意見が上がりました。

サービスの質低下や事業所の撤退などが懸念されたため、今回は見送られています。

ケアプランの有料化

ケアプランの有料化の声も今回の改定で議論に上がっていました。

現在、在宅サービスのケアプラン作成は保険給付で行われているので、利用者負担がありません。しかし、施設サービスでは利用者負担が発生していることから公平性を保つためケアプランの有料化が提言されました。

「ケアマネジメントの利用者が減り、介護サービスの提供が遅れる」「不要なサービス利用が今よりも明らかにできない」などの反対意見が上がり、今回は施行されていません。

【2024年改定】各サービスの基本報酬の単位一覧

2024年の介護報酬改定により、変更されたサービスの基本報酬の単位を紹介します。紹介する事業所の種類は以下のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • デイサービス
  • 通所リハビリテーション
  • 訪問リハビリテーション

基本報酬の単位数を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームの単位数の変更点は以下のとおりです。

介護福祉施設サービス費(従来型個室)

要介護1:573単位→589単位
要介護2:641単位→659単位
要介護3:712単位→732単位
要介護4:780単位→802単位
要介護5:847単位→871単位

ユニット型介護福祉施設サービス費(ユニット型個室)

要介護1:652単位→670単位
要介護2:720単位→740単位
要介護3:793単位→815単位
要介護4:862単位→886単位
要介護5:929単位→955単位

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費(従来型個室)

要介護1:582単位→600単位
要介護2:651単位→671単位
要介護3:722単位→745単位
要介護4:792単位→817単位
要介護5:860単位→887単位

ユニット型地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護費(ユニット型個室)

要介護1:661単位→682単位
要介護2:730単位→753単位
要介護3:803単位→828単位
要介護4:874単位→901単位
要介護5:942単位→971単位

特別養護老人ホームの基本報酬は大幅な引き上げとなりました。

介護老人保健施設

介護老人保健施設の介護報酬の変更点は以下のとおりです。

介護老人保健施設(Ⅰ)(ⅲ)の基本報酬(多床室・基本型)

要介護1:788単位→793単位
要介護2:836単位→843単位
要介護3:898単位→908単位
要介護4:949単位→961単位
要介護5:1003単位→1012単位

介護老人保健施設(Ⅰ)(Ⅳ)の基本報酬(多床室・在宅強化型)

要介護1:836単位→871単位
要介護2:910単位→947単位
要介護3:974単位→1014単位
要介護4:1030単位→1072単位
要介護5:1085単位→1125単位

ユニット型介護老人保健施設(Ⅰ)(ⅰ)の基本報酬(ユニット型個室・基本型)

要介護1:796単位→802単位
要介護2:841単位→848単位
要介護3:903単位→913単位
要介護4:956単位→968単位
要介護5:1009単位→1018単位

ユニット型介護老人保健施設(Ⅰ)(ⅰ)の基本報酬(ユニット型個室・在宅強化型)

要介護1:841単位→876単位
要介護2:915単位→952単位
要介護3:978単位→1018単位
要介護4:1035単位→1077単位
要介護5:1090単位→1130単位

今回の改定率は2021年度よりも0.7%を下回る、0.61%との結果となっています。

デイサービス

デイサービスの基本報酬の変更点は以下のとおりです。

【デイサービスの基本報酬】(7時間以上8時間未満の場合)

通常規模

要介護1:655単位→658単位
要介護2:773単位→777単位
要介護3:896単位→900単位
要介護4:1,018単位→1,023単位
要介護5:1,142単位→1,148単位

大規模型I

要介護1:626単位→629単位
要介護2:740単位→744単位
要介護3:857単位→861単位
要介護4:975単位→980単位
要介護5:1,092単位→1,097単位

大規模型Ⅱ

要介護1:604単位→607単位
要介護2:713単位→716単位
要介護3:826単位→830単位
要介護4:941単位→946単位
要介護5:1,054単位→1,059単位

2〜5単位増加するので、通所介護の基本報酬はアップします。

通所リハビリテーション

通所リハビリテーションの基本報酬の単位数の変更点は以下のとおりです。

【通所リハビリテーションの単位数の変更点】(7時間以上8時間未満)

通常規模型

要介護1:752単位→762単位
要介護2:897単位→903単位
要介護3:1039単位→1,046単位
要介護4:1206単位→1,215単位
要介護5:1369単位→1,379単位

大規模型Ⅰ/Ⅱ(7時間以上8時間未満)

要介護1:734/708単位→714単位
要介護2:868/841単位→847単位
要介護3:1,006/973単位→983単位
要介護4:1,166/1129単位→1140単位
要介護5:1,325/1,282単位→1300単位

旧大規模型Ⅰ及びⅡは廃止し、大規模型に統合されました。また以下の条件を満たした大規模型事業所は、通常規模型と同様の単位数を算定できます。

リハビリテーションマネジメント加算の算定率が利用者全体の80%を超えていること
リハビリテーション専門職の配置が10:1以上であること

訪問リハビリテーション

訪問リハビリテーションの基本報酬の単位数の変更点は以下のとおりです。

【訪問リハビリテーションの単位数の変更点】

訪問リハビリテーション:307単位→308単位
介護予防訪問リハビリテーション:307単位→298単位

指定介護予防訪問リハビリテーションの利用が1年を超える場合は、介護予防訪問リハビリテーション費から5単位減算されます

介護報酬改定は年々上がっている

2024年の報酬改定では、単位数が+1.59%アップしました。 介護報酬は2000年の制度スタートから年々上がり続けているため、介護職の増収が今後も期待できます。 ただし、介護報酬が上がることで保険料や利用者負担が増えています。 介護保険料を支払っている方や高齢者にとっては、必ずしも嬉しいことではないでしょう。 保険者と被保険者とのバランスを国がどう取っていくのかは、今後の注目すべき点です。

この記事を書いた人

山田亮太のアバター 山田亮太 介護福祉士

2016年から特別養護老人ホームに勤務。日常生活支援から身体介護を経験し、リーダー業務にも就く。2019年に介護福祉士を取得し、2020年に認知症実践者研修を修了。

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