【2024年版】訪問リハビリにおける介護報酬改定の変更ポイント
2024年6月に訪問リハビリの報酬改定が行われました。事業所を運営している方は、詳しい内容を知りたいのではないでしょうか。
訪問リハビリの介護報酬改定は大きな変更はないものの、職員の増収につながる加算も登場しています。そのため、事業責任者は内容を把握しておく必要があるでしょう。
今後の事業運営に役立つ内容なので、ぜひ最後までご覧ください。
訪問リハビリの介護報酬改定は6月1日から
その理由は、2024年の介護報酬改定が診療報酬改定と重なるためです。 訪問リハビリを含む4つのサービスは6月1日から施行される予定です。
訪問リハビリにおける介護報酬改定の変更点
訪問リハビリの介護報酬改定の変更点を紹介します。
基本報酬
訪問リハビリテーションと介護予防訪問リハビリテーションの単位数は以下のとおりです。
訪問リハビリテーション
【改定前】307単位
【改定後】308単位
介護予防訪問リハビリテーション
【改定前】
307単位
【改定後】
298単位
訪問リハビリテーションの単位数は+1の微増、介護予防リハビリテーションは-9ポイント減少しています。
医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化
利用者が入院し、退院後に訪問リハビリテーションを行う際には、訪問リハビリ事業所では医療機関からリハビリテーション計画書の受け取りが義務付けられています。
退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進
「退院時共同指導加算」と呼ばれる加算が新設されています。単位数は600単位です。
業務継続計画未実施作的事業所に対する減算の導入
業務継続計画(BCP)を実施していない事業所は減算対象となります。 施設系・居宅系の場合は、所定単位数の3/100、その他のサービスは1/100の単位数が減算されます。
高齢者虐待防止の推進
高齢者虐待の防止措置をしていない事業所は減算対象です。所定単位数の1/100に相当する単位数が減算されます。
算定要件は以下のとおりです。
【虐待の発生またはその再発防止の措置が講じられていない場合】
虐待防止のための対策委員会の定期的な開催とともに、その内容を職員に周知させる
・虐待防止のための指針を整備すること
・職員に対して、虐待防止のための研修を定期的に開催すること
・虐待防止に関する担当者を設置すること
研修や担当者を配置することで、減算は免れます。
身体的拘束等の適正化の推進
訪問リハビリテーションでは身体的拘束に関する適正化の推進はありませんでしたが、今回の改正から始まりました。
身体拘束にあたるかの基準は以下のとおりです。
- 利用者又は利用者等の生命又は身体を保護するため緊急かつやむを得ない場合に限る
- 身体的拘束等を行う場合には理由と実施状況を記録する
身体拘束をする際は、上記の基準に沿って行いましょう。
訪問リハビリテーションにおける集中的な認知症リハビリテーションの推進
今回の改定で「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」が新設されました。単位数は240単位/日で、次の要件を満たす場合、1週に2日を限度に加算されます。
- 認知症であると医師が判断した者
- リハビリテーションにより生活機能の改善が見込まれると判断された者
- 医師または理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が退院・退所日または訪問開始日から3ヵ月以内に集中的なリハビリテーションを行う
短期集中リハビリテーション実施加算との併用はできません。
どちらを取得するか悩んだら、退院(退所)日から利用できる認知症短期集中リハビリテーションがおすすめです。
訪問・通所リハビリテーションにおけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進
リハビリテーションや口腔、栄養を包括的に支援するための加算区分が新設されました。それぞれのアセスメントを行っていたり、関係職種と情報共有をしていたりすることで算入できます。
加算内容や単位数は以下のとおりです。
【加算】
【改定前】
リハビリテーションマネジメント加算(A)イ180単位/月
リハビリテーションマネジメント加算(A)ロ213単位/月
リハビリテーションマネジメント加算(B)イ450単位/月
リハビリテーションマネジメント加算(B)ロ483単位/月
【改定後】
リハビリテーションマネジメント加算(イ)180単位/月
リハビリテーションマネジメント加算(ロ)213単位/月
【算定要件】
リハビリテーションマネジメント加算(イ)
現行のリハビリテーションマネジメント加算(A)と同要件を設定
リハビリテーションマネジメント加算(ロ)
現行のリハビリテーションマネジメント加算A(ロ)と同要件を設定
加算要件の簡略化が行われました。
訪問及び通所リハビリテーションのみなし指定の見直し
訪問リハビリテーションを拡充するため、介護老人保健施設や介護医療院を開設する際には、訪問リハビリテーション事業所の指定を受けたとみなされます。 訪問リハビリテーションを開設しやすくするための背景が存在します。
介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質の向上に向けた評価(予防のみ)
利用者が通所リハビリテーションや介護予防通所リハビリテーションの利用を開始し、1年が経過した場合の減算が拡大されます。 しかし、3ヵ月に1回のリハビリテーション会議やLIFE(科学的介護推進体制)へのデータ提出、フィードバックを受けていれば減算は行われません。
単位数や算定要件は以下のとおりです。
【単位数】
利用開始日の属する月から12ヵ月超えた場合
【区分】
介護予防訪問リハビリテーション
・改定前
5単位/回減算
・改定後
要件を満たした場合:減算なし
要件を満たさない場合:30単位/回減算(新設)
事業所評価加算
【区分】
介護予防訪問リハビリテーション→廃止
【算定要件】
利用開始日の属する月から12ヵ月を超えて介護予防通所(訪問)リハビリテーションを行う場合の減算を行わない基準(新設)
・3ヶ月に1回以上、リハビリテーション会議を開催し、リハビリテーションに関する専門的な見地から利用者の状況等に関する情報を構成員と共有しリハビリテーション会議の記録の実施計画の見直しを行う
・利用者ごとのリハビリテーション計画書を厚生労働省に提出
事業所評価加算が廃止になってしまったので、介護予防訪問リハビリテーションにおいては収入面にダメージを受けるのではないでしょうか。
退院直後の診療未実施減算の免除
これまでは、入院中にリハビリテーションを受けていた利用者が、退院直後に介護保険のリハビリテーションを受けると、診療未実施減算の対象となっていました。 しかし、今後は退院後1ヵ月間は減算が適用されなくなります。
診療未実施減算の経過措置の延長等
事業所の医師が診療できなかった場合、「適切な研修の終了等」を終えた事業所以外の医師が診療を行うように求められていました。 過去の報酬改定では、この措置の適用期限が令和6年3月31日までとされていましたが、今回の改定でもその期限が延長されます。
令和9年3月31日までの間は、「適切な研修の終了等」を終えていない医療機関でも訪問リハビリテーションが提供できます。
ケアプランに係る「主治の医師等」の明確化
訪問リハビリテーションをケアプランに組み入れる際には、主治医の指示が必要となります。 2024年の改定により、より迅速な対応を可能にするため、入院中の医療機関の医師も対象に含まれるようになりました
訪問系サービス及び短期入所系サービスにおける口腔管理に係る連携の強化
利用者の口腔管理を実施するため、口腔連携強化加算が新たに設けられました。 訪問リハビリテーションが必要に応じて相談できる連携歯科医療機関と協力し、利用者の口腔管理を実施することで、この加算を算定することができます。単位数は月に50単位で、算定可能なのは月に1回となります。
テレワークの取扱い
個人情報を適切に管理できることを前提としていれば、テレワークを推進しています。
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
離島や中山間地域にある過疎地域においては、以下の3つの加算が算定されます。
- 特別地域加算
- 中山間地域等の小規模事業所加算
- 中山間地域に居住する者へのサービス提供加算
上記の加算が算定されるには厚生労働省により、以下の要件が定められた地域である必要があります。
- 離島振興法
- 山村振興法
- 特定農山法
- 過疎地域自立促進特別措置法
今回の改定により、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条 第二項に基づき、公示された過疎地域が明確に含まれることが明記されました。
特別地域加算の対象地域の見直し
特別地域加算の対象地域が見直されました。
訪問リハビリの介護報酬改定は大きな変化はなし
今回の改定を全体的に見てみると、訪問リハビリテーションにおける大きな変更点は少ないという印象を受けます。 介護予防の加算点数が低下したのは問題点ですが、訪問リハビリテーションだけを見ると他の事業所と比較して大きな変化は見られません。 全サービスで共通の部分が減算されたり、新たな加算が登場したりする状況です。 職員の増収につながる加算も多く存在するため、事業所側はこれらを有効に活用していくことが望ましいです。
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