【2024年改定】居宅介護支援・介護予防支援の基本報酬や変更点を解説

2024年4月から居宅介護支援・介護予防支援の基本報酬が改定されました。それに伴い、算定要件の追加や緩和が行われています。

今回では、居宅介護支援・介護予防支援における基本報酬の変更点を解説します。

算定要件をクリアできているかが明確になるので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

【2024年改定】居宅介護支援・介護予防支援の基本報酬

改定後の居宅介護支援・介護予防支援における、基本報酬の単位数を紹介します。

居宅介護支援費(Ⅰ)

居宅介護支援費(Ⅰ)の単位数は以下のように変更となりました。

居宅介護支援(Ⅰ)

要介護1又は2
改定前:1076単位
改定後:1,086単位

要介護3、4または5
改定前:1,398単位
改定後:1,411単位

居宅介護支援(Ⅱ)

要介護1又は2
改定前:539単位
改定後:544単位

要介護3、4または5
改定前:698単位
改定後:704単位

居宅介護支援(Ⅲ)

要介護1又は2
改定前:323単位
改定後:326単位

要介護3、4または5
改定前:418単位
改定後:422単位

居宅介護支援費(Ⅱ)

居宅介護支援費(Ⅱ)は、国民健康保険中央会が運用する「ケアプランデータ連携システム」の活用や事務職員の配置を行っている事業所が対象となっています。

単位数の変更点は以下のとおりです。

居宅介護支援(Ⅰ)

要介護1又は2
改定前:1076単位
改定後:1,086単位

要介護3、4または5
改定前:1,398単位
改定後:1,411単位

居宅介護支援(Ⅱ)

要介護1または2
改定前:522単位
改定後:527単位

要介護3、4または5
改定前:677単位
改定後:683単位

居宅介護支援(Ⅲ)

要介護1または2
改定前:313単位
改定後:316単位

要介護3、4または5
改定前:406単位
改定後:410単位

【2024年改正に対応】介護報酬改定による居宅介護支援の変更点

介護報酬改定による居宅介護支援の変更点を紹介します。

特定事業所加算の見直し

改定前の特定事業所加算は以下の要件を満たすことで取得できます。

  • 一定数の主任ケアマネ、ケアマネが在籍
  • 24時間体制の確保
  • 他の法人と共同で事例検討会を行う

上記3つの要件を満たすと算定可能となりますが、改定後には「ヤングケアラー難病疾患者、生活困窮者などに関する研修や事例検討会を開催していること」が加わります。

介護保険以外の制度を活用する必要性がある方を発見した場合、関係機関に適切につなげられるように必要な知識を身につけるため追加された項目です。

居宅介護支援の特定事業所加算の単位数は以下のとおりです。

  • 特定事業所加算(Ⅰ):【改定前】505単位 / 【改定後】519単位
  • 特定事業所加算(Ⅱ):【改定前】407単位 / 【改定後】421単位
  • 特定事業所加算(Ⅲ) :【改定前】309単位 / 【改定後】323単位
  • 特定事業所加算(A) :【改定前】100単位 / 【改定後】114単位

算定要件は以下のとおりです。

算定要件:常勤の介護支援専門員の数

・加算Ⅰ・Ⅱ→3人以上
・加算Ⅲ→2人以上
・加算A→常勤1、非常勤1

算定要件:ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、精神患者等介護保険以外の領域の研修への参加

・加算Ⅰ〜Ⅲ・A

算定要件:特定事業所集中減算の適用を受けていない

・加算Ⅰ〜Ⅲ・A

算定要件:介護支援専門員の配置改正

・加算Ⅰ〜Ⅲ・A

介護支援専門員1人当たりの取扱件数の見直し

介護支援専門員(ケアマネージャー)の1人当たりの取扱い件数の変更点は以下のとおりです。

【改定前】:利用者数が35またはその端数を増すごとに1とする
【改定後】:利用者数が44またはその端数が増すごとを1とする

ケアプランデータ連携システムを活用し、かつ事務職員を配置している場合は49人まで可能となります。
件数のカウント方法は要介護1〜5の方=1件です。
また、介護予防支援の利用者の人数換算方法も変更されます。

【改定前】:要支援区分2分の1件=要支援者2人で要介護認定1名分
【改定後】:要支援区分が3分の1件=要支援者3人で要介護認定者1名分

令和6年4月以降、事業所が市町村から直接介護予防事業者として指定を受ける制度が開始されます。介護予防利用者の増加が見込まれるため改定されました。

ケアプランのサービス割合、サービス提供割合の説明

ケアプラン内の各介護サービス割合と同一事業者のサービス提供割合の説明が緩和されます。

ケアマネジメントの公正中立性を確保するため、居宅介護事業所では過去6ヵ月間に作成したケアプラン内の「各介護サービス割合」と「同一事業者のサービス提供割合」の説明義務があります。

説明には事務負担がかかり、サービス提供割合の高い事業所が選ばれるとの意見が出ていました。 そこで説明義務を「説明努力義務」に変更する制度が導入されました。

同一建物ケアマネジメント減算

訪問介護における同一建物減算に類似した制度が、居宅介護支援にも導入されました。

居宅介護支援事業所が所在する建物と同一の建物、同一の敷地内の建物、連接する敷地内の建物に居住する利用者に対して、居宅介護支援を提供する場合、人数に関係なく5%減算されます。 また、居宅介護支援事業所の利用者が1ヵ月あたり20人以上住む建物に対して、居宅介護支援を提供する場合も5%の減算対象となります。

限られた居宅介護支援事業所や訪問介護事業所が集中的にサービスを提供するケースが増えていることから、このような算定変更が行われました。 介護業務に要する手間やコストを減らす事業所を増やすため、同一建物に関する減算は年度を追うごとに進行しています。

同一建物でサービスが集中している事業所では、業務バランスの再検討が必要となります。

業務継続計画(BCP)の策定

業務継続計画(BCP)とは、感染症や災害が発生した場合の対応策を記載した計画書のことを指します。

令和6年4月からBCPの策定が義務付けられています。 BCPを作成していない事業所は「業務継続計画未実施減算」の項目で減算対象となります。

高齢者虐待防止措置の未実施減算

高齢者虐待防止措置の未実施減算とは、虐待の発生や再発を防止するための措置が講じられていない場合に適用される減算のことを指します。

利用者の人権や尊厳の保護、虐待防止を推進するために導入されました。 令和6年の3月までは努力義務でしたが、令和6年の4月以降からは義務化されています。 高齢者虐待防止措置が未実施の場合、1%減算されます。

高齢者虐待防止措置の具体的な要件は以下の4つです。

  • 対策検討委員会の定期開催と職員への周知徹底
  • 虐待防止指針の整備
  • 虐待防止研修の定期実施
  • 虐待防止担当者配置

虐待に関する研修や担当者を配置する必要があります。

身体的拘束等の適正化の推進

居宅介護支援では、利用者の身体的拘束を行う状況は想定されておらず、指定基準には明記されていませんでしたが、今回の改定により明文化されました。 要件は以下の通りです。

  • 利用者または利用者等の生命または身体を保護するため、緊急かつやむを得ない場合に限る
  • 身体的拘束等を行う場合には、その理由と実施状況を記録する

これは運営基準に明記されるもので、報酬減算の対象にはなりません。

ケアプラン作成に係る「主治医」の明確化

訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションをケアプランに組み入れる場合、主治医の指示が必要となります。

2024年の改定では、より迅速な対応を可能にするため、入院中の医療機関の医師も対象に含まれるようになりました。

オンラインモニタリングの取り扱い

2024年の改定により、オンラインモニタリングが適用されるようになりました。 改定前では、少なくとも1ヵ月に1回は利用者の居宅を訪問し、利用者への面接が義務付けられていました。

今回の改定では、改定前の基準を原則としつつ、以下の条件を満たしていればオンラインモニタリングが導入可能となります。

  • 文書により、利用者の同意を得ること
  • メリットやデメリットを利用者に丁寧に解説する
  • 少なくとも2ヵ月に1回は利用者の居宅を訪問し利用者と面接をすること(介護予防支援の場合は6ヵ月に1回)
  • サービス担当者会議で以下の事項の合意が関係者と取れている

a利用者の状態が安定していること
b利用者がテレビ電話装置を介して意思疎通できること
cテレビ電話装置を活用したモニタリングでは収集できない情報について他のサービス事業者との連携により情報収集をすること

オンラインモニタリングは利用者の状況に応じて実施し、始める際は丁寧に説明しましょう。

テレワーク(在宅勤務)でも人員基準算定可

個人情報を適切に管理できることを前提とした場合、テレワークも人員基準の算定に含まれます。 ケアマネージャーの職場環境の改善や業務負担の軽減が目指されています。

過疎地域への対応

離島や中山間地域にある過疎地域においては、以下の3つの加算が算定されます。

  • 特別地域加算
  • 中山間地域等の小規模事業所加算
  • 中山間地域に居住する者へのサービス提供加算

上記の加算が算定されるには厚生労働省により、以下の要件が定められた地域である必要があります。

  • 離島振興法
  • 山村振興法
  • 特定農山法
  • 過疎地域自立促進特別措置法

今回の改定では、さらに過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和三年法律第十九号)第二条 第二項により、公示された過疎地域が含まれることが明文化されます。

居宅介護支援事業者が介護予防支援事業者の指定を受けられる

改正前の介護予防支援(要支援1・2)のケアプラン作成方法は以下の2つでした。

  • 市町村から介護予防支援事業者としての指定を受けた地域包括支援センター
  • 地域包括支援センターから一部委託を受けた居宅介護支援事業所

今回の改正により、上記2つに加えて、居宅介護支援事業者も市町村から介護予防支援事業者の指定を受けられるようになりました。 つまり、要支援のケアプランを作成できる事業者が増えたということです。 居宅介護支援事業者が市町村から介護予防支援事業者の指定を受ける際のポイントは以下の3つです。

  • 市町村長が認めた介護予防サービスの実施や評価を行っている
  • 管理者が主任介護支援専門員である
  • 介護予防支援はケアマネージャーが行う

地域包括支援センターが介護予防支援をする際は、ケアマネージャー以外でもケアプラン作成が可能です。 しかし、居宅介護支援事業者が行う場合は、ケアマネージャーでなければなりません。

公正中立性の確保とのための取組の見直し

以下のサービスは6ヵ月ごとに半年間のケアプランの見直しをおこなっていました。

  • 訪問介護
  • 通所介護
  • 地域密着型通所介護
  • 福祉用具貸与

改定前はケアプランを見直す際、利用割合や同一事業者により提供された割合を、文書と口頭で利用者に説明し、同意の署名が義務付けられていました。 改正後では、利用者から理解を得られるように努めることが求められています。

内容及び手続きの説明の同意

介護サービスに関する説明や同意する手続きの流れも一部緩和されます。 ケアマネージャーは利用者に対して、複数の指定居宅サービス事業者の紹介や選定理由などの説明が義務付けられています。 利用者に対して丁寧に説明をし、利用申込者から署名を得ることが必要でした。

制度改正により「利用申込者から署名を得ることが望ましい」と変更され、努力義務へと緩和されています。

福祉用具の選択制の導入

これまでは福祉用具のレンタルのみが介護保険の給付対象でした。 しかし、今後は福祉用具を貸与するより購入するほうが費用負担を抑えられる品目に関しては、レンタルか購入を選べるようになります。

対象品目は以下の福祉用具です。

  • 固定用スロープ
  • 歩行器(歩行車を除く)
  • 単点杖(松葉杖を除く)
  • 多点杖

ケアマネージャーが利用者に福祉用具の貸与か購入に関する説明をする際は、それぞれのメリットとデメリットを伝える必要があります。 また、対象となる福祉用具を提案する際は、アセスメントの結果を元に行います。

専門職からの意見やサービス担当者会議の結果を踏まえてください。 ケアマネージャーが行う、3ヵ月に1回のモニタリングの結果も重要な指標となります。

加算の見直し

2024年の介護保険改定では、以下の加算が見直されます。

入院時情報連携加算(Ⅰ)
【改定前】入院してから3日以内:200単位
【改定後】入院当日:250単位

入院時情報連携加算(Ⅱ)
【改定前】入院してから7日以内:100単位
【改定後】入院後3日以内:200単位

通院時情報連携加算
【改定前】利用者が通院する時にケアマネージャーが同席し、医師から情報提供を受けて居宅サービス計画に記録した場合に50単位算定される
【改定後】利用者の口腔衛生状況の適正管理が目的で歯科医師も含まれる

ターミナルケア加算
【改定前】
末期の悪性腫瘍の方が対象
【改定後】
規定が外され、医学的知見に基づき、回復の見込みがないと診断した者も含まれる

オンライン対応が今後も求められていく可能性が高い

居宅介護支援の介護報酬は大幅に変更されました。 オンラインモニタリングのスタートは特に大きな変化と言えるでしょう。 今後もオンラインやインターネットを活用した報酬改定が行われる可能性が高いです。 現場が混乱しないように、事業所側は少しずつ情報収集をしながら進めていく必要があります。

この記事を書いた人

山田亮太のアバター 山田亮太 介護福祉士

2016年から特別養護老人ホームに勤務。日常生活支援から身体介護を経験し、リーダー業務にも就く。2019年に介護福祉士を取得し、2020年に認知症実践者研修を修了。

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